1 無名さん
魔法晒し79
53 無名さん
>>49
「リーマスってちょっと残念よね」
一番はじめにそんなことを言われたのはいつだったか。その言葉にはおそらく、たくさんの意味が含まれているんだろう。例えば、この顔の傷のことだったり。(僕に傷がなければ。)例えば、よく体調を崩していることだったり。(満月なんて一生来なければ。)例えば、人と距離を置いていることだったり。心から安心することができない。笑うことができない。そんな僕を表した、遠回しな言い方であり、もう何十回とうんざりするほど聞き飽きた科白だった。(僕が人狼じゃなければ。)僕はそんなことを言われなくて済むかもしれない。
「リーマス、愛してるわ」
だから綺麗な顔に彩りを添える真っ赤なルージュを引いた唇で紡がれる偽りのことばに、僕は正直反吐が出る。その科白にどんな意味が込められているのか、僕は嫌というほど知っていた。(だって僕はご覧の通り。)こんな人狼に愛の台詞を吐くなんて有り得ないんだ。愛なんて嘘っぱち。彼女たちの心にジェームズたちが見え隠れした。僕をダシに彼らに近づこうなんて、正気の沙汰とは思えないね。
「リリー、今日も君は美しいね!」
「リーマスってちょっと残念よね」
一番はじめにそんなことを言われたのはいつだったか。その言葉にはおそらく、たくさんの意味が含まれているんだろう。例えば、この顔の傷のことだったり。(僕に傷がなければ。)例えば、よく体調を崩していることだったり。(満月なんて一生来なければ。)例えば、人と距離を置いていることだったり。心から安心することができない。笑うことができない。そんな僕を表した、遠回しな言い方であり、もう何十回とうんざりするほど聞き飽きた科白だった。(僕が人狼じゃなければ。)僕はそんなことを言われなくて済むかもしれない。
「リーマス、愛してるわ」
だから綺麗な顔に彩りを添える真っ赤なルージュを引いた唇で紡がれる偽りのことばに、僕は正直反吐が出る。その科白にどんな意味が込められているのか、僕は嫌というほど知っていた。(だって僕はご覧の通り。)こんな人狼に愛の台詞を吐くなんて有り得ないんだ。愛なんて嘘っぱち。彼女たちの心にジェームズたちが見え隠れした。僕をダシに彼らに近づこうなんて、正気の沙汰とは思えないね。
「リリー、今日も君は美しいね!」
54 無名さん
>>53続き
だから僕には気になっている人物がいた。ジェームズたちに媚びることをしない、むしろ嫌悪を丸出しにした同じグリフィンドールの女子生徒であるリリー・エバンズ。それから僕らに興味すら抱いてない、目を伏せたとききらきらとゴールドがかって見えるアンバーの瞳を持ったアリア・ブラッドストーンだった。今日も広場で飽きもせずジェームズたちがスネイプに悪戯を仕掛けていたとき、僕は木の上で本を呼んでいた。こうして他人にちょっかいを出すのはほとんどジェームズとシリウスで、監督生になってからも僕は止めることも加勢することもしない、つまり我関せずを貫くことが多い。スネイプと仲がいいらしいエバンズは彼に悪戯をしているときよくこうして突っかかってきていた。同じく監督生になった今でもそれは変わらない。ジェームズは彼女を気に入っているので、もしかしたらスネイプに手を出すのはそういう下心が働いているのではないかと思う。だけどエバンズが絡んでくるときはいつも一緒にいるはずのブラッドストーンはいない。そういえばエバンズがジェームズに絡むときブラッドストーンを見たことがないなぁとぼんやり思った。なんの気もなしにジェームズとの言い合いに白熱しているエバンズを見る。すると少し先の建物の影に杖を持った彼女を見つけた。何事かと思えば、杖を振る。エバンズを追いかけたジェームズがなにかに足を取られ、シリウスを巻き込んで盛大に転んだ。
「……へぇ、」
だから僕には気になっている人物がいた。ジェームズたちに媚びることをしない、むしろ嫌悪を丸出しにした同じグリフィンドールの女子生徒であるリリー・エバンズ。それから僕らに興味すら抱いてない、目を伏せたとききらきらとゴールドがかって見えるアンバーの瞳を持ったアリア・ブラッドストーンだった。今日も広場で飽きもせずジェームズたちがスネイプに悪戯を仕掛けていたとき、僕は木の上で本を呼んでいた。こうして他人にちょっかいを出すのはほとんどジェームズとシリウスで、監督生になってからも僕は止めることも加勢することもしない、つまり我関せずを貫くことが多い。スネイプと仲がいいらしいエバンズは彼に悪戯をしているときよくこうして突っかかってきていた。同じく監督生になった今でもそれは変わらない。ジェームズは彼女を気に入っているので、もしかしたらスネイプに手を出すのはそういう下心が働いているのではないかと思う。だけどエバンズが絡んでくるときはいつも一緒にいるはずのブラッドストーンはいない。そういえばエバンズがジェームズに絡むときブラッドストーンを見たことがないなぁとぼんやり思った。なんの気もなしにジェームズとの言い合いに白熱しているエバンズを見る。すると少し先の建物の影に杖を持った彼女を見つけた。何事かと思えば、杖を振る。エバンズを追いかけたジェームズがなにかに足を取られ、シリウスを巻き込んで盛大に転んだ。
「……へぇ、」
55 無名さん
>>54続きこれでおしまい
これはおもしろいものを見た。エバンズはスネイプを起こすと2人に見向きもせずブラッドストーンの元へ行った。僕ももつれ合ってるジェームズたちを気にすることなく読書を再開した。
「ブラッドストーン、ちょっといいかな」
そしてその日の夕食後、大広間で食事を終えると、ジェームズがエバンズに懲りもせず絡みに行った。そのとき逃げるように大広間から出て行ったブラッドストーンの後に続いて僕も出る。早々に食事を終え、寮に帰る生徒以外にあまり人がいない廊下で僕は彼女の背中に話しかけた。広い廊下で響く僕の声に反応したブラッドストーンはゆっくりと振り返る。そのゴールドがかったアンバーの瞳は怯えたように震えていた。
『わたしに、用事?』
「君だろ、今朝ジェームズを転ばせた犯人」
そのとき彼女の明らさまに驚いた顔を見て、あぁ嘘のつけない子なんだなとぼんやり思った。動揺したように口を開け閉めするブラッドストーンに無意識に笑みがこぼれたのに僕は気づかなかった。僕がまだ2人に話していないこと安堵したブラッドストーンが小さく息を吐いた。しかしどうして僕がそうしているのか疑問らしい彼女は怪訝そうな顔をする。
「ジェームズたちには言わない。その代わり……」
その言葉に続いた僕の台詞に、ブラッドストーンは目に見えて青ざめていた。( よかった、)そんなに僕が嫌いみたいだね。彼女はその意味を訊いてきたが、僕は僕が考えられる最低な言葉を重ねた。( 好意がつらい。) それはこの上ない事実だ。なのにどうしてだろう。(彼女を見てると、)僕の心はざわざわと騒ぎ出していた。あのゴールドがかった不思議な瞳。もう少し近くで見ようとしても、彼女は目線を合わせようとはしなかった。いつもそうだ。遠くから見ても、彼女はいつも伏し目がちに生活していた。まるでだれにも見せたくないとでも言っているように。(でも僕は、)その瞳が嫌いじゃなかった。
これはおもしろいものを見た。エバンズはスネイプを起こすと2人に見向きもせずブラッドストーンの元へ行った。僕ももつれ合ってるジェームズたちを気にすることなく読書を再開した。
「ブラッドストーン、ちょっといいかな」
そしてその日の夕食後、大広間で食事を終えると、ジェームズがエバンズに懲りもせず絡みに行った。そのとき逃げるように大広間から出て行ったブラッドストーンの後に続いて僕も出る。早々に食事を終え、寮に帰る生徒以外にあまり人がいない廊下で僕は彼女の背中に話しかけた。広い廊下で響く僕の声に反応したブラッドストーンはゆっくりと振り返る。そのゴールドがかったアンバーの瞳は怯えたように震えていた。
『わたしに、用事?』
「君だろ、今朝ジェームズを転ばせた犯人」
そのとき彼女の明らさまに驚いた顔を見て、あぁ嘘のつけない子なんだなとぼんやり思った。動揺したように口を開け閉めするブラッドストーンに無意識に笑みがこぼれたのに僕は気づかなかった。僕がまだ2人に話していないこと安堵したブラッドストーンが小さく息を吐いた。しかしどうして僕がそうしているのか疑問らしい彼女は怪訝そうな顔をする。
「ジェームズたちには言わない。その代わり……」
その言葉に続いた僕の台詞に、ブラッドストーンは目に見えて青ざめていた。( よかった、)そんなに僕が嫌いみたいだね。彼女はその意味を訊いてきたが、僕は僕が考えられる最低な言葉を重ねた。( 好意がつらい。) それはこの上ない事実だ。なのにどうしてだろう。(彼女を見てると、)僕の心はざわざわと騒ぎ出していた。あのゴールドがかった不思議な瞳。もう少し近くで見ようとしても、彼女は目線を合わせようとはしなかった。いつもそうだ。遠くから見ても、彼女はいつも伏し目がちに生活していた。まるでだれにも見せたくないとでも言っているように。(でも僕は、)その瞳が嫌いじゃなかった。
60 無名さん
魔法ねやつだけ貼っちゃうね
さっきのタイトルは
あいしてるなんてアホらしい
次のは
なんて言ったの聞こえないよ
僕がブラッドストーンを朝食に誘ったのに大して意味はなかった。むしろなにも考えずに、ごく自然に口から出た言葉だった。(そんなわけあるか。)僕はただ、僕とブラッドストーンが付き合っているということを広めるため、それが1番てっとり早い方法だと思ったから誘っただけだ。(そうだ、その通りだ。)僕はその科白を自分に言い聞かせるように何度も頭の中で繰り返しながら部屋を出た。しかし、せっかく僕がひとりで席に座っていても、ブラッドストーンの姿はいつまで経っても現われなかった。僕の言葉を本気にしていなかったのか、本当に嫌だから来ないのか。どちらにせよ、ひとりでは朝食を食べる気にもなれなかった僕はブラッドストーンを探すため広間を見渡した。するとキョロキョロと回りを見ていたエバンズと目が合った。てっきり彼女と一緒だと思ったのに当てが外れてしまった。
「おはようエバンズ、ブラッドストーンを知らない?」
「おはよう。実はわたしも探してるの。朝、レイブンクローの子に呼ばれたらしくて先に出たみたいだけどまだ来てなくて……」
さっきのタイトルは
あいしてるなんてアホらしい
次のは
なんて言ったの聞こえないよ
僕がブラッドストーンを朝食に誘ったのに大して意味はなかった。むしろなにも考えずに、ごく自然に口から出た言葉だった。(そんなわけあるか。)僕はただ、僕とブラッドストーンが付き合っているということを広めるため、それが1番てっとり早い方法だと思ったから誘っただけだ。(そうだ、その通りだ。)僕はその科白を自分に言い聞かせるように何度も頭の中で繰り返しながら部屋を出た。しかし、せっかく僕がひとりで席に座っていても、ブラッドストーンの姿はいつまで経っても現われなかった。僕の言葉を本気にしていなかったのか、本当に嫌だから来ないのか。どちらにせよ、ひとりでは朝食を食べる気にもなれなかった僕はブラッドストーンを探すため広間を見渡した。するとキョロキョロと回りを見ていたエバンズと目が合った。てっきり彼女と一緒だと思ったのに当てが外れてしまった。
「おはようエバンズ、ブラッドストーンを知らない?」
「おはよう。実はわたしも探してるの。朝、レイブンクローの子に呼ばれたらしくて先に出たみたいだけどまだ来てなくて……」
61 無名さん
>>60続き
誤字したー魔法のやつだけの間違い
レイブンクローの子に呼ばれた?心配そうに言ったエバンズの言葉を最後まで聞くことなく僕は寮へと走った。今まで似たようなことは何度かある。それは僕ではなくジェームズやシリウスと付き合った子たちのことだったが、酷い目に遭ってきたことが数え切れないほどあった。どうやらそれは彼女たちに限ったことではないらしい。噂とはずいぶん広まるのが早いようで、おそらくブラッドストーンはさっそく嫌がらせを受けている。自分が望んだ結果だというのに、(僕のせいで傷つくなんて。)僕は走ったからとは違う理由で脈が早くなるのを感じた。
「我、よからぬことを企む者なり」
誤字したー魔法のやつだけの間違い
レイブンクローの子に呼ばれた?心配そうに言ったエバンズの言葉を最後まで聞くことなく僕は寮へと走った。今まで似たようなことは何度かある。それは僕ではなくジェームズやシリウスと付き合った子たちのことだったが、酷い目に遭ってきたことが数え切れないほどあった。どうやらそれは彼女たちに限ったことではないらしい。噂とはずいぶん広まるのが早いようで、おそらくブラッドストーンはさっそく嫌がらせを受けている。自分が望んだ結果だというのに、(僕のせいで傷つくなんて。)僕は走ったからとは違う理由で脈が早くなるのを感じた。
「我、よからぬことを企む者なり」
62 無名さん
>>61続き
寮に戻って階段を駆け上がり、部屋に滑り込んで僕は忍びの地図を乱暴に広げた。この地図を使うのは少し気が進まないが、緊急事態なら仕方ないだろう。僕は目を皿にしてホグワーツ中からブラッドストーンを探した。僕はジェームズたちがスネイプにちょっかいを出す場所を探したが彼女は見つからない。(どこだ、ブラッドストーン。)そうだ、ジェームズたちは人目につくところでスネイプをからかうが、レイブンクローの生徒がそんなことをするだろうか。(人目につかない、ところ。)的を絞ると存外あっさり彼女を見つけることができた。そして僕は再び走り出す。時間もかからずたどり着いたのは女子トイレで、僕はどうしたものかと思案した。このまま入って行くべきか。(それじゃただの変態だ。)エバンズを呼んできた方がいいのでは。僕が踵を返そうとすると、僕の耳は女子トイレからの声を拾った。
「どうしてあなたなのよ!」
その瞬間女子トイレだろうと構うものかと僕は駆け込んで、ほとんど無意識に杖を振っていた。1人の女子生徒が腕を振り上げた状態で固まっている。静止呪文はさすがにやりすぎたかもと思ったけれど、ブラッドストーンに怪我がないならいいと思い直した。
「監督生だから仲裁させてもらったけど、なんの騒ぎかな?」
心臓がばくばくして冷や汗が止まらないが、僕はなるべく冷静を装い、にこやかにそう言った。全員が全員驚いた顔をしていたが、ブラッドストーンを囲むようにして立っていたレイブンクローの女子生徒は気まづそうに視線を迷わせ始める。
「こ、この子がわたしたちをバカにしてきたのよ!」
「わたしたちが純血じゃないからって……!」
「ほんとう?ブラッドストーン」
寮に戻って階段を駆け上がり、部屋に滑り込んで僕は忍びの地図を乱暴に広げた。この地図を使うのは少し気が進まないが、緊急事態なら仕方ないだろう。僕は目を皿にしてホグワーツ中からブラッドストーンを探した。僕はジェームズたちがスネイプにちょっかいを出す場所を探したが彼女は見つからない。(どこだ、ブラッドストーン。)そうだ、ジェームズたちは人目につくところでスネイプをからかうが、レイブンクローの生徒がそんなことをするだろうか。(人目につかない、ところ。)的を絞ると存外あっさり彼女を見つけることができた。そして僕は再び走り出す。時間もかからずたどり着いたのは女子トイレで、僕はどうしたものかと思案した。このまま入って行くべきか。(それじゃただの変態だ。)エバンズを呼んできた方がいいのでは。僕が踵を返そうとすると、僕の耳は女子トイレからの声を拾った。
「どうしてあなたなのよ!」
その瞬間女子トイレだろうと構うものかと僕は駆け込んで、ほとんど無意識に杖を振っていた。1人の女子生徒が腕を振り上げた状態で固まっている。静止呪文はさすがにやりすぎたかもと思ったけれど、ブラッドストーンに怪我がないならいいと思い直した。
「監督生だから仲裁させてもらったけど、なんの騒ぎかな?」
心臓がばくばくして冷や汗が止まらないが、僕はなるべく冷静を装い、にこやかにそう言った。全員が全員驚いた顔をしていたが、ブラッドストーンを囲むようにして立っていたレイブンクローの女子生徒は気まづそうに視線を迷わせ始める。
「こ、この子がわたしたちをバカにしてきたのよ!」
「わたしたちが純血じゃないからって……!」
「ほんとう?ブラッドストーン」
63 無名さん
>>62
なんてひどい言いがかりなんだろう。慌てて取り繕ったそんな見え見えの嘘、だれだって信じないだろうに。しかし彼女は首を振るだけでなにも言わなかった。どうやらこれ以上の面倒事は嫌みたいだ。僕は一先ず杖を振って固まったままの彼女の呪文を解いた。そして勢いよく振りかざされた手を掴む。状況がわかっていない彼女にびっくりしたよね、ごめんとだけ言うと彼女は顔を赤くした。ブラッドストーンは嫌そうな顔をしている。僕は場を収めるために罰則を与えるから席を外してほしい旨を伝えると、彼女たちは喜んで去っていった。一気に肩の力が抜ける。ほんとうに、よかった。
なんてひどい言いがかりなんだろう。慌てて取り繕ったそんな見え見えの嘘、だれだって信じないだろうに。しかし彼女は首を振るだけでなにも言わなかった。どうやらこれ以上の面倒事は嫌みたいだ。僕は一先ず杖を振って固まったままの彼女の呪文を解いた。そして勢いよく振りかざされた手を掴む。状況がわかっていない彼女にびっくりしたよね、ごめんとだけ言うと彼女は顔を赤くした。ブラッドストーンは嫌そうな顔をしている。僕は場を収めるために罰則を与えるから席を外してほしい旨を伝えると、彼女たちは喜んで去っていった。一気に肩の力が抜ける。ほんとうに、よかった。
64 無名さん
>>63続き
「女の子って怖いね」
誤魔化すようにため息混じりにそう言うと、あまりのテンションの差が意外だったのかブラッドストーンは驚いたような顔をした。さっきのまるでどこかのヒーローのような行動の僕はまるっきり演技だとでも思ってくれただろうか。(その方がいい。)僕の評価は最低の男で十分だ。
『それだけルーピンのことが好きなんだよ。わたしじゃなくてあの子たちにしたら?』
「好意を寄せてくれる子の気持ちは利用できないよ」
僕のせいでだれかが傷つくなんて、そんなことあってはならない。変身すればだれかれ構わず襲ってしまうような獣がそんなことしていはずがないのだ。
「どうせ本当の僕を知れば嫌いになる」
あの満月の夜の恐ろしい姿を見ればだれだって逃げ出す。僕をバケモノだと罵る。僕がそんな意味を込めて言うとブラッドストーンが悲しそうな表情を見せた。まるで自分に言われたように、深く傷ついたような顔だった。深く聞かないことにした僕は話を変えるためブラッドストーンに怪我の有無を尋ねた。
「ブラッドストーン、怪我はない?」
『ルーピンが絶妙なタイミングだったからね』
「広間から帰る途中だったんだよ」
本当に息を吐くように嘘をつくのがうまくなったものだと自分でも感心する。さらりと嘘をついたが、僕のお腹は今にも独奏を始めそうだった。僕は下っ腹に力を入れてなんとか耐える。アリアに先にトイレから出てもらってから僕もそれに続いた。ブラッドストーンを助けるためだったとしても女子トイレに入ったなんて噂が広まれば僕はただの変態になってしまうのでそれはなんとしてでも避けたかった。
「僕は寮に戻るよ、アリアは?」
『リリーを知らない?』
「さっき廊下で見たよ」
「女の子って怖いね」
誤魔化すようにため息混じりにそう言うと、あまりのテンションの差が意外だったのかブラッドストーンは驚いたような顔をした。さっきのまるでどこかのヒーローのような行動の僕はまるっきり演技だとでも思ってくれただろうか。(その方がいい。)僕の評価は最低の男で十分だ。
『それだけルーピンのことが好きなんだよ。わたしじゃなくてあの子たちにしたら?』
「好意を寄せてくれる子の気持ちは利用できないよ」
僕のせいでだれかが傷つくなんて、そんなことあってはならない。変身すればだれかれ構わず襲ってしまうような獣がそんなことしていはずがないのだ。
「どうせ本当の僕を知れば嫌いになる」
あの満月の夜の恐ろしい姿を見ればだれだって逃げ出す。僕をバケモノだと罵る。僕がそんな意味を込めて言うとブラッドストーンが悲しそうな表情を見せた。まるで自分に言われたように、深く傷ついたような顔だった。深く聞かないことにした僕は話を変えるためブラッドストーンに怪我の有無を尋ねた。
「ブラッドストーン、怪我はない?」
『ルーピンが絶妙なタイミングだったからね』
「広間から帰る途中だったんだよ」
本当に息を吐くように嘘をつくのがうまくなったものだと自分でも感心する。さらりと嘘をついたが、僕のお腹は今にも独奏を始めそうだった。僕は下っ腹に力を入れてなんとか耐える。アリアに先にトイレから出てもらってから僕もそれに続いた。ブラッドストーンを助けるためだったとしても女子トイレに入ったなんて噂が広まれば僕はただの変態になってしまうのでそれはなんとしてでも避けたかった。
「僕は寮に戻るよ、アリアは?」
『リリーを知らない?』
「さっき廊下で見たよ」
65 無名さん
>>64続きこれでおしまい
そっか、と言った彼女は寮に向かうのだろうか。エバンズはたぶん大広間で待っている気がするが、この際どっちでもいいだろう。ブラッドストーンは目を伏せて廊下の先を見ていた。同性からの呼び出しに慣れてる子なんていないはずだ。(怖い思いをさせてしまった。)ブラッドストーンを利用している自分の卑怯さは自覚しているが、彼女をそんな目に遭わせてしまったことにひどい罪悪感に襲われた僕は小さな彼女の手をとった。
「ごめん、守れなくて。もう、怖い思いはさせない」
僕のわがままに付き合ってもらうなら不利益を被らないように配慮する必要がある、そんな意味を込めて言った。(なにをしているんだ僕は。)我に返って途端に恥ずかしくなった僕はブラッドストーンがなにか言う前にそさくさとブラッドストーンから離れて寮への廊下を歩いた。(あぁそういえば朝食を食べ損ねたな。)僕は大広間に戻る気にはならなかったのでポケットからミルクチョコレートを1つ取り出して口に放り込んだ。
そっか、と言った彼女は寮に向かうのだろうか。エバンズはたぶん大広間で待っている気がするが、この際どっちでもいいだろう。ブラッドストーンは目を伏せて廊下の先を見ていた。同性からの呼び出しに慣れてる子なんていないはずだ。(怖い思いをさせてしまった。)ブラッドストーンを利用している自分の卑怯さは自覚しているが、彼女をそんな目に遭わせてしまったことにひどい罪悪感に襲われた僕は小さな彼女の手をとった。
「ごめん、守れなくて。もう、怖い思いはさせない」
僕のわがままに付き合ってもらうなら不利益を被らないように配慮する必要がある、そんな意味を込めて言った。(なにをしているんだ僕は。)我に返って途端に恥ずかしくなった僕はブラッドストーンがなにか言う前にそさくさとブラッドストーンから離れて寮への廊下を歩いた。(あぁそういえば朝食を食べ損ねたな。)僕は大広間に戻る気にはならなかったのでポケットからミルクチョコレートを1つ取り出して口に放り込んだ。
66 無名さん
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What's this site??
お取り扱いは魔法使いと海賊、たまに火星に飛びます。一定のサイクルでブームが来るのでそのタイミングで書きます、つまり気まぐれ。
長編は基本中二病な設定ですのでご注意を。
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>>まちぼうけ/you don't come here/あなたは来ない
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めぐり会えた奇跡に感謝です
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77 無名さん
86 無名さん
また、数年前に書いたものは別ですが当ホームページのテキストの書き方は改行がほぼありません。テキストは基本的に登場人物の心情を描いています。断続することなく読んでいただきたいのでご不便かもしれませんがご理解ください。
インフォの増えたところ
行間広げろって言われたのを改行しろだと思ったのかな?
インフォの増えたところ
行間広げろって言われたのを改行しろだと思ったのかな?
87 無名さん
>>85こわい
あとすこしわたしがあとすこしだけはやくはしれたならあなたのいのちのほのおはきえることはなくていまもきっとわたしのすぐそばにいてくれたのでしょうたとえばあのときわたしがあなたのそばをはなれなければみんなのいのちもうしなわれることはなかったんだといまでもいつまでもいくらでもわたしはなみだをながしてさけんでしぬほどこうかいしてにどとたちあがれないくらいわたしをせめてだれにもゆるしてほしくなくてでもみんなはわたしにしかたないんだわたしはわるくないと口をそろえていうけれどしかたないってどういういみなのかわたしにはぜんぜんわからなくてわたしはあのひとがいなければいきるいみもりゆうもみつけることはできないというのにみんなしかたないでかたづけてあなたをおもいでにかえようとするけれどわたしはぜったいにそんなことできなくてにどとあるくことができずにたりどまったままなのだってわたしはあなたをこころから
あとすこしわたしがあとすこしだけはやくはしれたならあなたのいのちのほのおはきえることはなくていまもきっとわたしのすぐそばにいてくれたのでしょうたとえばあのときわたしがあなたのそばをはなれなければみんなのいのちもうしなわれることはなかったんだといまでもいつまでもいくらでもわたしはなみだをながしてさけんでしぬほどこうかいしてにどとたちあがれないくらいわたしをせめてだれにもゆるしてほしくなくてでもみんなはわたしにしかたないんだわたしはわるくないと口をそろえていうけれどしかたないってどういういみなのかわたしにはぜんぜんわからなくてわたしはあのひとがいなければいきるいみもりゆうもみつけることはできないというのにみんなしかたないでかたづけてあなたをおもいでにかえようとするけれどわたしはぜったいにそんなことできなくてにどとあるくことができずにたりどまったままなのだってわたしはあなたをこころから