1 削除済
2 無名さん
同盟は晒ししてるじゃん
3 無名さん
>>2で終了
4 無名さん
他のことだよ
まさか晒ししかしてないの?
5 無名さん
下げ梅してる

この前乗ったタクシーの運転手に聞いた話ですが。

深夜に新宿から大塚まで乗せた女性客に途中で道の確認を何回しても返事が無い。
とりあえず止めて後部座席を見たら手首から出血していて白系のスカートが真っ赤になってる。

直ぐ救急車呼んで命に別状はなかったけど、その女性は手首を切った覚えがないと主張。
それでタクシー会社に警察来てさんざん事情聴取を受ける。

そのわずか数日後に新宿から四谷まで乗せた白系のスカートの女性客がまたもやリストカット。
救急病院が近くにあったのでそのまま病院へ搬送して命に別状無し。不思議な事にこの女性もリストカットしたことを否定したのでまた警察に状況説明。

警察によれば2人とも精神的な障害も無く自殺する理由も無し。
さらに2人とも刃物を持っていなかったのでどうやって手首を切ったのかは不明とのこと。

その運転手は、半月ほど前に路上脇で倒れてる女性を発見。車を降りて見てみると手首から大量に出血していたので直ぐに救急者呼んだけど助からなかったとのこと(この女性は遺書があったので自殺と認定)。
この女性も白いスカートを履いていてそのスカートが血に染まっていたそうです。

運転手は私も白いスカート履いてたので怖くなってこの話をしたとすまなそうに言ってました。
7 無名さん
だって同盟は物だから何かしようがないでしょ
知りたいなら他スレ見て来いよ
8 無名さん
仕事だろ
9 無名さん
まあ同盟の仕事は晒しだもんな
10 無名さん
削除するな最初から立てるなよBBAが
11 無名さん
間違いに気付いて顔真っ赤なんでしょ
察してあげなよ
友達にちょっと霊感の強い子がいる。
ただ強いだけじゃなく、一緒にいると影響を及ぼしてくるタイプの子。だからよく一緒に変なものを見てた。

友達(以下、Aとする)いわく、体調のように霊感にも調子が良い日と悪い日があって、調子が良いと普段は見られないものがよく見えるのだそうだ。

ある日、彼女と休日に繁華街に赴いて買い物なんぞしていたのだが、Aは急に立ち止まって周りをキョロつき始めた。
どうしたのか、と問うと、いきなり「見え」だしたのだという。

何を?と聞くまでもなく、私にも見えた。街をゆく男女のなかに、腰から人間をぶらさげて歩いている人たちがいた。

形容しにくいのだが、足をベルトの位置に固定してそのまま引きずっているような感じ。
もちろん当人たちは自覚などなく、連れている恋人や友達らしき人と談笑しながら通り過ぎていった。異様な光景だった。

おそらくぶらさげていた相手は、昔なんらかの形で弄ばれたかひどくされた人たちなんじゃないかと思う。みな、一様に土気色の不気味な顔色をしていた。

二、三時間してそれは次第に見えなくなったし、私は後にも先にもあれ一度きりの体験なので、はっきりとしたことは解らない。
ただ、相当な恨みやこだわりを持っていなければあんな風には見えないのではないかと思った。

ちなみに、Aは今でもたまにそれを見るそうな。
彼女によれば恨み云々も怖いが、引きずられている面々が常に一点集中でこちらを向いているのが何とも言えず怖いらしい。

私のときは、彼らはこちらなど見ていなかったように記憶している。
俺が中3のときの話。

クラスにちょっと気が強い感じの女子がいた。なんかちょっとその子変わっててさ、放課後いつも教室でノートになんか絵を描いてるんだよな。
チラ見しようとするといつも閉じちゃうから中身を見た奴はいなかった。

で、なんとなく俺は中を見たいと思って、彼女がどっか行ってる間に覗き見しちゃおうとした訳。
でもいつも彼女がいなくならなかったり他のクラスメイトがいたりで失敗してた。

それでしばらくしてから、放課後教室にいるのは俺と彼女だけってシチュになった。
で、彼女がトイレかなんかで席を離した隙に見ることに成功した。

たかが落書きノートなのに、席を離すときにはしっかり机の中にしまっててさ。その時点でおかしいと思うべきだったんだよな。
学級日誌に可愛い動物の絵とか載せてたから、多分そんな感じのなんだろうと思ってたよ。

絶句した。

最初から最後まで、女の子がひたすら虐待される絵で一杯だった。台詞は一切無し。
女の子はみんな同じ子。でも見た目的に彼女ではない。猿轡されてモゴモゴ泣き叫んでる(っぽく見える)のが痛々しかった。

集団レイ/プされたり吊り下げられたり針を何百本も身体に刺されたり…
男子中学生だった俺が見ても性欲より吐き気がこみ上げるくらい酷かった。

呆然としながらパラパラめくってくと、女の子がぐったりして動かなくなった絵があった。
さらにめくると、女の子が包丁で解体されていくシーンが数ページ続いた。

気持ち悪くなったけど、好奇心でもう一枚ページをめくってみた。バラバラの手足と、煮えたぎった鍋…
それで次にどうなるか判ったよ。慌てて彼女の机の中にノートを戻した。

その直後に彼女が戻ってきた。間一髪だった。

それからは、彼女にはあんまり近づかないようにした。別に彼女からも何も言われなかったし。
わだかまりみたいなものはあったけど無事彼女とのトラブルもなく卒業した。

だけど、ひとつ気になることがある。
ホントにあの時、俺がノート読んだとこは見られてなかったのか? 彼女があんなにジャストタイミングで戻ってきたのはホントに偶然だったのか?

もうすぐ中学の同窓会がある。彼女に会うのが怖い。
支援下げ埋め

いつも見てるだけなんで。長いけどゴメンね。
神戸の牛女の伝説はご存知ですか?
西宮の鷲○寺が有名ですが、神戸の六○山にも噂があります。
凄まじいスピードで車やバイクを追ってくる牛頭人体の妖怪の話です。

これのルーツになったのは、第2次大戦中に発見された屠殺業の娘が牛頭人体であったという噂のようですが、こちらの方は特に人を襲うといったものではないようです。
これらの噂の真偽についてはネットで検索すればすぐに見つかると思いますので、リンクは致しません。
もっともこの話は地元の者は皆知っていますし、肝試しに行く者も少なくありません。

私の友人Aも六○山にある神社に出るらしいと噂を聞きつけ、遊び半分で肝試しに出かけたようでした。
噂のある神社かどうかわかりませんが、神社らしきものを見つけたと言っていました。
しかし、その神社に近づくと車のヘッドライトが消えたりエアコンの調子が悪くなったりして気味が悪くなり、すぐに帰ったそうです。

私がこの話を聞いた数年後、不思議な話を聞きました。
体験したと言った方がいいのかも知れません。

まったく別の友人の自宅に数人(仮に私、B子、C子)で集まり鍋をしていたのですが、ひょんなことから話題が怖い話になり、私はなにげに前に聞いた友人Aの牛女の話を話しました。
するとその中の1人、B子の顔がふと曇ったように見えました。
私と目が合ったB子はぽつりぽつりと話し出しました。

>>14

「私も行ったことあんねん、たぶん同じとこ。彼氏と友達4人で車で行ってんけどな。遠くから様子を見ると境内っていうんかなぁ鳥居が見えたわ。意外と広くてなぁ。軽自動車ならなんとか敷地内まで車で入っていけそうやったし、車の中やったら怖くないやろっていう話になって入っていったんよ」

「うそぉ、まじで?」

「それでな、ちょっとずつ車で入っていってんけど、”軽”やったから入れるんは入れたけどなんかあってもUターンも出来ひんやんとか思ってたら、いよいよ目の前に鳥居が迫ってた。鳥居をくぐった辺りでふと前を見たら……ちがう、ずっと見てたけど気づかんかったんかな……いやおらんかった絶対!」

何やらB子の様子がおかしい。

「なにが? おらんのん?」

「境内っていうん? 賽銭箱がある辺りに四つん這いになった女が白い着物を着てた。みんなが気づいた瞬間、そいつは飛び上がったと思ったら車まで5メートル、ううん10メートルぐらいあったのに一瞬でボンネットに飛び乗ってきた」

「……顔見たん?」

「顔は人間やったと思う。でもダラダラすごい涎垂らしてた……」

「それでどないしたん?」

「逃げようとしても車のエンジンがいつの間にか止まってて、ライトもなにもつかへん。そのまま数分間みんなかたまってた。あいつもじぃってみんなの顔を見とった。そのうち近くに“他の車”が来たような音が聞こえてきて、助かったって思った。その時、私らの車のエンジンがいつの間にかかってんのに気づいて、訳わからんかったけど運転してた彼氏の頭叩いてん。そしたら彼氏がすごい勢いでバックしだしてんけど、それでもあいつはボンネットにしがみついてた……でも鳥居を超えた瞬間に、またすごい勢いで境内の方にこっちを見たまま後ろ向きにジャンプして戻ったのが見えた。すごい勢いで飛び出したから“別の車”にぶつかりそうやったけど、そんなん気にせんと飛んで逃げたわ。その後、みんなでファミレスで朝まで一緒にいたけど誰も何もしゃべらんままやった」
>>15


「……みんなその後、なんにもないの? いや事故とか?」

「ううん、なんにもないよ」

「ッ!!……やめよこの話」

さっきまで一緒に話を聞いていたC子が何かに怯えている。

「え?」

「どないしたん?」

「そこのコタツ下、そこのコタツの足のとこに着物来た20センチぐらいの人がおった……」

「!!」

私もすぐに見たが何もいなかった。

「どんな人?」

「女の子……おばあさんかな。かっこは女の子の着物やったけど、顔はおばあさんやった。こたつの足に隠れるみたいにして盗み聞きしてるみたいやった」

私は何も見ていませんし、あまり幽霊とかは信じてないですし、B子はともかくC子はお調子者だったので話を盛り上げる為の芝居かとも思っています。

でもひとつ気になるのは、最初に話した友人Aの話。
あの時Aはこうも言っていました。

「そうそう。俺らがびびって帰ろうとした時、すごい勢いでバックで飛び出してくる“軽”がおってなぁ。俺らの他にもビビリがおってんやろなぁ。ははは」
今から10年程前に友人のお姉さんが体験した話です。
そのお姉さんは当時、大学を卒業したお祝いに仲の良かった男女5〜6人で卒業旅行に行ったそうです(何処に旅行に行ったのかは聞きませんでした)。

そして旅行先で宿を探し、飛び込みで適当なホテルに入りました。
そのホテルは最近新館を新築した大きなホテルでした。
そこの支配人は飛び込みだというのにも関わらず快く泊めてくれたそうです。

あいにくその日は本館が満室のため、お姉さん達は新館の方に案内されました。
支配人の話によると、その日新館の宴会場では大きな会社の宴会が2〜3件入っているため少々騒がしいかも知れないという事でしたが、当のお姉さん達も飛び込みで来た手前、その事は了解して泊まることにしたそうです。

その後、お姉さん達は料理に舌鼓を打ち、お風呂に入ったりしてくつろいでいたそうです。
ですが、部屋の2階にある宴会場で行われている宴会は夜の10時を過ぎても終わる気配がありません。

さすがにこの時間になっても宴会が続いているというのはちょっとおかしいと思ったのか、メンバーの1人がフロントに電話したところ、宴会はもうとっくに終わっているというのです。
しかし相変わらず2階の宴会場からは騒がしい声が聞こえてきます。
おかしいと思い、メンバーはその宴会が行われていると思われる大宴会場に足を運ぶことにしました。

2階の大宴会場の前に着くと、その扉の内側からは相変わらずザワザワと騒がしい声が扉の外まで聞こえています。
得体の知れない声を前にメンバーが恐る恐る扉を開けた瞬間

………………

それまで聞こえていた声がウソのように宴会場は水を打ったように静まり返っていました。
そう、宴会場には誰もいなかったのです。

>>18

怖くなったメンバーは慌てて部屋に戻り、そのまま寝ようという話になりました。

しばらくすると、

コンコン……

誰かが部屋の扉を叩く音がします。
誰だろうと思いつつ1人が扉を開けました。

でも誰も居ません。
いたずらかな? と思いながら扉を閉めました。

しばらくすると、

コンコン……

また扉を開けました。でも誰も居ません。

子供のいたずらかと思いフロントに訪ねると、その日新館には自分達以外は誰も泊まってないとの事でした。
一同は水を打ったように黙ってしまいました。
そうしていると、

コンコン……

また扉を叩く音がします。
1人が扉を開けようとしたとき

「待って」

と、メンバーの1人、実家が神社の女友達が言いました。
そして彼女は扉に向かって

「貴方は幽霊ですか? はいなら1回、いいえなら2回扉を叩いて下さい」

と言いました。
すると、

……コン

1回扉が叩かれました。

>>19


「やっぱり」

と彼女は言いました。

その後、ずっとノックの音を使って色々な事を幽霊に聞きました。
そして解った事は、昔ここにホテルが出来る以前に病院が建っていたという事。
その病院は特殊な伝染病や細菌兵器の開発などをしており、その特殊な性質のために一般には一切公開されていなかったという事。
そして空襲によりその病院は跡形もなく無くなってしまったとの事でした。
それ故にその後供養等もされず、ずっと放って置かれているという事が解ったそうです。

彼女は聞きました。

「供養をして欲しいの?」

……コン

と1回返事が来ました。
では何時に供養して欲しいのかと聞くと、

……コン、コン、コン、コン、コン、コン、コン、コン、コン

9回鳴りました。

「明日の9時ですね?」

……コン

「他にも供養して欲しい方がいるのですか?」

……コン

「では、何人くらい居るのですか?」

ダン! ダン! ダン! ダン! ダン! ガン! ガン! ガン!

バン! バン! バン! ダン! ダン! ダン! ダン!

バン! バン! バン! バン! ガン! ガン! ガン! ガン!

バン! バン! バン! ガン! ガン! ガン! ガン!

ダン! ダン! ダン! ダン! ガン! ガン! ガン! ガン!

その部屋のありとあらゆる所から叩き付けるような返事が返ってきたのです。
あまりの恐怖にその場にいた全員が気を失ってしまったそうです……。

そして次の日の朝、目覚めた時にはもう部屋を叩く音はしていませんでした。
時計を見ると朝の8時半! その後は急いでお払いの準備をして何とか事なきを得たそうです。
これは僕が高校の頃の話です。

「かんひも」に関わって以来、微妙な霊感に目覚めてしまったわけですが、友人たちからその系統の相談を受けるようになっていました。
まあ、霊感といっても僕の場合はただ見えるだけなので、本当に話を聞くだけなんですが。
それでも中には気のせいだったり、話を聞いてあげるだけで解決したりする場合も多く、意外と役に立っていました。

●10月25日●

その日の夕方、僕は友人のJに近所の喫茶店に呼び出されました。
Jはサッカー部に所属しており、そのマネージャーのYさんが奇妙な事で苦しんでいるとの事でした。

喫茶店に着くと、すでにJとYさんは来ていました。
恥ずかしながら帰宅部で自由を謳歌していた僕は、Jの試合の応援などで何度かYさんとは顔を合わせた事がありました。
Yさんは大きな目をした表情豊かな可愛らしい子で、サッカー部のマスコット的な存在でした。
しかし、久しぶりに会うYさんはいつもの明るさは影を潜め、やつれ果てていました。

「すまん、A(僕の事です)」

僕の顔を見ると、Jが心底困り果てた様子で話しかけてきました。

「どうも、本気でやばいらしいんだ……」

「どうしたの?」

僕はJに頷くと、Yさんに話しかけました。
Yさんは泣きそうな顔でゆっくりと話し始めました。

----------------


ここからは分かりやすいようにYさんから聞いた話をYさんの視点でお話しします。
時間軸は今から1ヶ月ほど前にさかのぼります。

>>22

●9月23日● 

Yさんは自分のアパートの部屋で夜中に目を覚ましました。

Yさんは高校に通うため、親元から離れて学校近くのアパートで1人暮らしをしています。
アパートといってもそこは女性の1人暮らし。1階には大家さんたちが住み込み、玄関はオートロックという中々のアパートです。
元々は古いアパートなのですが、後からセキュリティ関係を強化してあるようでした。

Yさんがふと時計を見ると、夜の2時45分。
妙な時間に起きてしまったものだと、トイレに行こうとベッドを出ました。
すると、玄関の向こうの廊下で何か音がします。

カッ、コッ、カッ、コッ

良く聞くと、それは足音のようでした。
革靴やハイヒールのような、かかとの硬い靴の音です。

(こんな夜更けに誰か帰ってきたのかしら)

Yさんは同じ階の誰かが帰ってきたのだと思いました。
眠い目をこすりながら気を取り直してトイレに行こうとすると

カッ、コッ、カッ

足音がちょうどYさんの玄関の前あたりで止まりました。

「……?」

Yさんは不審に思いながら息を潜めていました。
すると、

カコンッ

ポストから何かが投函されました。

このアパートの玄関のドアは下部に穴が開いており、そこに郵便が投函される昔ながらのポストでした。
ポストに投函された「何か」はそのまま玄関の靴の上に落ちていました。

「郵便です……」
>>24


●9月28日●

その日は休日で、Yさんは友達とファミレスで昼食を取っていました。
今度の休みの計画や好きな歌手のライブの話など、いつものように話は弾んで楽しいランチのひと時でした。

「……!」

Yさんは友達と話しながら見るとはなしに見ていたテレビの画面に、信じられないものを見つけました。

「……昨晩午後7時30分ごろ、××市に住む『○山×夫』さん3○才が、自宅で死んでいるのが発見されました。死因は……警察では事件と事故の……」

それはまさしくあのはがきに記入されていた名前でした。
Yさんは恐ろしくなり慌てて家に帰りました。はがきの名前を確認するためです。

家に着くなりYさんは玄関の隅に置いてあるごみ袋の中を探しました。
あのはがきが来てからまだごみを出していないのでこの袋の中にあるはずなのに、全く見当たりませんでした。
でも、あれは間違いなくあのはがきに書かれていた名前だったのです。

----------------


>>24

「う〜ん」

話を聞き終わって、僕は思わずうなってしまいました。

「まあ、でもその後はなんともないんでしょ?」

僕が口を開くと、Jが首を振りました。

「それだけじゃないんだって。それからもう4回、同じことがあったって。もう5人死んでるって……」

「でも、それだったら変質者か悪質ないたずらじゃないの? 警察に行った方がいいんじゃない? 下手したら殺人犯からとかって事も」

すると、僕とJが話すのを黙って聞いていたYさんが

「違うの。だってみんな死に方が違うの。調べてみたけど心臓麻痺の人や交通事故の人、病気の人。殺されたとかじゃないしみんな住んでるところがバラバラなの」

僕は途方に暮れてしまいました。今までそんな例は見た事も聞いた事もありません。

「それに、ゆっくりもしてられないんだ」

Jはそう言うとYさんに目配せをしました。
Yさんは少しためらうと、バッグから何かを取り出しました。

「……!」

それを見た瞬間、僕の背中にひやっとした感覚が通りました。
いつもの嫌な感覚です。
今までそこのバッグに入ってたのに何故気が付かなかったのかというほどの嫌な感覚。

それは、縁を黒く塗られたはがきでした。

>>25

「10月26日、2時00分。死亡」

と書かれていました。

「まさか……」

僕が聞くと、Yさんは頷いてはがきの宛名面を出しました。

『K○Y子 様』

宛名にはYさんの名前が書かれていました。

「このはがきだけは消えないの、他のはがきはみんなどこかに行っちゃうのに、このはがきだけはずっとあるの……」

Yさんは震える声でそう言いました。

「いつ来たの!?」

僕はそのはがきの嫌な感覚に思わず声を荒げてしまいました。

「おとといの、夜」

「なんでもっと早く相談しなかったの!? こいつは本物だよ!」

「A! A! ちょ、声が大きい」

僕の声に周りがこちらに注目しているのが分かりました。
僕は中年のおっさんみたいに机にあった手拭で額を拭き、

(落ち着け、落ち着け)

>>26

深呼吸すると、どうすべきか考えました。

僕には霊をどうこうする力なんてありません。
警察に行ってもまともに取り合ってもらえる内容でもないし、警察でどうこうできる内容でもありません。
しかし話の流れから、なにもしなければYさんは今夜2時になにかしらの理由で死んでしまいます。

「ちょっと待ってて」

僕はJとYさんにそう言うと、喫茶店から外に出ました。
こんな時に頼りになるのは1人しかいません。
携帯を取り出すと、僕は爺ちゃんに電話し今までのいきさつを話しました。

「……というわけなんだ、どうしよう爺ちゃん!」

「ふ〜む。そりゃ、いかんわなあ」

爺ちゃんはしばらく何かを考えるように黙りこくったあと、

「あれじゃ、前に大畔(おおぐろ)の坊主に書いてもらったお札があるじゃろ。あれをポストとドアのノブ、部屋の窓という窓に貼るんじゃ。たぶんそいつは招かれ神の類じゃ。中から招かんかぎり悪さはできんはずじゃ」

「夜中、部屋に戻らないようにしてもダメ?」

「だめじゃな。外じゃ余計にいかん。四角く封ずる門がないぶん連れていかれ放題じゃ」

僕はJとYさんに先にYさんの部屋に戻るように言い、家にお札を取りに戻りました。


>>27

大畔の坊さんというのは「かんひも」の時に僕とKを祓ってくれた坊さんです。 
普段は酒飲みで肉も食べるわ嫁がいてバツイチだわ生臭さがプンプンする坊主ですが、霊験はあらたかなようです。
僕が変なモノを見るようになってから、魔よけのお札を書いて送ってくれていました。

僕はお札を取ると、教えられたYさんのアパートへ向かいました。

時刻は夜の8時でした。
部屋に入ると青ざめたJとYさんが待っていました。

僕は爺ちゃんに教えられた通り、部屋中の窓と玄関のドアノブにお札を貼りました。
そして、落ち着かないまま3人で時間を待ちました。

緊張していたせいか時間が経つのはあっという間でした。
時計の針は1時55分を指しています。

「……!」

一番最初に異変に気付いたのはYさんでした。

「来た!」

震えながらYさんは自分のベッドに潜り込みました。

カッ、コッ、カッ、コッ

足音です。
同時に僕の背中に冷たい電流が走りました。ものすごく嫌な感じがします。

カッ、コッ、カッ

足音が部屋の前に止まりました。
そこで僕は重大な事に気が付きました。

なんと間抜けな事でしょう! 一番肝心なポストのフタにお札を貼ってありません!
かといって今から貼る勇気はありません。
僕とJは何が投函されるのかとポストを凝視していました。

>>28

コンコン、コンコン

しかし意表をついて、ポストではなくドアがノックされました。

「K○さ〜ん、郵便で〜す」

ドアの向こうから張りの無い無機質な男の声がしました。

「K○さ〜ん、郵便ですよ〜」

ノックと声は続きます。僕たちは声を潜めて様子を伺いました。

しばらくノックと声が続いた後、ふっと音が止みました。
そして、

カッ、コッ、カッ、コッ

足音が歩き出しました。
そしてそのまま小さくなり消えていったのです。

ほっとして僕らはその場にへたり込んでしまいました。
布団に潜っていたYさんも顔を出し、安堵で泣きじゃくっていました。

「ふう」

僕はため息をつくと、立ち上がりながらなんとはなしに目をドアの方へ向けました。

「……!」

僕は恥ずかしながら腰を抜かしてしまいました。
僕のただならぬ様子にJとYさんもドアの方を向きました。

ドアのポスト。
フタが上がり、ギラギラした2つの目がこちらを睨みつけていました。

「なんだ、いるじゃないかよお」

>>29

先程とは打って変わって野太いしわがれ声が部屋の中に向けて放たれました。

ガンガンガン!

ガンガンガン!


激しくドアを殴りつける音。

ガチャガチャ!


ドアノブがもげてしまいそうな勢いで激しく上下しています。
同時に部屋中の窓という窓がガタガタと音を立てて震えだしました。

「キャーーーーーーーーーーー!」

Yさんは悲鳴を上げると気を失ってしまいました。
僕とJはYさんの上に覆い被さったまま何もできずにいました。

――どのくらい時間が経ったでしょうか。
気が付くと、あたりは明るくなってきていました。音も止んでいます。

「Yさん!」

僕とJは慌ててYさんを確認しましたが、Yさんは気を失っているだけで命に別状はなさそうでした。

あれほどの騒ぎにも関わらず、1階の大家さんも隣の部屋の住人も全く夜中の事は気付いていませんでした。
Yさんはその後アパートを引き払い、別の場所に引っ越しました。それからは何もないようです。

>>30

<後日談>

なぜ変なモノがYさんのところに来たかというと、おそらくこれが原因でないかと思うのですが……。

僕は知りませんでしたが、僕らの高校では変なおまじない(お呪い)が流行っていたようです。
場所は詳しく書けませんが。ある場所のあるポストに、夜中の2時49分に憎い相手の名前を書いて縁を黒く塗って投函すると、その相手に不幸が起こるというものです。

Yさんもそのお呪いをやってしまったようです。相手はYさんの好きな先輩の彼女。
僕はあんな屈託のない明るいYさんがそんな事をしたのに驚きを隠せませんでした。
よくこのスレッドでも出てきますが、「一番怖いのは人間の心だな」と。

みなさんもお気をつけください。人を呪わば穴二つという事です。
来月引っ越すんだが、中には変な部屋もあった。
不動産のおばちゃんにとにかく安いのがいいなあって言ったら

「これ、安いけどすっごく古いのよね〜。それにちょっと……オススメではないけど参考までに」

と見せてくれた一軒で、2DKの家賃5万円。
安! と思って家見に行く時になんとなくそこも覗いてみたのよ。

運転してくれた不動産屋のお兄さんも、

「ここはねえ〜古いですしね。やっぱりオススメ出来ないですよ、アハハ」

と、その時だけはやたら饒舌。

もう見た目がホントボロボロで、言い方は悪いけどよくこんなところに住んでる人いるよなあと思って部屋に入ったの。
もう明らかに空気が変、重いというかなんともいえない雰囲気。

「いや〜、いいところは安いだけって感じですね」

とか言いながら色々見てて、お風呂とかも汚いし、ヒビ入ってるし、こんな部屋もあるんだな〜と変な感心をしてたの。

そんで何となく押入れ開けたのね。
そしたら、押入れの天井にシャレにならないくらい手の跡が付いてるの。
うわ! っと思って閉めて、ナンダナンダ!? ともう一回開けて見たら手形が消えてるの。

青ざめてると、一緒に来ていた不動産のお兄さんが

「あ、も、もういいですか? だ、大丈夫ですか? 次いきましょう!」
>>33

と慌てて二人でその部屋を後にしたんだけど、いま押入れ見たらこういうことがあったんだけど……って車の中で話してたの。
そしたら不動産のお兄さん、

「あそこの部屋は安いって理由で人が入ることは入るんですが、すぐ出られるんですよ。なにか嫌な事があるみたいで……自分も何回かあの部屋に案内する時に付いていくんですが、何回入っても駄目なんです。なにか嫌な感じがして」

だって。
無事不動産屋まで帰ったんだけど、その話をおばちゃんにしたら

「ね、オススメできない理由が古いだけじゃなくてあるのよ。ごめんなさいね」

と言って塩をくれた。
いや〜あるんだねえ、そういう物件。

あと、運転してくれたお兄さんに無理矢理聞いた話もある(長くなりそうなんで割愛しちゃったけど)。

・押入れが一番ヤバイ(押入れから人が見てる、手が出てくる、閉めてもいつの間にか何センチか開いてるなど)
・浴槽の中に女が座っていて、けらけら笑ってる
・電気がついたりつかなかったり
・金縛りは当たり前

などなど。

だからお兄さんに、「いきなり押入れ開けられた時はビビッた」と言われた。
きっと霊の通り道かなんかなんだろうね。
私は通勤に原付バイクを使用しています。
その日は小雨がぱらついていたので駅まではバイクに乗り、そこから電車に乗って会社に行きました。

親戚の同い年の子(Aとする)がいるのですが、彼は車を利用します。
そこで会社帰りにAの車に乗せてもらい、バイクを置いてある駅まで送ってもらう事になりました。

しかし、駅に着くとバイクがありません。
盗難だと思い警察へ行こうと言ったら、Aが会社に電話したらと言います。
私は今日はバイクは駅に置いたと、確かなんだと訴えましたが、Aはとにかく会社に電話しろと言います。

事情を聞くと、私がバイクで会社へ向かっているところを目撃したそうです。
よく似た人と、よく似たバイクを見間違えたんじゃないかと言いましたが、確かに私だったそうです。

私は警察へ行くと主張しましたが、Aは会社に電話しろの一点張り。
埒が明かないので、バカバカしいと思いつつ会社に電話しました。

残業中の同僚が電話に出て、驚くべき事を口にしました。
なんと私は確かにバイクに乗ってきたと、しかもノーヘルで。今、会社にそれがあると……。
私は愕然とし、狐につままれた感じがして自分の記憶を疑いました。

Aと一緒に会社に戻ると、確かに私のバイクがありました。ヘルメットはバイクに収納したまま。
誰がこんなイタズラするんだろう? と思ってバイクに乗ろうとしました。
すると守衛の人が来て、私にこう言いました。

「あんた二人乗りしちゃ危ないよ、これ50ccだろ? ヘルメットしなきゃ」


>>36
二人乗り?
私が年配の女性を乗せて会社に来たというのです。

しかしこの話は変です。
私にはそのとき電車に乗った記憶が鮮明にありますし。
第一、電車の方が早く到着しますから、もしバイクで私が会社に来たという事は、先に会社に到着している私に後から来たバイクの私がはちあう事になるのです。
それに年配の女性なんて、幽霊じゃあるまいし身に覚えがありません。
決定的な証拠は、私がバイクのキーをポケットに入れている事。じゃあ一体誰がバイクを会社まで運んだのか?

守衛のおじさんに聞くと、私と年配の女性はヘルメットなしでとろとろ運転で駐車場へ入ってきたと。
そして駐車場の奥にバイクを停めたんだそうです。
それから後は気にもしなくて普段どおり他の車両の誘導にいそしんだとか。

さらに妙な事に、バイクの燃料が減った形跡が無いのです。レギュラー満タンのまま。

私は気味が悪くなり、そのままバイクに乗って家に向かって発進しました。
駅近くの交差点に差し掛かったところで、ふとバックミラーを見ます。

私の肩に四角い顔の年配の女性がミラーを睨んでいました。

急ブレーキをかけてすぐさまバイクを飛び降りました。
エンジンをストップさせたのですがなぜか数秒でセルスタート、勝手にエンジンがかかりました。

いよいよ怖ろしくなって、自分の肩を手で払う振りをして徒歩で帰り、Aに電話をして一部始終を話しました。
バイクはその場に置いたまま。

次の日、まだ明るいうちにバイクを取りに行きました。

後で聞いたのですが、Aに電話している最中、常に女の笑い声が聞こえていたそうです……。
私本人が体験した話です。
今からちょうど10年前、私がまだ大学生だった頃のことです。

当時、私には一つ年下の彼女がいました。
彼女は霊感の強い子でそれまでにも様々な体験をしていました。
妙な音を聞く、街中でおかしな人影を見る、金縛りにもよくあっていたようです。
特に嫌な場所(彼女が言うには、空気がよどんでいるらしい)の側に行くだけで、頭が痛くなるほどでした。

その日、いつものように僕は彼女の家に泊まりにいっていました。
場所は渋谷区笹塚にあるワンルームマンションで、甲州街道を渡り、商店街を抜けて左に折れてしばらく行ったところにある白い建物です。わずか4畳半ほどの狭い部屋で、入り口を入ると左側にキッチン、右側にはユニットバスというよくある間取りです。
部屋には窓が二つありました。一つはバルコニーに面した大きな窓、そしてもう一つ、「問題の小さな窓」が左側の壁面、エアコンの真下に、ちょうど人の胸の高さのところにありました。

その日はいつもより早く就寝し、大きな窓に添うように置いてあるベッドで二人寝ていました。
時間は覚えていません。僕はふと目が覚めたのです。
頭の上にある窓とエアコンの辺りから、パシン、パシンと何度か音が聞こえており、その音で目覚めたのでした。
妙な目覚めの良さで、頭がすっきりしていたことを覚えています。

季節は冬ということもあり、部屋の内装の乾燥による音だと思ってしばらくエアコンを見つめていました。
それが起きたのは次の音が鳴り響いた時です。

突然、隣に寝ていた彼女が「ううぇ」と何度も唸りはじめ、体を硬直させ全身震え始めたのでした。
悪い夢にうなされているのだと思い、すぐさま彼女を起こそうと僕は彼女の体を揺り動かしました。
彼女はうつろな、どこにも焦点のあっていないような目で天井を見つめたまま、こう言い始めたのです。
「おぉ、女の、中年の女の声が……『お前の子供が6才になったら、海で溺れ死にさせてやる』」

僕はなぜかとっさに思いました。さっき自分の聞いた音は乾燥による建材の音ではなく、ラップ音なのだと。
訳もわからず僕は彼女を抱き寄せて、お腹の中で叫んだのでした。
ただ頭の中にあったのは、テレビで聞いた「声魂」でした。
霊に襲われそうになった時、声にならずとも腹の底から叫べば、霊を追い払う事ができるというものでした。

「彼女のところに来るんじゃない! 来るのなら俺のところへ来てみろ!」

2度ほど叫んだと記憶しています。
2度目を言い終わったと同時に、最後の音が同じ窓のところから響きました。

パシンッ

次の瞬間、彼女がこう言ったのです。

「女が『クソッ、チクショウ』って言った……」

彼女はこの部屋に越してきてから何度か妙な体験をしており、僕にはそれを話していなかったのです。
霊の通り道というのをどこかで聞いたことがありましたが、何度か彼女はそれをこの部屋の中で体験していたのでした。

霊感の強い人間と一緒にいると影響されるとも聞きます。
それまでの僕にはこうした体験は一度もありませんでした。

興味深いのは、彼女が1ヶ月ほど前に見てもらった占いのなかで

「あなたの彼はあなたを救う星の位置にあります」

と言われていたことです。
現在、その白いマンションはまだ存在しています。
6年前の冬、12月27日か28日だったか。
その日の昼は仕事場の年末大掃除を終えて、粗大ゴミやら古雑誌なんかをゴミ置き場に出しに行った。
その時、ふと目の端っこに何かが見えた。

何となく古いっぽい桐製の箱が捨てられていた。
中身が何となく気になりフタを開けてみると、白い薄紙に何重にもくるまれた奇麗な青っぽい石で出来た玉が入っていた。

すげえモン拾ってしまった! 値打ちのある物かも! と思いゴミの中からその箱と石を持った帰った。
夜家に帰って、部屋に飾ろうと床に置いてあった箱を持ち上げると昼間よりも重く感じた。

え? と思い中の石を取り出そうとした瞬間、ビリっというかバチンと静電気? のような衝撃が手に感じた。
その時は静電気としか思わなかった。
反射的に手を引っ込めてもう一度石に触ると静電気は無く、なぜか温かい感じがした。
取り出すと、青っぽかった石が真っ黒になっていた。
昼間明るいところで見るのと部屋の暗い白熱灯の下とでは見え方が違うのかなと思った。

そう思って石を手に持ち光にかざしていたら、携帯電話が鳴った。
久しぶりに友人Aが、近所のバーで飲んでるから来ないかと言う。
珍しい事もあるんだな、あいつと飲んだ事あったっけ? しかし懐かしさが勝ち、誘いにのってバイクで5〜6分くらいのところにあるバー目指して行った。

11時くらいから飲んで夜中の3時くらいまで懐かしい話と馬鹿話で盛り上がった。二人ともかなり酔っぱらっていた。
帰りがけにAが

「やっぱ今日オマエ誘っといてよかったわ。これに懲りずに付き合ってや」

と言ったので

「あたりまえやん! いつでも誘って、誘って」

と言って別れた。
酔っていたがそのやり取りだけは何故か鮮明に覚えている。
その後バイクで家に帰るのだが、その道中は覚えていない(警察の人ごめんなさい、家に帰れた事が奇跡かも)。

家に帰って即ベッドで寝たのだろう。朝起きた時は服はそのまま、カバンも肩からかかったまま、何故かジーパンだけは脱いでいた。
何でやと思いジーパンをつまみ上げると、膝から下が真っ黒にと言うかどす黒く濡れていた。
ドブに浸かった感じに。においは特にしなかったと思う。
うわっと思いジーパンを放した。すぐにバイクでコケてドブかどこかに落ちたのかな? と体の異状を探す。
すぐに見つかった。

右手(腕から肩)が上がらない。例えるなら鎖骨の間の神経が通ってる部分をものすごい力で押さえつけられてる感じ。
無理をすれば激痛が肩から下に走る。変な寝相だったかなと思いつつも、今度はガレージにバイクを見に行った。

バイクはまったく無傷だった。という事はコケテいないという事らしい。でも痛い。
親に話すと病院に行けという事で、自転車に乗り(片手運転)救急病院へ(車で送らない親は鬼)。

レントゲンやMRIやらの検査をしたが全く異常はなかったし、医者からはホントに痛いの? 上がらないの? と聞かれたが痛いもんは痛いし、上がらんもんは上がらんとちょっとした押し問答になる始末。

家に帰ったら姉ちゃんに「何かに取り憑かれてんちゃう?」との一言で、無性に昨日拾ってきた石の事が気になりだした。
最近で変わった事といえば昨日石を拾って来た事くらいだった。
そういう幽霊とか超常現象とかは全く信じてなかったが、何となく石が気になって仕方が無かった。
急いで部屋に戻る。戻る間、何故かこの痛みは石のせいだと強く思うようになっていた。勘というやつか。

机の上の石は黒い透明? になり中が真っ赤になっていた。
それを見て背筋がゾクッとなった。
姉ちゃんにこの事を言おうと部屋を出ようとすると体がうまく動かなくなった。足が動かない。
金縛りか? これが? あれって寝てる時やろ? と初めてなる金縛りに焦りまくった。
そん時不意に、

「やっぱ今日オマエ誘っといてよかったわ。これに懲りずに付き合ってや」

というAの声が聞こえた。
聞こえたというか、頭の中で響いた。何回も言葉がぐるぐる回ってた。

そのうち何かぼーっとなって、ふと気づいたら部屋の床で寝ていたらしい。
もう夕方になっていた。夢か? 何だったんだろう。
すぐに机の上の石を見た真っ黒だった。昨日の夜と一緒だ。
何か急に怖くなり、その石を処分しようと考えた。

晩飯を家族と食べた時も昼間の事は言わない事にした。どうせまともな答えが返って来るとは思えないから。
会話はテレビの年末特番(レコード大賞? 忘れた)の話か何かだったと思う。

夕食後すぐに部屋に戻り石をどうしたものか考えた。とにかくここには置いておけない。
元の場所に捨てに行くか、適当なところに捨てるか。
何となく元の場所に戻す(捨てる)方が良いと判断し、明日仕事場のビルのゴミ捨て場にいく事に決めた。

真っ黒の石を箱にしまい、風呂に入ってさあ寝ようと思ったときに家の電話が鳴った。
友人Aだった。

「今日暇やねん、○○(昨日行ったバーの名前)で飲もうや」

おいおい昨日も飲んだやん、と思いつつもまあ別にする事も無く寝ようと思ってたからOKした。

「オマエもたいがい暇やな。でも俺今日起きたら右手上がれへんくって、バイクでは無理やわ、自転車でいくわ」

と返事し、

「うそ! 怪我したん? 原因わからんの! 大丈夫なん? そら大変やな、ほんじゃまた今度にしようや」

とAは言ったが

「ええよ、行けるから」

と行く事に。
距離的にもまあ行けない事もないし、片手がちょっとなれてきた事もあり難なく到着。
年末だからかバーに客はAしか居なかった。
第一声、僕が

「でもそういやオマエ、何で家に電話したん? 携帯にくれたら良かったのに」

と言うと

「ひっさしぶりやなーしかし、元気しとったか? って手上がらんねんな。つうかオマエの古い番号しか知らんし」

「アホ、何言うてんのん。今日やん別れたん、今日。まだ酔うてんのかぁ?」

「今日て? 何言うてんの? オマエ、今日なんか会ってるわけないやん」

「昨日から今日という意味や。もうえぇって! とりあえずちゃりんこ片手運転して来てんから、ビールぐらい飲ませろや」

「わけわからん、久々に会ったらキモさ爆発やなオマエ」

「おっ! とりあえず何かわからんけどお疲れー!」

乾杯。

「つうか昨日の帰りの事全然覚えてないねんけど、オマエちゃんと帰れた?」

「オマエな、さっきから何キモいこと言ってんのん? 頭おかしいんちゃうか?」

「○○さん!(マスターの名前)昨日こいつと俺来てたやんな!」

「いや、二人とも来てへんかったよ」

気になって携帯の着信履歴を見た。
昨日の着信は3件、その中にAの名前は何故か無かった。
というかマスターいたっけ? と自問自答。

「あ〜ぁ、こいつの嘘バレバレですよね〜」

「ちょ、嘘ちゃうって」

と昨日の状況を思い出そうとしたが、何故かどうしても思い出せない。
かろうじて覚えている「やっぱ今日オマエ誘っといてよかったわ。これに懲りずに付き合ってや」という事を言うと、

「俺そんなん言ってないし、夢ちゃうん? それ夢やって。ああ夢、夢」

「いやそんな事無いって、でも全然思い出されへんねん。何でやろ?」

「オマエ一回病院行った方がいいんちゃう? 記憶ないって何か怖いやん」

「ちょう待てって。じゃあオマエの言う事がホンマやとして……俺はオマエの携帯番号も知らんし、昨日オマエと飲んでも無い。というか大阪におらんかった。証拠もある」

と言って福岡市にあるホテルの領収書を見せてきた。日付は今日の午前チェックアウト。どうなってんの? これ。
俺頭おかしくなったんかな? と思い、整理のつかない頭でうおー! 思い出されへん! ともがいてる時、Aが突然言い出した。

「ちょっと真剣に聞いてほしいねん」

Aはちょっと寂しそうに話した。

「明日な、○○(Aの弟)の命日やねんな? でやな、何かしらんけどお前らの夢を見た訳よ。で、懐かしくなってというか、まあ後で言うけどオマエに会わなあかんと思った。弟死んだん5年も前の事やからオマエは忘れてるかも知れんけどな、昔はよう遊んだな悪さして。あの日な俺、弟死ぬん何となく知っててん。これは後やから言える事かも知れんねんけどな。何かな、俺昔から知ってる人とかの夢を何日か立て続けに見る事があるねん、何か最初は白黒やねんけど、途中からセピア色というか真っ赤に変わって行くねん。その後、その人にあんまり良くない事が起きるような気がするねん。怪我とか、あと、死んだりとか……で、弟の時も1週間くらい前からそういう夢見てて(弟の夢)、偶然かも知らんけど弟の時も真っ赤になってん。その後あいつ死んでもうた」
「死ぬんがわかる? んなわけないやん! オマエもうちょっとマトモな嘘付けって! 言っとくけど俺のは嘘ちゃうで!」

「いや、死期がわかる人っておるらしいで。俺の連れもそんな事言ってた奴おった。そいつのオカンもそういう人やった」

「まあ、おれがそうかどうかは知らんけど、結果そうなってしまったんや」

「まあええわ。で? その死ぬんがわかる夢って」

「そう、昨日見た夢や、いきなり3分の2くらい真っ赤やった。正直こんなん初めてやしどうして良いかもわからんし、とりあえずオマエに会いに来たっちゅうわけや。詳しく言えば何か草原みたいなとこにオマエと弟がいて、その草みたいなゆらゆらした地面が真っ赤やった。ちょうどこれくらいかなぁ」

と膝下位をさした。

「だいたい赤い夢見る時は白黒からジワーってゆっくり変わって行くんやけど、いきなり赤いのは見た事無いからびっくりしてん」

「俺どないかなるかも知れんってこと? この手かな?」

「それはわからん。そうかも知れんし、違うもんかも知れん」

「死ぬかも知れんという事?」

「わからんねん、そればっかりは」

「でもな、いきなりそんなん言われても、信じられるわけないやん!」

そんなやり取りをしてるとAが泣きそうな顔で言った。

「その夢にな、俺もおってん」
「俺と弟ちゃうんか? そんなん最初に言わんかったやん」

「言うたら死ぬんちゃうかと思って、言えんかった」

「そうか、俺は死んでもええと、オマエ最悪やな」

「死ぬとは決まった訳じゃないって、ただの夢やし」

「そうやな、ただの夢でギャアギャア言うなよ。シャレにならんでほんま」

実は僕はかなり怖かった、ただAの出来の悪い夢を笑うしかなかった。
でもそれは笑えない事だと思い始めた。

……今朝見たジーパン。
頭の中がむちゃくちゃになって来た。昨日僕はAと会ったのか? 会ってないとすれば一体誰に会ったのか? というかどこに行ってたのか? AではないAと?
携帯の番号も知らない、バーにも来てない、Aの見た赤い夢、膝下が赤く染まる夢、今朝見た膝から下がどす黒く濡れていたジーパン……。

一気に押し寄せて来て頭が痛くなり、耳鳴りもする。あまり酔っては無かったと思う。
今はもう何も考えられない。無理だ、もう帰ると言うと、Aが送って行くと言い出した。
それを僕は断った。何となく嫌な気分になったから。

Aと僕はバーを出た。Aはまだ何か言いたそうにしていたが、構わずに自転車に乗った。
Aは最後に「気をつけて帰れよ」と言った。
僕は「オマエ、人の事言えへんねんで」と言った。
笑うと思ったがAは真顔でうなずいた。
僕はあわてて目を逸らした、何か分からんけど嫌な感じだった。

自転車片手運転で家に到着。
到着するなり誰かに後ろからドンと背中を押された。その直後携帯が鳴った。
後ろを振り返ると誰もいなかった。電話はAだった。

「何? どうしたん?」

「どうしてるかなと思って」
やたら元気な声に、さっきの話は嘘だと直感した。
ふざけてるのかとAに何か言ってやろうと思った。

「何が、どうしてるって何?」

「大丈夫か?」

「昨日さ、あんだけ酔っぱらってたやん2人共」

「う、うん。で?」

「ちゃんと帰れたかなと思ってな」

でも何か違う……今度は違うのがわかった。何かさっき会ってたAじゃ無いのがわかった。
雰囲気か? 空気みたいなものが違う気がして

「オマエ何言ってんの? オマエさ……A?」

「……迎えにいこうか?」

「来んでええ、来んでええ!」

「迎えにいこうか!?」

「来るな! 来るな!」

途中で携帯でしゃべってたはずが、頭の中でぐるぐる声が回る感じになり(昼と同じ)、多分気絶したんだと思う。
朝、玄関の入ったところで寝ていた僕を起こした母が一言、

「あんた、ええ年しておねしょするってどういう事?」

黒のパンツが腰辺りから下がびっしょり濡れていた。においは無い。
携帯の着信履歴を見た。Aの名前はやっぱり、というか無かった。

その日の昼すぎ、事場のビルのゴミ捨て場に行く事に。自転車片手運転で駅まで。
地下鉄に乗り仕事場のゴミ置き場に向かった。
箱ごとビルのゴミ捨て場に捨てようと思い、最後に恐いもの見たさで箱の中をのぞくと、腰が抜けそうになりその場にへたり込んでしまった。
石が真っ二つに割れていた。
色は真っ黒に中が真っ赤になっていた。
むちゃくちゃ怖かった。手がものすごく震えだして止まらなくなった。
最初この時間くらいに見た時は青っぽかったのになぁと、怖さで混乱してそんな事を思ってしまうほどだった。

急に震えが止まった、体はかなり冷えていた。
玉の入った箱をゴミ置きにお置いて、足早に駅へ。
駅までは行ったが、石を捨てた開放感? があっても、何かすっきりしないので、普段はやった事の無いパチンコ屋へぼーっと玉を追いかけてると、よけいな事を考えずに済んだ。

気がついたら日が暮れていたし、金もほとんどなくなっていた。
夜家に帰って夕飯を終え風呂に入ってると、夕方から用事で出ていたオカンが帰って来てオカンが

「あんた! どこいってたんな! 何回電話しても携帯も通じひんし! 留守番電話聞いてないの? あんたA君っておったやろ? 亡くなったらしいで、電話あってA君のお母さんが一度電話くれって」

Aが? 嘘やろ! と思いつつA宅へ電話する。

「もしもし、○○(僕の名前)ですが」

「ああ、○○くん……ちょっとね大変な事になってね、ちょっと奥さん呼んで来るから待っててね」

何か向こうはざわざわしている。

「○○君? Aがね」

「母から聞きました、今から行きますわ」

「いや、通夜はもうちょっと後やから今日はええよ明日でも。本人おらんしな」

「いや今日の方がいいんです。僕昨日Aと会ってるんです」

「多分そうやろうと思いました。それやったら、まあ家に来てください。気をつけてね」

電話を切りその足でタクシーを呼びA宅へ、昔はちょくちょく行ってた家だ。
A宅に着くと、Aママが見せたいものがあるからとAの部屋へと案内された。
開けた途端にちょっと嫌な感じがした。
ガラステーブルに落書き帳? 画用紙のやつがぽつんと置いてありそれを開けてみろと言われた。
中に書いてあったのは僕とAママ宛への手紙だった。
中身はこんな感じ(全文ではないです)。

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おかんへ。
おかん、これ見たら○○へ電話してこれ読むように言って。絶対に!

○○へ。
昨日は変な事急に言ってごめんな。
でもオマエも十分変な事言ってたで、俺に会ったとかかなりキモイ事言ってたしな。

で、夢の内容やけども、あの後家帰って見たのは下半身全部赤かった。
そんで、じわじわ首の方まで赤くなって行きよった、もちろん俺もや。
気になってんけど、オマエはなんか黒い何かを持っててその回りが異常に赤かった。
何かの固まりみたいなもん。それしか分からん。

今日は弟の命日やけど、ひょっとして俺の命日にもなるかも知れんなぁ。アホみたいな話しやけど。俺ら誕生日同じ日やしな。
オカンには悪いけど先に行くかも知れんから、先に言っとくわ、生んでくれてありがとうな。
何やろうなこれは、こう引っ張られる感じって。最近何かに引っ張られる感じがするわ。

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手紙はここまでしか書かれていませんでした。
後半はちょっとした遺言? みたいになっていた。死ぬのがわかったのかどうかは誰にもわかりません。
Aママがお茶でも入れるわと、台所へ行った。その間手紙以外何も書かれてない落書き帳をぺらぺらめくっていて、思わず手が止まった。そこにはあれがあった。

真っ黒な大きな丸が書かれていた中心は、クレヨンで真っ赤に塗り潰されていた。
何度も何度も塗り重ねて黒が盛り上がってた。
ページの端の方に小さく何か書いてあった。というか鉛筆で書いて消しゴムで消した感じ? 書かれてないけど、書いた跡。

「探し物」って。

しかも誰が見てもAとは明らかに違う筆跡で。
はっきり言って今でも一番鮮明に残ってる場面。後は何かようわからん話ですが……。

どういう状況か分かりませんが、Aはベッドの上で眠るように亡くなっていたそうです。
Aママが昼前になっても起きないAを起こそうとしたら呼吸しておらず、病院へ運ばれその時はすでに亡くなっていたそうです。
病院で服を脱がす時、足から首にかけて何本か赤いミミズ腫れのようなものがあったと言っていました。

Aが手紙を夢から覚めてすぐに書き、何か途中で眠たくなって寝たのでしょうか。
石の事も含めなにも分かりませんが、なぜか全てが石を拾った直後に起こった出来事です。
石に助けられたのでしょうか? Aに助けられたのでしょうか? 石とAが何か関係あったのか知りません。

12月31日夜中から1月2日の朝まで40度くらいの高熱が出た。
夢に何度もAが出て来た。何か叫んでるようだったが何か分かりません。
ゴミ捨て場にも行きました。もう無くなっていました。
僕の腕は正月明けの1月5日(たぶん)にふと上がるようになりました。
それ以来は何も起こっていません。

Aママから後から聞いた話だと、偶然にも弟も亡くなった時と同じ感じだったらしいです。
Aは自殺かと思われましたが、心不全みたいな事になったみたいです。めちゃ怪死だと思うんだが。

そういう事なので、Aママの所に警察関係の人とか来て事情聴取されてたみたいですが、外傷(ミミズ腫れは何故かすぐひいたらしい)や薬物(毒?)反応もなく殺人ではないと判断されました。
父親はAが5歳のときに亡くなったらしいのだが、Aパパは人の死期がわかる人だったらしい。

話中の台詞はこんな感じだったという記憶ですんで、そのままではないです。
ちなみに手紙にあったようにAとA弟は同じ誕生日、僕も実は同じ誕生日です。
今もちょっと年末が怖いです。
Aは山の中にある小さな小屋に住んでいる。
Aはその小屋に向かおうとしていた。

「あれ? 道を間違えたか?」

あわてて周りの景色を見渡す。どうやら本当に迷ってしまったようだ。
Aは車の中で一日を過ごすなんて嫌なので、とりあえず車を走らせることにした。

30分くらい走り続けると、なにやら赤い塀が見えてきた。
Aは初めて見る光景に驚き、地図を見てみると、山の中腹あたりに「赤い街」と赤い文字で書かれていた。
Aはとりあえず入ってみようとした。入り口から街の中に入ろうとしたとき、

「好きな色はなんですか?」

女のような男のような、老人のような子供のような、なんともいえない声が背後からした。
ビックリしたAは振り返る。そこには誰もいない。いるはずがない。

赤い街だから「赤」と答えないと入れてもらえないかも……。
そう思い「赤」とAは答えた。

すると車が勝手に動き出した。
Aは急いでブレーキを踏むが、車は止まらない。

Aは街中の風景を見て、絶句した。
赤い壁で出来た赤い家だけが立ち並び、床は真っ赤に染まっていて、住民の靴も服もズボンも赤ずくめだった。

暫く車は走り続け、他の家よりもちょっと大きい家の前で停車した。
すると、背後からさっきと同じなんとも言えない声がした。

「ここが貴方の家です」

Aは車から出て、ゆっくり赤い家の中に入っていった。
思った通りの光景。

机も赤い。椅子も赤い。たんすも赤い。カーテンも赤い。ゴミ箱も赤い。キッチンも赤い。冷蔵庫も赤い。
Aはたんすの中にしまってあった赤い服を取り出し、赤い服を着た。赤いズボンも履いた。赤い靴下も履いた。
Aはなにもかもが赤い世界に驚き、最初はなにもできなかったが、目が慣れてくると意外と居心地がよくなってきた。

Aはお腹が空いた。そこで赤い冷蔵庫を開けた。
赤い身が沢山おいてある。多分人肉だ。
ムシャムシャ食べる。美味しい……。
喉が渇いた。赤い蛇口をひねる。赤い水が出た。多分誰かの血だ。
ゴクゴク飲みほす。美味すぎる……。
赤い家具を買いたい。そこで赤い店に行った。
でも赤いお金が必要だった。
なので、赤い住民じゃない人間を殺し、赤い人肉を500グラム集め、赤い人肉を渡し赤い家具を買った。

赤い本を読みたい。そこで赤い書店に行った。
赤い水が必要だと言われた。
なので、赤い住民じゃない人間を殺し、赤い水を1リットル集め、赤い水を渡し赤い本を買った。
薄い赤の紙に濃い赤で書かれた文字。読んでみてとても面白かった。

赤いペットがほしい。そこで赤い店に行った。
分かってる。赤い身だろ? はい、1キログラム。そう言って、赤いペットを買った。
多分赤い猫だと思う。とってもかわいい。
遊びたくなってきた。そこで赤い街から出た。

Aは赤い住民じゃない人間をを殺した。
いや、正確には殺しまくった。
赤い身、赤い血。すべて喰い、すべて飲んだ。
殺して、喰い。時には集めて赤い家具を買い、殺して、飲む。時には集めて赤い本を買う。それの繰り返し。

そして、ついに赤い住民は「赤」という色以外を抹殺し始めた。
青も、黄も、緑も、茶も、紫も、白も、黒も。

今は、山の中から「赤」以外を抹消中。
木の茶も赤い血で染め、葉の緑も赤い血で染める。
やりはじめると、病み付きになるよ。
いずれ貴方も赤い住民に殺されお金になる運命なんだから、今から赤い住民にならない?
簡単、簡単。最初の入り口で「赤」と答えるだけで街に入れるよ。

だから貴方もぜひ、おいでよ。
とっても素敵な場所だよ。赤い街は。
ええとこんばんは。皆さんは赤口(しゃっこう)さまって遊び知ってますか?

こっくりさんみたいなものなんですが、こっくりさんは占いとかの為じゃないですか?
赤口さまは違うんです。赤口さまは呪いの為。つまり根本的に目的が違うんですね。

ここで「そんなの聞いた事ねえよ」って人がほとんどだと思います。
それもそうでしょう。これはもともと「表」の遊びではありません。
もともと「遊び」という言葉は今使われている意味ではなかったそうです。
「神」との交信の様な意味だったそうです。この遊びはそういった意味の「遊び」なのです。

前置きが長くなりました。私がこの遊びを知ったのは去年の事です。
同僚のSと飲みに言った時の事でした。

「Oのヤツ、ホント腹立つな」

ポツリとSが漏らした言葉に私はおおいに賛同しました。
Oというのは私達が所属していた部署の上司で、性格が悪い上に部下の手柄を横取りしたりするような人間で、職場の皆に嫌われていました。
しばらくOの悪口を言っていた私達ですが

「なぁ。Oに一泡吹かせてみんか?」

興味を持った私はSに詳しく話しを聞いてみました。
聞くところによると、Sの実家の方には赤口さまという呪法があるそうです。
それを行えば呪った相手に様々な危害を与えられるというのです。

酔っていた事もあり私は「やろうやろう!」と承諾してしまいました。

それから一週間後の事です。
私の携帯にSから電話が入りました。

「おうKか? こないだ言ってた赤口さまやるからHの家にきてくれや」

すっかりそんな話など忘れていた私は正直めんどくさいので嫌でしたが、しぶしぶ行く事にしました。
軽く着替え車に乗り込みHの家に向かいました。

「いつのまにかHまで巻き込みやがって……」
そんなことを考えながらHの家に着きました。
中に上がるとSとHが私を迎えました。

「おう、よくきてくれたな。これ3人じゃないとできんのよ」

そういえばこの間もそんな事を言っていました。

「これやるには3人じゃないとできん、できんのよ」

なぜ3人なのかはその後のSの説明で解りました。

まず赤口さまをやるには、3人が等間隔で三角形になるように座ります(正三角形ですね)。
そして3人の前に一枚ずつ紙を置きます。紙には50音を書いておくのですが、今私達が使っている「あいうえお」ではなく「いろはにほへと」のほうで書きます。
そして裏面に自分の名前を書きます(Sの前の紙ならS、Hの前の紙ならHです)。
一人目は二人目の方を向き、二人目は三人目の方を向きます。
三人目は三角形の中央を向き、その中心に赤口さまへの供え物と同じく50音を書いた紙を置きます(ちなみに「供え物」はSがどこからか拾ってきた野良猫でした。遊びでも気味が悪いと思いました)。

「じゃあ始めるか」

Sに教わった通りに私とHは怪しげな言葉を紡ぎました。
順番はH→私→Sです。

H「一つ一人の恨みを連ね」

私「二つ二人の恨みを重ね」

S「三つ御霊を御呼びしたい」

だいたいこんな感じでした。
果たして周りにはなにも変化はなく、Hが

「ははは、やっぱこんなもんか……」

その時でした。辺りの空気が変わったのが感覚で解りました。
さっきまで何ともなかった空間が急に重苦しくなり、言葉を発する事すらできません。
3人とも無言になり辺りが異質な静寂に包まれました。

見るとSが顔を真っ青にしながら手を四枚目の紙に伸ばしています。
指は文字を指し示し始めました。

「う、ら、み、つ、ら、ぬ、る、も、の、を、し、め、せ」

次にHの顔が青ざめ、自分の紙に指を這わせます。

「@、@、@、@、@、@(Oの名前)」

Hまでがおかしくなり、私はこの場から逃げ出したくなりました。
しかし異変は私にも起こりました。
指が勝手に紙へ向かうのです。

そして紙の上で止まりました。
つまりは恨む相手を教えろという事なのでしょう。

「@、@、@、@、@、@」

自分の意思でOの名前を指しました。

正直ここまでの事が起こるとは思いませんでしたし、もしや本当にOに何か起こるかもしれない、そう思いましたがどうする事もできません。

そしてSの番が来ました。Sの腕は中央の腕から自分の紙へ移り

「@、@、@、@、@、@」

こうして3人が3人ともOの名前を出しました。
もうこの後どうなるのか、3人とも死んだような顔をしていたと思います。

するとまたSの腕が中央に向かいました。

「う、ら、み、つ、ら、み、し、か、と、と、ど、け、る、か、わ、り、に、く、ち、に、の、り、を、さ、せ、よ」

途端ビクンとSが震えました。次の瞬間Sは猫に覆い被さります。
ボシュッ

そんな感じだったと思います。

Sは猫の首に喰らいつきました。骨を砕き肉を喰らうSは正に鬼でした。
猫は目を飛び出しそうな程見開きましたが間もなく気味悪く痙攣し始めました。
そのままSは頭に口を移し、猫の頭部を三分の一程喰らったと思います(食事中の方すいません)。
猫の頭から脳? らしき物がずり落ちていました。
Sの口は猫の血で真っ赤に染まっていました(恐らくこれが赤口さまの由来でしょう)。

そこでSは正気に戻ったようです。その場で嘔吐し猫の一部だった物はその場にでてきました。
Sはそこでうずくまりガタガタと震えていました。
私とHで無言のまま猫の死骸を片付けました。あの時の嫌な匂いはしばらく忘れられませんでした。

どうにかSを落ち着かせ自宅に送りました。
一人家に残されたHはさぞSを恨んだでしょう(猫の血だけはどうしても落ちず後で床を一部取り替えたそうです)。

次の日、昨夜の嫌な事を思い出していた私は、会社に行きさらに驚きました。
昨夜Oが車に引かれ死んだというのです。しかも一度引かれた後に二台目の車にひかれ頭部は破砕、即死だったとの事でした。

私とS、Hは罪悪感よりも恐怖に怯えました。言い様のない恐怖でした。
私達は絶対に他言すまいとこの話を封印しました。

Sはしばらくして会社を辞めました。今はというと精神科に入院しています。
あのあとしばらくしてSはHを食べました。ちょうどあの後から4日目でした。
といってもHは右耳を食いちぎられた程度で済みましたが。
Sはそのまま施設に送られました。Hと私は今も会社に勤めています。

何故この話をここで書いたかというと、私のところに赤口さまがたびたびくるからです。

「ま、だ、ま、だ、た、べ、た、り、な、い、た、べ、た、り、な、い、た、べ、た、り、な、い、た、べ、た、り、な、い、た、べ、た、り、な、い、た、べ、た、り、な、い、た、べ、た、い、た、べ、た、い、た、べ、た、い」
最近Sを見るとどうにも食欲が止まらなくなります。
Sも同じようで私を見る目が明らかに違います。このままでは私達はどちらかに食われるでしょう。

これを見た方、お願いです。
どうか憎い人がいましたら赤口さまを呼んでください。
そして赤口さまに供え物を捧げ貴方の憎い人を消して下さい。そうすれば私達は助かると思います。

お願いします。どうか赤口さまを呼んでください。貴方にも悪い話ではないです。
お願いします。赤口さまを呼んでください。お願いします赤口さまをよんでください。
この体験は、私が小学生の4〜5年生の時の出来事です。

季節は秋から冬へ替わる時期でした(多分10月から11月にかけてかもしれない)。
私の母校の近くに倉庫がありまして、その頃は学校の怪談やオカルトチックな話が好きな友人と一緒に「期末テストが終わったら、あの倉庫に行かへん?」と、ちょっとした探険隊ごっこを計画していました。

そして期末テストが終わり、例の倉庫を探索する日になりました。
メンバーは私を含め5人です。私達は夜中にうまく家を抜け出して、倉庫の前の広い駐車場に集まりました。
友人の話では、その倉庫はオバケが出ると有名な所です。私達は恐る恐る中に入りました。

倉庫の中は、案の定真っ暗でカビ臭く、もうすぐ冬だというのにジメジメしています。
「なんか出そうやなぁ」と友人はワクワクして言い、私達5人はまず2階に上がろうと思って2階へと登る階段を捜していたところ、1人が「ひぃっ!」と言ってその場に座り込んでしまったのです。

私達は「一体何が起きたんだ!」と思い、へたれこんでいる友人を見ました。
そこには単にひび割れた等身大のガラスがあって、私の友人は自分の姿を見てビックリしただけでした(笑)。

早速彼を起こして2階の階段を捜していたところ「お〜い、あったぞ〜」と友人。
そして私達は2階に登りはじめました。

その階段は人1人が通れる位のスペースしかなく、皆1列に列んで登ってゆきます。

ギィコ、ギィコ、ギィコ、ギィコ、ギィコ

階段の床は木の板が貼ってあり、踏むと音が鳴るのです。

ギィコ、ギィコ、ギィコ、ギィコ、ギィコ

階段の踊り場についた時に、シミの漬いた壁には小さな鏡がありまして、懐中電灯の光が反射して皆の姿がうっすらと見えます。
「あれぇ? 5人で来たよなぁ」と私。
鏡に写る皆の姿がおかしいのです。しかし、悲しいかな子供と言うのは深く物事を考えないのであります。
だが、これがすべての始まりでした。

2階に到着した私達は、念のため点呼を採る事にしました。

「?山」「はーい」(伏せ字ですんません<(_ _)>)

「?崎」「はーい」

「?本」「はーい」

「野?」「はーい」(と私を入れて計5人)

「よーし。じゃあ出発!」ずんずん奥へと進みます。
だが皆の足音がなんかおかしいのです。

正確に表現するのは難しいのですが、例えて言うなら軍隊が行進する様な足音がするのです。
しかし、その原因不明な足音はかすかに聞こえてくるので、私以外は聞こえていない様子でした。
それにしてはやけに足音が近くで鳴っているので、怖がりな私はいよいよ怖くなってきました。
その足音は、我々の後を追いかけている様な気がしたからです。

我々一行は、2階の角部屋に到着しました。男子トイレです。
「おお〜。いかにも出そうなところやな〜。どう? 1人ずつ入ってみようや」
野?君が言いました。私達はジャンケンをして、負けた人から順に中の様子を探ってこようという事になりました。
1人、2人、3人、ついに私の番が来ました。

キィ〜

中は意外に荒れていなくて拍子抜けしました。
長方形の部屋に窓がひとつ。その夜は曇りで、月は雲に隠れていてしんしんとした暗闇が広がっているだけです。懐中電灯の灯りだけが頼りでした。
その時、

ザンザンザンザンザンザン……

例の足音が聞こえてきました。
その足音は私の周りを廻っています。

ザンザンザンザンザンザン……

やっと事の重大さに気付いた私は飛び出る様に男子トイレを後にしました。
私はこの変な出来事を皆に話しました。
話し終えると1階で鏡の自分で驚いた友人が、「そういえば、なんかわからへんけれども、さっきからジッと誰かに見られてる様な気がして、嫌やねん」との事。
彼が言うには、360度からずっと視線を感じていたそうで気が重かったそうです。
皆が口々に「……出たか?」と言うと、皆一斉に寒気を感じました。言葉では言い表せないプレッシャーを360度すべてから身体が感じていました。
その時、

ザンザンザンザンザンザン……


ザンザンザンザンザンザン……


ザンザンザンザンザンザン……


顔にまとわり付く様な嫌な空気が。

ザンザンザンザンザンザン... 


今度は皆にも聞こえる様です。 

ザンザンザンザンザンザン... 


友人が「か、帰ろう」と言うと、皆もそれに賛同してゆっくりと来た道を引き返す事にしました。
出口に向かう間ずっとあの足音は私達の後をついてきます。

慎重に階段を降り、1階に着きました。そして皆は走って倉庫を後にしました。
何故か私は走って出口に向かうと背中を引っ張られる様な感覚があり、気味が悪くなって一目散に走り抜けました。

皆無事に出て来たところで倉庫の方を振り向いて見てみました。
そこには無数の人影が2階の窓から私達を見ているのです。
街灯も殆ど無いというのに、ハッキリと見えました。

<後日談>

あの頃の体験は今でもゾっとします(泣)。
私が今も鮮明に覚えている事は、その内の一体(1人?)が「にやり」と笑った気がして……。
俺の住んでた実家、まぁマンションなんだが、これがちょっと地元で有名でね。
そう、自殺者が多いので有名なんだ。うん、これから話すことも事実だ。

ちなみに、俺の住んでる場所は13階。そして非常階段の隣。
要はその階の一番端に住んでいたんだ。まぁ、今でも住んでるけどね。

その非常階段ってのが、よく飛び降りが出る場所でね。
ちなみに14階建てのマンションなんだけど、14階から飛び降りて、何を躊躇ったのか13階の手すりを掴もうとしたヤツがいる。
その時の跡が一ヶ月くらい残っていたりしたんだ。
そう、その手すりを掴もうとした跡が残っていた場所、そこが俺の家のすぐ隣の非常階段だったんだ。

そう、言っておかなきゃならないことがある。
昔、俺と弟は同じ部屋にいてね。その部屋っていうのが、玄関を入ってすぐの部屋。もっとも非常階段に近い部屋だったんだ。
そんな俺と弟の部屋。玄関外の廊下沿いにある部屋。
廊下沿いに窓がある。うん。結構大きい窓、それと天窓があるんだ。
そんな部屋にいたもんだから、誰かが非情階段や外の廊下を使うとすぐ音で分かるんだ。あ、今人が通ったってね。

そう、あれは確か13階の手すりの跡が消されたすぐ後のことだった。
俺と弟は部屋でゲームをやってたんだ。けっこう熱中しちゃってね、気づいたらもう夜の1時になっていた。
そろそろ寝るか〜、なんて言いながら、弟と布団を敷いて寝てたんだ。

足音が聞こえる。外から。

もう長年二人で住んでる部屋だからね、誰かが家の前を通ると音ですぐ分かるんだ。
廊下の向こう側からこっちに歩いてくるな、ってね。最初は全く気にならなかった。
いつものことだったんだ。
でもその日は違った。足音が長すぎたんだ。
ずーっと聞こえるんだよ、足音が。
それは弟も気づいててね、二人でうるせぇよな何やってんだ、なんて暗い部屋で喋ってた。
だって本当に長いんだ。時計を見たらもうすぐ3時になるっていうのに。

弟はあまり気の短い方じゃなくてね、3時になったら窓開けて顔見てやる! なんて息巻いちゃってさ。
それで二人でそろそろと窓に寄っていって、誰が外でずっと歩いてるのかを見ようと思った。
分かる顔だったら苦情でも入れてやろうと思ってさ。

そして、3時になった。

凄いでかい音がした。
ガシャーンって音だ。
でも、俺たちには聞きなれた音だった。非常階段のドアが閉まった音だったんだ。

うちのマンションの非常階段の入り口にはドアがついててね、それが閉まる時はすごいでかい音がする。
本当、ガシャーンというでかい音。
ということは、外を歩いてたヤツは非常階段へ抜けてったらしい。

一応2人で窓から廊下を覗いたけど、人影は無かった。
でも、始まりはそれからだった。

毎晩、足音が鳴るんだ。
深夜1時半から3時まで。そして3時になったら非常階段を出て消えていく人。

最初はね、こう思ったんだ。
その時間にマンションの中を散歩してる人がいるんじゃないか? もしかして、新聞配達の人の足音なんじゃないか?
ま、ガキの考えるレベルだった。
でも、1時間半も自分の家の前を歩き回るってことについては全然分からなかったんだ。

弟が先に耐えられなくなった。

「足跡がした瞬間に窓を開けて、正体見てやろうぜ」
そんな提案を持ち出した。うん、俺だって前から気になってたんだ。
決行は今夜。二人は深夜1時半まで部屋を暗くして待った。
部屋が明るいとこないかもしれない、なんて変な思いを持ってたからね。

そして1時半。足音が聞こえ始めた。

よく聞くと、その足音っていうのは変だった。
こっちに向かってきているように聞こえるけど、全然こっちにこない。
そんな足音だった。なんだか嫌な予感がした。

弟はそんなことには興味がないのか、正体を突き止めることだけが全てだった。

「兄ちゃん、いっせいのせ、で開けるぞ」

俺は頷いた。
そして、不可思議な足音の正体発覚までのカウントダウン。

「いっせぇの、せ!」
俺たちは一気に窓を開けて足音が向かってくる方向を見た。
直後だった。

ガシャーン!

顔を向けた方向の後ろで音が鳴る。聞きなれた非常階段の音。
さっきまで部屋に近づいてるはずだったのに……。

弟はやたらと悔しがった。
恐怖よりも、正体を暴けなかったことに憤慨しているようだった。
そして弟はまたもや迷惑な案を出した。
夜一時半に外で隠れて待って、正体を突き止める。それが弟の意地の案だった。

俺はもう正直付き合いたくなかった。嫌だったんだ、関わるのが。
危害を加えられないから別にいいじゃない、弟に言った。

「じゃあ俺一人で行くよ!」

弟はまたもや憤慨。
しょうがないから着いていく俺。

その夜、弟と俺は3時まで喧しく鳴らされる非常階段のドアの向こうで待った。
そしていつもの様に足音は近づいてくる。
時計を見た弟。あと1分。あと30秒。あと10秒、9、8、7……。

突然、非常階段の前で足音が止まった。
そして聞きなれない音。

ガチャーン!

俺と弟の部屋の窓が割れる音だった。

次の日、弟の学校から電話があった。
2階から落ちてきた鉄アレイが肩に命中。病院へ行ったらしい。
そして俺もその日40度の熱を出して病院へ行く羽目になる。

そして次の日から、外の足音はぱったりと消えた。
その後、全く足音はしなくなった。いや、それには理由があったらしい。
窓ガラスが割れた夜、いろいろと親に問い詰められた。
俺と弟は正直に答えた。親には内緒で足音の調査をしてきたことなど。

その話は親から管理人に報告され、管理人は俺の部屋の横の非常階段でお払いをすることになった。
お払いは俺たちが学校に行ってる間に済まされた。
たぶんそのせいで足音は消えたんだろう。親はそう言った。

――それから約数年経った。俺と弟は大学生になっていた。

その頃俺は一人暮らしをしていて、実家に帰ることは稀だった。
しかしその日は友人と遊んでいて電車がなくなってしまい、なんとか実家へ送ってもらって実家に一泊することになった。

(ドア、変じゃねぇのか?)

俺は最初そう思った。時間は夜の3時。別に酔ってはいなかった。
ただ、非常階段のドアがゆがんでみえる。目の錯覚?

俺は近づく。だって、その非常階段のドアの目の前が俺の家なんだから。
進まなくちゃ。進まなくちゃ。

進んでいくと、やっと見えた。
どうやら非情階段のドアの前に何かがあるらしい。

白い煙? 弟が窓開けてタバコでも吸ってるのか?
なんだよ。びっくりさせやがって……。

でも変なんだ。その煙、人の形をしてたんだ。

俺は進んだ。だって進まなきゃ俺は家に入れない。
進んだ。もう少しで家の前なんだ。もうすぐ。
見たくない。でも、俺は白い人の形の何かをずっと見ていた。

でも近づく。もしかして、足音はこいつか?
懐かしい記憶が甦る。こいつか? こいつなのか?
俺は進んだ。
もうすぐ俺の家の玄関の前。もうすぐ。
白い人の何か……消えた。
非常階段に吸い込まれるようにして消えた。
俺はそのまま玄関の前まで行き、玄関の前に立った。

消えたか……。
そう思って玄関の鍵を開けようとした時だった。

後ろで風が吹いた。
反射的に、後ろを向いた。

そしたら、見たんだ。うちのある階の一つ上、14階から落ちる白い布切れのようなもの。
人だった。間違いなく、人だった。年配の男性。真っ白だったけど、分かった。
はるか下へ落下していく白い影。下を覗いた時には。もう見えなかった。

あれか、多分俺と弟が追い求めた足音の正体。
14階から飛び降り、13階の手すりに跡を付けた誰か。
とりあえず、俺はすぐに家に入った。

そして俺は考えたんだ。
お祓いしたよな? もう数年前だけど確かにお祓いした。それから足音は消えた。
確かに足音は消えた。でもまだいる。俺の家の横の非常階段にはまだいるんだ。

この話、弟には言っていない。
前の時は偶然だったとしても、もしかして本当に怪我に関わっているなら、弟ならやりかねない。
また怪我が起きるかもしれない。そう思ったんだ。

その次の日、俺は川越で車にはねられた。
俺の住む所からまず言うわ。
埼玉の月の輪って所。森林公園が一番近いのかな。東部東上線。

もの凄い田舎で、深夜とか誰も歩いてない位のド田舎。
住宅地だからさ。一人暮らしの人も多いのね。

二週間位前かな。
今くらいの時間に部屋に帰ってきて、窓を開けながらタバコを吸ってた。
俺のアパートの左側には学校があって、こんな夜だから流石に電気なんかついてない。

んで、物思いにふけながらタバコを吸ってると。
学校の教室なのかな?三階位の部分の部屋がいきなりパッと明るくなったんだよ。

(えぇ? こんな時間にか!?)

ちょっと興味本位で見てると、あっちの学校のカーテン越しに人影が見えて何か激しく動いてる。

見回りでもなさそうだと思って凄い勢いでじっと見てたら、突然カーテンがバッと開いてその教室から明らかに生徒じゃない。
そんな奴が見えた。

(何だよ……こんな時間に何やってんだよ)

で、丁度その時間、俺のアパートの光も多分だけど俺の部屋しか明るく無かったから、そいつも多分だけどこっち見た訳。

(げ! 目線合った)

流石に怖くなったというかこんな時間に変な奴と目線合わせてどーすんだと思って、慌ててカーテンを閉めてその日は寝たんだ。

それで3日位経ったときなんだけど。
その事なんかすっかり忘れてバイト先でテレビを見てた時、本当、偶然としか思えないんだけど埼玉のニュースで、連続女子高生誘拐殺人事件のニュースが流れた。
「警察は未だ調査中で、犯人は車で逃走中です」

あの時の出来事がフラッシュバックした。

(あいつじゃん! あの時殺したんだよ!)

バイト先の人にも言ったけど、

「流石にそりゃ出来すぎだよ……だって埼玉つってもここって決まったわけじゃないだろ」

みたいな感じでスルーされた。

まぁ何でも無いならいいか。
でもじゃぁ、あいつは何やってたんだ。ま、いっか。

その日帰宅しようとするとニュースからか、チャリで帰宅途中にパトカーで巡回中の警察に呼び止められた。
流石に深夜だったからってのもあるのかもな。
そのニュース関連だとは思ったけど警察は何も言わなかったし、自転車の防犯登録調べられて、後簡単な職務質問されて開放された。

んで、アパートに帰ろうとしたんだけど、俺の部屋は201号室で出かける前に電気は消していたはずなのね。
それが、電気ついてるの……。

(え?)

消し忘れたのかと思ったが、朝、出かける前にきっちりと電気と戸締りだけはしていた。
何で? え? どうして? って思って一旦、アパートの窓側に自転車にのっかりながら見ていた。

そしたら戸締りの時に閉めたカーテン越しに何か人影があるんだよ。

(誰かいる!?)

部屋の中をうろちょろしてるっぽく、夜の暗がりとその部屋の明かりと影が目立つ位ゆらゆらしてて。
ありえないだろ。泥棒か何かか?
ニュースの事と一連の事を勝手に結びつけてしまって、俺はガクガクしながら一旦バイト先まで戻ろうとした。

その時だよ。
丁度俺がダッシュで戻ろうとした時に俺の部屋のカーテンが勢いよくあけられた。
振り返った時に見たのは、あの時、学校の窓で僅かに見えた人影とリンクしてた。

(あいつじゃん!)

さっきの巡回の警察の所行って保護してもらおう。逃げようってチャリを今来た道を猛スピードで逆走してた。
そうしたらものの数分で巡回中のパトカーに再度補導。

「こんな時間に何やってるんだ?」

俺は慌てて、空き巣の件を猛スピードで話し、部屋まで来てくれないか? と、頼み込んだ。
学校の件は話さなかったけどそれどころじゃないし。
警察も了承してくれて、一旦アパートの所までチャリ乗っけて送ってくれた。

「何号室?」

「えっと201です。一番左」

「ちょっと待って。確認してくるから」

一応もう一人の警官と車の中に残り、一人の警官が出て行った。
数分して警官が戻ってくる。

「一応部屋見たけど、電気ついてただけで誰もいなかったよ。戸締り忘れたんじゃないの?」

「いや、そんな事無いですって!鍵閉めたし、電気消して家出たんで!」

「部屋荒らされた形跡とかも無かったね。一応もう一回僕と来る?」

「ええ。お願いします」
その警官と一緒に部屋に行くと、電気はつけっぱなしだったけど確かに出かける前と何も変わらなかった。

(おかしいなぁ、見間違いって事は無いんだけど)

「まぁ、空き巣事件が増えてるからね。鍵だけはしっかりしときなさいよ。また何かあったら0000まで電話してくれればいいから」

釈然としなかったけど俺が見落としてたって件で片付けられ、戸締りだけマジでしっかりして警官を窓から見送った。
でも、なんだかんだでやっぱり怖い。

(犯人うろついてたらどうしよ……)

その思いだけは流石に拭い去れない。
まぁ精神安定にTVつけながらネットでもするか。

そう思いPCの画面を起動すると、デスクトップ画面にペイントの赤いスプレーの字で


「喋ったら殺す!」


鳥肌たった。
僕は某大学のさ鳥人間サークルに入ってんの。
日テレで毎年夏やってる鳥人間コンテストに参加するサークルね。

活動けっこう大変でさ、鳥コン本番が近づくと連日徹夜で作業するんだ。
大学側も結構理解あって、鳥コン近づくと徹夜作業とか結構認めてくれて。

んで、2年前。当時大学の近所に住んでて徹夜作業に結構参加してたんだよね。
7月の終わり頃、深夜1時くらいだと思うんだけどさ。
サークル内ではガレージって呼んでる作業スペースで、黙々と6、7人で作業してたんだ。
そしたら突然

バシーーン!

ってでかい音がしたんだよ。
でかい音でめちゃめちゃビビったよ。
みんな黙々と作業してて、音なんかラジオからしかしてなかったから、何の音だ? って話してると

バシーーン!

ってまた響いたんだよね。
みんな無言になってしばらく待ってみたんだけど何も起こらない。
んで、どうも窓ガラスに何かぶつかってたみたいだって話になってみんなで外に見に行ってみたんだよ。

外に出てみるとさ、窓ガラスの下でカラスが二匹死んでたんだよ。
マジでビビった。
この大学の校舎結構郊外にあって周りに森とか田んぼとかあったから、巣近くにあるのかもとか話してたら仲間の一人が

「こりゃ、俺たち鳥に呪われてるんだな。今年の鳥コンは駄目だな」

って言い出したんだ。
そいつ結構お調子者でさ、みんなで何言ってやがるってな感じでバシバシ叩いてたら、そのうち和やかな感じになってまた作業に戻った。
ちなみにカラスは翌日学生課の人に言って片付けてもらいました。

んで、次はちょっと飛んで、その年の鳥コンの日
結局その後何事もなく作業し、鳥コン本番になった。
その年は運悪くてさ、台風来てて鳥コン事態が中止になってさ、なんだか煮え切らないままOB主催の打ち上げになったのよ。
そこでさ、OBと酔っ払いながらいろいろ話してて、そういえば、ガレージで〜ってあの時の事話したんだよね。
そしたらそのOBこう言った。

「ああ、今年もか」

その人僕たちの4世代前にサークルで活動してた人でさ、その人が大学一年だった時のことを話してくれてさ。

当時、この鳥コンサークルは思うように結果が出ず、ぶっちゃけると計測不能記録連続で、大学側からも予算無駄にしてるんじゃないかってな話も来てたんだって。
んで、当時の人力飛行機のパイロットだった人がさ、結構そういうの気にする人で、俺ががんばって記録出すって感じで燃えてたんだって。

ま、でも結局その年の記録も結果でないでさ、サークルがんばりすぎたせいか単位落としまくって結局留年したんだってさ。
んで、結局大学やめちゃって、その一年後くらいに自殺しちゃったらしいんだよ。

その人が自殺した年に僕らと同じようなことがあってさ、OB達は自分たちにしっかりしろって言ってるんだってソイツが言ってるんだよ。
とか、笑いながら言うんだよ。
別のOBも今の話を聞いてて3年前にもあったとか言ってた。

その時はそれで終り。その後、別に普通に過ごして。
また話が飛んで鳥がぶつかってきた時から一年半、去年の12月の話なんだけどさ。

僕は、鳥人間サークルといっしょに学生会もやっててさ。
忘年会だーって学生課の人とか一部の教授とか誘って、学生会主催で忘年会開いたんだよ。

そこで学生課のおっちゃんと話しててさ、なーんか話の流れで鳥人間の話に。
おっちゃんは鳥コン毎年見てるファンだった。

んで話してて、ふと鳥がぶつかってきたこととOBの話をしたんだよ。
そしたらおっちゃん、

「それっておかしくないかい?」
おっちゃんもう学生課に18年勤めててさ、僕が話した当時のサークルの状態も話半分にしってたらしく、おっちゃんが言うには、確かにその年に大学で成績落として留年決まった生徒がいた。そしてそれがサークルがんばってそのせいで成績を落とした。
でも彼はその年に大学を辞めてはいない。留年が決まって三ヶ月くらいあとに、自分の部屋で自殺した。
それで、彼の自殺については大学側も警察からいろいろ聞かれたから、今でも覚えているし間違いないって。
結局、自殺は留年からくるノイローゼが原因じゃないかということになった。

ってな話をおっちゃんはしてくれた。
それで、続いてこんな話も聞かせてくれた。

当時大学ではうわさが流れていたと。自殺した彼はノイローゼじゃなくて、大会で失敗して記録を出せなかった彼を部員が総がかりでせめた。イジメにちかかったんじゃないか。
それを苦にその人は自殺してしまったんじゃないかと。

そんな風な噂があった事を話してくれた。

僕にはOBとおっちゃんのどちらが正しいかは未だにわかりません。
自殺があったのは今から考えると7年前。
周りに当時のサークルの事を知る人はもう回りにいないし。

もし、OBの話が正しいのならば確かにおかしい。
鳥がわざわざぶつかってくるのは、まともに考えてどう考えても激励とは受け取れないから。

それならば、おっちゃんの話が正しいのか?
だったら僕に話をしてくれた、そのOBはその話の当事者になるのでは?
おっちゃんの話が真実だとするならば、部全体で一人の人間を死に追いやった事実を曲げて、当時のOB全員が無視しているのではないか? じゃああの鳥は自殺した彼が……?
今年度になって僕は4年に進級し大学の研究室に入り、最近では忙しく研究室が別の校舎にあることもあり、サークルにはここ3ヶ月くらい顔を出していない。
今年も後3ヶ月もすれば鳥コン本番がやってくる。

また今年も窓ガラスに鳥がぶつかってくるのでしょうか?

<後日談>

一つ書き忘れてた。
去年も鳥が鳩だったらしいんだけど窓ガラスにぶつかって死んでる。
あと、僕はこの話を来年の二月あたりである追いコンで引退する時に後輩に話してやろうと考えている。
「コックリさん、コックリさん、いらっしゃいましたら、どうぞこの10円玉に降りてきてください……」

私たちが好奇心にひかれ「コックリさん」をやっていたのは、今から10年以上も前の中学生のころだった。
当時、爆発的にコックリさんが流行していたため、私たちも流行に遅れまいと、毎日のように放課後、生徒会室で生徒会の連中を集めてやっていた。

初めのうちは誰が誰を好きだの、自分は何と言う人と結婚するのかだの他愛のない質問で盛り上がったりしていたが、そのうちに今降りて来ている「コックリさん」は一体何なのかという質問へとなった。

「コックリさん、あなたの正体は何ですか? 狐ですか、それとも狸ですか?」

……ニ・ン・ゲ・ン……

「名前は何と言いますか?」

……フ・ジ・モ・ト……

「藤本」と名乗る人間らしき霊の出現に私たちは興奮した。
私たちの間では、人間の霊は得が高く動物霊と違い祟らない。その上、当時出ていたその手の本では的中率も高いと言われていた。
私たちは翌日から一層「コックリさん」へとのめり込んでいった……。

ある日、いつものように放課後の生徒会室で「コックリさん」をやっていると、めったに顔を出す事のない生徒会長のMがやってきた。
彼は入って来るなり私たち(私、S、他2人)を覗きこみ、こう言った。

「おっ! 馬鹿が揃ってインチキ占いをやってらぁ!」

M自身は私たちに悪気や恨みがある訳でなく、ただ単によこやりを入れつつきつめのギャグを言ったつもりだった。
しかし彼と折り合いが悪くその手のギャグを理解しない人間が1人いた。
生徒会副会長であり、この「コックリさん」の首謀者であるSである。

「S! お前こんな事して期末試験のヤマでも張ろうってえの? そんな狸だか狐だかわからん連中を信用する前に、帰って勉強しなさいっ」
「なんだと!」

Sが叫ぶと同時に、文字盤の上の10円玉が激しく回り始めた。
10円玉はしだいに大きく、そして早く激しく回りながら円を描き続ける。
Sと他に指を10円玉にのせている2人も、指が10円玉から離れないように必死になっている。

「こ、これはいったい……。M! やめろ。藤本さんが怒ってる!」

「馬鹿じゃん! そんな脅しをかけたって、怖くないぜ!」

「……」

「お前ら全員、脳ミソ腐ってるんじゃない。コックリさんに名前なんかつけてよ」

10円玉の回転はさらに大きくなってゆく……。
そして益々エスカレートしてゆくMの横槍にたまりかねついにSは、顔を真っ赤にし大声で叫んだ!

「藤本さん! どうぞMを呪ってください! 殺しても構いません!」

途端、あれだけ激しく回っていた10円玉がまるで波が引くかの如くスーッと止まった。

……ハ・イ……

10円玉はそう書かれた文字の上でピタリと止まった。
そして、そのまま「藤本さん」は2度と答えることはなかった。

気まずい雰囲気が室内に漂った。
Mは一言も口をきかずそそくさと生徒会室を出て行き、私たちもしばらく「コックリさん」をやるのはよそうという話になった……。

次の日の放課後、私たち4人はいつものように生徒会室には集まらず、本来自分達が所属しているクラブ活動に各々参加していた。
私も例外ではなく暫くぶりにバスケット部の練習に参加していた。

夕方の4時半をまわった頃だっただろうか。
突然校庭の中に、けたたましいサイレン音と共に救急車が入ってきた。
救急車は校庭を突っ切ると、校舎1階にある生徒会室の前に止まった。
大勢の人だかりができ、しばらくして中から誰かを運び出し、救急車は再びけたたましいサイレン音を響かせ走り去っていった。

身内の事故かもしれないと思った私は急いで生徒会室へと向かった。
騒ぎの治まった生徒会室の入り口では、1年生の書記の女の子がひとり取り乱して泣いている。

「どうしたの、誰かケガでもした?」

「生徒会長が、生徒会長が……」

ただごとでない彼女の怯えように不安を感じた私は、生徒会室のドアを開け中にとびこんだ。

「うっ」

室内の異様な匂いにたじろいだ。
椅子や机が散乱する中、吐き戻したのであろう血の混じった汚物が床一面にあった。
尋常でない事が起きたのは明白であった。

その後やっと冷静を取り戻した彼女に、その時Mに何が起きたのか聞くことができた。

その日、彼は珍しく2日も続けて放課後生徒会室へとやってきた。
先に部屋に入って仕事をしていた彼女は軽く一言二言挨拶を交わし、明日までに仕上げなければならない予算案の作成を続けた。

「あれ? 何だよこれ」

Mは怪訝そうな声を上げながらゴミ箱に何かをまるめて投げ込んだ。
そして、Mは彼女に対し声を掛けようとゆっくりこちらを向いた時であった。

「ぐあぁぁぁっ……」 

大きな声を発しながら彼はその場にうずくまった。
彼女が驚いて駆け寄ると、彼の足元はすでに血の混じった汚物にまみれていた。
そして突如立ち上がると、今度は奇妙な声を張り上げ口から汚物を吐きながら生徒会室内を暴れまくった。
机や椅子を投げ散らし、狂った様に床の上をのたうち回った。
その間、彼女は部屋の隅で何もできず震え泣いていたという。
そして床に倒れた拍子にMはピタリと動かなくなり、それを見た彼女は職員室へと飛び出して行ったのだった。

私は後からやって来たSと共に彼が捨てたと言う何かを探した。
丸めて捨ててあったそれは、昨日帰宅途中に燃やして捨てたはずであった、コックリさんで使った文字板の燃えかすだった。
私たちは絶句した…。
私がまだ小学校低学年の幼い子供だったころに、趣味で怖い話を作っては家族や友達に聞かせていました。

「僕が考えた怖い話なんだけど、聞いてよ」

ときちんと前置きをしてからです。
特にじぃちゃんが私の話を喜んで聞いてくれました。
私はそれがとても嬉しかったんです。熱心に聞いてくれるのと同時に、こわがってくれたから。

そんな折、私の作った話がクラスの中で流行りだしました。
放課後の男子トイレで個室を叩くとノックが返ってくる。といったありがちな話です。
クラスの女子の間であっという間に流行り、噂は学年中、学校中へと広まりました。

「男子トイレの前で手招きする男の子を見た」とか言い出す女子も出てきていて、私がやっとその噂を知って「僕の作り話だってば」と言っても聞かず、その後もまことしやかに囁かれ続けました。
ついにはそこで肝試しを始めるグループまで現れてしまいました。

その肝試しでしたが、なにも起きるわけがないのに、グループの子供が皆「ノックの音が返ってきた」と言うんです。大変な騒ぎでした。
そんなワケないだろ!? と思って作り話だということをアピールしようとしたのですが、当時の私は皆に冷たくされるのが怖くて言い出せませんでした。
しかしそのうち私は自分の話が本当になってしまったのではないかと思うようになり、すごく恐くなって自作の怖い話をすることをやめました。

その騒動があってからしばらくして、じぃちゃんが、怖い話をしなくなった私に「もう怖い話しないのかい」と聞いてきました。
私はもう泣きじゃくりながらその話をじぃちゃんにしたんです。
ほうかほうか、とやさしく聞きながら、こんなことを話してくれました。

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それはな、みんなが坊の話を本当に怖いと思ったんだ。
坊の話をきっかけにして、みんなが勝手に怖いものを創っちゃったんだよ。

怖い話を作って楽しむのはいいけど、それが広まってよりおそろしく加工されたり、より危険なお話を創られてしまうようになると、いつの日か「それ」を知ったワシらの目には見えない存在が、「それ」の姿に化けて本当に現れてしまうようになるのかもな。
あるいは目に見えるものではなく、心のなかにね。

「おそれ」はヒトも獣も変わらず持つもの。
「おそれ」は見えないものも見えるようにしてしまう。本能だからね。
だから、恥ずかしくないから、怖いものは強がらずにちゃんと怖がりなさい。
そして決して近寄らないようにしなさい。そうすれば、本当に酷い目にあうことはないよ。

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私は、じぃちゃんも何かそんな体験をしたのかと思って「じぃちゃんも怖い思いをしたの?」と聞きました。
すると、予期しなかったじぃちゃんのこわい話が始まったのです。

「昔、じぃちゃんは坊の知らないすごく遠くのお山の中の村に住んでいたんだよ。そこで、じぃちゃんの友達と一緒に、お山に肝試しに行ったことがあるんだ。そうだね、じぃちゃんが今でいう高校生ぐらいのころかな」

「お地蔵さんがいっぱい並んでいたけど、友達もいるし全然怖くなかった。でも、帰り道にじぃちゃんの友達が、お地蔵さんを端から全部倒し始めたんだ。『全然怖くない、つまらない』って言ってね」

「じぃちゃんはそこで始めてその場所に居るのが怖くなったよ。なんだかお地蔵さんに睨まれた気がしてね。友達を置いてさっさと逃げてきちゃったんだよ。そうしたらその友達はどうしたと思う?」
「死んじゃったの?」

「ううん、それが何も起こらないで普通に帰ってきたんだよ。でもじぃちゃんはもうそれからオバケが怖くなって、友達と肝試しに行くのを一切やめたんだ。その友達はその後も何度も何度も肝試しといってはありがたい神社に忍び込んだり、お墓をうろうろしたりお地蔵さんにイタズラしたり色々するようになってね。周りの人からは呆れられて相手にされなくなっていったよ。人の気をひくために『天狗を見た』なんていうようになってしまった。じぃちゃんに『見てろ、噂を広めてやる』なんて言って、笑っていたよ」

「そして、ある日ふっと居なくなったんだ。じぃちゃんもみんなと色々と探したんだよ。そしたら……山の中の高い木のふもとで、友達は死んでた。木の幹には足掛けに削った後がてんてんと付いていてね。友達は自分で木に上って、足を滑らせて落ちたんだ。ばかなやつだよ」

「坊、世の中には人が入ってはいけない場所っていうのがあるんだ。それは怖い場所だ。坊だったらタンスの上もその場所だよ。落ちるのは怖いだろ。そういうことだよ。じぃちゃんの友達には、怖い場所が見分けられなかったんだ。怖いね。ばちがあたったのかな。いいや、怖いのはここからさ」

「友達が死んでから、村の中のひとたちが次々に『天狗を見た』って言い出したんだ。じぃちゃんは『あれは友達のでまかせだ』と言ったんだけどね。友達が天狗の怒りに触れた、祟りだ、呪いだ、と皆は自分達でどんどん不安をあおっていった。夜通しで見張りの火まで焚いたんだ。皆が顔をあわせるたびに天狗の話をするので、村の中がじめじめしていた」
「そんな時に限って具合が悪くてね、村の中でケガをするのが4件続いたんだよ。どうってこともないねんざまで数に数えられてね。どう見てもあれは皆おかしくなってた。さらに噂に尾ひれがついて『天狗に生贄を出さなくては皆殺される』とまで酷い話になっていた」

「そしてついに、本当に生贄を出そうという話をするようになったんだ。友達が死んだのは木から足を滑らせて落ちたからなのに、完全に天狗のせいになってた。村の中の皆も、人が入ってはいけないところに踏み入ろうとしていた。それはね、人の命だよ。誰にもそれを奪う権利なんてないだろうに。じぃちゃんはね、天狗よりも村の中の皆がすごく怖かったんだよ。だからね、じぃちゃんは、その村から逃げてきたんだ……」

じぃちゃんのこの話はその後もねだって2度程聞かせてもらいましたが、「絶対に内緒だぞ」と言われ、両親の居るところでは決して話しませんでした。
でも、今でも私の家には父方の実家はありません。
農家の次男のじぃちゃんが、庄屋の娘のばぁちゃんと駆け落ちしてきたからだよと、私の両親からはそう聞いています。

じぃちゃんが私に自作の怖い話を聞かせてくれたのかとも思いましたが、多分違います。
その長い話が終わった時、じぃちゃんは大粒の涙をぼとぼと、私の小さな手の甲に落としたのですから。
今も思い出して涙腺が緩みました。
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