1 無名さん

黄瀬くん改悪クリオナたん

黄瀬が夢主を襲ってその写真を撮って脅すなど
著しいキャラ崩壊が激しい
AVの見過ぎのような内容。たまんないっスわこれ
http://id31.fm-p.jp/502/norima61041/
適当晒し525
>>10333から派生
2 無名さん
なんで立てたんだよ
3 無名さん
見てきたけど本当にAVの見過ぎって感じだな
4 無名さん
安価もまともに出来ないようなゴミ付きが糞スレ立てんなよ
5 無名さん
キャラの名前をスレタイに入れんな
6 無名さん
キャラ改悪AVクリオナたんで良くね?
7 無名さん
なんで専スレ?流れてたやつだよね?もしかしてここにも粘着たんがいるのかなぁ〜???
8 無名さん
独断で専スレ立てても誰も乗らないと思うけど
9 無名さん
ゴミ付き新参たんはクソスレ立てんな
10 無名さん
とりあえず安価できるようになりなさい
M「管理簿では、T家⇒Sの家⇒J家の移動が1年以内になってました。Sのおじいさんがお父さんに伝える時間が無かったのだろうと理解はできるんです。それに約束の年数からいって、Sのお父さんに役回りが来ることはもう考えにくい。あなたかT家で最後になる可能性が高いですし」

M「でも、今回箱が出てきたのはSの家だった。これはおかしいですよね。俺、家のことはあまりやってなかったので、管理簿をまじまじと見たことなんてなかったんですが、昨夜父と管理簿を見て正直驚きましたよ。Sの話をさっき聞くまでは、もしかしたら何か手違いがあってあなたも箱のことを知らなかったのかもしれないと考えてたのですが、あなたは知っていますよね? 知っていたのに引き継いでいない。そしてSの家にあるのを知ってて黙っていた」

M「俺、今回のこと、無事に祓えたんであとは詮索されてもとぼければ済むかなって思ってたんですよ。何かの手違いでSの家の人みんなが知らなかっただけで結果オーライというか……。正直焦りまくったし、ビビリまくったけど。今日だって、昨日父と管理簿見てなかったらここには来てなかったと思います。本来の約束なら、俺の家からこっちに来ることは禁止ですからね。だから今日俺が来たってことは伏せておいて欲しい。でも、そういうわけには行かなくなったみたいです」

M「俺は怒ってますよ。俺の父もね。ただ、顔も知らない先祖の約束を守り続けないといけないって言うのは相当酷な話だというのも分かります。逃げ出したいって気持ちも。俺だってそうでしたから。俺だってあの日、箱を見ただけで逃げ出したかった。わずかな時間のことだったのに、本気で逃げようかと思った。アレを下手すれば十数年、下手すれば何十年保管するなんてどれだけ怖いのか」
M「でも、もしこういったことがここ全体で起きてるのだとしたら、残りの箱の処理に関しても問題が起きます。Sはたまたま、本当にたまたま箱に近づかなかったっていうだけで、たまたま、本当に偶然あの日俺と会うことになってたってだけで……。もしかしたらSは死んでたかもしれない。そして、もしかしたら他の箱で被害がでているかもしれない。 だから、なぜこういうことになってたのか話していただけませんか?」

M「それと、こいつ(Kのこと)はその場に居た『女』です。もちろん子供を生める体です。部外者ではないです。被害者です。それとこいつは(俺のことです)部外者かもしれませんが、そうでもないかもしれません。こいつの名前は◎○です。ここらじゃそうそうある苗字じゃないですよね? ◎○です」

俺はなんのことやら分からなかったです。ただJさんが俺の方を見て

「あぁ、そうかぁ……」

って。
◎Jさんの話にいきますね(一部S父母の通訳付きです)

J「まず、箱のことを説明したほうがいいですかな。チッポウ(シッポウかと思ってましたがチッポウらしい)はSの家、J家、そして斜め向いにあったT家の3家で管理してきたものです。3家に割り当てられた箱です」

J「そしてあの箱は3家持ち回りで保管し、家主の死後、次の役回りの家の家主が葬儀後に前任者の跡取りから受け取り、受取った家主がまた死ぬまで保管しまた次へ、次へと繰り返す。受取った家主は、跡取りに箱のことを伝える。跡取りが居ない場合は、跡取りが出来た後伝える。どうしても跡取りに恵まれなかった場合、次の持ち回りの家に渡す。他の班でも同じです。3家だったり4世帯だったりしますが」

J「そして他の班が持っている箱についてはお互い話題にしないこと。回す理由は、箱の中身を薄めるためです。箱を受取った家主は、決して箱に女子供を近づけてはいけない。そして、箱を管理していない家は管理している家を監視する。またMの家から札をもらって、箱に張ってある古い札と貼り替える。約束の年数を保管し、箱の中身が薄まった後Mの家に届け処理してもらう。M神社(仮にそう呼びますね)と昔にそういう約束をしたらしい」

M「それで、俺の家は昔の約束どおり持ち込まれた箱を処理……供養してたんだ。ここにある全ての箱と、箱の現在の保管者の管理簿をつけて」
J「そうです。本来なら私が、S爺が亡くなったときに箱を引き継ぐはずでした。でも、本当に怖かったんです。申し訳ない許して欲しい。Tの父親が死に(Sの家の前任者です)、引き継いだS爺も立て続けに死に、男には影響ないと分かっていても怖かった。そんな状態で、いつS父が箱を持ってくるのか怯えてたんです。でも葬儀後、日が経ってもS父が来ない。それでT(S家の前任者の跡取り)と相談したんです。もしかしたらS父は何も知らないのかもしれない、箱から逃げられるかもしれないと」

J「そして、まずS父に箱のことをそれとなく聞き、何も知らされていないことを確認しました。そして納屋の監視は続け、S家に箱を置いたままにしておくこと。Tは札の貼り替えをした後、しばらくして引っ越すこと(松江に行ったらしいです)。そうすれば、他班からは『あそこは終わったんだな』と思ってもらえるかもしれないから」

J「引き継ぐはずだった私が、S家の監視を続けること。そして、約束の年が来たら納屋から持ち出しM神社に届けること。そして……本当に、本当に申し訳ない。それまでに箱にSやSの母が近づいて死んでしまったとしても、箱のことはSの家は知らないし他班の箱のことは触れることは禁止だから、ばれることは無いだろうとTと相談したんです。本当に申し訳ない。こんなことは無いと思う、申し訳ない」

Jさんは土下座して何度も謝ってました。
Jさんは土下座して何度も謝ってました。

S父さんは、死んだS爺さんに納屋には近づくなとは言われていたそうです。
また実際気味の悪い納屋で、あえて近づこうとは思ってなかったようです。Sも同様に。
それで今回、どうせなら取り壊そうという話になり、中の整理をしたときにSが箱を見つけてしまったという経緯でした。

S父さん、S母さん、Sは信じられないという感じでしたが、ただS婆さんだけがなにやら納得したような感じで

「納屋はだから近づかせてもらえなかったのか」

という風なことをおっしゃってました。

M「なるほど、そういうことでしたか……。引継ぎはしなかったとはいえ監視しなければならず、結局は箱から逃げることは出来なかったんですね。結局苦しんだと。決まりの年まで確かあと19年でしたよね? ……引き継いでいたとしても結局は俺が祓うことになってたのかな」

M「S父さん、S母さん、S婆さん、S。現実味の無い話でまだ何が何だか分からないと思う。でもこれは現実で、このご時世にアホみたいに思うかもしらんが現実で。でもJさんを怒らないであげてほしい。あの箱が何か知ってるもんにとっちゃそれほど逃げたいもんだけん。まぁ、もう箱はないんだけん安心だが? 面白い話が聞けて楽しかったと思ってJさんを許してやって欲しい。Jさんを許してやって欲しい」

Jさんはうつむいてうなだれて、見ててなんだか痛々しかったです。

M「それと、たぶんみんなあの箱の中身が何かを知りたいんだと思う。ここまで話したら、もう最後まで聞いてほしい。俺も全部は知らんけど知ってることを話す。ここはもう箱終わったけん、問題ないと思うし。正直、残りの箱はあと二つ。たぶん俺が祓わんといけんもんだけん。俺の決意ってのもある。それと、S父さんは本来知っておかんといけん話だけん。それとAは、たぶん今話とかんとしつこいけんなぁ」
M「あの箱はな、子取り箱っていって間引かれた子供の身体を入れた箱でな。作られたのは1860年代後半〜80年代前半頃」

M「この部落(俺らの言葉では部落といいませんが、差別用語です)はこのあたりでも特にひどい差別、迫害を受けた地域なんよ。で、余りにもひどい迫害だったもんで間引きもけっこう行われていた。△▼(地域名です)の管轄にあったんだが、特に△▼からの直接の迫害がひどかったらしい。で、働き手が欲しいから子供は作るが、まともな給料がなく生活が苦しいから子供を間引くと……。これは一応わかるよな?」

M「で、1860年代後半かな? 隠岐の島で反乱があったのはしっちょるか? その反乱は1年ほどで平定されたらしいんだけど、そのときの反乱を起こした側の一人が、この部落に逃れてきた。島帰りってやつだな……。反乱の理由とかは学校で少し習ったろ? 隠岐がすごい裕福な土地だったってこととかも。まぁそれはいいや。で、その島帰りの人間、名前がな……◎○って言うんだよ」

俺の苗字と同じでした。なんだか訳わかんね。
◎○⇒以下AAとしますね。

M「AAは反乱が平定されてこっちに連れてこられた時、隙を見て逃げ出してきたそうだ。話によるとだけどな。この部落まで逃げてきたと。部落の人らは余計な厄介ごとを抱えるとさらに迫害を受けると思って、AAを殺そうとしたんだって。で、AAが『命を助けてくれたらお前たちに武器をやる』というようなことを言ったそうだ」

M「その武器って言うのがな、小箱だ。小箱の作り方。部落の人はその武器がどのようなものかを聞き、相談した結果、条件を飲むことにしたんだ」
M「AAはもう一つ条件を出してきた。武器(小箱)の作り方を教えるが、最初に作る箱は自分に譲って欲しいということ。飲めるなら教える、どうしてもダメなら殺せと。部落の人はそれを飲んだ。そしてAAは箱の作り方を教えた……」

M「作り方を聞いてからやめてもいい、そして殺してくれてもいいともAAは言ったそうだよ。それだけ禍々しいものだけん、この小箱ってのは。AAも思うところがあったのかもな。ただ、『やり遂げたら自分も命を絶つが、それでもやらなければならないことがある』そうAAは言ってたそうだ」

箱の作り方、全部載せるとさすがにやばそうなので? いくつか省きますね。

M「それでその方法がな、最初に複雑に木の組み合わさった木箱をつくること。これはちょっとやそっとじゃ木箱を開けられないようにするための細工らしい。これが一番難しい作業らしい。お前らもちょっと見ただろ? あのパズルみたいな箱。アレを作るんだ」

M「次に、その木箱の中を雌の畜生の血で満たして、1週間待つ。そして血が乾ききらないうちに蓋をする。次に中身を作るんだが、これが子取り箱の由来だと思う。想像通りだと思うが、間引いた子供の体の一部を入れるんだ。生まれた直後の子は、臍の緒と人差し指の先(第一間接くらいまでの)、そしてハラワタから絞った血を。7つまでの子は、人差し指の先とその子のハラワタから絞った血を。10までの子は、人差し指の先を」

M「そして蓋をする。閉じ込めた子供の数、歳の数で箱の名前が変わる。一人でイッポウ、二人でニホウ、三人でサンポウ、四人でシッポウ、五人でゴホウ、六人でロッポウ、七人でチッポウ、それ以上は絶対にダメだとAAは念を押したそうだ。そして、それぞれの箱に目印として印をつける。イッポウは△、ニホウは■といった具合に」
M「そしてAAは、自分の持っていく箱、ハッカイだけは7つまでの子を八人くれと。そしてハッカイとは別に女1人と子供を1人くれと。ハッカイは最初の1個以外は決して作るな、とも言ったそうだ」

M「普通、そんな話まで聞いて実行なんか出来ないよな。そんな胡散臭い人間の話、ましてやそんな最悪の話。いくら生活が苦しくても、自分の子供を殺すのでさえ耐え切れない辛さなのに、さらに殺した子供の死体にそんな仕打ち……」

M「でもな、ここの先祖はそれを飲んだんだ、やったんだよ。どういった動機、心境だったのかは全部はわからないけど、それだけものすごい迫害だったんだろうね。子供を犠牲にしても武器を手にしないといけないほどに、すごい……」

M「そして、最初の小箱を作ったんだと。各家、相談に相談を重ねて、どの子を殺すかっていう最悪の相談。そして実行されたんだ。そして、ハッカイが出来上がった」
M「AAは、この箱がどれほどのものでどういう効果なのかを説明した。要望にあった子供と女を使ってね。その子供と女の名前は□■と$*(伏せますね)。そして犠牲になった8人の子供の名前は_______(伏せますね)。聞いたことあるろ?(俺らは知ってる名前です。でも言えません、ほんとにごめんなさい)」

M「で、効果はAに言ってたようなものだ。女と子供を取り殺す。それも苦しみぬく形で。何故か徐々に内臓が千切れるんだ、触れるどころか周囲にいるだけでね。そしてその効果を目の当たりにした住民は続けて箱を作ることにした。住民が自分たちのために最初に作った箱はチッポウだった。俺が祓った奴だな。7人の子供の……箱」

M「わずか2週間足らずの間に15人の子供と女1人が殺されたんだよ。今の時代じゃないだろ? ひどいよな……。そして出来上がった箱を△▼の庄屋に上納したんだ。普通に住民からの気持ち、誠意の印という名目で。庄屋の家はひどい有様だったらしい。女子供、血反吐を吐いて苦しみぬいて死んだそうだ」

M「そしてな、住民は△▼のお偉方達、△▼以外の周囲地域にも伝えたそうだ。今後一切部落に関わらないこと、放って置いて欲しいこと。今までの怨みを許すことは出来ないが、放っておいてくれれば何もしないということ。守ってくれるのなら、△▼へ仕事に出ている部落の者も、今後△▼に行くこともしないということ。そしてもしこのことに仕返しをすれば、この呪いを再び振りまくということ。庄屋に送った箱は直ちに部落に返すこと。なぜ放置するのか、その理由は広めないこと。ただ放置することだけを徹底すること。そして……この箱はこれからも作り続けること。既に箱は7つ存在していること」

M「7つあるっていうのは、これはハッタリだったんだろうなと思う。そう思いたい……。言い方は失礼なんだけど、読み書きすら出来なかった当時の住民にこれだけのことが思いつくはずは無いと思うんだが。AAの知恵だったんだろうか。△▼含め、周りの地域は全てこの条件を了承したらしい。この事件はその一時期で周辺に噂としてでも広まったのだろうかな。すぐさま部落への干渉が一切止んだそうだ」
M「で、この部落の大人たちはそれでも作り続けたんだよ、この箱をね。すでにAAはどこかに行ってたらしいんだが、箱の管理の仕方を残していったそうだ。女子供を絶対に近づけないこと。必ず箱は暗く湿った場所に安置すること。そして箱の中身は年を経るごとに次第に弱くなっていくということ。もし必要なくなった、もしくは手に余るようなら○を祭る神社に処理を頼むこと。寺ではダメ、必ず処分は○を祭る神社であること」

M「そして住民たちは13年に渡って箱を作り続けたそうだ。ただ最初の箱以外は、どうしても間引きを行わなければならない時にだけ間引いた子の身体を作り置いておいた箱に入れた、ということらしい」

M「子供たちを殺すとき、大人たちは『△▼を怨め、△▼を憎め』というようなことを言いながら殺したらしい。殺す罪悪感から少しでも逃れたいから△▼に反らそうとしてたんだろうな」

M「箱を作り続けて13年目、16個目の箱が出来上がっていた。イッポウ6つ、ニホウ2つ、ゴホウ5つ、チッポウ3つ。単純に計算しても56人の子供……。作成に失敗した箱もあったという話だからもっと多かったんだろうな」
M「そして、13年目に事件が起きた。その時、全ての箱は1箇所に保管されてたんだが、監視を立ててね。そして事件が起きた」

M「11歳になる一人の男の子が監視の目を盗んで箱を持ち出してしまった。最悪なのがそれがチッポウだったってこと。箱の強さは、イッポウ<ニホウというふうに数が増えれば強くなる。しかも出来上がって間もないチッポウ。箱の外観は分かるよな……Sが楽しく遊んだって言うように非常に子供の興味を引くであろう作りだ。面白そうなおもちゃを手に入れた男の子は家に持ち帰り、その日のうちにその子を含め家中の子供と女が死んだ」

M「住民たちは初めて箱の恐怖を、この武器が油断すれば自分たちにも牙をむくということを改めて痛感した。しかも一度牙をむけば止める間もなく望まぬ死人が出る、確実に。そうして恐怖に恐怖した住民は箱を処分することを決めたそうだ」

M「それからは大体分かるよな。代表者5人が俺の家に来たんだわな。そして俺の先祖に処理を頼んだ。しかし箱の力が強すぎると感じた俺の先祖は、箱の薄め方を提案したんだ。それはJさんの言った通りの方法。そして、決して約束の年数を経ない箱を持ち込まないこと。神社側からは決して部落に接触しないこと。前の管理者が死んだら必ず報告をすること」
M「箱ごとの年数は、恐らく先祖の大方の目安……箱の強さによって110年とか、チッポウなら140年ほど。箱の管理から逃げ出せないようにそのルールを作ったんだ。で、班毎に分かれたあと、一人の代表者を決め、各班にその代表者が届けた。そしてどの箱をどの班に届けたかを俺の神社に伝え、俺の祖先が控えた後……その人は殺された。これでどの箱をどの班がどれだけの年数保管するのかは分からない。そして、班内以外の者同士が箱の話をするのをタブーとしたそうだ」

M「なぜ全体で管理することにしなかったのかは、恐らくだがこれは俺のじいちゃんが言ってたんだが、全体で責任を背負って責任が薄まるよりも少ない人数で負担を大きくすることで逃げられないようにしたんじゃないかな? で、約束の年数を保管した後、持ち込まれた箱を処理したと」

M「じいちゃんの運の悪いところは、約束の年数ってのがじいちゃんと俺のひいじいさんの代にもろ重なってたってことだ。箱ごとの約束の年数っていうのは法則とかさっぱり不明で。他の箱はじいちゃんの代で全部処分できたんだが、チッポウだけはやたら長くて俺の代なんだよなぁ。まだ先だと思って何もやってなかったけど真面目にせにゃ……」
M「これで全部だ。箱に関すること。俺が知ってること。そして、俺が祓ったチッポウは最初に作られたチッポウだってこと」

それと、Mはさっき電話で

「箱の年数はどうやって決めたのかは分からない。俺の先祖が箱について何かしら知ってたのかも知れないし、AAという人物からそういう話があってそうしてくれと頼まれていたのかもしれない」

と言ってました。

以上が昨日の夜の出来事です。
もうね、三文小説のネタにでもなりそうなお話で。現実に箱事件を目の当たりにした俺も何がなにやらで混乱してます。
この事実はまだ最近の出来事です。何人かに話したのですが誰も信じてくれませんでした。
皆さんは2ショットチャットってやったことありますか? 俺はこの前までほぼ毎日のようにしていました。この前までは……。

その娘との出会いは去年の10月下旬〜11月上旬、それぐらいだったと思います。
その時はまだ俺はオープンチャットの方でネットナンパ? のようなことをしていてそのうち2ショットチャットに。そんな感じで毎日欲求を満たしていました。

その娘も同じパターン、そんなふうに思っていました。
でもなぜかその日は悩み相談になりました。たまにはこんな日もいいかな? そんな感じで話を聞いてアドバイスをして時間が過ぎていきました。
悩みもよくある相談で彼氏とのケンカや今後のこと。それに正直、悩みを聞いた後でHな話に、そんな下心もあったのですがなかなか上手く話をHな方に切り替えられず、「そろそろ寝なきゃ」その娘の一言でその日の俺の予定は壊れてしまいました。

(ちぇっ、なんかやな感じ。なんで悩み相談なんだよ)

正直そう思いました。このままで終わり? むかつく! そう思っていた時その娘からレスがありました。

「今日はありがとうございました。もしよかったら明日またここでお話しませんか?」

まさかそんな方向に話がいくとは思いませんでした。今まで「じゃあ次の日」なんてことはなかったからです。

(もしかして気に入られた?)
そう思うとなにやら嬉しさがこみ上げてきました。悲しいことに当時俺は彼女もいないし女に飢えていました。
しかもその娘の住んでると言った所が隣の県。上手くいけばもしかして……そういう思いから俺はその娘の提案を受けました。今日と同じ部屋、一応合言葉を決めて。

「部屋に入ったら合言葉を言おうね」

前に彼女はネットの匿名性から名前を騙られた経験があるらしく、二人だけの合言葉は特に念入りに決めました。そしてその日はお互い部屋を後にしました。

次の日、彼女はちゃんと待ち合わせの時間に部屋にいました。その日は俺はもうHなこととは関係ない話で盛り上がりました。

(今日の快楽より、彼女もち!)

そういう下心でした。幸い(?)彼氏とも上手くいってない、俺になんでも悩みを打ち明けてくれることで次第に親密になっていきました。
何回か待ち合わせをして話をしました。不思議なことに仲良くなるとHな話なんてしたくなくなるものです。
彼女に嫌われないようにしないと。そんな気持ちでいっぱいでした。
その日にあったことをなんでもいいからお互い話しました。もちろんメール交換などもして、楽しいメールももらうことができました。
でもそんなある時、しばらくメールが返ってこない、待ち合わせの部屋になっても彼女が現れない日が続きました。

「嫌われた? なんで?」

俺は落ち込み、なにが悪かったんだ? と考えて過ごしていました。

そしてそんなある日、チャットもしなくなっていた俺のところにメールが来ました。彼女からです。

「お久しぶり、今日いつものとこで待ってます。12時にね♪」

なんだよ! 嫌われてないじゃん! 女の子特有の気まぐれ? そんなふうに俺は捉えてその夜約束の部屋で待っていました。
そして12時過ぎ、彼女が入ってきました。いつもの合言葉、彼女です。間違いありません。

「どうしたの? いきなり連絡が途絶えて」

そう切り出すと彼女は言いました。

「彼氏と別れてさ♪そんで少し落ち込んじゃった。つまりフラレタの!」

チャンス! おもわず思いました。彼氏に振られてそして俺のとこのメールが来て、このまま上手く行けば! それを見抜かれたのか彼女は今まで言わなかった言葉を言いました。

「こんど会おうよ♪」

まさかこんなに話が上手くいくとは、俺は喜んでOKをだしました。

「どこで会う?」

「私の家に来ていいよ」

「一人暮らしじゃないよね?」

「うん。でも私今、足がないんだよぉ」
確かに彼女は免許はないと言っていました。でも、いきなり自宅。
実は彼女は携帯を持っていないので、俺は自宅の番号を教えてもらっていました。
つまり大体は住所が分かるのです。まぁ、自宅にかかけたのは一度だけですが。

「お互い自宅の場所も大体わかるし。じゃあ家の方に行かせてもらうね」

そして細かい打ち合わせをして、会う前の日も俺らはチャットをしていました。

「明日は会えるね」

「うん、楽しみ。いっぱいお話ししよ♪」

そう言って次の日に備えました。
次の日、俺は早めに家を出ました。
少し迷いましたが、彼女の家に時間より少し早めに着くことが出来ました。

「まぁ、早いけどいっか」

ピンポーン。チャイムを鳴らすとお母さんらしき人が出てきました。

「あの、○○と申しますが、◎◎さんはいらっしゃいますか?」

「……どちら様ですか?」

「ああ僕は友達で、今日遊ぶ約束を」

ことのいきさつを話すとその人は俺を家に入れ、ある部屋に案内してくれました。
そして写真が目に入りました。

……彼女の遺影でした。

彼女、もう亡くなってたんです。しかも、かなり前に。

きっとお母さんとチャットしてたんだよ! とここまで読んでくれた方だったら、その連絡が無かった時期にと思うでしょう。でも違うんです。
お母さんの話によると、まだ待ち合わせチャットをしていた時期にもう彼女亡くなってるんで。
そう、お母さんとチャット、確かに俺もまずそれを疑ったし、この話をすると友達はそう言います。
でも俺が彼女と電話したと書いたのを覚えていますか? 明らかに声が違うんです。
お母さんは悪いですけど、病気かなにかでしょうか? 声がかすれかすれなんです。あきらかに声質も違う。
そしてもう一つの事実。
彼女、交通事故で亡くなっていたんです。
その際足も切断されて無くなってしまったらしく、だからあの時

「私。今足無いから……」

あれは交通手段じゃなくて、ほんとに足が……。

ここまでは悲しい話です。真実を知った時はその場で泣きました。でも。

その場にいられなくなった俺は急いで家に帰りました。
しかしさらに理解不能なことが俺を待っていました。

夜に気付いたんですけど、メールが来てたんです。彼女から。
しかも、お母さんと話をしていたちょうどその時、その時間。
あの時、家には俺と彼女のお母さんしかいなかったかはずなのに。しかも俺の特徴とか書いてあって

「今日は来てくれてありがとう。大きな車に乗ってるんだね。その髪の毛は染めたの? 私も染めたいなぁ。なんで今日はすぐ帰っちゃったの? 今度は私がそっち行っていい? 迎えに来てくれるとうれしいなぁ。一緒に行きたいところがあるんだ♪」

急いで削除したんですけど、また何日か置いて何度もメールが来ます。
俺はヤバイと思い、結局アドレスを変えました。多少お金はかかりましたが。
毎回メールに「一緒に行きたい所がある」って書いてあったからあまりに怖くて……。

アドレスを変えてから彼女からのメールはぴたりと止みました。
今のところこれ以上のことはありませんが、今でも新着メールを見る時は怖いですね。
新しく小学1年生になった怜奈。
怜奈のクラスは2組。そして今2組で流行っている遊びがある。

スゴロクだった。
怜奈のクラスの生徒は先生に紙を貰い、定規と鉛筆を使ってスゴロクを作る。
怜奈も作っては新しい友達と遊ぶという毎日を過ごしていた。

そんなある日。
怜奈のクラスでスゴロクをする人がいなくなった。
怜奈は友達にその理由を聞いたが教えてくれなかった。
怜奈は無理に友達に頼み込むと、友達はゆっくり口を開いた。

「スゴロクって、呪われた遊びなんだって」

怜奈には意味が分からなくて、疑問だけが浮かび上がった。

「なんで、呪われてる遊びなの?」

「あのね……」

怜奈は凍りついた。
今までしてた遊びにそんな意味があったなんて。怜奈の頭の中はゴチャゴチャになった。

スゴロクの本当の意味はこういうものだった。
スタートは生まれるということを意味し、ゴールは死ぬということを意味し、スタートに戻るとは1回死に、生まれ変わるということを意味する。そして駒は人間の誰かを意味する。
要するに、上がった時点で人間が1人死んでいるのだ。
皆は頑張ってゴールに向かわせ上がろうとするだろう。それは簡単に言えば「殺人」である。
自分は殺すという快楽を味わい、選ばれた人間には恐怖を味あわせる。スゴロクとはそういうゲーム。

そして、怜奈は事故に遭った。
だが運よく一命を取りとめた。怜奈は思った。

(そろそろ……上がるんだな)

そして5日後、怜奈は上がった。クラスの中で誰よりも早く上がることが出来た。

スゴロク。貴方は一度はやったことがあるだろう。
貴方はスゴロクの駒に選ばれた? 駒に選ばれた貴方はスゴロクを上がれそう? 貴方はスゴロクの駒に見知らぬ人を選び、貴方は見知らぬ人にスゴロクの駒に選ばれる。
5〜6年前の初夏の事です。駆け出しのアレンジャーがいました。仮に名前をAとします。
Aはその日、都内の某スタジオでレコーディングをしていました。
そのスタジオは1階がロビー、受付、守衛室、駐車場。2階はA〜Cスタジオという風に3つのブースに分かれていて、その日は2階のBスタジオでの作業となっていました。

アーティストとその関係者は既に帰った後で、BスタジオにはAとエンジニア、そしてアシスタントの3名のみです。
時刻は深夜3:00を過ぎようとしていました。コーヒーの飲み過ぎか腹の具合が悪くなったAは作業を中断してトイレに行くことにしました。

「ごめん、ちょっと……」

二人を部屋に残してAは廊下に出ました。
スタジオの中は冷房と除湿が効いていますが、季節がら廊下は湿気を含んだぬめっとした空気に包まれていました。
廊下を曲がり、暗くなったAスタとCスタを過ぎて突き当たりまで来たところで、普段なら常に電気がついているはずのトイレの蛍光灯が消えていることに気づきました。
明かりといえば階下から洩れてくるロビーの明かりと非常灯のみです。

(誰か消しちゃったんだな、ここまで消えてると流石に怖いな)
そう思いつつAは蛍光灯のスイッチを入れました。

ブゥン……

微かな音を立てて蛍光灯がつきます。
そしてトイレに足を踏み入れた途端、Aは自らの異常に気づきました。
全身の毛が逆立っているのです。とともに悪寒が身体を包み込みます。
空気も肩にのしかかるように重く淀んでいる気がしました。

しかし、Aは自分の肉体が発している警告を信じる事が出来ませんでした。
もともと霊感も無く休憩時間に前述の二人とスタジオにまつわる怪談話をしたせいもあり、怖じ気付いてるだけだと思ってしまったのです。
何より下腹部の事情も事情です。思い直して奥の一つしかない大便所へ足を運びました。

ガチャッ

「あれっ……」

鍵がかかっています。
ちょっと間をおいてコン、コン、とノックが2回返って来ました。全身の血の気が引いていきます。

(真っ暗なトイレでこいつ何やってたんだ?)

なによりAは知っていました。他のスタジオで仕事をしていた人達は12:00過ぎにはみんな帰ってしまっていた事を。1階に残っていた守衛達は1階のトイレを使う事を。

「だ、誰!?」
思わず声が出てしまい入り口の洗面台まで後ずさった瞬間、そのドアがゆっくりと開きました……。
ドアノブを支える手が見えました。日に焼けて無い真っ白な手です。
次に顔が半分ぬぅっと覗きました。男の顔、目はじっとこちらを見据えていました。
何の表情も読み取れない人形のようなその顔は、蛍光灯に照らされてさらに青白く血管までが透けて見えそうな程です。
しかしAが感じた違和感はそこではありませんでした。

「か、顔の……位置が……」

その男の顔は半開きになったドアに伸びた手のずっと下、床のすぐ上にあり、ほんの少し首を傾げた形でまるで床に置いた生首のように見えました。
顔の覗く位置が明らかに人間のそれとは違っていたのです。

「ギャアアアァーーーッ!!!!!」

弾かれたようにAは駆け出しました。無我夢中で転げながらスタジオに戻ると二人を呼び顛末を話しました。
声を聞いて慌ててやって来た守衛達も連れて恐る恐るトイレに戻ってみると、その男の姿は既に霧のように消えてしまっていました。

その後Aが守衛に聞いたところ、スタジオの出入りの人数は(盗難防止の為)厳しくチェックされており、確かにその日はBスタの3人と守衛2人しか構内に残っておらず、その時間2階のトイレに入っていた者は皆無との事でした。
念の為全スタジオ内を捜索しましたがやはり他に誰も残ってはいませんでした。
「……以前からここはよくでるらしいんです。なんてったってこれですから」

トイレに戻った時に守衛の一人がそう言って、洗面台の脇にある窓を開けました。
スタジオの裏手にある小山が眼前に迫り、まばらに竹が生えている急斜面が上に続いていました。
見上げると上の方に無数の石碑のような……Aはぞっとしました。

「ほらこっち墓場でしょ? 降りて来てここに溜まるらしいんですよ」

実は俺の体験なんですけどね。あれ以来霊の存在を信じざるを得なくなっちゃいました。
ちょこっとだけ設定は変えてありますが実話です。長々とすみません。
今も継続中なんですが、ある女性の霊に纏わりつかれています。
お祓いもしてもらいましたが全く無意味でした。
霊に憑かれたいきさつを今から書きますが、誰かいい方法があれば教えてください。

僕は小さい時から空手をやっていて、21になった今でも続けていて試合にも出ていた。
去年の4月、試合が終わった帰り際に一人の女性に話しかけられた。

「すごい派手な試合しますね〜。面白かったです」

身長も体型も平均的な、ちょっと今時の感じの同年代くらいの女の子。
こっちは必死でやっているのに「面白かった」という言葉に少しムッとしたものの、「そうですか。どうも」と言って少し話をした。
それからというもの、その子はどこで知ったのか僕の出る試合にはいつも観戦しに来るようになった。

去年の10月頃、ある大会で優勝することができた。
その子(以後Kとする)もやはり見に来ていた。
表彰式も終わって色々な方に挨拶もして帰ろうと思った頃、Kがまた駐車場のところで待っていた。

「おめでとう! かっこよかったよ!」

と興奮気味に話しかけてきた(すでにタメ口)。
「あぁこの前の。ありがとう」

と僕も返す。少し話して

「お祝いがてらご飯でもいかない? なんか用事あるかな?」

と聞かれたが、

「ゴメン。いつも嫌がって見に来ないんだけど、彼女いるから」

と断った。その子はそうなんだと残念そうに言ったが、こう続けてきた。

「その子の事は、本気で好きなの?」

そう言われて、また少しムッとした。
そりゃ仕事柄(クラブのバーテンダー)ちょっと派手な髪してて遊んでる風に見られることもしばしばある。
だけどほとんど面識のない女の子にいきなりそんなことを言われるのは心外だ。
僕は気を悪くしつつも「そりゃ本気で好きだよ。だからゴメン」と返した。

するとその子は「じゃあ電話番号とかメアドもダメ?」と言ってきた。
客足を増やしたかった僕は店の名刺を渡し「街によくビラ貼ってあるし、興味のあるイベントがあれば連絡して」と言ってその子と別れた。それが間違だった。

それからKから毎日のように電話がかかってくるようになった。
店にも毎週末来るようになった。どんなジャンルの音楽の時でも。
店に来て踊るわけでもなくカウンターで僕が酒を作るのをじっと見ているだけ。正直僕は居心地が悪かった。

そしていつも電話や店で聞かれるのが「彼女とはどう?」だった。
ある日、僕の家で彼女と居る時にKから電話がかかってきた。

「今、○君(僕の名前)のマンションの下にいるんだけど、今日泊めてくれない?」

と言われ、僕は当然「は!?」と言った。彼女は僕の家なんか知らないはずだ。
彼女も不穏な顔で見ている。何で家を知ってるのか、と聞くと

「この辺りで友人とケンカして車を下ろされた。でトボトボ歩いていると○君の乗っている車があった。ナンバーも一致している」

と言う。僕はその時ようやくこの子はちょっとおかしいと思い始めた。

「普通に無理。しかも今彼女いるから。アシがないなら家まで送る」

と言った。それを聞いていた彼女が誰? と聞いてきたので、僕は「ほらいつも店に来るって言ってたあの子」と小声で返した。
毎日電話がかかってくることも彼女には普段から話していた。
束縛も全然しないし僕が浮気しないことも十分悟っている彼女もさすがに動揺し、切ってと合図を出す。

「ゴメン待っててくれる? 掛け直す」

と言い電話を切った。
彼女はどうなってんの? と不機嫌そうに聞いてくる。僕は全部話した。
それを聞いて、

「その子おかしいんじゃないの? あたしが下行って話してくる」

と言い、僕の静止も振り切りマンションの下に降りていった。
彼女はお嬢様な育ちの娘さんだったが、痴漢やストーカー対策の為に僕が空手を教えだしてからめきめき上達して多少気も強くなった。しかしここまでとは。
僕も遅れて下に降りた。彼女とKが話していた。

「どういうこと? 彼女居るって聞いたんでしょ?」

「いや、帰れなかったんで……いないと思ったし」

「いないければいいってもんじゃないでしょ。泊めてとか」

「○君優しいから、いいかなっと思って」

「いいわけないでしょ! おかしいんじゃないの?」

彼女が切れた。その後色々言われて、Kは半泣きで「ごめんなさぃ」と言った。
彼女が僕と一緒に車で家まで送ると言ったが、彼女は「親に迎えに来てもらいます。ごめんなさい」と言って歩いていった。
ここからかな、雲行きが怪しくなっていった。
それから1週間位した頃、彼女から仕事中に電話がかかってきた。

「いつもなら仕事中に電話なんてかかって来ないのに、何かあったのかな」

と思い電話に出た。彼女は

「腕切られた……。血が止まんないから救急車呼んで病院にいる」

僕は仕事が終わってすぐに病院に行った。
彼女は手首の5センチくらい下から肘にかけて7〜8センチくらい切られていた。

「誰にやられた!」

と聞くと、泣きそうな声で160センチくらいの女、と。
Kだと確信した。僕はその時多分鬼のような顔をしていたと思う。
すぐに電話してKのところに行って、会った。

「どうしたの?」

と何もなかったように言うK。

「俺の彼女の腕切りつけたの、お前だな」

というと、Kは知らないと言った。
しかし「嘘つくな。調べれば分かるぞ」と言い睨んだら、「だって……」と言って黙った。やっぱりKがやっていた。

「だってあの子むかついたから」

僕は呆れた。

「むかついたから? そんなことで人切りつけんのか!」

と怒鳴った。するとKは

「あたし○君のこと好きなの。だから嫉妬で頭混乱しちゃって」

「ふざけんな! お前頭おかしいんじゃないのか!」

僕も怒りで乱暴な口調になっていた。するとKは驚く事に

「あの子と別れてあたしと付き合って」

と言い出した。僕はまた呆れた。そして
「なんなんだお前。もう俺にもあいつの前にも姿現すな。警察には言わないでおいてやるけど、次変な行動したらただじゃおかないからな」

そう言って去ろうとすると、泣きながらKが

「あたしの事嫌い?」

と聞いてきた。僕は振り向かずに「気持ち悪い。顔も見たくない」と言ってその場を去った。

その2日後、Kは自殺した。

僕はその翌日、Kとよく一緒に来ていた友達からその話を聞いた。
Kは自分の部屋で眠剤やクラブで仕入れたであろうドラッグを大量にチャンポンして服用して死んでいた。Kの部屋は無茶苦茶に荒れ果てていたらしい。

Kの死を聞いた翌日、変な夢を見た。
KとSEXをしている夢だ。Kは気持ち悪いぐらい満足そうな恍惚な顔をしていた。
するといきなり目の前が暗くなって「死ぬってSEXより気持ちいいよ」と聞こえた。

そこで目が覚めた。僕は我ながら「なんて夢見てんだよ。俺はアホか」と思ってうなだれた。
目が覚めたのは仕事より6時間も前。再び寝ようと思ったが寝つけなかったのでしばらく部屋のサンドバックを叩いていた。
すると、トイレからゴボゴボゴボッ! と激しい水音が聞こえ、次の瞬間バァン! と凄まじい音が玄関のドアから聞こえた。
不思議に思って玄関のドアを開くが、誰もいない。
ドアには大男が殴ったかハンマーで叩いたような跡があった。
怪訝に思ってマンションの下まで降りた。しかしそれらしき人はいない。

「誰かに恨みを買うようなマネしたか……Kの友達?」

と考えつつ部屋に戻ろうとした。が、ドアが開かない。というよりドアノブが強い力で押さえられている。
力には相当自信があるがびくともしない。

「誰だ! 開けろよ!」

と怒鳴った。すると力がふっと抜けてドアが開くようになった。警戒しながら玄関に入る。

(どんな奴だよ。見つけたとしても勝てんのか?)

空手のみならず格闘術全般にかなりの自信はあったが、それでも不安があった。
とりあえず部屋を見渡し、トイレ、風呂、ベランダを調べた。
1ルームマンションだ。もう隠れるところなんてない。
ベランダから逃げたのか? そう思い部屋に戻ると、サンドバッグがグラグラ揺れている。
なんで揺れてる? と思った瞬間、急に強烈な吐き気と立ちくらみがして膝をついてしまった。
前を見ると揺れるサンドバックから異様な程の埃が舞っている。加えて頭痛もひどくなり、意識を保つのも困難だ。
(なんだこれ、やばい。今さっきの奴が来たら)

と思い、玄関に鍵を閉めに這っていった。
玄関にはKがいた。キャミソールのような下着姿だった。
Kは僕を見下ろしている。とても冷たい目だった。
僕はゾッとしながらも、なんだよ……幻覚か? と無視して玄関の鍵を閉めようとした。
すると力がふっと抜け、玄関に仰向けに倒れてしまった。
Kが僕に顔を近づけてくる。

「動け! クソ! 体動け!」

と必死に意識を保ち体を動かそうとするが動かない。
Kの手が僕の顔を撫でる。しばらく撫でられ、次は顔に顔を近づけてくる。顔中、そして首を舐め回す。
認めたくないが、全身の力が抜けてもうどうでもよくなってしまいそうな感覚になってしまう。
何を考えたのか、顔を舐めているKと目が合った僕は

「……なんか言えよ」

と言った。Kは少し笑って行為を続けた。

(やばい。このままじゃやばい)

と思って体中の力を振り絞って

「ああああああああああ!!」

と吼えながら僕は上体を起こした。
Kの姿は消えていた。体も言う事を聞いてくれた。
意気消沈しドアにもたれ崩れる。するとドアの向こうから

「ムカつく」

と言う声がはっきり聞こえた。
なんなんだよもう! と思いながらドアを開けたが誰もいない。

これが1月頃の話。これから一か月くらいは地獄だった。
「分かりました」

次の日、彼女にこんな事話して不安にさせるわけにもいかないので一番信頼できる人、彼女の父親(オーナー)にこの事を話した。

「夢じゃないのか?」

僕は「あれは夢じゃないですね」と言った。
オーナーは「んーー」と困った顔をしていた。
それを見て「まぁ、もう大丈夫だと思いますよ。うん。大丈夫です」と話を終わりにした。

それから5日後、休日だった僕は深夜に走りに出かけた。
10キロくらい軽く走ってそろそろ折り返そうかと思っていると、急に背中を蹴られたような衝撃が走って前のめりに手をついた。
誰だ? と思って後ろを振り返っても誰もいない。というか人気のないところだ。誰もいるはずがない。
疑問に思って前を見ると、10メートルくらい先に小柄な男が立っていた。
こいつじゃないよな? と思いつつもここを早く離れようと思いその男に声をかけた。
「あの、なんか変な男がこの辺りいるみたいなんで早く離れましょう」

反応がない。心なしか少し揺れている。

「あの……」

と近寄ると、その男はドラッグでキまったような顔をしていた。
片目がほとんど閉じて片目が半開きで白目を向いている。さすがにギョッとした。
僕はそのままその男の横を通りすぎて走った。その瞬間急に左腕をとんでもない力で握られた。振り向くとさっきの男がいる。ものすごく痛い。腕が握りつぶされそうだった。

「なんだよ……離してください!」

男は反応がない。表情も変わらない。
僕はやむを得ずその男の脇腹に蹴りを入れた。

男はぎぁぁぁぁぁぁ!! と叫んで脇腹を押さえて倒れ、足を狂ったようにバタバタさせている。
まずいと思い、すいません! 大丈夫ですか? と近づくと、また強烈な力で左腕の同じ箇所を握りつけてくる。
僕はびっくりしたと同時にその男を右手で殴りつけた。
男は言葉にならないような叫び声をあげ倒れる。

「なんなんだよもう!」

猛スピードで走って逃げた。気がおかしくなりそうだった。
腕を掴んできた男から逃げてマンションにようやく戻ってきた。
部屋に戻り「クソ……」と言いながらベッドに倒れこむ。
気を紛らわそうと思って彼女に電話する。幸いまだ起きていたのでしばらく話した。
話していると、またトイレからゴボゴボゴボッと音がしてドアを強烈な力で叩く音がした。

「何の音?」

彼女が驚いている。

「……変な奴がいるのかも。ゴメンまた後で掛け直すから」

「ちょっとやだ危ないって! 鍵かけて部屋でいなよ!」

彼女は言うが、大丈夫と言って切った。もちろん大丈夫じゃない。
でも鍵をかけて部屋にいればなんとかなるもんじゃないか、と思った。

僕は玄関に向かい、ドアを開けずに言った。

「Kちゃんか?」

返事はない。構わず続けた。
「やっぱ俺を恨んでんのか」

やっぱり返事はない。急にまた気分が強烈に悪くなる。立っているのも辛い。

「話できないのか? 前みたいな行動だけじゃ何がしたいのかわかんねぇよ」

返事はないが、続ける。しかしもう立っていられない。

「俺を殺したいのか」

もう目を開くのもやっとだ。

「俺は死ねない、俺死ねない……」

意識を保ちながら、何度も言った。
すると、Kの顔(ちょっとおかしかった)だけがぱっと目の前に現れ目を見開き、「なんで」とはっきり強めに言った。
心臓が止まるかと思った。俺は絶叫しそうになった。

「……っっ!」

だが絶叫を堪えてKから目をそらさなかった。
5秒くらい睨み合った後、Kの顔がふっと消えた。最後に恐ろしい形相をして。

体に力が入った。だんだん気分も良くなり立ち上がって

「色々やんなきゃなんねぇ事があるからだよ!」

とドアに怒鳴った。完全に気が滅入っていた。

彼女に電話をして、大丈夫だった? と泣きそうな声の彼女に「あぁ、酔っ払いだった」と返すと「よかった〜」と安心した声を漏らした。
内心、全然良くねぇよと思いながら「心配しすぎだって〜」と返した。
その夜、またKとSEXする夢を見た。 
前と同じ、気持ち悪いくらいの満足そうな恍惚な顔をしている。
今度は目の前が暗くならずに「死ぬって気持ちいいんだって」と言われた。
その後また目の前が暗くなって、好きという声が聞こえた。
そして目が覚めた。うるせぇよと言葉が漏れた。恐怖と怒りで胸くそが悪かった。

とりあえずKの怨念は洒落にならないと思ったので、僕はクラブ関係者で霊に詳しい人に話を聞いて貰った。その人はKを知っている。

「あ〜あの子完全に○君にベタボレだったもんねぇ」

と言った。そして今まであった奇妙な体験、夢の話まで全て話した結果、お祓いしようということになった。
お祓いとは結構凄いもので、かなり効果はあるらしい。
僕はすぐ紹介された神社でお祓いしてもらった。神主さんに

「なにか霊に最後に言いたいことはないか」

と聞かれて、僕は「すまない」とだけ伝えて欲しいと頼んだ。
成仏したと神主さんに告げられ安心した僕は、その晩家に帰って彼女とゆっくりしていた。
でも心の何処かでKに対する罪悪感もあったのかもしれない。
それがいけなかったのか、結局Kは成仏していなかった。

彼女が突然「痛い! なにすんの!?」と叫んだ。
僕は何もしていない。

「今針かなんか背中に刺したでしょ!」

と怒っている。

「なんのことだよ? どこ?」

背中をみた。背中に押しピンが刺さっていた。
家着のトレーナーごしだったのでそれほど深くは刺さっていないようだ。
次に彼女は、

「なんか吐きそう……気分悪い」

と言い出した。
まさかと思い僕は立ちあがろうとした。が、足に力が入らない。そういえば僕も気分が悪い。
次の瞬間、ドアを殴りつける轟音がバァン! バァン! バァン! と何回も聞こえ出した。
トイレからはボコボコボコボコッ! という水が沸騰するような音も聞こえた。

「成仏してねぇじゃねぇかよ!」

「うぅ……なんのこと?」

僕はKが来たと確信した。二人とも立つ事もできない。
しばらくして彼女が、きゃぁぁぁぁぁ! と激しい悲鳴をあげ、布団をかぶりうずくまり、ベランダ! ベランダ! と叫んだ。
ベランダを見ると窓にべったり貼りついた人影が見えている(曇りガラスだった)。
Kか!? と思ったがシルエットは男のようだ。ピクリとも動かない。

次にまた彼女が悲鳴をあげた。
何これぇぇ! いやぁぁ! と布団の中でじたばたしている。
なんなの! なんなのぉ〜〜〜! と言い彼女は吐き出してしまった。
たまりかねた僕は彼女を抱きしめ「大丈夫だ。大丈夫。守ってやるから」と言った。
僕は恐怖より怒りが沸いてきて「いい加減にしろ」と言葉が漏れ、なんとか体を自由にしようと体に力を込め気持ちを落ち着かせた。

体が動く。と同時にベランダの影が消えた。
彼女に「落ちつけよ」と言い残し玄関に走った。
そしてドア越しに外に向かって叫んだ。

「ふざけんな! 消えろ! 誰がお前のもんになるか! 消えろ!」
「地獄に落ちろK! つーか地獄に落としてやっからな!」

僕は狂ったように叫んだ。その後彼女の方を振り返ると、うずくまっている彼女を真横で四つん這いになって見ているKがいた。

やばいと思い彼女の方に向かおうとした。
その時、ドアの方から手が伸びてきて僕の服を掴んだ。
そこで僕はその手を骨が折れるくらいに捻り曲げた。
すると、ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! という嫌な叫び声が聞こえ、彼女の横にいたKがものすごい形相でこっちに向かってきた。

「なんだよ! 来いよ! ぶっ殺してやる!」

と叫んで迎え撃とうとした。
しかしその瞬間目の前が真っ白になり、視界が回復すると目玉がおぞましい模様になったKがまさに目の前にいて僕に抱きついた。
そして僕の耳元で何かささやき(聞こえなかった)そして消えた。

彼女はずっと泣いていた。僕も怒りと恐怖と悔しさで何年ぶりかの涙を流して、拳から血が出るまでトイレのドアを殴りつづけた。
その日はもう何も起こらなかった。

二人とも落ちついた後、僕は彼女にKの怨霊が何回か出た事を告げ、もうお前はこの部屋に来るなと言った。
彼女は「この部屋を引き払おう。出よう」と提案したが、僕は断った。
56 無名さん
「ふざけんなよ。誰が逃げるか」

半ば意地になっていた。それに何処に逃げてもKは追ってくる事を確信していた。

次の日、朝一番に神主に成仏していないと言いに行った。ひとしきり謝られた後、一つおいて神主に

「君はもう助からないかもしれない」

と言われた。
その日から3週間くらいは毎日Kが部屋に来た。昼夜問わず。
抵抗できる時は抵抗したが、完全に体の自由が聞かない時は顔中や首を舐めまわされたり首をしめるマネをされたりした。

一度あきらめた時があった。もう無理だろうと死を覚悟した。

「……わかったよ。もう殺せよ」

言ってしまった。
Kは俺の頬を撫でながら「フフ。楽しい」と言いながら立ち上がり、ドアの方に歩いて行き消えた。

2月始めくらいから、Kが出ることは頻繁には無くなった。
出てもたまに姿が見えるくらいで何もされない。
KとSEXする夢は良く見る。最後は「死の気持ち良さ」を呟かれて終わる。

Kが彼女を殺している夢も見た。
俺が、それだけはやめてくれと叫ぶとKは狂ったように笑う。
その後男の声で「溶ける〜溶ける〜」と言うのが聞こえた。
目が覚めると大量の涙を流していた。
57 削除済
3月始め、Kの友達(Mとする)が狂った。
うちのクラブで男がMを抱えてソファーに連れて行った。
カウンターからは見えないが、凄まじい奇声を発している。

カウンターを下の子に任せて様子を見に行くと、目が飛び出しそうになるほど開いたMが叫んでいる。
その男に、タマ食ったか? と聞くと「多分、幻覚のひどいやつらしいっす。新種らしくて」と男が言った。
Mは

「ぎゃぁぁっぁ! 助けてください! もう嫌だァァァァァ!」

と叫び、たまに

「K〜K〜ごめん〜K許して〜」

と言った直後、ごぉぉぉぁぁぁぁぁと低い叫びをあげ泡を吹いて気絶した。
僕が、おいM! M! と水をかけたり頬を叩くと、いきなり目を飛び出すほど見開く。そしてまた叫ぶ。

「殺される! こ〜〜〜ろ〜〜さ〜〜〜れ〜〜〜る〜〜〜! 許してください〜〜」

おいM! 俺が分かるか! と言っても反応がない。

「だめっす。多分○君も見えてないです」

と男が言う。救急車はまずいので暴れるMを抱えスタッフに車で病院に運ばせた。
その3時間後、点滴で抗生剤を打ち一旦は落ち着いたかに見えたMだったが、病院を脱走しビルから飛び降りて死んだ。
僕は営業停止を覚悟した。しかしMから検出されたのは合法の眠剤だけだった。
眠剤だけではあそこまではならないはずだ。Kが何か関係あるのかは分からなかった。
僕は帰って、いるか分からないKに話しかけた。

「今日Mが死んだよ。一応友達だったんだろう。あいつはちゃんと成仏するかな」

と言って風呂に入り眠ろうとした。その時ベランダから「カカカ」という老人のような低い笑い声が聞こえた。

その日、知らない男女がMの死体を食ってる夢を見た。
Kがいつもの下着姿で体育座りをして死んだような目をして眺めている。
そしていきなりこっちを振り向いた。1月に見たおぞましい模様の目をしていた。
口は不気味な形に歪んでいる。最後に「こういう子は楽なのよねぇ」と言っていた。
どういう意味なんだろう。楽に殺せると言う事か。

3月からか、Kの原型が次第に変わってきた。
4月から僕の前に現れる時は目玉がおぞましい模様の時が増えたし、今となっては髪の毛が若干抜け落ちている事がある。

以上が僕が霊に憑かれたいきさつです。
塩を置いてもお札を貼っても全く効果はありませんでした。
出雲神社には4月にお祓いをお願いしに行きました。
確かにKが現れる頻度は落ちていましたが「怨霊がついている風には感じない」と言われました。
一応お祓いはして貰いましたが、まだKは部屋にも部屋以外にも現れます。

誰かいい方法があれば教えてください。

<後日談(?)>

木曜の深夜、来た。
Kはもうほとんど原型がないくらい気持ちの悪い姿になっていた。
あそこまで変体しているのは初めてで、僕は吐いてしまった。精神には自信があるつもりだったが。

先程、小柄な男と会った。近づかないようにしていた最初に遭遇した場所に何度も足を運んだ。
男は壁際にふらふらと立っていた。こっちに気づいているのかどうかは分からない。
もう男の顔は何度も見ている。間違いない。
実体はある。相当な力だけどなんとかなるかもしれない。近づく。
「お前は誰なんだ。お前に覚えは無いぞ」

うつろな顔に話しかける。

「〜〜〜〜〜(聞こえなかった)だよ」

と言うや否や襲い掛かってきた。多少虚をつかれはしたが左足で制止し右足で顎をはねあげる。
人間冷静になると恐ろしい。悲鳴を上げて男は転げまわる。
僕は男の首を掴み、お前は人間か? と訪ねた。

「ぎぃぃぃ、ぎぃぃぃ」

と言って暴れようとする。凄い力。浮かされそうだ。
たまりかねた僕は男の左肩を潰し、力が抜けたところを左腕を間接と逆方向にへし折った。
けたたましい声が響き渡る。さすがにこんなところでも人が来るかもしれない。
また首を強く締め上げた。泡を吹いて、もの凄い形相で僕を睨みつけている。

「人間かどうかはもうどうでもいいか。殺してやる」

殺す気は無かった。不意に僕の服の裾が引っ張られた。
知らない子供がいた。目がKと同じ模様だ。
男が何かしゃべった。向きなおすと、男もKと同じ模様の目だ。
唇や舌をひたすら噛んで血が出ている。右手が変な動きをしてた。
子供は何かを食べている。黒いもの。

「お前らはなんなんだ……」
と言うと、子供は走り去った。
男の顔が歪む。吐き気がするほど醜い。
下を見ると失禁している。首を持つ手を離してしまった。
しかし襲い掛からず男は何か言っている。
顎と舌がボロボロなんで良く聞こえないが、一部確かに「俺らには関係ないのに」と聞こえた。

「そうか……悪かったな」

と僕が言うと、男はゆっくりと立ち去ろうとした。

「Kはどうなってるんだ」

と聞いたが答えは返ってこない。そして男はどこかへ消えた。
私はひきこもり3年生です。ちょっと前の話になりますが、私にはひきこもり仲間が一人いました。
ICQチャットというところで毎日くだらない話をする中の友達でした。

春ぐらいのことでした。突然そいつから連絡が取れなくなりました。
でもICQはオンライン状態なので、私は何度か返事を送りましたが相変わらず反応がない。それが一月ほど過ぎたある日のことです。

警察から連絡があり、私は警察署へ行きました。
MXがばれたのか……とか、かなり不安な気持ちだったことを覚えています。しかしぜんぜん違う話でした。大体こんな話です。
その一月の間、そのICQで連絡が取れない相手のことでした。

なんでも、そいつのマンションの住人から「変な匂いがする」との通報があり警察が駆けつけたそうです。
警察がかけつけ管理人にドアを開けてもらうと、その部屋はパソコンのモニターのみがついていて真っ暗な状態だったそうです。
中に足を踏み入れるとパソコンの前に目玉をくりぬかれた人間の首があったそうです。
周りには食い散らかされたように人間の腕や足があったそうです。

私は呆然と家に帰りました。
死んでいた人間にICQで連絡を取ろうとしていたなんて。そんなことを考えながらログを確認していたところ、そいつからのメッセージが入っていたようでした。


ツギハオマエダ
そのメッセージはそいつが死んだ日から3日ほど後に届いていました。
怖くなった私は今住んでいるマンションを変え現在にいたります。
あいつには俺の住所とかばらしてないし、住んでいる場所も変えた。問題ないはずです。
IPを抜かれて住所などを調べられて、もしかしたら……そんなことを考えていると眠れません。

ふと窓を見ると、カーテンとカーテンの間からこちらをにらみつける目が。なんて、幻想まで見えてくる始末です。寝れん!
警察もいまだ何もわかってないようです。TVでも何も聞かないし。
なんでもそいつはひきこもりで、外部とまったく接触がなく発見が遅れたためだいぶ難航しているとか、そんなことを警察の人は言っていかのfけw;llllllllll
ったえったったすけええええええええええええええええええええ


ツギハオマエダ
ドアノブという単語を見て嫌な体験を思い出した。
キーボードを叩く手がなんか変な感じがする。生唾を飲み込む音が頭の中に響く。タバコに火をつけた。
少し今迷ったが書いてみようと思う。つたない文章だけど興味のある人は読んで欲しい。

以前、ある地方のあるアパートに住んでいたことがある。
霊感とかは自分では全く無いと思うし、幽霊とか見た事は無かった。
自分の住んでいた部屋は6畳と4畳半の2部屋という間取りで、一階の端の部屋。
それまではホントに何も無く普通に暮らしてた。でもある日から突然おかしい事が起きはじめた。

奇妙な音。4畳半の部屋で寝ていると6畳の部屋で誰かががボソボソしゃべっているような音。

最初は気にしなかった、というより気味が悪くて考えないようにしてた。
電気もつけっぱなしで寝るようになった。
でもそれが一週間、十日と続いてくると流石に気が参ってしまった。ノイローゼになりそうだった。

それから仕事先から家には帰らず、同僚や上司の家に泊まり歩く日が続いた。
人には話せなかった。根性なし、度胸なしと言われるのが恥ずかしかったから。
5日ぐらい帰らなかった。でも流石に訳を隠して人の家に泊まり続けるのもそろそろ限界だった。
で、思い切って一人の同僚に訳を話した。不思議とすんなり信じてくれた。
たぶん、自分に気を使ってくれたのだと思う。マジメにノイローゼ寸前だったから。
次の日は休日だったし、同僚も一緒に自分の家に来てくれる事になった。
同僚がドアを開けようとした。普通に中に入ろうとドアノブを廻しんだと思う。
その瞬間、同僚がふっと立ち止まった。

「今、向こうでノブ、誰か廻したぞ……」

鳥肌が立った。同僚も身じろぎ一つせず立ちすくんでいる。

同僚が小さな悲鳴のような声を上げ、バッ、とノブから手を離した。自分達が見たものは独りでにガチャガチャ言うドアノブ。
明らかにドアの向こうには誰かが居て、自分達が部屋に入る事を拒んでいるような感じだった。
同僚と自分は怖くなりそこを駆け足で逃げ出した。

しかし冷静に考えるともしかすると誰か中にいたんじゃないか……そんなことも思い、思い切って同僚と警察に行った。

「何者かが部屋の中にいるようなんです」

と言うとお巡りさんが2人、一緒に来てくれた。連絡も受けて管理人さんも来てくれる事になった。

お巡りさんと一緒に自分の家まで行った。お巡りさんは「中を見てきますので」と言うと家の中に入っていった。鍵は開けたままだった。
そしてお巡りさんに部屋の中に入るよう言われて部屋に入った。
盗まれたものは何か無いか? 荒らされてはいないか? 等の質問をされたが部屋の様子は以前と変わらなかった。
お巡りさんは、近頃この辺も物騒だからもし何かあったらかまわずに通報してくれと言い残すと帰っていった。
それから少し遅れて管理人さんがやって来た。
自分は単刀直入に聞いた。この部屋で以前何か無かったのか? と。そして自分の体験した事を全て話した。
しかし管理人さんは何も思いつかないと言う。
こういう仕事をしてればそういう怪談めいた話は聞くこともあるが、自分が見ているところにはそういう因縁めいた所は一つも無いと言う。

私と同僚と管理人さんの3人で部屋の前の廊下でそんな話をしていると、またドアノブがガチャガチャ言い始めた。

気が狂いそうになった。
そのあと自分はすぐ引っ越した。業者に全部頼み自分は引越しには立ち会ったが、部屋には一歩も入らなかった。
管理人さんに挨拶に行くと、お払いを頼んだよと言っていた。

同僚は今でもドアノブをつかむ事に何ともいえない恐怖を感じるそうだ。
自分も今になるとだいぶ落ち着いたと思う。けれどいまだにドアノブを見る事が怖い。
ココにこうして書き込む事によって自分の恐怖心は薄れるかと思ったが、鮮明に思い出してしまい心臓が今でも高鳴っている。
あれはかなり昔、自分が4歳ぐらいのころ。
明け方4時ぐらいの出来事。明け方といってもまだ全然真っ暗で、周りはぼんやりとしか見えない。

ふと気づくと、俺はベッドの上に立たされて母親に怒られていた。

「なんであんなことしたのっ!」

っと怒られているんだが、自分が何をしたのかさっぱりわからない。そりゃそうだ。今起きたばっかりなんだから。
自分が何をしたのか聞きたいのだが、相手は怒ってるし聞けば聞いたでさらに逆鱗に触れそうだったので、訳もわからず「ごめんなさい」と謝っていた。
ひたすら謝っていたのだがなかなか許してくれない。
嫌な時間っていうのは長く感じると言うが、1時間ぐらいは延々と

「なんであんなことをしたのか? どうしてなのか? 今何時だと思ってるのか?」

っと同じような事で問い詰められてる。
まぁ普段からうちの母親は怒ると異様にしつこかったりしたので謝るだけ無駄。どうせ謝ったって延々怒るし、謝らなかったら謝らなかったで延々怒る。
そういう意識があったので「あぁ今日はまた特別機嫌が悪いんだな」、もしくは「あぁ俺そんなにたいそうな事をしでかしたんだな」ぐらいにしか思っていなかった。
ところが、よくよく考えてみたらこの夜中明け方の4時〜5時ぐらいにかけて延々と母親が怒鳴り散らしているにもかかわらず、隣の部屋で寝ているはずの親父が起きてこないのは、まぁいいとして、二段ベッドの自分の下で寝ているはずの2歳の妹が起きてこない。
起きてこないはずがないっていうか、寝ていられるはずが無いほど俺は怒られているのに物音ひとつしない。
と、一つ気になったらすべてがおかしく思えてきた。

周りの音が無いのだ。
いつもなら気になる時計の音も、そろそろ走り出すであろう車の音も。
いっさいが無い。あまりにも静か過ぎるのだ。
そして一番納得がいかないのが、母親の異常なしつこさ。
謝っても、謝っても許してくれない。いつもならいくらしつこくてもそろそろやめてくれるであろう時間になってもやめてくれない。

ここで一番怖い事に気がついた。
母親の顔を見ていないのだ。正確には、暗くて見えないのだ。真っ暗の中で怒られてる。
気配と声で母親だと認識していたのだが、確認してはいない。

「なんでこんなことしたの? 何時だと思っているの? 悪いと思ってるの?」
同じ様な事で延々と怒鳴ってる。
この人は本当に母親なのだろうか? と思った瞬間、手が飛んできた。
ばちっ! と叩かれた。が、その手がおかしい。
爪が異様に長いのだ。触られた感触もかなり冷たい。

(母親じゃないっ!)

とそう直感した。
母親は爪が薄く弱いため、割れてしまうという理由からいつも爪は伸ばさない。
当時まだ若かったであろう母親だったが、その理由から爪を伸ばしたことはない。

(誰だ?)

と疑問に思ったその瞬間、今まで怒鳴り散らしていた声の質が伸びたテープの様にいきなりトーンダウンした。
この世のものとは思えない様な響くような低い声に変わり、段々言うこともおかしくなってきた。

「なんで殺したの? どうして殺したの? どうして死んだの?」

に変わった。
やばい逃げなきゃ、と思ったがここは二段ベッドの二階。
相手は二段ベッドから降り、階段付近に立って怒鳴ってる。いや、今は泣きながら訴えてる。

「なんで殺したの? どうして殺したの? どうして死んだの?」
今まで怒られていたから動かなかったと思っていた体は、動かそうとしても動かない金縛りに変わってる。
やばい体が動かない、と気づいたとき一段と大きな声ではっきりと

「悪いと思ってるの?」

と顔を近づけて来た。
その顔は髪の毛がバサバサで肌は青白く、そして両目が無かった。

――そこから俺は意識が無くなった。

そして朝? だろうか? 昼だろうか? 気がついたら同じ状況でベッドの上で立たされて母親に怒られてる。

今回違うのは、ちゃんと周りの音は聞こえてるし何より明るい。
顔がちゃんと見えるのだ。間違いなく怒ってるのは母親。

「どうしてあんなことしたの? 何してたの? どこいってたの?」

と問い詰められてる。
今回も今回で、なんで怒られてるのか判らなかったが、ちゃんと聞いてみた。俺は何をしたんだと。
そうしたら「あんた、ねぼけてたの?」と話をしてくれた。
昨日の夜中2時ごろ、まだ起きてリビングにいた両親の前をすっと俺が通ったらしい。
そのとき両親はトイレに行くのかな? と思っていたらしいのだが、俺は「遊びに行って来る」とそのまま玄関から出て行ったらしい。
まさか出て行くとは思って居なかったから止める暇も無く、あわてて玄関から出てその辺を探したが見つからず、家に帰ってきて警察に電話する前に俺のベッドを見たら寝ていたらしい。
そのまま起こして事情を聞こうとしたが、俺が起きなかったのとスヤスヤ寝てるし、自分たちも疲れていて気がついたら寝ていたらしく、そのまま朝を迎えたところで俺の叫び声で起こされたらしい。

結局、俺はねぼけていたからそのとき何をしていたのかわからない、と言い訳してこの話は誰にもしていなかったのだが、ここに出してみた。
やばいのかな? この話。
あれは3年前の夏、近くの森に友達7人でサバゲーをしに行ってたんだ。
当時俺たちは高校一年、いつもは4人で地味に楽しくやってたんだけど、その日は他の新参2人と自称カメラマンの友人Eがビデオカメラで俺たちを撮らせてと言ってきたので快くOKして、7人という大人数で行ったわけさ。

まず最初にサバゲーの大まかなルールを言うと、まず2人組になって2チームに分かれて相手の陣地にある的を破壊するやつ、もう1つは全員が敵でただひたすら見つけ次第撃ち合い、当てられたら自己申告で待機所へGOってやつの2つがあって、今回は後者で遊ぶことにしたのよ。

んで、しばらくそんな感じでぼちぼち遊んでいたんだけど、その森ってのが結構広くてさ、俺たちも何度かここ来てるけど奥の方とかは全然詳しくないんだ。
でもその日は人数多いしカメラマンもいることだし、行動範囲を広げようって話になってある程度(俺たちも把握してない)奥まで行けることにしたのね。
今思えばそれが最悪だったんだ……。

俺がまず奥まで突っ走ったんだ。
先に奥の方で待ち伏せしてのこのこ来たやつを潰そうって考えでね。
で、枝をはらいながら落ち葉踏みながらどんどん奥まで行ったわけよ。
するとなんか急に木の層? が厚くなり始めて

(よっしゃ、この後ろに隠れてよう)

って思って木を登ってその木の層の後ろ側に行ったらさ……。

小さい赤い塗装のはげた「トリイ」がぽつんてあんの。
でね、その後ろに明らかに墓があるの。2つ、ぼろぼろの。
木の上からその光景を見た俺はちびったね。
周りには誰もいなくて、こんな森奥深くになぜに墓!? しかも2つ。
俺は心臓バクバクさせながら全速力で戻ったよ。
サバゲーどころじゃなくてさ。早く人に会いたい一心で走った。わかるだろ?
数分後にカメラ君見つけて、半泣きで名前を呼んだよ。
そのカメラ君にその話をしたら、見たいとか言うもんだからさ、一応2人だし、大丈夫かなとか思って連れて行くことにしたんだ。

俺たち2人は適当に話しながら奥まで入った。
そしたら偶然友人Dと遭遇してさ、ちょっとテンションあがって3人でそのトリイに向かったよ。
さっきはすんなり着いたと思ったんだけど、いざ向かおうとしたらなかなか到着しなくてさ。なんか三倍くらい歩いた気がした。
で、見覚えのある木の層が厚くなってるとこに着いたんだ。
3人はよじ登って、例のトリイとぼろぼろの墓を目の当たりにした。

そして墓に書かれた名前を見てみたんだよ。
なんか「〜衛門」とか書かれてて、明らかに古い人だろ。
もう1つの方はよく分からないけど、雰囲気からして夫婦だったのかな? 名前が一文字で女性の感じがした。

この異様な空気に耐え切れなくなってる俺を差し置いて、カメラ君と友人Dはなんか盛り上がってるのよ……。

「掘ったら何か出てくるんじゃね?」
とか言ってさ、カメラ君がついに撮影し始めた。うっすら暗いので怖すぎて死にそうだったよ。
カメラを回し始めて3分くらいでテープが終わり、終了。
その後はグダグダでサバゲーは終了した。

カメラ君がさっきの事を全員に話すと、早速試写会をカメラ君の家で開くことになった。
で家に到着。1人は帰って6人で観た。
最初は楽しげな雑談してる映像。まだサバゲーは始まっていない。この雑談映像が結構長くてちょっと和んでたんだ。
次にサバゲーの映像。友人の変な撃ち方とか、隠れてるところとか面白かったのを覚えてる。

で、次。
俺が半泣きでカメラ君の名前を叫んでる映像が来た瞬間、全員が凍った。

いました。霊が。
誰がどう見てもばっちり映ってるんだよ。心霊が。
カメラはぶれていなく走って近づいてくる俺を完璧に写していたんだが、その後ろには髪が長い白い服の女の霊っぽいのがこっち見てるのね。誰もいなかったのに。
一瞬じゃない、3秒くらい。みんな(幽霊が映ってる前提で見ていたから)すぐに見つけられたんだと思う。カメラが一瞬地面の方向いて、また俺を映したとこにはもういなくなってて……。
これは紛れもない事実であって、ネタではない。そこにいた全員が幽霊という存在を信じる瞬間になった。
しかも続きがある。
そうだよ、大問題の墓のシーン。

もうなんか全員冷や汗たらしながら「ヤバくね?」とか言いながらも心臓バクバクさせながら続きを見たんだ。
俺なんてマジ生きた気がしなかったね。だって俺の後ろに女の霊がいるんだぜ? 泣いたよ半分。
で、すぐそのシーンに写った。

確かに3分は撮ったんだ。テープが切れるまでの3分は。
だけどそのさっきの霊が映って数秒で霊のトリイのシーンに行くはずなんだが、急に画面が青くなってしまった。これは何も記録してない状態の映像なんだけどしばらくみんなシーンとしてた。

その直後。
いきなり墓の映像が映って、しかも雑音がひどい。
カメラ君と一緒にいた友人Dの会話が聞き取れないほどの。
全員ビクってなったのを覚えている。
よく聞くと何か言ってたのかもしれない意味深な雑音はあまりに不快で耐えれるもんじゃなかったんだが、これも7秒くらいで終わってしまった。
で、テープはそれで終わった。

その後、カメラ君の父がその月に死んだ。
一軒家の人はよくわかると思うけど、足音ってあるだろ?
それで大体、例えば階段上ってる音とかで家族の誰が上ってくるか分かるだろ。

ドンドンドンドン!

って大きな音だったら親父だ、とか

トンットンットンッ

って軽いリズムだったら姉だ、とか。

でさ、俺が二階で勉強してるとね、誰でもない足音が来るんだ。

トントンットン、トントンットン

って。
足音っていうのは体重とか身長とかで決まるんだよね。
日によって多少の違いはあれど、大体の感じは決まってるの。判るだろう?
けどその足音、俺がまったく聞いたことのないリズムだったのね。
まるで、うん。まるで小さい子供が上ってくるようなのね。

上り始めた時には意識すらしなかったんだけど、耳に聞き入れた時に頭のどこかで「おかしい」って気づいたんだろうね。
だってさ、家族で二階に用事があったんなら階段で昇り降りなんてしないだろ?
そうだよ。おかしいのはリズムじゃなかった。むしろその上ってくる誰かがやってる行為なんだよ。

トントンッ

で上っては

トン

で一段降りる。

トントンッ

で上っては

トン

で一段降りる。
時折、

トントン

で降りては

トントントンッ

で上ってくる。

あれ? って思ってからもやっぱり誰かが上ってくる。階段を昇り降りしながら。

トントンットン、トントンットン

もうこの時点で勉強どころじゃなくなって、全神経を耳に寄せて誰かの足音をじっと観察したわけ。
でも、ふとこうも思った。

(この誰かが最後まで上りきったら俺どうなるの?)

そう思ったら変な汗が背中から吹き出てきた。物凄く背筋が熱い。
そうやって俺が変な感覚に襲われてる中でも、誰かは着実に階段を上ってくる。

トントンットン、トントンットン

相変わらず遊んでるみたいな昇り降り。
ちなみに俺の家の階段は螺旋階段みたいにゆるやかにカーブしてるんだけど、階段数そのものは少ない。
数えた事はないけれどせいぜい16段かそれぐらいだと思う。
つまり、もうそろそろ今昇り降りを繰り返してる誰かは階段を上り終える。

ここは二階だ。
うん、逃げ場なんてないよね? 今誰かがいる階段以外には。
でもその時の俺は何を思ったのかな、ベランダの窓を開けたのね。そんでもって外に出たの。
部屋から出て行く間際、あの遊んでるみたいに上ってきていた足音がね、
ドン! ドン! ドン! ドン!

って音に変わってるんだよ。降りてもない。ただ上ってくる。大きな音で。
でも親父の足音でもないよ、もちろん。そもそも最初から親父ならあんな変な行動起こさないだろ、昇り降りを繰り返すなんて。

そんでさ、もう訳わかんなくて飛び降りたのね。ベランダから。
庭に止めてある車のボンネットの上に。距離的には短かったし難なく降りれた。

俺はほっとして、気の抜けたまま、もう止せばいいのにね。見ちゃったの。二階の俺が飛び降りてきた部屋を。何でかなぁ。
そこに居たのね、子供なんかじゃなかったの。家族でもなかった。
うん、いや。言い方が違うな。一人じゃなかったのね。
姿こそ見えなかったけど、揺れてるカーテンの隙間から見えたのは、かなりの人数の人間の目だった。

ギョロギョロ

みんな一斉に外をね、別々の方向をね、見てるの。
いや、うん。探してるんだ。俺を。
この間私と友達が経験した話を書きます。
私と友人3人(アヤ、エモ、マァ)で埼玉某所の心霊スポットのトンネルに行く事になりました。
そのトンネルは小さな山に囲まれていて、今はもう封鎖されて大分気味の悪い状態になっていました。

そのトンネルの入り口付近には大きなカーブミラーがあって、そのミラーは誰かの悪戯でバリバリに破られていると聞いていました。
そしてそのミラーを見てしまうと破られているミラーに血まみれの女が映り、乗り移られてしまうという話がありました。
最初にその話を聞いて早くもビビってた私は、行くのにものすごく抵抗を感じていました。

その日は小雨が降っていて(前の日も雨だったことから足場も悪く)軽い山道で森が茂っていて虫の鳴き声もひどいため、私は気味の悪さに早くも逃げ出したい気持ちMAXでした。
でもシラけさせたくなかった私はエモとマァに余裕の態度を取り、アヤと女同士で手を繋いで二人でどんどんトンネルに近付いていきました。

ふと気付きました。トンネルまで後5メートルくらいのところ。
虫の声が聞こえない。無音なんです。
アヤもそれに気付いたらしく、私達は脅えて後ろの二人を待ちました。

そして四人で手をつないで横に並んで、全員がヤバイと感じて中に入ろうか迷っていた時、私は一番右側に立っていて、ちらっと横にある森の方に目を向けました。
その視線の先にあったものは、破られているミラーでした。
見ちゃった、と思った時には身体が硬直していて、気付いたらみんなはトンネルの中に向かっていきます。
足から肩へと重たくなっていく身体。精一杯足に力を入れてみんなの方へ向かおうとした瞬間、アヤが立ち止まったんです。
満足に動けないままトンネルの奥を見ました。

見てしまいました。真っ暗のトンネルなのに。遠くなのに。
目が血よりも赤い女とその横にある数個、いや数体の白い光達。

アヤも私も絶叫して、私はパニックを起こして気付いたら車の中に戻っていました。
アヤは泣いていました。アヤは女だけを見たそうです。
エモとマァには見えなかったらしく、けど真っ青な顔で言いました。

「おまえ、一時間くらい騒ぎ続けるし。赤んぼうの泣き真似するし。俺達もほんと無理だった」

私に何か取り憑いていたのかと思いませんか? あの足から肩にくる重さとあの時見た光景は今でもはっきりと覚えています。
彼とは高校からの知り合いで、大学も同じ所に進学した。
お互いあまり社交的な性格ではなく、地味なもの同士かなり親密で仲の良い間柄だった。

そんな彼が、大学に通い始めて半年ほど経った頃から急に変わり始めた。
それまで気にもかけなかった服装にお金を掛け始め、口数が少なかったのが嘘のように社交的な態度になり、学内の色々な所で彼がそれまで口を聞いたことのなかった人と話しているのを頻繁に見かけるようになった。

恋人でも出来たのかと思い尋ねてみると「いや、残念ながら違うよ」とぎこちない笑顔を見せた。
では心境の変化は一体何なんだと訊くと、何か上手くごまかされて答えを聞くことが出来なかった。
自分も彼と同じように少しは社交的になるべく努力しようかと思ったものの、どうも気が乗らなかった。
それに彼も社交的になったからといって友人である自分と距離を置くということはしなかったし、一緒に話をしたりする時間は減ったもののそれまで通りの付き合いがあった。

彼の変化はその後も続いていき、「社交的」という言葉ではちょっと当てはまらないほどになっていた。
躁状態が常に続いているようで、昔の彼を知っている自分としては彼の変化に僅かな恐怖心さえ抱いた。
その彼がある日、突然姿を消した。初めはただの欠席だと思い誰も心配などしなかった。
しかし何の連絡もなく二週間ほど休みが続き、流石におかしいなと思ったので彼のアパートを訪ねてみた。
部屋には鍵がかかっており、何度ノックをしても返事がない。
心配だったので新聞受けから部屋を覗き込むと、家財道具などが一切なくなっていた。
そして薄暗くてよく見えない部屋のちょうど真ん中あたり、畳の上に何か妙な形をした像のようなものが置かれているのが見えた。

アパートの人に尋ねてみると、少し前に引っ越したと言われた。
しかも引越しの時には彼以外に何人か、明らかに引越しの業者には見えない手伝いの人が来ていたとも知らされた。
何か厭な感じと不安な気持ちを抱いたので彼の両親に電話してみると、彼からは何も知らされていないと告げられた。
とりあえずお互い何か分かったらすぐに連絡するとだけ言い、そのまま電話を切った。

結局何の進展もなく数週間過ぎた後、彼から突然電話が入った。
「ごめんな、ごめんな、お前のことをあいつらに知らせてしまった。ごめん、ごめん、本当にごめん」

そう震える声で何度か繰り返した後、こちらから何か言うことも出来ずに電話は切られてしまった。

次の日、学校から彼が退学したという連絡があった。
そこで彼の両親に電話すると、

「外国へ行ってボランティア活動してくる、と電話があった。声は確かに息子の声だったが何か変だった」

という話だった。

それから先、彼が学校に姿を見せることは一度もなかった。
彼との最後のやり取りでの言葉が不気味で自分でも気になったが、その後自分の身に何か起こるということも変な電話や勧誘が来ることもなかった。
彼のアパートで、あの隙間から見えた像も妙に脳裏に焼きついて離れなかったが、あれが何だったのか確かめる為に彼のアパートに再び行くという気には何故かなれなかった。
その彼が、ある療養施設に入っているという知らせが先日突然やってきた。

それは一枚の手紙だった。
差出人の名前はない。あて先はきちんと自分の住所になっている。
大学を卒業してから何度か転職もしたし、引越しもしている。
彼の両親とはあの後、殆ど連絡を取っていない。それどころか自分自身の両親とさえ疎遠になっている。
久しぶりに両親に電話してそれとなく尋ねてみたものの、どうやら手紙の差出人ではないようだった。

他に彼と自分の両方を知っている人間でこの手紙を出しそうな人物は思い当たらなかった。
ちょっとした恐怖心を抱いたが、それよりも好奇心の方が強かった。
それに自分の中に何か彼に対して申し訳ない気持ちがあった。
あの時もっときちんと調べたり、彼の状況を知ってあげたりすることが出来たのではないか、そんな気がした。
彼に対する友情よりも変なことに関わりあいになりたくない気持ちの方があの時は強かった、そのことに対する後悔がその手紙によって強く思い起こされた。

手紙には彼と彼がいるという施設の名前、そしてその住所が簡潔に書かれているだけだった。
とにかく週末の休みを利用して、その手紙を頼りにそこへと向かうことにした。
ローカル線の終着駅から運行されているバスの最終停留所、そこからさらに歩いて三十分ほどのところにその施設はあった。
山の中腹、木々に囲まれたかなり大きな建物。入り口には老年の警備員が一人駐在していた。
建物を囲う塀も低く、こういった施設に感じられるある種の威圧感のようなものはまるでなかった。
警備員に見舞いに来たことを告げると、何の手続きもなくすんなりと中へ通してくれた。

門から敷地内へと入った瞬間に不思議なものが目に入ってきた。バス停だ。
それもさっき、三十分ほど前にたどり着いた停留所とそっくりに出来ている。
ベンチには三人の老人が黙って座っているのが見えた。
それぞれ視点定まらない目つきで宙を呆けたように見つめている。
妙な光景だなと思いつつも先へ進んでいき、建物の中に入り受付で彼の名前と見舞いに来たことを告げた。
すると、ここでもすんなりと部屋の番号とそこまでの行き方を教えてくれた。

部屋に向かっている間に、この施設にいるのはどうやら殆どが痴呆性老人だということが見て取れた。
数人若い人も見かけたが、目つきや言動から凶暴性などは感じられないものの、明らかに普通の社会生活を送ることが難しい状態の人たちのようだ。
それでも窓などに鉄柵も張っていなかったし、特別にドアが厳重になっている様子もない。
ここに滞在している人たちも比較的自由に歩き回っているように思えた。

教えられたとおりに進むと、やがて彼の部屋にたどり着いた。
半分ほど開かれたドアをノックすると、中から「どうぞ」という女性の声が聞こえた。
中は大部屋になっていて六つのベッドが置かれている。
そのうち三つは誰も使用していない様子で綺麗にベッドメイクされた状態になっていた。
彼は一番奥の窓側に立っていた。後ろ姿ですぐに彼だと分かった。

ふと横を見ると老婆がこちらに手を振っている。さっきの「どうぞ」はこのおばあさんが発したようだ。
軽くお辞儀をして彼の元に向かうと、彼が何か呟いているのが聞こえてきた。
彼は窓に向かって、

「ごめんな、ごめんな、お前のことをあいつらに知らせてしまった。ごめん、ごめん、本当にごめん」

と繰り返し呟いていた。口調もあの時のままだった。
しかし彼の姿は驚くほど老け込んでいた。目つきや雰囲気、そしておそらくその精神状態もやつれきっていて、とても自分と同じ年とは思えない外見をしている。
久しぶり、と声をかけたが彼は何の反応も示さなかった。相変わらず同じ言葉を繰り返し続けているだけだ。

彼の視線の先、窓の向こうに目を向けると、ちょうど自分が通ってきた門と敷地内の庭が見える。
例のバス停にはさっきと同じように老人が座ったままだ。
不思議そうに見ていると、いつの間にか部屋に来ていた施設のスタッフが「バス停ですか?」と声をかけてきた。

「ええ、どうしてあんなところにバス停があるんですか?」

そう尋ねると、彼はバス停に関する経緯を説明してくれた。

危険性のない人々が入院しているということもあって、この施設自体の警備はそれほど厳しくない。
それで以前、入院している老人達が脱走してしまうことがあった。
そんな老人達が向かう先は決まって、歩いて三十分ほど先にあるバスの停留所。
そこからバスに乗って知人に会いに行くつもりなのだ。
しかしその知人というのは、もうとっくに死んでしまってこの世にはいない人たちばかりだった。
そのことを老人達にいくら説明しても、すっかり痴呆が進んでしまっているのでまったく話にならない。
繰り返し施設を抜け出して、知人に会うためバス停へと向かってしまう。
何かいい方法はないかと考えた末、敷地内にあのバス停そっくりの偽物のバス停を作ってしまうことにした。
すると見事思惑通り老人達は門から外へ向かうことなく、新しく出来た敷地内のバス停で日がな一日、来ることのないバスをベンチに座って待つようになったという。

「ちょっと残酷ですよね、でも同じようなことは他の施設でもあるようですよ」

そう言って、彼は用が済んだのか部屋から出て行った。
何か切ない思いで窓越しにバス停に座る老人達を見つめていると、突然

「哀れだと思っているんだろ」

ずっと同じことを繰り返し呟いていたはずの彼がはっきりとした口調で、こちらに向かってそう言った。

呆気にとられていると、今度は

「バスは来る、バスは来る、バスは来る、バスは迎えに来る」

と以前のような口調で呟き始めた。
その後こちらから何を話しかけてもずっと同じことを繰り返すだけで、まったく会話にならなかった。
結局、会ったら訊きたいと思っていたことなどを打ち明けることも出来ずに

「あの時、力になれなくてごめんな」

とだけ言って部屋を後にした。

帰り際、施設スタッフに彼がここに来ることになった経緯を尋ねると、一年ほど前に両親が同伴でやってきて入所したと教えてくれた。
しかし入院以来、両親は一度も見舞いには来ていないらしい。
悲しい気持ちにうな垂れながら建物を出て行くと、やはりバス停ではさっきまでとまったく同じように老人が並んで座っているのが見えた。

家に帰る途中、電車の中で例の手紙を広げて見ていると、妙に乗客の視線が気になった。
何だか自分がこそこそ見つめられているような気がしたのだ。
その視線は電車を降りてからも続いた。
自分の家に戻り、手紙を机の引き出しにしまってからも何だか妙に気持ちがそわそわする。
窓に駆け寄りそっとカーテンを開いて外を覗くと、怪しげな男が二人、こちらを見ていた。
堪らず外に出て確認してみたが、そこに男達を見つけることは出来なかった。あたりは静かで誰の姿も確認できない。

その日以来どうも落ち着かない毎日が続いた。
そしてついに会社の同僚から

「どうしたの、何か最近心あらずって感じじゃない、恋人でも出来たの?」

そんなことを言われた。
同僚の「恋人でも出来たの?」という言葉にどきりとした。自分があの時彼に投げかけた言葉とまるで同じに思えたのだ。
そう思うと急に気分が悪くなってきた。吐き気さえ感じながら何とか終業まで耐え、「大丈夫?」と言う同僚の言葉にも答えず、すぐさま家に帰った。

家の周りに数人怪しげな人物がいたが、それが本当に怪しいのか、それとも調子の悪い自分の所為でそう見えているか、それすら不確かに思え、怯えるようにして部屋に駆け込んだ。
服を適当に脱ぎ捨て、頭痛薬を何錠か口に放り込んでから布団にもぐりこむとすぐに眠りに落ちた。
そして不思議な夢を見た。
夢の中で自分はあの施設の、例のバス停留所に座っていた。
横にはあの時見た老人達があの時と同じような表情で座っている。
そこに座っていると不思議と心が落ち着いた。ここ数日の不安定な気持ちがまるで嘘のようだった。

やがて隣の老人が「バスじゃ」そう呟いて、指を差し出した。
指の先に視線を向けると確かに一台のバスがこちらに向かってくる。至って普通のバスだ。

ブレーキ音を響かせてバスが止まると、老人達はすっと立ち上がり開いたドアから中へと入っていく。
自分もなぜか同じようにしてドアに向かっていった。
一段目のステップに足をかけると、中から「乗車券をお出しください」という声がした。
声の方に顔を向けると、制服を着た辛気臭い男が運転席からこちらに向かって切符を出せと身振りで示していた。
切符など持っていたかな、と着ている服を探っていると、運転席の男が

「これは独り言ですが、シャツの胸ポケットに入っているかもしれませんね」

といやらしく呟いた。
その言葉に促されるように手を胸ポケットへ伸ばそうとした瞬間、

「待て、それは僕がもらっていく」

という声がした。
振り向くと、すぐ後ろに彼がいた。彼は昔のままの姿で、もの凄く自然な笑顔を見せながら、すっと僕の胸ポケットからキップを取り出してバスの中へと乗り込んでいった。
「ステップから降りてくださいね、切符がないとバスには乗れませんので」

運転席の男が告げた。言われたとおり後退ると、ドアが目の前で閉まりバスは発進していってしまった。

朝、目覚めると目元が濡れていた。
わけが分からないはずなのに、何か妙に色々なことがすとんと心の中で収まったような気分だった。
そのまま会社に行くと、同僚には「普通に戻ったね」と言われた。

次の週末に再びあの施設を訪れた。
門を通り過ぎてすぐにバス停を確認すると、以前と同じように老人が三人座っていた。
しかしあの時の三人ではなかった。まったく別の老人達が三人そこにいた。

受付で彼について尋ねると「居なくなった」と言われた。
突然姿を消して、そのまま戻ってきていないらしい。
警察にも届けたがまだ見つかっていないということだった。
彼がいた部屋に行くと、彼が居たベッドはすっかり綺麗に片付けられていた。
彼の消失には別に驚かなかった。あの夢を見たときからこうなるのではないかと感じていた。

帰り際、以前バス停に居た三人の老人達について尋ねると、全員亡くなったと知らされた。
皆穏やかに老衰で死んでいったらしい。

建物から出て門に向かうと、視界にまたあのバス停が入ってくる。
老人達は静かにバスを待っているようだ。