1 無名さん

とうらぶは夢向け?腐向け?

最初運営はどっちのつもりで出してたんだろうなあ
2 無名さん
糞スレ立てんな
>>1
糞が
4 削除済
今日は私の引っ越しの日だ。

場所は都会から離れた郊外、近辺の山等の未開発地帯と都会の丁度真ん中辺りの場所で、人によっては中途半端だと言うかもしれないが、都会への未練と自然への憧れの両方を捨て切れない私にとってはこれぐらいが丁度良い。
引っ越し業者も少ないダンボールをあっという間に運び終えて帰って行った後、私が散々迷って買った中古物件は静寂を取り戻した。

不動産屋の話によると、以前ここには四人家族が住んでいたらしい。
幸せを絵に書いた様な家族で、不動産屋はこの家でずっと暮らして行くのだろうと思っていたという。
しかし、ある時その家の主人が不動産屋に来てこの家を売り払ったのだという。

不動産屋は理由が気になったが、余り家庭の事に干渉するのも気が引けて素直に従ったらしい。
そして不動産屋はその家を綺麗に掃除して、また売家としてラインナップした直後に私が買いに来たのだという。

「前の主人が何処かの業者に頼んで改築工事をしていたみたいですけどね、改悪という事も無いでしょう。多分住みやすい家だと思いますよ」

私は不動産屋の言葉を思い出し、自分が良い買い物をした気分になる。

とにかく、玄関にダンボールが詰まれている光景というのは余り良い物ではない。
私は大きいダンボールを開け、小さいダンボールを持って奥の部屋へ行くために廊下を進んで行った。

サリッ

足の裏に微かな違和感を感じる。しかしここで一度ダンボールを置いて足の裏を確認するのも億劫だ。
私は気にせずに廊下を再び歩き始めた。

奥の部屋に着き、ダンボールを置く。
私は違和感の理由が気になって足の裏を見てみた。


>>5
(……砂だろうか?)

ぱらぱらと、白い粒が足の裏に付着している。
塵が積もっているなら掃除をしなければいけない。私はたったいま運んだダンボールから時計を包んでいた布切れ端を出し、廊下に出てみた。

砂がうっすら積もっている。
ダンボールに付いていたのか掃除が適当だったのか、私は少々の不満を覚えながら廊下を綺麗に拭いた。

その後はとくに気になる事は無く、慌ただしい間に引っ越してから一日目の夜が明けた。

朝、私は起きて近くのスーパーで買って来た出来合いの食事を取る。一夜明けると新しい家も見慣れる物だ。
私は長くなった通勤時間を覚悟しながら家を出た。

夜、私は仕事から帰って来た。
通勤時間は大して苦にならなかったが、駅から家まで歩くのがどうにも仕事で疲れた体には気が進まない事に感じられた。

私はそのうち慣れて行くさと言い聞かせながら廊下を歩く。

サリッ

また違和感。
私はすぐに昨日の砂だと思った。事実、足下を確認したらそうである。

しかしここで疑問が浮かぶ。
昨日確かに綺麗にしたはずだったんだが?
私はまた昨日の布切れを持ち出した。確かに昨日の砂が付いている。

3日後には私の疑問はとても大きな物になっていた。
毎日毎日、私が仕事から帰って来ると砂がうっすら積もっているのである。何回拭いてもだ。

(……何処かに穴でも開いてるのか?)

私が最初に思い当たったのは、以前の主人が行った改築であった。
廊下の真上、二階の寝室に私は行き、床を入念に調べてみる。
怪しい物は見つからない。


>>6

しかし、音が聞こえた。微かにカサカサという音が床の下からするのである。

(ここの下は廊下だが……)

私は音の正体を調べるべく廊下へまた降りようとする。
そこでやっと私は気付いた。

二階の中で、寝室の床だけ他の場所より一段高くなっているのである。
なぜここだけ床が高くなっているのだろう?
要するに、廊下と寝室の間に狭いスペースが有るのである。

そこを調べれば、音の主も砂の謎もわかるのではないか?
私はすぐさま懐中電灯とノコギリを持って来て、寝室の床へ上がる段差の一部分を外した。

光でそのスペースを照らしてみる。
始めに目に付いたのはネズミの姿だった。こいつがカサカサ歩き回り、また、何かをかじってそのカスを床の隙間から廊下にこぼしていたのだろう。
この分じゃもう2、3匹いそうだ。

じゃあ何をかじっていたのか、私は奥を照らしてみた。

「……!」

闇の中のそれが骨であるとわかった瞬間、私は懐中電灯を取り落としそうになった。

(何の骨だ……? まさか……)

私のその予感は的中した。
かじられ続けたせいで大分破壊が進んでいるが、見間違える事はない、暗闇の奥に明らかに人間のそれとわかる頭蓋骨が仲良く並んで三つ。
……おそらく前の家族の。

一体幸せな家族に何があったのか? そして此所で殺人があった事は表沙汰にはならなかったのか?
色々な疑問が浮かぶが、私の脳裏に一番強烈に浮かんでいたのは、崩れ行く人骨のすぐ上で、幸せ顔で眠っていた私の姿であった。
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高校生の時の実話。
地元の中学校時代の友達2人と、近くの山に肝試しみたいなことをやりに行こうという話になった。

その山はそれほど高くなく、頂上が広場になっている。
さらに傍には病院が建っており、現在は使われていないその病院の旧館跡が廃墟の状態で残っている。
予定ではその病院の旧館を探索してから山を登る道に出て、頂上で缶ビールで乾杯してから反対側のふもとに下りる道から山を下る、というプラン。

深夜1時過ぎに3人で、まず病院裏の旧館跡に進入。
本当に荒れ放題で、マットレスのない鉄パイプのベット、倒れたイス、医療機具の入っていたと思われるガラス戸棚、部屋の隅に丸めて放置してあるシーツ、積み重なった段ボール、それらが、割れっぱなしの窓からの月明かりに照らされている。

その時、異常な音がするとか何か奇妙なものが見えたということはないのだが、オレの気分がなんかおかしい。
肝試しをやっているのだから恐いという気持ちはあるのだが、恐怖とは違った何か、体の中から寒気がして胸が押さえつけられるような風邪や高熱の時に感じる、具体的な悪寒がするようになってきた。

臆病だと馬鹿にされるのが嫌だったので友人にも言い出せず、そのまま病院から出ると山への道を進んだ。

狭い一本道である山道を、ダンゴ状に3人並んで進んでいった。オレは最後尾。
月が明るい夜だったので、道も周りの木々もよく見ることができる。

しばらく進んでいくうちに、気分の悪さが徐々に増していく。
そしてもう1つ、奇妙なことが起こり始めた。

道の両側に設置された木の策の向こうから、何やらボソボソって感じで話し声のようなものが聞こえてくる。
誰か人がいるのかと思ったがそれはない。
木の策のむこうは腰の高さくらいの植物が群生していて、策から2メートルくらいで崖になっている。そんなところに人がいるはずもない。

その声は明らかに人の声に聞こえ、何事かをボソボソと言っているようなのだが、言葉がはっきりと聞き取れない。

>>9

左右どっち側から聞こえてくるのかもよくわからない。上からだと言われればそうだったかもしれない。
しかもその声は、オレたちが道を進んで行っても、ずっとついてくるように依然として聞こえ続ける。

さらに奇妙なことに、オレがその声のことを話そうとしても声が出てこない。
金縛りにあった時のように力を込めても体全体が固まった感じで声が出ない感じとは違い、喉にしゃべろうという意思が伝わらない。
足はしっかりと歩き続けているのだが、口がなぜか開かない。
自分自身もなぜかどうしても話さなきゃという意思が湧いてこないのだ。

気づいてみれば、他の2人も山道に入ってからはずっと無口。
ひょっとして前の2人にもこの声は聞こえているのか。

そしてついに頂上の広場に出た。
その頃にはいつの間にかボソボソという声は聞こえなくなっていた。
頂上広場でようやく口を開くことが出来た。

本来は真っ先に、ずっと聞こえていた声のことが話として出てくるはずなのだが、その時はなぜか

「……頂上かな」

「……ああ」

「……だな」

というような会話にしかならない。

3人ともほとんど黙り込み、沈黙が続く。
月明かりで周囲もお互いの顔も良く見ることができる。

>>10

特に異常なことは見られないが、感じる悪寒は相変わらずだ。

そして、1人がようやく「……じゃあビール飲むか」と言い、オレともう1人の友人は「……うん」とだけ答える。
その時、いきなり

バンッ

という大きな爆発音みたいな音が近くから聞こえたその瞬間、急に体が軽くなった。

誰からともなくオレ達は山の反対側に下だる道を一目散で走り下って行った。
みんな一言の叫び声もあげない。
夜道の細い山道を走って下るのは危険なのだが、その時は不思議と誰かが転んだりすることもなく10分くらいでふもとに辿り着いた。

3人とも息を切らしていたが、ようやく口を開くことが自由になった。体の気分の悪さもいつの間にか治っている。

みんなの話では、病院からの悪寒も、山道での声も、オレ以外の2人共が感じていたらしい。
また、口を開くことも、奇妙なことを告げるべく言葉がなぜか出てこなかったというのも一緒だった。

そして頂上広場で聞こえた音は一体何だったのかという話になった時、オレは友人が背中に背負ったリュックからなにやらポタポタと液体が垂れていることに気づいた。

そのことを告げて急いでリュックを開けると、なんと中では頂上で飲むはずだった缶ビールが、缶の中から何かが破裂したかのように真ん中がバックリと裂けていた。
さらにオレのカバンの中のビール、もう1人の友人のビールも同じように避けて、カバンの中がグショグショに濡れていた。
恐らく頂上で聞いた音はこの破裂音だったのだろう。

後に高校の教師にも話したが、高山地区なら全くあり得なくもないが、普通の町にあるような山でそんな風に缶が破裂するなんて絶対にあり得ないとのこと。
もちろん、恐くてあれ以来その病院にも山にも近づいていない。

<後日談>

こうして文章にして第三者が見た場合はそんなにでもないかもしれないが、オレは実際に体験した話だけに、思い出すだけで本当に恐くなる。
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先月のことです。Aと俺は山へ測量に入りました。
山の測量に行く時は最低三人で行くようにしていたんですけど、行くハズだった奴がインフルエンザで倒れて、他に手の空いてる人も居なかったんで、しょうがなく二人で行くことになったわけです。

でもやっぱり不安だったんで、境界を案内してくれる地元のおっさんに、ついでに測量も手伝ってくれるように頼みました。
おっさんは賃金をくれればOKということで、俺たちは3人で山に入りました。

前日からの雪で山は真っ白でした。
でもポールがよく見えるので、測量は意外にサクサク進みました。

午前中一杯かかって尾根の所まで測ったところで、おっさんの携帯が鳴りました。
おっさんはしばらく話をしていましたが、通話を終えると、急に用事ができたので下りると言い出したのです。

おいおいって思ったんですけど、「あとは小径に沿って土地の境界やから、そこを測っていけばイイから」って言われて、小径沿いだったら大丈夫かもな、まぁしゃーないかみたいなムードで、結局Aと俺の二人で続きをやることになりました。

ところがおっさんと別れてすぐ、急に空が曇ってきて天候が怪しくなってきました。
このまま雪になるとヤバイよな、なんて言いながら、Aと俺は早く済まそうと思ってペースを上げました。

ところで、俺らの会社では山の測量をするのにポケットコンパスって呼ばれている器具を使っています。
方位磁石の上に小さな望遠鏡が付いていて、それを向けた方向の方位や高低角が判るようになっています。
軽くて丈夫で扱いが簡単なので、山の測量にはもってこいなんです。

俺はコンパスを水平に据え、ポールを持って立っているAの方に望遠鏡を向けて覗きました。

>>13

雪に覆われた地面と枝葉に雪をかかえた木立が見えますが、ポールもAの姿も見えません。
少し望遠鏡を動かすとロン毛の頭が見えたので、次にポールを探して目盛りを読むためにピントを合わせました。

(あれ?)

ピントが合うと、俺はおかしなことに気付きました。

俺たちはヘルメットを被って測量をしていたのですが、Aはなぜかメットを脱いでいて、後ろを向いています。
それにAの髪の毛は茶髪だったはずなのに、今見えているのは真っ黒な髪です。

(……おかしいな)

望遠鏡から目を上げると、Aがメットを被り、こっちを向いて立っているのが見えました。
が、そのすぐ後ろの木立の隙間に人の姿が見えます。

もう一度、望遠鏡を覗いて少し動かしてみました。

女がいました。
立木に寄りかかるように後ろ向きで立っています。
白っぽい服を着ていて、黒い髪が肩を覆っていました。

(こんな雪山に……なんで女?) 

俺はゾッとして望遠鏡から目を離しました。

「おーい!」 

Aが俺の方に声を掛けてきました。
するとそれが合図だったかのように、女は斜面を下って木立の中に消えてしまいました。

>>14

「なにやってんスかー。はよして下さいよー」

Aのその声で俺は我に返りました。

コンパスを読んで野帳に記入した後、俺は小走りでAのそばに行って尋ねました。

「今、お前の後ろに女立っとったぞ、気ぃついてたか?」

「またそんなこと言うて、止めてくださいよー」

笑いながらそんなことを言っていたAも、俺が真剣だとわかると、

「……マジっすか? イヤ、全然わかりませんでしたわ」

と、表情が強ばりました。

Aと俺は改めて木立の方を探りましたが、木と雪が見えるばかりで女の姿はありません。

「登山してるヤツとちゃうんですか?」

「いや、そんな風には見えんかった……」

そこで俺は気付きました。
あの女はこの雪山で一人で荷物も持たず、おまけに半袖の服を着ていたんです。

「それ、ほんまにヤバイじゃないっスか。気狂い女とか……」

Aはかなり怯えてました。
俺もビビってしまい、居ても立ってもいられない心持ちでした。

そんなことをしているうちに、周囲はだんだん暗くなって、とうとう雪が降ってきました。

「はよ終わらして山下ろ。こらヤバイわ」

俺たちは慌てて測量作業を再開しました。


>>15

天候はドンドン悪化して、吹雪のようになってきました。

ポールを持って立っているAの姿も見にくいし、アッという間に降り積もる雪で、小径もわかり辛くなってきました。携帯も圏外になっていました。

俺は焦ってきて、一刻も早く山を下りたい一心でコンパスを据え付けました。
レベルもろくに取らずに、Aの方に望遠鏡を向けようとしてそっちを見ました。

すると、さっきの女がAのすぐ後ろに立っています。
今度は前を向いているようですが、吹雪のせいで良く見えません。
Aは気付いていないのかじっと立っていました。

「おーい!」

俺が声をかけてもAは動こうとしません。

すると、女のほうが動くのが見えました。
慌てて望遠鏡をそっちに向けてビビリながら覗くと、女は目を閉じてAの後ろ髪を掴み、後ろから耳元に口を寄せていました。
何事か囁いているような感じです。

Aは逃げようともしないで、じっと俯いていました。
女は、そんなAに囁き続けています。

俺は恐ろしくなって、ガクガク震えながらその場に立ち尽くしていました。

やがて女はAの側を離れ、雪の斜面を下り始めました。
すると、Aもその後を追うように立木の中へ入って行きます。

「おーい! A! 何してるんや! 戻れー! はよ戻ってこい!」

しかし、Aはそんな俺の声を無視して吹雪の中、女の後を追いかけて行きました。


>>16

俺は測量の道具を放り出して後を追いました。
Aはヨロヨロと木立の中を進んでいます。

「ヤバイって! マジで遭難するぞ!」

このままでは自分もヤバイ。本気でそう思いました。
逃げ出したいっていう気持ちが爆発しそうでした。

周囲は吹雪で真っ白です。
それでも、何とかAに近づきました。

「A! A! しっかりせえ! 死んでまうぞ!」

するとAがこっちを振り向きました。

Aは虚ろな目で、あらぬ方向を見ていました。
そして、全く意味のわからない言葉で叫びました。

「*******! ***!」

口が見たこともないくらい思いっきり開いていました。ホンキで下あごが胸に付くくらい。
舌が垂れ下がり、口の端が裂けて血が出ていました。
あれは完全にアゴが外れていたと思います。

そんな格好で、今度は俺の方に向かってきました。

「……****! ***!」

それが限界でした。
俺はAも測量の道具も何もかも放り出して、無我夢中で山を下りました。

車の所まで戻ると携帯の電波が届く所まで走って、会社と警察に電話しました。

やがて捜索隊が山に入り、俺は事情聴取されました。
最初はあの女のことをどう説明したらよいのか悩みましたが、結局見たままのことを話しました。
警察は淡々と調書を取っていました。
ただ、Aに女が何かを囁いていた、というところは繰り返し質問されました。


>>17

翌々日、遺体が一つ見つかりました。
白い夏服に黒髪。
俺が見た、あの女の特徴に一致していました。

俺は警察に呼ばれて、あの時の状況についてまた説明させられました。
その時に、警察の人からその遺体についていろいろと聞かされました。

女の身元はすぐにわかったそうです。
去年の夏に、何十キロも離れた町で行方不明になっていた女の人でした。

ただ、なぜあんな山の中に居たのかはわからない、と言うことでした。
俺はあの時のことはもう忘れたいと思っていたので、そんなことはどうでもエエと思って聞いていました。

けれど、一つ気になることがありました。
女の遺体を調べたところ、両眼に酷い損傷があったそうです。
俺は、Aのヤツそんなことをしたのか、と思いましたが、どうも違ったみたいで、その傷は随分古いものだったようです。

「目はぜんぜん見えんかったはずや」

警察の人はそう言いました。

結局、Aの行方は今でもわかっていません。
残された家族のことを考えるとAには生きていて欲しいとは思いますが、あの時のことを思い出すと、正直なところもう俺はAに会いたくありません。

ただ何となく嫌な予感がするので、先週、髪を切って坊主にしました。
19 削除済
ある4人家族がとある地方の旅館に宿泊した。

そして深夜、娘か母親がトイレで惨殺されているのが発見された。
全身を刃物で滅多刺しにされ、顔面は誰だか判別がつかなくなる程斬りつけられていた。
死体には舌がなかった。

トイレには格子の付いた幅30・高さ10センチ程の窓と小さな通風孔があったが、とても人の入れる大きさではない。
カギもかけられていた。誰がどこから侵入してきたのか……。

警察はその旅館を経営している夫婦、その息子、近辺の変質者などを聴取したが、現場が密室だったこともあり、迷宮入りになるかと思われた。

だがある日、旅館経営者夫婦に付き添われたその息子が署に出頭。

「近所の目もあり、なかなか正直に話すことができなかったが、とんでもないことになったのでお話します」

「息子は盗撮が趣味で再三注意していましたが、事件当夜もビデオカメラで天井裏から個室を撮影していていたのです。撮影していると、格子のはまっている小窓のガラスが開き、ガラスの破片を持った小さな……いや、このビデオテープに一部始終がはいっていますので……」

息子はビデオテープについて訪ねられると、恐怖が蘇ったのか半狂乱に。
精神に異常をきたすほどの何かがこのテープに入っているのか、と思い、捜査員達もテープを再生するのを恐れた。

そのテープには排尿する女性を俯瞰で撮影した映像が収っていた。
和式便器にしゃがんでいた女性が立ち上がろうとしたその時、小窓からガラスの破片らしきものを握った、小さな15〜20センチ程の老婆が音もなく飛び込んできた。

>>21

女性は悲鳴をあげる間もなく咽を掻き斬られ、そして顔中を、体中を斬り付けられ……女性が息絶えると、小さな老婆は死体から舌と頭皮の一部を切り取り、天井を見上げ、

「次はおまえだよ」

と言って小窓から出て行った。舌と、髪の毛のついた頭皮とを持って。

捜査員の中には、嘔吐するもの、泣き出すもの、恐怖の余り失禁する者もいたという。
結局事件は未解決のままだが、警視庁には件のビデオテープが今もなお保管されていると言う。
22 削除済
あらかじめお断りしておきますが、この話を読まれたことでその後何が起きても保証しかねます。

※自己責任の下で読んで下さい。保証、責任は一切持ちません。

5年前、私が中学だった頃、1人の友達を亡くしました。
表向きの原因は精神病でしたが、実際はある奴等に憑依されたからです。

私にとっては忘れてしまいたい記憶の1つですが、先日古い友人と話す機会があり、あの時の事をまざまざと思い出してしまいました。
ここで文章にすることで少し客観的になり恐怖を忘れられると思いますので、綴ります。

私たち(A・B・C・D・私)は、皆家業を継ぐことになっていて、高校受験組を横目に暇を持て余していました。
学校も、私たちがサボったりするのは受験組の邪魔にならなくていいと考えていたので、体育祭後は朝学校に出て来さえすれば、後は抜け出しても滅多に怒られることはありませんでした。

ある日、友人A&Bが、近所の屋敷の話を聞いてきました。
改築したばかりの家が、持ち主が首を吊って自殺して一家は離散、空き家になってるというのです。

サボった後のたまり場の確保に苦労していた私たちは、そこなら酒タバコが思う存分できると考え、翌日すぐに昼から学校を抜けて行きました。

外からは様子が分からないようなとても立派なお屋敷で、こんなところに入っていいのか、少しびびりましたが、A&Bは「大丈夫」を連発しながらどんどん中に入って行きます。

既に調べを付けていたのか、勝手口が空いていました。
書斎のような所に入り、窓から顔を出さないようにして、こそこそ酒盛りを始めました。

でも大声が出せないのですぐに飽きてきて、5人で家捜しを始めました。
すぐにCが「あれ何や」と、今いる部屋の壁の上の方に気が付きました。


>>23

壁の上部に、学校の音楽室や体育館の放送室のような感じの小さな窓が2つ付いているのです。

「こっちも部屋か」

よく見ると壁のこちら側にはドアがあって、ドアはこちら側からは本棚で塞がれていました。
肩車すると、左上の方の窓は手で開きました。

今思うと、その窓から若干悪臭が漂っている事に、その時疑問を持つべきでした。
それでもその時の、こっそり酒を飲みたいという願望には勝てず、無理矢理窓から部屋に入りました。
部屋はカビホコリと饐えたような臭いが漂っています。雨漏りしているのかじめっとしていました。

部屋は音楽室と言えるようなものではありませんでしたが、壁に手作りで防音材のようなものが貼ってあり、その上から壁紙が貼ってある事は分かりました。湿気で壁紙はカピカピになっていました。
また部屋の中はとりたてて調度品もなく質素なつくりでしたが、小さな机が隅に置かれており、その上に真っ黒に塗りつぶされた写真が、大きな枠の写真入れに入ってました。

「なんやこれ、気持ち悪い」

と言って友人Aが写真入れを手に取って持ち上げた瞬間、額裏から1枚の紙が落ち、その中から束になった髪の毛がバサバサ出てきました。
紙は御札でした。

みんなヤバイと思って声も出せませんでした。
顔面蒼白のAを見てBが急いで出ようと言い、逃げるようにBが窓によじ登った時、そっちの壁紙全部がフワッとはがれました。

写真の裏から出てきたのと同じ御札が、壁一面に貼ってありました。

「何やこれ」

酒に弱いCはその場でウッと反吐しそうになりました。

「やばいてやばいて」

「吐いてる場合か急げ」


>>24

よじのぼるBの尻を私とDでぐいぐい押し上げました。
何がなんだか訳が分かりませんでした。

後ろでは誰かが

「いーーー、いーーー」

と声を出しています。
きっとAです。祟られたのです。恐ろしくて振り返ることもできませんでした。

無我夢中でよじのぼって、反対側の部屋に飛び降りました。
Dも出てきて、部屋側から鈍いCを引っ張り出そうとすると、「イタイタ」とCが叫びます。

「引っ張んな足!」

部屋の向こうではAらしき声がわんわん変な音で呻いています。
Cはよほどすごい勢いでもがいているのか、Cの足がこっちの壁を蹴る音がずんずんしました。

「B! かんぬっさん連れて来い!」

後ろ向きにDが叫びました。

「なんかAに憑いとる、裏行って神社のかんぬっさん連れて来いて!」

Bが縁側から裸足でダッシュしていき、私たちは窓からCを引き抜きました。

「足! 足!」

「痛いか?」

「痛うはないけどなんか噛まれた」

見るとCの靴下のかかとの部分は、丸ごと何かに食いつかれたように丸く歯形が付いて唾液で濡れています。
相変わらず中からはAの声がしますが、怖くて私たちは窓から中を見る事ができませんでした。

「あいつ俺に祟らんかなぁ」

「祟るてなんやAはまだ生きとるんぞ」

「出てくるときめちゃくちゃ蹴ってきた」

「しらー!」


>>25


縁側からトレーナー姿の神主さんが真青な顔をして入ってきました。

「ぬしら何か! 何しよるんか! 馬鹿者が!」

一緒に入ってきたBはもう涙と鼻水でぐじょぐじょの顔になっていました。

「ええからお前らは帰れ、こっちから出て神社の裏から社務所入ってヨリエさんに見てもらえ、あとおい!」

といきなり私を捕まえ、後ろ手にひねり上げられました。
後ろで何かザキっと音がしました。

「よし行け」

そのままドンと背中を押されて、私たちは訳の分からないまま走りました。


>>26

それから裏の山に上がって神社の社務所に行くと、中年の小さいおばさんが白い服を着て待っていました。
めちゃめちゃ怒られたような気もしますが、それから後は逃げた安堵感でよく覚えていません。

それからAが学校に来なくなりました。

私の家の親が神社から呼ばれた事も何回かありましたが、詳しい話は何もしてくれませんでした。
ただ山の裏には絶対行くな、とは言われました。
私たちもあんな恐ろしい目に遭ったので山など行くはずもなく、学校の中でも小さくなって過ごしていました。

期末試験が終わった日、生活指導の先生から呼ばれました。

今までの積み重ねまとめて大目玉かな、殴られるなこら、と覚悟して進路室に行くと、私の他にもBとDが座っています。
神主さんも来ていました。生活指導の先生などいません。

私が入ってくるなり神主さんが言いました。

「あんなぁ、Cが死んだんよ」

信じられませんでした。Cが昨日学校に来ていなかった事もその時知りました。

「学校さぼって、こっちに括っとるAの様子を見にきよったんよ。病院の見舞いじゃないとやけん危ないってわかりそうなもんやけどね。裏の格子から座敷のぞいた瞬間にものすごい声出して倒れよった。駆けつけたときには白目むいて虫螺の息だった」

Cが死んだのにそんな言い方ないだろうと思ってちょっと口答えしそうになりましたが、神主さんは真剣な目で私たちの方を見ていました。


>>27

「ええか、Aはもうおらんと思え。Cのことも絶対今から忘れろ。アレは目が見えんけん、自分の事を知らん奴の所には憑きには来ん。アレのことを覚えとる奴がおったら、何年かかってもアレはそいつのところに来る。来たら憑かれて死ぬんぞ。それと後ろ髪は伸ばすなよ。もしアレに会って逃げたとき、アレは最初に髪を引っ張るけんな」

それだけ聞かされると、私たちは重い気持ちで進路室を出ました。

あの時神主さんは私の伸ばしていた後ろ毛をハサミで切ったのです。
何かのまじない程度に思っていましたが、まじないどころではありませんでした。
帰るその足で床屋に行き、丸坊主にしてもらいました。

※自己責任で喚んでください。自己責任で喚んでください。

卒業して家業を継ぐという話は、その時から諦めなければいけませんでした。
その後私たちはバラバラの県で進路につき、絶対に顔を合わせないようにしよう、もし会っても他人のふりをする事にしなければなりませんでした。

私は1年遅れて隣県の高校に入ることができ、過去を忘れて自分の生活に没頭しました。
髪は短く刈りました。しかし床屋で「坊主」を頼むたび、私は神主さんの話を思い出していました。
今日来るか、明日来るか、と思いながら長い3年が過ぎました。

その後、さらに浪人して他県の大学に入ることができました。
しかし、少し気を許して盆に帰省したのがいけませんでした。


>>28

もともと私はおじいちゃん子で、祖父はその年の正月に亡くなっていました。
急の事だったのですが、せめて初盆くらいは帰ってこんか、と電話で両親も言っていました。それがいけませんでした。

駅の売店で新聞を買おうと寄ったのですが、中学時代の彼女が売り子でした。
彼女は私を見るなりボロボロと泣き出して、BとDがそれぞれ死んだ事をまくし立てました。

Bは卒業後まもなく、下宿の自室に閉じこもって首をくくったそうです。
部屋は雨戸とカーテンが閉められ、部屋じゅうの扉という扉を封印し、さらに自分の髪の毛をその上から1本1本几帳面に張り付けていたということでした。
鑞で自分の耳と瞼に封をしようとした痕があったが、最後までそれをやらずに自害したという話でした。

Dは17の夏に四国まで逃げたそうですが、松山の近郊の町でパンツ1枚でケタケタ笑いながら歩いているのを見つかったそうです。
Dの後頭部は烏がむしったように髪の毛が抜かれていました。
Dの瞼は閉じるのではなく、絶対閉じないようにと自らナイフで切り取ろうとした痕があったそうです。

この時ほど中学時代の人間関係を呪ったことはありません。

BとDの末路など、今の私にはどうでもいい話でした。
つまり、アレを覚えているのは私1人しか残っていないと気づかされてしまったのです。

胸が強く締め付けられるような感覚で家に帰り着くと、家には誰もいませんでした。
後で知った事ですが、私の地方は忌廻しと云って、特に強い忌み事のあった家は本家であっても初盆を奈良の寺で行うという風習があったのです。


>>29

私は連れてこられたのでした。

それから3日、私は9度以上の熱が続き、実家で寝込まなければなりませんでした。
この時私は死を覚悟しました。
仏間に布団を敷き、なるだけ白い服を着て水を飲みながら寝ていました。

3日目の夜明けの晩、夢にAが立ちました。
Aは骨と皮の姿になり、黒ずんで、白目でした。

「お前1人やな」

「うん」

「お前もこっち来てくれよ」

「いやじゃ」

「Cが会いたがっとるぞ」

「いやじゃ」

「おまえ来んとCは毎日リンチじゃ。逆さ吊りで口に靴下詰めて蹴り上げられよるぞ、かわいそうやろ」

「うそつけ。地獄がそんな甘いわけないやろ」

「ははは地獄か地獄ちゅうのはなぁ」

そこで目を覚ましました。
自分の息の音で喉がヒイヒイ音を立てていました。
枕元を見ると、祖父の位牌にヒビが入っていました。

私は考えました。
アレの話を私と同じように多くの人に話せば、アレが私を探し当て、私が憑依される確率は下がるのではないか。

ここまでの長文たいへん失礼しましたが、おおざっぱな書き方では読んだ方の記憶に残らないと思ったのです。
読んだ方は、申し訳ないのですが犬に噛まれたとでも思ってください。
ご自分の生存確率を上げたければこの文章を少しでも多くの方の目に晒す事をおすすめします。
31 削除済
幽霊ではなく人間でしたが、年月が経つにつれ自信がなくなっていく思い出です。

俺が19歳の頃の話です。
高校は卒業していましたが、これといって定職にもつかず、気が向いたら日雇いのバイトなどをしてブラブラしていました。

その頃の遊び仲間は高校の時の友人グループで、その日もその内の1つのグループの奴の家に集まって、だらだらと遊んでいました。

そのグループの連中は、地元では結構有名な悪い奴らの集まりでした。
俺はケンカも弱いしバイクも持っていなかったけど、そのグループのリーダーが幼馴染で家も超近かったため、たまに遊んでいました。

夜もふけてきたので、俺達は肝試しに行くことにしました。
皆幽霊なんて信じていなかったし怖がってもいませんでしたが、行く途中に女の子でもナンパできたら連れて行こうぐらいの軽いノリでした。

1人がバンで来ていたので、それに6人全員で乗り込み出発です。
幾つかある肝試しスポットのうち、一番近い所に向かいました。そこは山の中にある墓場で、頂上に向かって墓場が広がっています。

入り口に降り立ったとき、その墓場の一番上に何か白い影が見えました。
よく見るとそれは2人の人間で、近付いて見ると、まだ中学生ほどの少女でした。

髪は長くパサパサで手入れをしている様子はなく、まるで人形の髪のようだと思ったのを今でも覚えています。
顔にも髪がかかり、表情は読めません。顔のつくりは違いましたが、2人ともそっくりに見えました。
白く見えたのは夏服のセーラー服姿だったからです。


>>32

いったいどこから来たのでしょう。
あの場所から出てくるには、車でもっと山の上まで登らなくてはならないはずです。
なのに、2人には連れがいる様子もありません。どんどん近付いてきます。

よく考えたら、ふつうこんな人気のない墓場で不良グループに遭遇したら向こうも怖いはずです。
しかし、彼女達は無表情のまま俺達の目の前に来て止まりました。

言い様のない恐怖が襲いました。
理屈ではありません。ただぞっとするというのはこの事だと思います。
それは他のメンバーも同じようでした。

「おまえらどっから来たん?」

リーダーのMが聞きました。

2人は無表情のままゆっくりと、同時に山の頂上を指差しました。
どっと嫌な汗が吹き出ました。

するとそこに、どこからともなく犬が走ってきました。
しかもその犬、白内障なのか、目が白く濁っているのです。

あまりにもタイミングよく現れたので、危うく叫びそうになりましたが、すぐ後ろから飼い主らしきおじいさんがやってきました。

そのおじいさんはこの近くに住んでるらしく、いつもこの道を散歩コースにしているそうです。
おじいさんの散歩に付き合うように、自然に俺達6人と少女達は歩き始めました。

おじいさんと少女達が前を歩き、何か話をしています。
おじいさんは土の盛り上がったところをガシガシ蹴飛ばしながら、

>>33


「ここ、無縁仏の墓や。そこに卒塔婆がたおれとるやろ」

と言いました。

そして又少女達と言葉を交わすと、俺達の方を振り向きもせずに去っていきました。

唖然とする俺達の所に少女達がやってきて、初めて口を利きました。

「いまおじいさんに聞いたんやけど、この先にもっと怖い場所があんねんて。のろいのわら人形がぎょうさん見つかる所。行ってみいへん?」

正直俺は行きたくなかったけど、中学生の女の子が行くというのに「いや、おっかねえからやめとく」とは言えません。
結局女の子達をバンに乗せ、行ってみることにしました。

その間、俺達は色々話し掛けました。なぜあんな所から出てきたのか。
当時、女の子をナンパして乱暴し、山の中腹で置き去りにするという「六甲おろし」が流行りだした頃でした。

「もしそんな目にあっているなら、協力できることがあるならするぞ」

Mが一生懸命話し掛けても、彼女達は無表情に前を向きながら首を振るだけで、道を案内する以外は口を利きません。

とても乱暴されたようには見えませんでした。
でも、何か理由があって欲しかったのです。あんな山中からこんな子供が出てきた理由を。

しかし、彼女達はお互いも話さず、淡々と道を案内するだけです。


>>34


とうとう目的地の神社に着きました。

初めて来る所です。
さっきの場所より何倍も不気味な所です。

高い杉の林に囲まれた小さな神社でしたが、彼女達はその神社のさらに奥の杉林に入っていきます。早足で。

Kがつぶやきました。

「あの子達って、あのおじいさんに聞いて今日はじめてくるはずやんな。なのになんであんなにスタスタ進むんや。2人とも車の中で一言も相談してないのに、迷いもせず同じ方向に進んでいってるで」

ぞっとしました。

しかし、ここで2人を置いて逃げるわけにはいきません。
慌てて後を追いかけますが、その足の速いこと。大人の俺達が小走りになるほどです。

いきなり2人が立ち止まりました。
黙って目上の高みを指差しています。

見ると、指差した先の杉の木に、釘を刺したような穴が無数に空いています。
いえ、よく見回すと、その辺りの木のほとんどに穴が空いています。

そして、とうとうわら人形も見つかりました。
絶句する俺達をよそに、彼女達は相変わらず無表情で何も言いません。

「もう帰ろうぜ、つかれただろ、おまえらも送ってやるから」

Mが恐怖を隠すように言いました。しかし、彼女達はこう言ったのです。

「ここじゃダメだね。もっといいところがあるから行こう」

絶句しました。

「もうやめようや」

とうとう俺は言ってしまいました。
しかし皆、大の男が中学生に言われて怖がるわけにはいかないようです。

「分かった、行こうや」

その一言で、少女達はきびすを返すように今来た道を引き返しました。
慌てて俺達は後を追います。


>>35

Kだけが俺の意見に賛成らしく、真っ青な顔をしてブツブツつぶやいています。

「罠や、罠や、これなんかの罠や。俺達連れて行かれてるんや」

Kの真っ青な顔とブツブツ繰り返す言葉に、今度はKのことまで怖くなってきてしまいました。

皆でバンに乗り込みました。
Mがカーステレオをつけようとしても、壊れたのかつきません。

嫌な沈黙が続きましたが、皆口を利きませんでした。
ただ、少女たちの道案内だけが車内に響きます。


着いた場所は、小高い丘の上にある神社でした。

その神社に着くには、その丘を左右対称に包むようについている階段を登るのです。
左右どちらから登っても、多分同じくらいの距離です。

少女達は無言のまま、それぞれ左右に分かれて登り始めました。
車の中でも打合せはしていないし、降りてからも2人は目配せや合図をすることなく、迷わず別の道に向かっていくのです。

もちろんその神社に続く階段はうっそうとした林に囲まれ、普通の女性なら複数でいても行きたがらないような不気味さです。
その階段を、まだ中学生の少女が迷うことなく、恐れることもなくスタスタと歩き出すのです。明らかにおかしいです。

慌てて俺達も3人づつに分かれて、それぞれ少女達の後を追いました。
俺はガマンできず、前の少女に話し掛けます。

>>36

「おまえらちょっとおかしいぞ、何であんな処にいたんや。肝試ししてるにしては全然怖がってないし。なんであんな所にいたんや?」

答えない少女にいらいらしながら、しつこく聞きました。
あまりにもしつこく聞いたせいか、彼女はこうつぶやきました。

「私ら……死ぬ場所探してんねん……」

そのとき、初めて彼女は俺の目を見ました。
しかし俺の目を見ているというより、俺を透かしてはるか遠くを見ているような眼でした。

そしてうっすらと笑いました。
その少し上がった口の端に、よだれがかすかに光っています。

全身に水を浴びたような気持ちです。
他のメンバーを見回しましたが、皆真っ青です。しかし聞こえてはいるでしょうが、この少女の目とよだれが見えたのは俺だけです。

逃げ出しそうになったとき、頂上に着きました。

むこうのグループもちょうど反対側から上がって来たところです。
真っ青になったMが駆け寄ってきました。

「聞いたか! お前等聞いたか!」

どうやら、M達ももう一人の少女から聞いたようです。

とりあえず、まだ帰らないと言う少女達をバンまで連れて帰りました。
そこでなぜ自殺したいのかをしつこく聞きましたが、答えません。

>>37


「アホなことするな。いじめか? 俺らがそいつらシメたるから、はやまるな!」

俺達の問いかけにも彼女達は首を振るばかりです。

「じゃあ原因はなんやねん」

「……べつに」

「別にって!!」

「生きてるんももうええって感じやねん」

またあの遠くを見つめるような無表情です。
2人とも同じ顔をするので、ますますそっくりに見えます。

「とにかくもうこっちも眠たいからお前等送ってくわ。はよ家までの道言え。送ってったる」

降りると言う彼女達に強い口調でMは言い、車を発進させました。

彼女達は地元の子達なのか、帰り道を代わる代わる「右」「左」で告げます。
2人同時に「ここ」と言いました。ハモるように同時にです。

止まった場所には家等ありません。

「おまえらホンマにここか? 家の前まで送ってくぞ」

Mが言いましたが、少女達は「ここ」とだけ言って車を降りました。

そこは、ちょうどさっきの丘の上の神社の裏側のようです。

>>38

クネクネとしてきたので結構走ったように感じましたが、そんなに走っていないようです。

もう皆十分気味悪く感じていたし、もう義理も果たしたと言う感じで車を走らせようとしました。
その直後、Kが

「あれ見てみろ!」

と叫びました。

2人の少女は、さっきの神社のある丘の裏側にある、登り口のような林の中にぽっかりあいた穴に向かって歩き出しています。

「あいつらまた登る気や」

Mがクラクションを鳴らしました。
すると、映画のワンシーンのようにゆっくりと少女達は振り返りました。

首を少しかしげて、左右対称に。
暗くて目はわかりませんが、なぜかうっすら笑っているように見えました。

でも、俺には2人の口の端に同じようによだれが光っているように見え、思わず「逃げろ!!」と叫んでしまいました。

後は一目散に車を走らせました。
Kがブツブツ又何か言っています。

「だからあの神社じゃだめだったんだ」

「何がダメなんだよ!!」

思わずいらいらして俺は叫んでしまいました。

「あの子達の身長じゃ、高い杉の木の枝には届かない、吊れないよ……首」


>>39

ぞっとしました。

「アホなこというなっっ! 気味わりい!!」

他の友人の声もうわずっています。
今まで黙っていたDが、気が付いたように言いました。

「なあ、衣替えっていつや? もう11月やで。あの子らなんで夏服のセーラー服きてたんや」


その後、どうなったかは知りません。

確かその日は皆でMの家に泊まり、夕方、夕刊を恐る恐るチェックしたように思います。
自殺者発見の記事も行方不明者の記事もなかったと思います。

ただ、Kだけが眠れなかったようで、ずっと部屋の隅でうつろな目をしていました。


その後、そのグループの奴らと遊ぶこともたまにありましたが、その日のことはなぜか誰も口にしませんでした。

そしてあの日以来、俺はKに会っていません。
もともとそのグループの奴じゃなかったので、他の皆もそのようでした。

ただ俺は、Kがブツブツ言っていた、

「罠や、罠や、これなんかの罠や。俺達連れて行かれてるんや」

を思い出し、

「連れていかれてたらどうしよう」

と思い、そう思った自分自身にぞっとしています。

あの呟きを聞いたのは、俺だけだったから。
41 削除済
時は第二次世界大戦の日本敗戦直後、日本はアメリカ軍の支配下に置かれ、各都市では多くの米兵が行き交う時代でした。

ある夜、地元でも有名な美女(23歳の方)が一人、加古川駅付近を歩いていた時、不幸にも数人の米兵にレ/イプされ、その後、殺すにも苦しみながら死んでいくのを楽しむため、体の両腕・両足の付け根の部分に銃弾を叩き込み、道路上に放置したまま立ちさりました。

瀕死の状態をさまよっていた時、運良くその場を通りがかった地元でも有名な医者に発見され、腐敗していた両腕・両足を切り落とすことを代償に一命を取りとめました。

しかし、自分の美しさにプライドを持っていた女は、生きることに希望が持てず、国鉄(当時)加古川線の鉄橋上へ、車椅子で散歩につれられているスキをみて車椅子を倒し、両腕・両足のない体で体をよじらせ、鉄橋の上から走ってきた列車へ身投げ自殺しました。

警察、国鉄から多くの方が線路中で肉片の収集をしましたが、不思議なことに、首から上の部分の肉片は全く見つからなかったとのことです。

しかし時代が時代だったもので、数日経過すると、その事件を覚えている者はほとんど居なくなりました。


事件が起こったのは、数ヶ月後のある日です。

朝は元気だった者が、なぜか変死を遂げるようになってきました。
それも一軒の家庭で起こると、その近所で事件が起こるといった具合です。

警察も本格的に動き出し、事件が起こった家庭への聞き込みでは、なぜか共通点がありました。
それは、死亡者は必ず、死亡日の朝に「昨日、夜におかしな光を見た」と言うのです。

実際に当時の新聞にも記載された事件であり、加古川市では皆がパニックになりました。
加古川署では事件対策本部がおかれ、事件解決に本腰が入りました。

>>42

そこで、ある警察官が事件が起こった家庭を地図上で結んでみると、あることに気がつきました。
なんとその曲線は、手足のない、しかも首もない胴体の形になりつつあったのです。

こうなると当然、次はどのあたりの者が事件に遭うか予測がつきます。
そこで、前例にあった「光」を見た者は警察に届け出るように住民に知らせました。

やはり、曲線上の家庭では「光」を見たと言い死んでいきました。
しかし、実は「光」ではなかったのです。

死者の死亡日の朝の告白はこうでした。

「夜、なぜか突然目が覚めました。すると、かすかな光が見え、見ているとそれはますます大きな光となります。目を凝らしてみると何かが光の中で動いているのが見えます。物体はだんだん大きくなりこちらへ近づいてきます。その物体とはなんと、首もない両腕・両足のない血塗れの胴体が肩を左右に動かしながら這ってくる肉片だった。ますます近づいてくるので怖くて目を閉じました」

と言うのです。

次からも、その同じ肉片を見た者は必ず死にました。

そこで次は自分だと予想した者が、恐ろしさのあまり、加古川市と高砂市(隣の市)の間にある鹿島神社(地元では受験前など多くの人が参拝する)でお払いをしてもらいました。
すると、

「暗闇のむこうに恐ろしい恨みがあなたを狙っているのが見えます。お払いで拭いきれない恨みです。どうしようもありません。唯一貴方を守る手段があるとするならば、夜、肉片が這ってきても絶対目を閉じずに口で鹿島さん、鹿島さん、鹿島さんと3回叫んでこの神社の神を呼びなさい」

>>43

と言われました。

その夜、やはり肉片は這ってきましたが、恐怖に耐え必死に目を開いて「鹿島さん」を3回唱えました。
すると、肉片はその男の周りをぐるぐる這った後、消えてしまいました。

通常、話はこれで終わりますが、やはり恨みは非常に強く、その男が旅へ出てもその先にて現れました。
その後、その方がどうなったかは知りません。

ただ、非常にやっかいなことに、この話はもし知ってしまうと、肉片がいつかはその話を知ってしまった人のところにも現れるということです。

私(兵庫県出身)が知ったのは高校時代ですが、私の高校ではこの話は人を恐怖に与えるためか、迷信を恐れるためか、口に出すことが校則で禁止されました。
皆さんはインターネットで知ったので、鹿島さん(地元では幽霊の肉片を鹿島さんと呼ぶ)を見ないことを期待します。

もし現れたら、必ず目を閉じず「鹿島さん」を3回唱えてください……。
45 削除済
それは8年ほど前のことになりますが、仕事で高知県の某市へ3泊の出張に行きました。
現場は駅から程遠く、唯一のビジネスホテルは駅前に1件しかありませんでした。

仕事もひと落ち着きして外でタバコ休憩していると、なんと目の前に小さな旅館がある?
現地の人へ訊くと「……まぁ、ね」とか「古いけど……ねぇ」とか歯切れが悪い。

こっちはあと2日もタクシーで現場に通うことを考えると、少々古くたって効率には代えられないものがあると判断し、駅前のホテルをキャンセルしてその旅館のお世話になることにしました(どうせ寝るだけだ、なんてね。これが大間違いでした)。

旅館の方が「3日間もお泊りですか?」とビックリした表情をしたのですが、こんな田舎に連泊することが珍しいのかな? くらいにしか考えてませんでした(普通そうだろ)。
ちなみに当日の宿泊客は私だけとのことでした(観光地でもなし、そんなもんだろ)。

当日の仕事も終わり、疲れた体で2階の部屋に通された時に、部屋の前で、ん? 中に誰かがいる?
そんな気配がして引き戸を開けましたが、誰もいない……。

仲居さんに促されて部屋に入った途端、不思議にサァっと全身に鳥肌が立ちました。

(ん? 何か、ヤバい?)

と直感が働きましたが、本人は霊感なんて縁が無い人生を送って来たので、仕事の疲れがひどいのかな? と気にしないようにしました。

ただ、仲居さんが去った後も何かに見られているような気がするのと、ひどく部屋が寒いんです。

すぐにエアコンを切りましたが、鳥肌は立ちっ放しで直りません。

>>46

それは気温の低さからではなく、今にして思えば何か神経に来るピリピリした寒さです。

食事を済ませてから会社への報告書を書き上げて風呂に行きましたが、夜11時を回り、かなり遅くなってしまいました。

風呂で温まったはずなのに、部屋に入ると何故か鳥肌が立つのです。

そして、部屋の一点から誰かに見られているような視線を感じ、相当疲れているのと風邪でもひいたかなぁ? と思いながらも、気を紛らわしたくてTVでも見ようと電源を点けた時に、TVの横にある床の間の下にある引き戸を、何の気も無く見たんです。

直感が、この部屋に初めて入った時から感じている(誰かに見られている)視線とが、ピッタリ合ったことを教えました。

視線をそらさず(この引き戸、何か変だと思いながら)引き戸を開けた時のことです。
開けた引き戸の中を、左から右に青白い手がフゥっと移動したのです。

一瞬、何が起こったのか理解出来ず、頭は真っ白になりながらも急いで引き戸を閉めて、ハッと我に返った途端、腰が抜けるほど驚きました。

そう、ここは2階なんだ……。

しかし、あれは間違いなく人の手だった。でもここは2階なんだよ。

考えてもまともに答えが出るはずも無く、恐怖心が全身を包みました。

もう二度と床の間の方を見ないようにし、廊下も部屋も点けられる電灯は全て点灯して、朝が来るのを待ちました。

>>47

そして深夜3時を過ぎた頃、部屋の周りを、

コツーン、コツーン

とゆっくり歩くような音がしました。
それは、まるでアスファルトの道路を靴で歩く時のような音。

でも何故? 建物の中なのに……。

靴音はゆっくり、ゆっくり、しかし止まらずに部屋の周りを歩き続けます。
さっきの「手」を見たこともあり、恐怖心は高まるばかりでした。

情けないですが、恐怖から来る失神か、キレる寸前だったように思います。
その間も、

コツーン、コツーン、コツーン

部屋の周りを歩き続けているような靴音は止みません。

もう恐怖心が絶頂に達したと思われた時に、私は「ふざけんなぁ!」と叫んでいました。

その途端に靴音が止み、ガシャン! と何か金属系が床に落ちたような音がしたんです。

必死の思いか何だったのか、無意識の内に私の口から念仏が繰り返し唱え出されています。
変な表現ですが、意識して唱えているのではない、そんな感覚です。

部屋の外から何者かが、こちらを見据えているかのような感じがありましたが、暫くしてフッと気配が無くなりました。

しかし恐怖から明るくなるまで念仏を唱えつづけてましたよ。


>>48

不思議なのは意識はそこまでで、その後気を失っていたのか安心して寝てしまったのか、気が付いたら時計の目覚ましが鳴っていました。

なぁんだ、夢か? とも思いましたが、部屋の電気が全部点いている。

最も不思議なのは、床の間の引き戸が半分開いたままでした。
慌ててはいましたが、確実に締めたはず……。

もう朝食どころか、とにかくこの後2日間の予約を取り消す際に、旅館の方へ「あの部屋変だよ」と言い掛けたところ、表情無くジッとこちらを見て、「部屋が変なのではないです」とのこと。

旅館を出て仕事の現場へ行き、私の顔色を見た客先(現地の人)から真面目顔で、

「やっぱり? 見た? 誰でもやっぱり見るんだ……」

と言われました。

そして、旅館が悪いんじゃないと言う。
さっきも同じようなことを言っていたと返したら、静かな声で、

「旅館の裏にある“首洗いの池”のせいだよ」

昔、郷士と罪人が多数ここの近くで処刑されて、旅館裏にある首洗いの池で洗われて、その度に池が赤く染まったそうです。


今は旅館も廃業してしまったとのことです。
50 削除済
15〜6年ほど前のことです。
それは秋田県の某所、季節は夏のことでした。

その日は、東北といえど朝から暑さは半端じゃなく、客先で雑談に花を咲かせてました。
あれこれ話題が上った中で、現地のスタッフが、近くの海に絶好の岩場があるから飛び込みの競争をしようと言い出して、お昼頃に皆(6人)が海へ繰り出したのです。

そこは、岩場が飛び込むのに都合がいいように海に張り出していて、高さは海面から5メートル程度はあったと思います。

最初は皆が自由にやってましたが、ただ飛び込むのでは面白くないから、何か奇抜なポーズをしながらやろうということになり、記念にその姿を写真に撮ることにしました。

当時、全員が30才前後でしたが、無邪気に返ってワイワイしながら開始したのです。

撮影係は私が担当することにしました。
当時はデジカメなんか無くて普通のカメラです。

A君はイヤミのシェーをしながら、

ドッボォン!

そして、更にシェーのポーズで浮き上がったところを撮影。

岩場に戻って来たA君が、

「何かに足をつかまれたような気がする……」

と変な表情。

それを聞いた一人が「海坊主にか?」と言い、聞いた皆は爆笑です。
確かに、足首辺りには海草みたいのが付いてました。

B君はライダーキックのポーズをして、

バッシャーン!

こちらは着水前に撮影。

戻って来たB君が、

「俺は腕をつかまれた気がするぅ」

>>51


と言うと、やっぱり誰かが「海女にナンパされたんか? あ〜?」の言葉にまた爆笑です。

で、彼の腕にも細い海草のようなものが付いてました。
それはまるで長い髪の毛みたいに見えたのですが、それを言うと場がシラケるかな? と遠慮したことを、今でも後悔に似た思いをしてます。

次のC君は、元水泳部(本人談)でひょうきんな人でした。
皆は彼が何かやってくれると期待して飛び込むのを待ってましたが、思い返せば、その時の彼の様子は少し変(うつむき気味)だったと思います。

彼は岩場から高く上に飛んで、

「おかぁ〜さぁん!」

と叫びながら、両手を組んで祈るようなポーズで体を横に回転させながら飛び込みました。

皆は「ハナマルキだぁ!」(当時流行った味噌のCM)とウケて笑ってましたが、カメラを構えて撮ることに専念していた私には、悲壮な叫びにも似た声だなぁとも思えましたが。

C君が戻って来るのを待つ間、「あいつはどこをつかまれるんだろな?」と冗談を言いながら待ってましたが、なかなか帰って来ません。
体が浮いているのは見えてるので、呼んでみますが反応なしです。

そのまま浮いて涼んでいるにしても遅いので、様子を見に行った人が何やら大声で叫んでいるのを見て、何か異常が起こったことを知りました。

急いで泳ぎ、数人で近くまで行くと、C君は気を失っているようでグッタリしていました。

仰向けで浮いていたのが幸いで、大事にならずに良かったと話していたのも束の間、気が付き起き上がったC君は、

「手、手だ、手だ、手が……」

と繰り返し言いながら、震え上がって海の方を指差しました。


>>52

皆も私も何のことやら、どう対処したらいいのか分からず、オロオロしながらも彼の傍にいて様子を見たり話し掛けたりしながら落ち着くのを待ち、やがて彼が話した内容は信じられないものでした。

海に着水する前に無数の手が彼を待ち構えて、彼を海底の方へと引っ張り込んだと言うのです。

この時は、正直言って素直には信じられませんでした。


翌日、写真屋さんから仕上がった写真を見に集まった人は、皆絶句してその写真を見ています。

無言で指を指された先の写真に写っていたのは、A君が浮き上がって来た傍に、カメラを凝視するかのような女の人(か子供?)の顔が。

B君の写真は何事も無いようでした。

そしてC君の写真には、なんと海面から数え切れない数の赤い手が飛び出て、C君を待ち構えているかのように写っていたのです。

なぜA君の傍に顔が?
なぜC君に赤い手が?

今でも解りません。
ただ、当時から数年前に秋田沖地震で津波があり、ちょうど遠足に来ていた小学生のかなりの人数が犠牲になったとのことです(後日知りました)。

こじつけかも知れませんが、C君が叫んだ「おかあさん」に意味があるかと思ってもいます。
54 削除済
あの日は晴天で絶好のキャンプ日和だった。

遠足だなんだとわいわいがやがや、子供だった俺達は、先生の指示に従ってバスに乗り、現地に着いて山を登った。

登ってる途中にはやけに急斜面な岩肌があって、そこには数本の鉄の鎖が上から垂れ下がっていた。
先生の指示で、僕たちは順番にその鎖を手に取ってそこを登ることになった。

登っている途中には花が活けてある瓶が置いてあって、ここで誰かが死んだんだ……そんなことを思った。

今思うと、子供だったから余計に急斜面に見えたんだと思う。
先生達は普通に登ってたから、実際はそれほど大したもんでもないと今では思ってる。

そんなこんなで、俺達は鎖の垂れた斜面を登り終えると、そこから少し先にあった開けた場所で、持ってきていたお弁当を皆で食べた。

でも山登りはまだ続くらしく、先生の「まだまだ登るよー」という声に俺達は不満の声をもらした。疲れてたし、なにより子供だった。
でも先生達はそれを予想してたんだろう。用意していた苺の飴玉を皆に配って「頑張ろうねー」とかそんなことを言って、俺達もはーい! って元気に答えた。子供だったからな、皆してすごく素直だった。

それから少し経って、白い建物が見えてきた。

やっと目的地に着いたんだ。そう俺が思ったときに、何故か先生は「ここで整列してー」と綺麗に整地された開けた場所で言った。

>>55

そこから階段を少し登ると見えていた建物に行けるらしく、なんでここで止まるのかと俺は思った。

でもすぐに納得した。
先生は建物の中ですることしちゃいけないこと、日程の説明をし始めたからだ。

話もすぐに終わり、俺達は建物に行くと、割り振られた部屋へと荷物を置きにいった。
中は普段使っていないこともあったせいか、やけに薄暗く感じた。蛍光灯もしっかり点いてたのに、何故か頼りなさ気に見えたのが印象的だった。

二泊三日のキャンプ初日はカレーライス作りで終わった。
飯盒でご飯を炊いて、管理人さんが持ってきてくれた材料でカレーを作った。味はもう覚えてないけど、飯盒のそこに残ってたご飯で食べたやつはおいしかった気がする。

初日の夜、クラスの男女で分かれて部屋で就寝につくことになったけど、人数割れが起きて、女子2名だけ、先生達と一緒の部屋で寝ることになった。

たしか部屋の数は足りていたのだけど、一箇所だけ使っちゃいけない部屋があったんだ。
それで仕方なく、先生達と余った二名の女子は一緒の部屋で寝ることになった(もちろん先生達の部屋も女子と男子で別れてた)。

この日は俺には何も起きなくて、ゆっくり眠れた。
だけどそうでない人もいた。そのことを翌日のオリエンテーリングで知ることになったんだ。

朝起きて、同じ部屋の奴らを起こして、布団を片付けて、点呼を取った。

>>56

朝食も自分達で作った。
何を作ったのかは憶えていない。だけど材料は用意されたものだった気がする。

朝食を食べ終わると、先生達は昼過ぎに行なうオリエンテーリングの準備をしに行った。
つまり、僕たちは自由時間を得たことになる。

施設に置いてあった竹馬やタイヤを使ったブランコのようなもので遊ぶ人達。
俺もそれに加わろうとしたとき、一つのグループから小さな悲鳴や驚きの声があがった。

きゃあ、うわ、とかそんな感じの声。その中心には二人の女の子の姿があった。
興味があったので、俺もそのグループに加わる。どうやら、昨日の夜に先生達から聞いた話をしていたらしい。

件の女の子二人組は、一つの部屋が空いてたことを知っていて、というよりこれは皆が知っていた。
だって、建物に入って何組一班はここ、二班はここ、と一つ一つ確認していって、最後に一つだけ部屋が余ってたからだ。

それで、女の子達は部屋一つ私たちのものだ。みたいなことになるのではないかと期待してたらしい。
それで先生達に聞いた。たしかこんな感じの会話。

「どうしてあの部屋を使っちゃダメなんですか?」

先生達は答えた。

「二人っきりだと危ないでしょ?」

そんな感じ。

今思うとおかしい会話だ。なんで皆も泊まっているのに二人っきりだと危ないのか。

>>57

書いていて思った。確かにおかしい。やっぱり先生の作り話にしてはおかしい部分がある。

最後に、先生は二人を納得させるのにこういう話をしたんだ。

「昔ここで殺人事件があって、顔だけが件の余った部屋のロッカーに入っていたの」

「それでね、頭は見つかったんだけど身体は見つかってないの」

そんな話だ。

この施設の近くには沼があって、そこに沈んでるんじゃないか、と班の奴らと話したりした。
たしかに、ここに来る途中には沼があり、そこに行く道もあった。

ザリガニが取れるとか、そんな話をしていた気がするが、沼にはいないんじゃないだろうか? それとも沼の淵にはいるものなんだろうか?

それはさておき、件の女の子達の話には続きがあった。

夜中に隣の部屋からガタンガタン、という物音がしたらしい。

先生達は寝ていてゆすっても起きなくて、恐くて目を瞑っていたら朝になっていた、というそんな話だ。

でも俺達は夜遅くまで起きていたけれど、そんな音はしなかった。
だから、俺はそのとき聞き間違いか夢でも見ていたのではないかと思っていた。

その子たちの寝ていた隣の部屋は……件の空き部屋だった。

>>58

オリエンテーリングの内容はいたって簡単。
日暮れまでに、先生達が置いて来たスタンプを配られた紙に押してくること。

スタンプの置いてある場所は配られた紙の裏に書いてあった。
なぞなぞみたいな感じで正直つまらなかった。

他の皆は楽しそうにしてたけど、やはり俺と同じようにつまらなそうな人もいた。
うちの班の奴らもつまらなそうで、そんな時に班長が言い出した。

「沼の方に行かない?」

スタンプの大半を押し終わっていた俺達は班長の言葉に頷いた。みんな飽きていたんだと思う。

沼に続いてる道はあったけど、獣道っぽくて行くのが大変だった。

それでも歩き続けて沼に着いた。
他の班の子の声も聞こえたから、結構近くにあるんだなって思った。

どろっとした感じの水がたまったような、そんな場所だ。
見た感じ深さもわからない。
でも水に触れてみようとかそんな気はしなかった。

なんか気持ち悪かった。
だって、聞いた話では身体が見つかっていない死体があったんだから、もしかしたらここにあるのではないか? とかそんなことを思ってた。

たしかにそこには壊れた傘とかとび職の人が履いてそうな靴とか落ちていたけど、今思えば警察が一回調べてるだろうしそんなはずないんだけど、沼の中が気になって仕方がなかった。


60 無名さん
自分は夢や乙女ゲー好きな女向けだと思ってた
61 無名さん
夢とか腐向けとかじゃなくて女向けだろ
解決
>>59

結局何もなかったねってことになって、俺達はオリエンテーリングに戻った。
俺は背後に薄気味悪いものを感じていたけど、振り返らずにそのまま皆と一緒に戻った。

明日帰るということもあってか、夜にキャンプファイヤーをした。
木を二段三段重ねただけの小さなやつだけど、すごい! とかそんなことを思ってたような気がする。

それも終わり、部屋に戻ってあとは寝るだけというそんな時にトイレに行きたくなった。

消灯時間が過ぎたらさすがに恐くてトイレには行けない。
だから、俺は消灯時間が来る前にさっさとトイレに行くことにした。

トイレは古ぼけていて蛍光灯の部分は豆電球だった。
やけに古いな、それが俺の感想だった。
薄暗くて端の方が汚れていて個室には傷が多くて、正直沼より気持ち悪かった。

用を足した俺は手を洗うとすぐに部屋に戻った。
そういえば、手洗い場の鏡は斜めにひびが入っていた。それが余計に恐かった。

消灯時間ですよ、と先生達が部屋に知らせに来たあとで、班の一人がトイレに行きたくなったとか言い出した。
一人で行けと皆も俺も言ったが、そいつは恐くて嫌だから誰かついてきてくれと頼みだした。

部屋から廊下を覗いて見てみるとまだ明かりがあった。
だから俺が言ったんだ。

「まだ明るいからさっさと行ってきたほうがいいよ」

>>62

それを聞いてそいつはさっさとトイレに行った。
だけど戻ってこないうちに消灯時間が来て、廊下の明かりが消えたんだ。

それからしばらくしてもそいつは戻ってこなかった。
班のやつらもそれが心配になったのか、様子を見てきたほうがいいんじゃないかとか俺の方を見て言った。

行ってこいと言ったのは俺だし、寝る予定の場所が入り口に近かったせいもあった。
さすがに皆が俺を見るものだから、仕方なく嫌々トイレまで様子を見に行くことになった。

廊下は真っ暗だった。
非常灯も一つしか見当たらなかった。

部屋を出て右の突き当たりにトイレはある。
ちなみに部屋を出て左へ行き、突き当りを曲がって二つほど先の部屋、その真上の部屋が件の空き部屋だ。

上に行くことはないだろうからと、俺は昼間に聞いた話を思い出さないように「恐くない、恐くない」と思いながらトイレに向かった。

トイレから部屋までの道は一本だけだ。
途中に階段があって上と下に行けるが、階段を通らない限りトイレに行ったやつは俺と鉢合わせするはずだった。

でも、トイレに着いてもそいつには合わなかった。
つまり奴はトイレにいることになる。
トイレの前で少し待ってみるが、中からは物音一つしない。

このまま戻ったら部屋の奴らに何言われるかわかったもんじゃない。
だから俺は明かりの点いていないトイレの中に入った。

手洗い場を通り過ぎて、個室とかがある場所まで来た。
でも聞こえるのは俺の足音だけで、他の音は聞こえなかった。

>>63

そこには誰もいない。
だから残るは個室の中だけ。

仕方なく俺は個室を一つずつノックしていった。

「いないのか?」

と小さな声で確認するように聞きながら。
小さかったのは恐かったからだ。大きな声は出なかった。

そうして個室をノックしていくと、一つの個室の前でノックが返ってきた。
だからちょっと安心して、

「早く出てこいよ」

って俺は言ったんだ。
そうしたら、

「出てもいいの?」

とか答えた。
でもそれはトイレに行った奴の声じゃなくて、それで俺はびびって動けなくなって、声も出せなくなって……それでも個室からは、

「出てもいいの?」

って二度目の声がしたんだ。
俺は恐くてトイレから逃げ出した。駆け足でだ。

先生達に怒られるかもしれないとか、そんなことも忘れて走って部屋に戻った。
だけど部屋の前に来て違和感を覚えた。

だって、目の前にある部屋は俺のいた部屋じゃなかったんだ。
俺の部屋は203号室って書いてある部屋なのに、目の前にある部屋には306号室って書いてあったんだ。

でも俺は階段を上った記憶もなくて、角を曲がった記憶もない。だから306号室の前にはいないはずなんだ。
けれど、確かにそこには306号室と書かれた部屋があった。部屋に入る気にはなれなかった。

>>64

ふとそのとき、背後に違和感を覚えた。
誰かがいる、そんな雰囲気があった。

でも足音とかそんなのは聞こえなかったし、さっきはそんなもの感じなかった。
普段は聞こえない、気づくことすらない自分の鼓動の音がわかって背筋がぞくぞくってして、身体が震える感じがして、そのとき隣の部屋から悲鳴が聞こえた。

隣の部屋から先生達の驚いたような声がして、女子の泣く様な声が聞こえて、気づいたときには背後にあった気配は消えていた。

先生に怒られるかもしれないと俺は気づいて、自分の部屋に戻るとそこにはトイレに行った奴の姿があった。
それで俺はそいつに言ったんだ。

「どこいってたんだよトイレまで探しに行ったのに」

そしたらそいつが答えたんだ。

「え、俺はちゃんとトイレに行ってたぞ?」

トイレとここまでは一本道、そいつが嘘を言ってなければ俺はどこを歩いていたというのか?

でも、そいつが嘘をついてるようには思えなかった……。
66 削除済
あれはまだ俺が小学生高学年の時の話だ。
俺の片目は生まれつき視力が低くてな、斜視だったかなんだったか……まあそれを矯正するために手術をするってことで一月ほど入院することになったんだ。

風邪を引いたりした時は近場の病院に行けば済んだんだが、その時は手術ってこともあって数キロほど離れた場所にある大きい方の病院に行くことになったんだ。
駅前の方にも病院はあったが、そっちじゃなくて山の方にある病院に行くことになったんだ。理由は知らないけどな。

まあそんなわけで俺は山の方にある病院に入院することになった。
手術前の検査期間と手術後の検査期間あわせて約一ヶ月の入院。
正直暇だった。
友達は入院初日に着たらそれ以降全然来ないし、両親も仕事の合間に来るくらいだったから大抵は一人でいた。

まあ患者ってのは大抵そんなものなんだなって今なら思える。
でも子供時代のことだ。一人ってのが寂しくてしょうがない。
昼間ならまだいいさ、優しい看護婦さんとかが話し相手になってくれたりした。
携帯ゲーム機なんて持ってなかったし、楽しみはそのくらいだった。

だが夜になると看護婦さんも仕事場に戻る。
あたりは真っ暗。
なんせ消灯時間を過ぎたら光はまったく無い。
あるのは非常口の薄明るい緑色と窓から見える星くらいのもの(山の中だったしな)。

そうして手術も終わって、残るは術後の検査期間を終えるのを待つばかり。
そんな残り数日の夜にちょっと不可解な出来事に遭遇したんだ。


>>67

消灯時間を過ぎた病院ってのは本当に静かなんだ。
聞こえるのは時々見回りをしている看護婦さんの足音と他の患者さんの咳くらい。
それ以外まったく音がしないんだ。
山の中ってこともあって若い人たちより高齢者の患者さんがずいぶん多かった。
そのせいもあって消灯時間を過ぎると全然物音がしないんだ。

何故かその日に限って俺はすぐには眠れなかった。
いつもと変わらない夜なのに、何かすごく恐いっていうか不安だったんだ。
それもあって目が冴えてて、いつもなら寝てる時間だったのに起きてた。

そうこうしてるうちにトイレに行きたくなってきて、でも病室から出るのは恐い。
部屋からそっと廊下を覗くと、足元にある非常口の薄緑色のやつだけしか光は無い。
すごく恐かった。でもトイレには行きたい。
それでついに辛抱できなくてトイレに行くことにしたんだ。
たしかあの時、他の病室の前を通らなくちゃトイレには行けなかった。
それで他の病室の前を通り過ぎる時に

ピッ、ピッ、ピッ、ピッ

っていう規則的な電子音がしてた。
呼吸器をつけてる人もいたから心電図の機械とかのやつだと思う。
それがまた不気味だった。

それでも俺は勇気を振り絞ってトイレに行った。
用を足して自分の病室に戻ろうとして廊下を足早に歩いてた時、前の方から

キィ……キィ……

っていう何かが軋むような音が聞こえてきた。


>>68

そんな音がするはずはないんだ。
だって皆寝てて、さっき通った時だってそんな音はしなかった。
でももしかしたら誰かが起きてるのかもしれない、そうも思った。

だけど俺も子供だった。
皆寝てるのに俺は起きてる。寝てなくちゃいけないのに見つかったら怒られる! そう思ってしまってつい近くの病室に隠れたんだ。

病室の入り口がどうなってるか知ってるか?
場所によって少し違うと思うが大抵は扉なんてないんだ。
俺の入院したところでは消灯前にカーテンを引いて中を見えなくするだけだった。
俺は怒られると思って隠れた。
でも誰だろ? って気になってカーテンの下の隙間を覗いて見てたんだ。

そしたらゆっくりと車椅子が「キィ、キィ」って音をたてながら隠れてる病室の前を通ったんだ。
車椅子を押してる人がいて、履いている靴で看護婦さんが押してるんだって俺にもわかった。
だけど何故か俺は病室から出れなかった。

怒られるからじゃない、すごく恐かった。だから出れなかったんだ。
でもこれで話が終わるわけじゃない。

車椅子と看護婦さんが病室の前を通り過ぎるのを俺は待った。
「キィ、キィ」っていう音がしなくなるまで隠れ続けた。
そうして音が聞こえなくなるのを確認して、俺は自分の病室に戻った。
足音を立てないように静かに静かに歩きながら、あと二つ三つ先に自分の病室があるというところで、また「キィ、キィ」と音が聞こえてきた。


>>69


おかしかった。
だってあの車椅子が通り過ぎた方向は病室から見て左、俺が向かっていたのは病室から見て右。
音が聞こえたのは俺が向かっている方向からだった……。

たしかにそこの病院の作りからすればおかしいことじゃない。
ナースステーションを中心に「#」のような廊下作りになっていたから、ナースステーションを回って反対側の廊下から来ればありえる。
だけど距離にすると結構あった。走ったりしなければさすがに追いつけない。
いや……前に来てるんだから追いつくだけじゃ無理なんだ、追い越さないといけない。それも足音をたてないで車椅子も音をたてないでだ。

俺は恐くなってさっき通ってきた道を戻った。
でも音は変わらずに

キィ……キィ……

ってついてくるんだ。
どうしてついてくるのか分からなかった。
恐くて恐くてどうしようもなくって、気づいたらトイレの個室に隠れてた。

でも音は止まらなかった。
トイレのところにも車椅子が入ってきて、少しずつこっちに近づいて来るんだ。
俺はトイレに入って一番奥のところに隠れてたんだ。

キィ……キィ……

音は俺の隠れている個室の前で止まった。


>>70


目を閉じて耳を塞いで俺はじっとしていた。

そうしてどのくらい時間がたったのかわからないけど、突然カギを掛けたところがガチャガチャ鳴り出した。
すごく力を入れて動かしてるみたいで壊れるんじゃないかって思ったほど。

それもすぐに収まって、ふと上に視線がいった。
そこにね、ぐちゃぐちゃになった女の人の顔があった。なんか肉がただれてるような切り傷だらけみたいな顔。

俺は恐くなってカギをあけて個室から出た。でもそこには何もいなかった。
まだ話は終わらない、終わらなかったんだよ。

だって個室を出たあとにまたあの音が聞こえたんだ。
トイレの入り口の方から

キィ……キィ……

って車椅子の音が聞こえたんだ。

じっと俺は入り口の方を見ていた。
すると車椅子が通りかかって……そのままこっちに入ってきた。
看護婦さんが車椅子を押しながら俺の方に近づいてきたんだ。
暗くて看護婦さんの顔が見えない。車椅子には誰かが座ってた。

なんで電気をつけないで入ってくるんだろうとか、そんなことを考えていられる余裕はなかった。
暗闇でも慣れると割りと物が見えるようになるんだ。
それで近づいてきた車椅子を見てたら……座ってる人の頭がなかった。

恐くて俺は座り込んで後ずさりしたんだ。
声も出せなくて金縛りにあったようにのどが引きつったようになって、それで看護婦さんの方を見ると両手を自分の頭に添えていて、いきなり頭を抜いた。

>>71

ちょっとこの時聞いた声はぼやけた感じで正確には覚えていないけど、笑うような楽しそうな声で

「もうこれにも飽きちゃった……」

そういうような声を聞いたんだ。子供のような声でそう聞こえたんだ。
そして頭のない看護婦さんが抜いた頭を捨てて、今度は俺の顔に添えた。

――それで目を覚ました時、自分の病室のベッドにいたんだ。
夢だったんだ。良かったって思った。
本当に夢で良かったって最初は思ったんだ。

でもね……おかしいんだ。
夢で良かったって思ってるのにね、本当にあったんだって理解してるの。
それでトイレに確認しに行ったんだよ。あれが夢だったのかどうだったのか。

俺はトイレの個室を使う時は一番手前って決めてたんだ。
近い方が楽って思ってたんだよ。だから一番奥の個室に行くことはないんだ。
トイレの個室が全部埋まるなんてことなかったしね。

だけど一番奥の個室を空けようとしたときにね、ぬるっとした感触がしたんだ。
変だなって思って手を見てみると血みたいな赤い何かがべっとり付いてた。
ドアノブひねって、気持ち悪いって思いっきり手を引いたら扉が開いた。

そこの壁中に赤い文字で「助けて!」って書かれてたんだ。

>>72

それで恐くて手洗い場まで戻って手を洗ったんだ。そこで気づいた。
首の辺りに人の手形のようなアザがついてることに……。

これで病院での体験談の一つは終わりだ。
以降はこの話の後日談の話をしようと思う。

<後日談>

そこの病院は一号棟二号棟と分かれていて、一号棟を本館、二号棟を別館と呼んでたらしい。
俺が入院してたのは別館だったんだが、数年前に規模の縮小だとかで現在使われてないんだ。
それで今は立ち入り禁止になってるらしんだが、ちょっち秘密で入ってきた。

それはさておき、当時から働いている人から聞いた話から話そうと思う。
俺が入院するちょっと前に俺と同じように手術を受ける子がいたんだそうだ。
名前とかはなんか大人の理由で教えられないらしかったが、体験談を話したら事情は教えてくれた。

簡潔に言うとその子(男か女か不明。子って言ってたので子供と思われる)は手術の最中に事故だかなんだかがあったらしくて、結果を言うと失敗したらしい。
一命は取りためたらしいんだけど余命幾ばくかしかなくて、悲しそうというより絶望してるというような感じだったらしい。
手術から数日たたずにその子は病院の屋上から飛び降りて自殺したらしい。


>>73

その自殺があった後、トイレに件の血文字みたいなのが書かれてるのに気づいて、清掃員さんが気持ち悪いからと掃除したらしいのだけど落ちなかったらしい。
最初はぼやけてる感じだったのも、いつしかはっきりと「助けて」って見えるようになったそうだ。

それで、なんかその自殺した子と仲が良かったらしい看護婦さんがいたらしいんだけど、その子が自殺した後に交通事故で亡くなったらしい。
ここいらは噂話の線を越えないが、もしもこの看護婦さんの顔がその事故で切り傷だらけだったとしたら……。あの車椅子に乗ってた人が自殺した子だとしたら……。俺は正直恐い。

数年前から使われなくなったとは言っても管理はしてるのか、別館の中は割りと綺麗だった。
管理が楽なようにだろうか、鍵はかかってなかったので自動ドアの部分を手動で開けて中に入った。

俺が入院してたのは三階の一番端にある病室だった(ちなみに別館も本館も五階建てだ)。
エレベーターが使えなかったので階段を使った。
電気は止められてるんだから当然といえば当然なんだけど……いやこれは関係ないから省くとしようか。

>>74

まあそんなこんなで三階に着いて自分がいた病室に行ってみたんだ。

ちょっと懐かしい感じがして、ちょっと寒いって言うのか寒気を感じた。
方向のある寒気って言い方もおかしいけど、そんな感じ。
そっちの方角にはね。体験談で話したトイレがあるんだ。

件のトイレには用事があった、というかそれが本命だったから俺はトイレの方に向かった。

そしたら変なんだ。
綺麗だった室内がそこに向かうにつれて汚くなってるというのか、物が地面に落ちてたり壊れてたり、そういう物が多く見かけるようになった。
壁のひび割れとかもそんな感じに増えていってるような気がした。
トイレの近くにはエレベーターがあったから、物の運び出しとかがあって他に比べて乱雑な感じになってるんだな、と俺はそう思うことにした。

トイレに入って手洗い場の割れた鏡を見る。
鏡には俺が映っているが、もちろん首元に手形のようなアザはない。
そのまま奥に進む。
右側には小便用のトイレ、左側には大便用の個室。それと真ん中に車椅子があった。

その車椅子見た時ね。恐くてすぐにトイレから逃げた。
フラッシュバックっていうのかな、あの看護婦さんもいたような気がしたんだ。

逃げたあとで思った。今は昼間。
トイレには光も結構入ってきてる。そこまで恐くない。
なにより、いた気がしただけでいなかった。車椅子だけだった。
そう自分に言い聞かせて、忍び足みたいにソロソロとトイレに戻ってみた。


>>75

恐かったんで、そっと覗きこむように車椅子のあった場所を見た。
たしかにそこには車椅子があった。
折り畳まれてたり横になって倒れてたり、そんなことにはなってなくて、誰かが座ってるように開いて足を乗せる部分もしっかり空けてあった。

俺以外誰もいない。
当たり前だけどそれを確認して、車椅子の置いてある場所まで俺は歩いて近づく……そこで俺はまた寒気を感じた。

トイレに車椅子ってだけでも場違いなのに、その車椅子が置かれていたのは俺が子供の頃に隠れた個室の前だったんだ。

車椅子の向きもおかしかった。個室の方に向いてたんだ。
トイレのところがどれだけ狭いか思い出して欲しい。普通車椅子を横に置くほどスペースはない。
縦ならわかるけど車椅子は横を向いて……個室を見るように置いてあった。

もしこれを人が置くとしたら、縦に車椅子を押してトイレに入ってその状態で車椅子だけを横に方向転換させるしかない。
これだと車椅子を持ち上げる必要がある。
だって車椅子を横におけるスペース自体はあっても、人が車椅子を持ってる状態で横に出来るスペースがないんだから。

車椅子をこのままにしておくと個室の扉が開けらなかった。
気持ち悪い気持ち悪いと思いつつも俺は車椅子を持ち上げてどかした。

>>76

そうやってどかしたことを後になって後悔したんだが、その時はどかしてしまったんだ。

邪魔だった車椅子をどかし終わり、目的だった個室の中を拝見すべく俺は個室の扉を開けて中を見た。

俺の記憶ではそこには小さな「助けて」って文字がまばらに書いてあった。
壁中にまばらに「助けて」って小さな文字で書いてあった、そう記憶してた。
だけど、実際に開けて見たら赤色がびっしりと壁中に塗り潰されてた……。

思わず後ずさって、だけどちょっと気に掛かったんでよく見てみたんだ。
そしたら、たしかに小さい文字で「助けて」と書かれている。
だけどその字の上に重ねるように「助けて」って書かれてて、またその上に「助けて」って書かれてて……それがいくつもいくつも上書きされて壁が真っ赤に塗り潰されてるってことに気づいた。

恐くなって、でも目を背けられなくなって……そしたらね、

キィ……

って音が近くから聞こえたんだ。

横にはさっきどかした車椅子があるはずで、しかも縦に置いたからこっちを、俺を向いてるように置いてあるはず。
左を向けば車椅子が置いてある。だけどそれを確認するのが恐くて……でも赤で塗り潰された個室を見てるのもすごく恐かった。
だから俺は意を決して左を、車椅子のある方を見た。

一瞬、赤い染みがいくつもある服を着た看護婦さんと真っ白な服を着た子供が車椅子に座ってるような錯覚を覚えた。

>>76

そうやってどかしたことを後になって後悔したんだが、その時はどかしてしまったんだ。

邪魔だった車椅子をどかし終わり、目的だった個室の中を拝見すべく俺は個室の扉を開けて中を見た。

俺の記憶ではそこには小さな「助けて」って文字がまばらに書いてあった。
壁中にまばらに「助けて」って小さな文字で書いてあった、そう記憶してた。
だけど、実際に開けて見たら赤色がびっしりと壁中に塗り潰されてた……。

思わず後ずさって、だけどちょっと気に掛かったんでよく見てみたんだ。
そしたら、たしかに小さい文字で「助けて」と書かれている。
だけどその字の上に重ねるように「助けて」って書かれてて、またその上に「助けて」って書かれてて……それがいくつもいくつも上書きされて壁が真っ赤に塗り潰されてるってことに気づいた。

恐くなって、でも目を背けられなくなって……そしたらね、

キィ……

って音が近くから聞こえたんだ。

横にはさっきどかした車椅子があるはずで、しかも縦に置いたからこっちを、俺を向いてるように置いてあるはず。
左を向けば車椅子が置いてある。だけどそれを確認するのが恐くて……でも赤で塗り潰された個室を見てるのもすごく恐かった。
だから俺は意を決して左を、車椅子のある方を見た。

一瞬、赤い染みがいくつもある服を着た看護婦さんと真っ白な服を着た子供が車椅子に座ってるような錯覚を覚えた。

>>78

だけどそこには何もなくて、近くを探したけど何もなくて、音がしたはずなのに何もなかった。

それで俺は嫌な気分になって、気持ち悪いって言うのか胸の辺りに蛇が這ってるような気持ち悪さがして、別館を後にして本館の方に歩いてたんだけど、時々別館の方を振り向いた。

一回、二回、三回ほどだったろうか? 誰かがいるような、誰かが見てるようなそんな気がしたんだ。
それで何度か振り向いた。だけどそこには誰もいない。

ちなみに帰りに本館に寄って「俺が来る前に来た人はいましたか?」と聞いてみたが、その日最初に来たのは俺だったらしい……。
80 削除済
新しい家はベランダが広く、中も西洋の雰囲気を醸し出しているとてもよい家でした。
ただひとつ、僕の部屋にある奇妙な扉を除いてはね。

僕の部屋のクローゼットのドアを開けて、更にその奥に小さいドアがあるんです。
たとえば電子レンジとか、旅館にある金庫あたりの小さいドアです。
取っ手の部分はザラザラに錆びていて、握っただけで手に錆がこびりつく。
気味が悪くて僕は開ける気にもなりませんでした。

父が気になるとはりきって開けようともしましたが、長い間誰も住んで居なかった家だったので扉が歪んでしまっていたり、錆のせいで腐食していたりしてどうしても開きませんでした。
それでも「業者を呼んで開けてもらう」と父は張り切っていました。

僕はそんな気味の悪い扉、開けなくてもいい。と思う反面、中に何が入っているのか分からない扉がある部屋で過ごさなければいけない。
僕の心は不安でいっぱいでした。

引っ越してきて二日がたったでしょうか。
ついに父が「明日、業者が来る。もしかしたら宝石でも入っているかもな」とニヤニヤした顔で僕に注げてきました。

明日になればこの不安も消える……。そう考えて僕はベットにもぐりました。
気味が悪いのでベットは部屋の隅に移動して、クローゼットから一番離れた位置にしていました。
もしも寝ているときに物音でも聞こえたら、嫌ですからね。


>>81

眠りについてどれぐらいしたでしょうか。ふと目が醒めたんです。夜中に。
時計を見ると午前三時半。物音ひとつしない薄暗い電球の下、一人きり。
さすがに僕は恐怖心には勝てず、ぶら下った電気の線を引きます。

カチカチ

あっさりと電気はついて、明るい部屋が映し出されました。

「あ……!」

僕は背筋が凍りつくかと思いました。
クローゼットが開いているんです。閉めたはずなのに。
電灯に照らされたクローゼットの中に、あの錆びたドアがぼんやりと浮かんでいます。
恐くて恐くて、僕はあわててクローゼットを閉めようと扉にとびつきました。
その時です。

カリカリ……カリカリ……カリカリカリカリ

扉の内側からドアを引っかく音が聞こえてきたんです。
爪で大根おろしのギザギザした所を引っかくような、そんな痛々しい音でした。

(何かが、ドアの向こうにいる……)

引っかく音はだんだん激しくなっていき、ベリっと何かがはがれる音が聞こえました。

「お、お父さん! お母さん!」

あまりの恐怖にクローゼットの扉から手を離せないでいる僕はその場で叫びます。

けど、どれだけ待ってもどれだけ叫んでも……誰もこないんです。
まるで扉に声が吸い込まれているみたいに。

>>82

ギャリッ……ギャリッ……ガチャ

扉からの音が変わりました。

(ノブを、ノブを回してるんだ……! 大丈夫、大丈夫……あのドアは開くはずがないんだ、開くはずが)

ガチャガチャ……ガチャガチャ

ノブが何度も回って、僕はそれを見守ることしか出来ませんでした。
やがて音は更に不気味に大きさを増していきます。
まるでドアに体当たりしているような、ギシギシと扉が軋むのが分かりました。

ギッギッ……

……ギッギッ


僕は目を疑いました。
あれだけ父が力を込めても開かなかった扉が、少しずつ錆を落としながら開こうとしているのです。

「ひっ……!」

僕は情けない声を上げてクローゼットのドアを閉めました。
本当なら中の扉を閉めようとするべきでしたが、それは恐くて出来ません。
閉めた扉の向こうから、ギッギッギッと音がしばらく続き、

バァン!

扉が開いた音でした。
何かがあの小さな扉から出てくる。ゴキゴキと間接が鳴る音が聞こえました。

「あぁあぁあああああぁああぁぁ……」

この世のモノとは思えない声がクローゼットのドアをびりびりと震わせます。
寒気で体中の血が凍りつきます。

「お父さん! お父さん!!」

僕は泣きながら必死で扉をつかんでそれが出てこないように叫びます。

>>83

ギシ……ギシ……

ついに中の「なにか」がクローゼットの扉を掴みました。
同時にものすごい力で扉を開けようと押してくるのです。

ギッギッギッギッ!

「ぎゃあぁあッ!」

少し開いた扉の上の方から真っ青になった血の気のない腕が飛び出し、ばたばたと水を得た魚のように暴れるそれに僕は絶叫しました。
更に足元から顔のようなものが這い出してきたとき

(上から手、下から頭……こんな人間いるはずない)

そう思いながら僕は気を失いました。
85 削除済
学校につきものの怪談ですが、表に出ない怪談もあるのです。

わたしが転勤した学校での話です。
美術を教えているわたしは作家活動として自ら油絵も描いていました。
住まいは1LDKの借家のため、家で大きな作品を描くことができず、放課後、いつも学校の美術室に残って作品を描いていました。
今度の転勤先でも同じように美術室の一角で制作を続けていました。

ところが妙なことに気づきました。
作品の表面に小さい子供の手の跡が付いているのです。

油絵というのは乾きが非常に遅く、完全に乾くのに1週間かかることもあります。
わたしが知らないうちに誰かが触ったのかと、あまり気にもせず制作を続けました。
手の跡も絵の具で上から塗り重ね、消してしまいました。

しかし、次の日も子供の手が跡が付いていました。
1個どころではなく、作品の表面全体にびっしり付いていたのです。
100号という大きさの油絵ですので、単なるいたずらではないなと感じました。

その日は作品全体の手の跡を消しながら描いているうちに作品の山場にさしかかり、9時、10時、11時と、いつしか夜中になってしまっていました。
わたしの筆の音しか聞こえないはずの美術室に、いつごろからか猫の鳴き声とも赤ん坊の声とも言えない泣き声が聞こえるようになりました。

窓を開けても猫の姿はなく、赤ん坊も当然いるわけもありません。
気にせず制作を続けていると、どうやら美術室の中から聞こえるようなのです。
泣き声のする方向を絞っていくと、美術室の後ろにある工芸用の電気釜の中のようです。

>>86

電気釜は焼き物を作るときに使う大きめのゴミ箱ぐらいの大きさのものでしたが、故障なのか長い間使った形跡はありません。
フタを開けると、本当に生徒がゴミ箱がわりに使っているらしく丸めた紙くずなどで内部が一杯です。
転勤してきたわたしも片づける暇もなく放置したままだったのです。

わたしが恐る恐る電気釜に近づいていくと、泣き声がふと止みました。
ひょっとして生徒が子猫を閉じこめたのかもしれない、そんないたずらをする生徒がいるなら作品についた手の跡も納得できる。

わたしはいたずらの正体を見破るべく電気釜のフタを開け、紙くずを拾い出しました。
美術室に響く紙の音は気持ちのいいものではありませんでした。
手に取れるゴミは拾い出しましたが、猫など見あたりません。

電気釜の底の方には乾いた砂が溜まっていました。
わたしは砂に手を突っ込み中を探りました。
指先に手応えがあるので取り出してみると、それは骨でした。

動物のもののような骨。
わたしは恐くなりそれ以上手を突っ込むことはできず、美術室を飛び出しました。

翌日校長にこの出来事を話したところ、「すべてこちらで対応するから他言しないように」と強く言われました。
その後聞くところによると、わたしが転勤する前、不倫の末妊娠し退職した美術の女教師がいたということでした。
その人は現在消息不明だということです。

あの小さな手の跡と赤ん坊の泣き声は、一体何だったのでしょうか? 
88 削除済
数年前の話になるんだけどさ。
俺がいつものように2chで遊んでたとき、電話がかかってきたんだよ。
うざいな〜と思いながらも俺以外家には誰もいなかったから仕方なく受話器をとったんだよ。

「……はい、もしもし」

今になってみるとかなり無愛想な声だったと思う。
そのせいかわかんないけど、しばらく何の反応もなかったんだ。
そのとき早く切りたかったんで、ちょっといらいらしてた。
俺はもう一度、さっきよりも大きな声で言った。

「もしもし!」

一瞬の間があったあと、受話器から小さくてか細い声が聞こえてきた。

「上の者です……」

女の子の声だったと思う。年齢的にも小さい子だろうって印象を受けたのを覚えてる。
そんな子が、上の者ですってのもおかしい話だけどさ。
でも俺はそれとは別のことでカチンときた。

俺は五階建てのマンションの最上階に住んでるんだ。つまりこれ以上は上に部屋なんてないんだよ。
加えて屋上もないマンションだったから、あるのは屋根だけなんだ。
正直これだけひぱって「間違い電話かよ!」って突っ込みたかった。
でも相手は年下の女の子だし、大人気ないなと思ってさ。できる限り優しくこう言ったんだ。

「多分かける番号間違えてると思うよ」

そしたらまた沈黙。
もうこれ以上付き合ってらんないと思って、俺は受話器を置いてPCに向き直った。
さあ仕切りなおしだってところでまた電話のベルが部屋に鳴り響いた。


>>89

しばらく無視してたんだけど鳴り止む気配はなかった。
俺はため息をついてまた受話器をとった。
受話器の向こうからは、またあの声が聞こえてきた。

「上の者です……」

温厚な俺もさすがにこれには怒ってしまった。
大人気ないかもしれないけど、キチンと言ったんだからね。

「いや、だからね。上には部屋はないんだよ!」

今まで少し間があってから返ってきていた返事が、すごい直球で帰ってきたんだ。それに急に声に凄みが出てきたんだよね。

「本当に?」

たずねるというよりはこちらを挑発するようなニュアンスだった。
今になって思えば、ここで電話を切ればよかったと思ってる。

突然の変化に俺はちょっと怯んだ。

「……そっそうですが」

部屋にまた長い静寂が訪れた。
相手は押し黙っているし、俺もなんだか言葉が出てこなかった。
蛇に睨まれた蛙と形容しようか、実際睨まれているわけじゃないんだから変な例えだけど本当にそんな感じだった。

2〜3分、もしかしたら10分くらいだったかもしれない。
俺は耐え切れなくなって一言呟いた。

「切りますよ」

言うが早いか受話器を耳からはずし置こうとしたときだった。

笑い声が聞こえてきた。


>>90

それがとにかく不気味な声で、テレビでモザイクがかかってる声ってあるじゃん? あんな声が聞こえてきたんだよ。
それもだんだん大きくなっていくんだよね。
受話器を置く寸前だったから耳からは結構離れてたんだよ。それがだんだん耳に受話器をつけてるぐらいの声になっていくんだよ。
さすがにぞわっときたね。俺は受話器を叩きつけるようにして置いた。

でもね、消えないんだよ。
受話器から聞こえてきてたはずの声が受話器を置いてからも続いてるんだ。
完全にてんぱった俺は立ち上がってきょろきょろ辺りを見回してた。
背中とわきの下、あと額に冷たい汗をかいていくのが分かったよ。

しばらくそうした後、声の出所が分かった。
ここまで言ったら勘のいい人はもう分かってると思うけど……そう、上だったんだ。

それに気がついた時、ぴたりと声が止んだ。
俺はもう居てもたってもいられなかった。とにかく家の外に出ようと思ったんだ。
そこいらにある椅子とかにつまづきよろめきながらも玄関に駆け出した。

そしたら上から「ドンッ」って音が聞こえた。
体に電気が流れるような感覚だったよ。
もう俺は振り返らなかった。むしろ振り返ることができなかった。

その後、俺は誰にもそのことは話さなかった。どうすることもできなかったからさ。

とりあえず一人のときは絶対に電話はとらないようにはしてるけど、今でもたまに聞こえるときがある。
天上から妙な「トントン」ってノックするような音が。
まるで何かがこちら側に出てこようとしてる……。
92 削除済
後輩は某ソンの深夜バイトをしていた。
そのコンビニは深夜になるとかなり暇で、後輩は一緒にバイトしている先輩といつもバックルームでのんびり漫画など読んで過ごしていた。

ある日のこと。
いつもと同じようにバックルームでお菓子を食べながら後輩は先輩と駄弁っていた。
仕事といえばたまにモニターをチェックするくらいである。
モニターは画面が4分割されていて、レジ2箇所、食料品棚、本棚を映しているのだが、ふと見ると本棚のところに女の人が立っているのを後輩は見つけた。
腰まである異様に長い髪をした女の人だ。

「おかしいな、チャイム鳴らなかったぞ」 

と先輩は訝しむが、たまに鳴らない事もあるのでさして深く考えず二人はまたしゃべり始めた。

しかしである。
いつまで経っても女の人は動く気配を見せない。
本を読んでいるのかと思えば何も手にしていない。ひたすらじっと本棚を見つめているだけである。

「おい、こいつ万引きするつもりなんじゃないか」 

先輩が言った。どことなくおかしな雰囲気のする女の人である。
後輩もその考えが浮かんだところだったので頷いた。

二人で挟み撃ちすることにしてバックルームを出る。
先輩はレジ側から、後輩はバックルームへの出入り口から本棚へ向かう。

いざ本棚へ到着してみて、二人は首をかしげた。
そこには誰もいなかったのだ。おかしい、絶対挟み撃ちにしたのに……。
すると、トイレのほうから水を流す音が聞こえてきた。

>>93

何だトイレに入っていたのか。
おかしな人だなと思いつつ、二人はすぐバックルームへと戻った。
しかしモニターを見て二人は初めてぞっとした。
さっきと全く変わらない立ち位置で女の人が本棚を見つめていたのだ。

早い、早すぎる。
トイレからそこへ向かうのとバックルームへ戻るのとでは明らかにこっちの方が早いはずなのだ。
しかもなんで同じ格好で本棚に向かってるんだ? もしかしてモニターの故障では?
二人は顔を見合わせ頷きあって、もう一度バックルームから挟み撃ちの隊形で本棚へと向かった。

すると、また女の人はいない。
冷や汗がにじむのを感じながら、今度は何も言わずに二人はバックルームへと戻った。
無言で、しかし真っ先にモニターを確認する。

「あ、いなくなってるぞ……」 

先輩が呟いた通りモニターからは女の人の姿は消えていた。
後輩の心中にほっとしたものが広がる。よく確認しようと先輩の横に顔を乗り出したその時、

「待て、動くな」 

先輩が突如、押し殺した声を出した。
は? と思ったが反射的に従う。
二人、モニターを覗き込んだ格好のまま固まっている。

「いいか、絶対に今振り向くなよ」

やはり先輩が押し殺した声で言った。
何でだろうと思った後輩だが、モニターをじっと見てそれを理解した。

>>94


画面の反射で自分の顔と先輩の顔が映っている。
しかしその真ん中。
もう一つ、女の人の顔が覗き込んでいたのだ。

悲鳴をこらえ、後輩はまさしく硬直した。
じっと耐えること数分、その女は

「……」 

と何事か呟くと、すっと離れた。

そしてさらに1分。
もういいぞ、と言われて後輩はやっと息をついた。
恐る恐る振り向いても誰もいない。どくどく脈打つ心臓を押さえ後輩はモニターから離れた。

「ここってなんかでるんやなぁ〜」 

先輩は感慨深げに呟き、後輩のほうに同意を求めた。

「そうですね」 

と先輩を振り向いて、後輩は再び硬直した。
その視線をたどったか、先輩もモニターのほうへ向き直る。そこにはさっきの女の人が。しかも今度は、


カメラの方を向いて大口を開けて笑っている!!


もう二人は何も言わなかった。何も言わず某ソンを裏口から飛び出したと言う……。
96 削除済
この話は他の怖い系サイトにも投稿したもので、あまり怖くありませんが聞いて下さい。
あれは私が中学3年生の時の話。もう10年以上前のことですが……。

私は後輩のYと電話で話をしていました。
私は家の電話。Yは線路沿いの公衆電話で(このころは携帯なんて無かったんですよね)。
あーだこーだとつまらない世間話をしているとき、電話の向こうのYが突然叫びだしました。

「うわあーーーーーーー!」

私は何事かと思い

「どうした! Y! 何があった!」

と受話器に向かって大声で尋ねました。

「Sが! Sが電車に轢かれた!」

このとき私と電話をしていたYの側では、もうひとりの後輩Sが、どこからか盗んできたバイクを乗り回していました。
そして踏切のない線路をそのバイクで渡ろうとしたSは、近づいていた電車に気づかず……。

Yはその時の状況を詳しく教えてくれました(聞きたくなかったけど)。

電車に跳ね飛ばされたSは、耳から後ろの部分、つまり後頭部が全部無くなっており、そこから脳が飛び出していて、顔は血の気がなく真っ白だったといいます。
しかし驚いたことに、そんな状態にも関わらずSは腕を地面につけ、グッと上体を持ち上げ起きあがろうとしたそうです。
これは多分心霊現象とかではなくて、体が反射的に動いただけだと思います。
案の定、一瞬起きあがりかけたSは力つきドサッと倒れてしまいました。

Yはそれ以降、しばらく焼き肉が食べられなくなったと言ってました。


>>97

ここまではただの洒落にならない体験談ですが(ちなみにこの事故は新聞にも載りました)恐怖体験はこの後、Sのお通夜にYや友人たちと行ったあとに起こりました。

私とY、そしてTの3人でSのお通夜に行ったのですが、夏休みの最中でもあったのでYとTはそのまま私の家に泊まって帰ることになりました。
通常、お通夜やお葬式から帰ってくると、清めの塩を踏んで(地方によって違うかな?)家に入ります。
でないと亡くなった人がついてくると言われてました。
私たちはまだ中学生だったということと、バカバカしいという考えがあり、そんな行為は行わずに部屋に向かいました。

部屋に向かう途中、母が台所から

「また今日はたくさん連れてきたねぇ」

と声をかけました。
私は「まあね」とだけ返事して、部屋に向かいました。

布団にもぐった状態で、私たちは死んだSの事や下らない自慢話などを3人で語り合い、そうこうするうちにいつしか眠ってしまいました。

……何時間か経過して、私はふと目を覚ましました。
ん? 体が動かない。これはひょっとして金縛りってやつか?
本当に動きません。しかし目玉だけは動くようで、私は隣で眠っているYのほうを見ました。

私はギョッ! としました。
Yも目を開けているのです。そして天井を恐怖に満ちた目で凝視しています。
いったい何が天井に……そう思い目玉を天井のほうに向けた私は信じられない光景を目にしました。


>>98


Sの顔が、天井いっぱいに大きく映し出されたSの真っ白な顔がそこにはあったのです。

「……!」

私は声にならない叫び声をあげ、意識が遠のきました。

そして翌朝。
絶対昨夜の出来事は夢だと思い、

「なあY。俺昨日の夜、Sが天井から俺達を見下ろしてる夢を見たよ」

と聞いたところ

「……俺も見たよ」

続いてTも

「俺も見た、金縛りにあって……」

3人が同時に同じ夢を見るわけもなく、あれが現実だったことを思い知らされました。
そして今度からはちゃんと清めの塩を踏もうなどと話しつつ、朝食の用意をしてくれてる母の元に向かいました。

私たちを見るなり母はキョトンとした顔で一言、言いました。


「もうひとりは、先に帰ったのかい?」
うめ