1 無名さん

怪談コピペスレ

ひゅーどろどろー
2 無名さん
DTさんの巣はこちら

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俺には10歳上の従妹がいた。
綺麗な人で、とても優しい。 名前は由紀(仮名)と言った。

由紀は俺の明仁(仮名)という名を崩して「あっくん」と 呼んでくれていた。
近所に住んでいて年の離れた俺とよく遊んでくれた。
いつも一緒で大好きだった。
由紀が社会人になり遊ぶ機会は減ったが、幼少と変わらず懐いていた。

俺が中学に入学した頃、由紀は結婚した。
初恋のようなものを感じていた俺は正直、ショックだった。
結婚と共に遠くへ引越した彼女とは会わなくなってしまった。

それからしばらくして久しぶりに家へ遊びに来た。
長い再会までの期間と幸せそうな由紀の顔に胸が詰まった。
両親と楽しそうに会話を交わすリビングを抜け出し、自分の部屋へ戻ろうとしたが、由紀は追いかけて来た。

「待って、あっくん、久しぶり」
「・・・うん」

俺は階段を昇りながら答えた。
複雑な感情を割り切れないまま、何故か少しの苛立ちと少しの悲しみが混ざり、由紀の顔を見れない。

「ねぇあっくんってば」
そんな俺の気持ちを知る筈なく俺の後ろをついて昇ってくる由紀。

呼ばれ手首を掴まれた。
軽い力だったのに、心臓が痛いくらい跳ねて、それを振りほどいてしまった。

一瞬。 階段でバランスを崩した由紀は呆気なく落ちていった。
派手な音が耳に入って動けなかった。
両親が駆けつけ、救急車が来て。そして知った。
由紀は妊娠していた、それを話しに俺の家へ来たこと。
けれど階段から落ちて、流産。

俺は病室で何度も何度も謝り後悔し泣いた。
そんな最低な俺を由紀は責めなかった。
「大丈夫よ、あっくん・・・」と涙の溜まった瞳を向けてくれた。
俺が悪いのに、この件を誰にも言わなかった。

由紀はその後回復し、俺は学生の位が上がって勉学に勤しむようになって互いに会えなくなった。・・・会わなくなった。
俺は大学を卒業し、何人目かの彼女が出来てプロポーズをした。
結婚式は親戚一同が集まる。
その中に由紀もいた。

「おめでとう、あっくん」
ずっと由紀に対して後ろめたさを感じていた俺は祝福の言葉に、不覚にも子供のように泣いてしまった。

再びぽつぽつと連絡を取り合うようになった。
やがて妻が妊娠した。
父になるという歓びがこんなに大きいものだと思わなかった。
両親はもちろん、由紀にも電話して知らせた。

いつにも増して仕事に身が入る。
妊娠9ヶ月目、そんな幸福の絶頂期だった。
残業中、妻が病院へ運ばれたと電話が来たのは。

母子共に危険ということで、手術室のランプが赤く光る。
ベンチには両親と由紀がいた。
どうやら自宅に遊びに来ていたらしい。
「奥さん、階段を踏み外したんだって…」
由紀が小さな声で隣に座った俺に話し掛けた。

「…あっくん」
脳裏では過去の由紀の流産の記憶が思い出されていた。
悲痛な面持ちで俯く両親と同じく目を瞑る俺の肩に手を置く由紀。

「私ね、あの時のこと、まだ許してないんだ」

場に似つかわしくない低い声音に驚いて顔を上げた。
柔らかな微笑みを作る由紀の瞳は初めて見る心底冷えたものだった。

「赤ちゃん助かるかなぁ」

由紀は笑った。
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●発見されたミイラ船
1927年10月31日、カナダ西海岸バンクーバー島。
ワシントンのシアトル港への帰路についていたアメリカの貨物船「マーガレット・ダラー」号は、行方不明になっていた小型漁船「良栄丸」を発見した。

ボロボロに朽ち果てた船体、ミイラの転がる甲板、激しい死臭、白骨体、足の無い死体。
船室には、頭蓋骨を砕かれた白骨体とミイラがあった。

船室奥の部屋には、おびただしい血痕が染み付いていた。
船尾の司厨室では、海鳥の白い羽が至るところに散らばっており、コンロの上にあった石油缶の中には、人の腕が入っていた。

船内には食物も飲料水も無く、エンジン機関部は全て破損していた。
ところが、船長室から見つかった3冊のノートには、信じられない惨状が書かれていたのだった。

そのノートによると、良栄丸の情報は以下の通りだ。

重量は19tで1本マスト、船主は和歌山県の藤井三四郎、船長は三鬼時蔵、機関長は細井伝次郎、乗組員は12名、神奈川県の三崎港を出港したのは1926年12月5日。

約1年間漂流していた。ここで疑問が浮かぶ。
発見された死体は9体、記録には12名とある。3名はどうなったのだろうか。
●不幸な漁船
1926年12月5日、神奈川県の三崎港を出港した良栄丸は、千葉県銚子沖にマグロを求めて進んでいた。
天候も思わしくなく、エンジンが調子の悪い排気音を立てていたため、翌12月6日に銚子港に寄港した。

しかし、エンジンに故障はなく、銚子の沖合いで大量のマグロを水揚げした。
が、暴風に見舞われて航行不能に陥ってしまった。

そして12月15日、銚子の東方沖合い1000マイルほど流された時、紀州船によく似た船が現れたので、信号を送ったり船員が叫んだりしたのに、応答も無く通り過ぎてしまったという。
三鬼船長は漂流を決意、記録には「4ヶ月間は食べられる」と書いてあった。

12月16日にも「東洋汽船」と書かれた船が近くを通ったが、応答はなかったという。
なんとか日本へ戻ろうと努力したが、どうやっても逆に流されていった。

記録にはこう書かれている。

「どう工夫しても西北へ船は走らず絶望。ただ汽船を待つばかり。反対にアメリカへ漂着することに決定。帆に風を七三にうけて北東に進む・・・・。しかし、漁船で米国にたどりつこうとするは、コロンブスのアメリカ大陸発見より困難なりと心得るべし」
●恐怖の記録
ここからは説明は要らないだろう。記録文のみで充分に迫力が伝わってくる。

「12月27日。カツオ10本つる」

「1月27日。外国船を発見。応答なし。雨が降るとオケに雨水をため、これを飲料水とした」

「2月17日。いよいよ食料少なし」

「3月6日。魚一匹もとれず。食料はひとつのこらず底をついた。恐ろしい飢えと死神がじょじょにやってきた」

「3月7日。最初の犠牲者がでた。機関長・細井伝次郎は、『ひとめ見たい・・・日本の土を一足ふみたい』とうめきながら死んでいった。全員で水葬にする」

「3月9日。サメの大きなやつが一本つれたが、直江常次は食べる気力もなく、やせおとろえて死亡。水葬に処す」

「3月15日。それまで航海日誌をつけていた井沢捨次が病死。かわって松本源之助が筆をとる。井沢の遺体を水葬にするのに、やっとのありさま。全員、顔は青白くヤマアラシのごとくヒゲがのび、ふらふらと亡霊そっくりの歩きざまは悲し」

「3月27日。寺田初造と横田良之助のふたりは、突然うわごとを発し、『おーい富士山だ。アメリカにつきやがった。ああ、にじが見える・・・・』などと狂気を発して、左舷の板にがりがりと歯をくいこませて悶死する。いよいよ地獄の底も近い」

「3月29日。メバチ一匹を吉田藤吉がつりあげたるを見て、三谷寅吉は突然として逆上し、オノを振りあげるや、吉田藤吉の頭をめった打ちにする。その恐ろしき光景にも、みな立ち上がる気力もなく、しばしぼう然。のこる者は野菜の不足から、壊血病となりて歯という歯から血液したたるは、みな妖怪変化のすさまじき様相となる。ああ、仏様よ」
「4月4日。三鬼船長は甲板上を低く飛びかすめる大鳥を、ヘビのごとき速さで手づかみにとらえる。全員、人食いアリのごとくむらがり、羽をむしりとって、生きたままの大鳥をむさぼる。血がしたたる生肉をくらうは、これほどの美味なるものはなしと心得たい。これもみな、餓鬼畜生となせる業か」

「4月6日。辻門良治、血へどを吐きて死亡」

「4月14日。沢山勘十郎、船室にて不意に狂暴と化して発狂し死骸を切り刻む姿は地獄か。人肉食べる気力あれば、まだ救いあり」

「4月19日。富山和男、沢村勘十郎の二名、料理室にて人肉を争う。地獄の鬼と化すも、ただ、ただ生きて日本に帰りたき一心のみなり。同夜、二名とも血だるまにて、ころげまわり死亡」

「5月6日。三鬼船長、ついに一歩も動けず。乗組員十二名のうち残るは船長と日記記録係の私のみ。ふたりとも重いカッケ病で小便、大便にも動けず、そのままたれ流すはしかたなし」

「5月11日。曇り。北西の風やや強し。南に西に、船はただ風のままに流れる。山影も見えず、陸地も見えず。船影はなし。あまいサトウ粒ひとつなめて死にたし。友の死骸は肉がどろどろに腐り、溶けて流れた血肉の死臭のみがあり。白骨のぞきて、この世の終わりとするや・・・・」

日記はここで切れている。
だが三鬼船長は、杉板に鉛筆で、以下のような家族宛ての遺書を残していた。
「とうさんのいうことを、ヨクヨク聞きなされ。もし、大きくなっても、ケッシテリョウシニナッテハナラヌ・・・・。私は、シアワセノワルイコトデス・・・ふたりの子どもたのみます。カナラズカナラズ、リョウシニダケハサセヌヨウニ、タノミマス。いつまで書いてもおなじこと・・・・でも私の好きなのは、ソウメンとモチガシでしたが・・・・帰レナクナッテ、モウシワケナイ・・・ユルシテクダサイ・・・・」

●奇妙な事実
しかし、記録を調べるうちに、奇怪な事実が浮かびあがった。
数十回に渡って他の船にであっていながら、救助に応答する船は一隻としてなかったことだ。
そして、良栄丸は太平洋横断の途中、たった一つの島さえも発見できなかったのである。

しかし、アメリカの貨物船「ウエスト・アイソン」号のリチャード・ヒーリィ船長は、次のように述べている。

「1926年12月23日、シアトルから約1000キロの太平洋上で波間に漂う木造船を発見したが、救助信号を送っても返事が無いので近づきました。しかし、良栄丸の船窓や甲板に立ってこっちを見ていた10人ほどの船員は、誰一人として応えず、馬鹿らしくなって引き上げたのです」

だが良栄丸の記録にこのことは書かれていない。
一体、彼らにはなにが起こっていたというのだろうか。
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まだ僕が中学3年だった頃、父親と母親と弟(まだ小学校低学年)の4人家族でした。
紅白歌合戦を見終わって、いい初夢でも見るかな…ってな具合で寝たのはよかったんですが、真夜中に悪夢(見た夢の内容は思い出せない)を見て、突然真夜中に起きました。

心臓は音が聞こえるほど、激しく脈打っていて、脂汗を全身にじんわりかき、まるで冷や水を背中から流されたかのように、布団からがばっと起きた体勢のまま硬直してました。
「新年早々に悪夢かよ…最悪」とか思いながら、また寝れるわけもなくカラカラに渇いたのどを潤すために、冷蔵庫のあるリビングに行くと、真夜中なのに(時計は見てないけど、たぶん深夜2時頃)家族全員が抱き合った格好でテレビの前に座っていました。

テレビは付けっぱなしで、深夜なので番組がやっていないのにもかかわらず、ニュース番組(これも記憶が曖昧)の画面が映っていました。しかも無声で…。
それに窓という窓が全部開けっ放しになっていて、外と変わらないほど寒いんです。
明らかに様子が変でした。ぞっとする寒気を感じました。

「何やってんだよ!!頭おかしいんじゃねぇの??」と震えながらだが、半ばキレたように怒鳴ると、弟は「だって…ぁ…(声が小さくて聞き取れない)」と言うと泣き出してしまい、それを見た両親は両親は、終始無言&無表情で窓を全部閉めて、テレビを消し、うずくまって泣いている弟に「もう寝なさい」ってな感じで、寝室に連れて行きました。

新年早々、気味が悪すぎる出来事に遭遇しまくって寝る気が起きないのでその日は自分の部屋で、漫画を読みながら朝を迎えました。
朝になって、両親に「昨日、真夜中に何やってたんだよ??」と聞くと両親は「はぁ??」ってな具合。
昨日の喜怒哀楽のない顔と、今の怪訝そうに俺を疑う表情のギャップで俺は「幽霊ってやつか??」とかなりパニくった。
まあ、そんな話を友達にしても疑われるだけだし、12月に彼女に振られたのもあって、きっと精神的な疲れから幻覚を見たんだろう…ってな感じに処理しました。
それからしばらくして、また真夜中に悪夢で目が覚めました。
今度は、微妙に内容を覚えていて、見知らぬ人に後頭部を殴られる夢です。なぜか起きてもジンジンとつむじ辺りが痛いんです。
そして、なぜか「コンビニなら安全…」とか意味不明なことを考えてました。

頭の中は「幽霊に襲われた」って考えが支配してて、パニクってリビングに逃げたのですが誰もいないし、なんか夕食の焼肉のせいか、焦げたにおいが浮遊してて、しかも新年早々にリビングであった奇怪な出来事を思い出し、またもや眠れぬ夜を過ごしました。

そして、2月の初め頃になると、体が異常に痒くなってきました。
最初は単なる乾燥肌と思ってましたが、背中と頭が特に焼けるような感覚を覚え、ボリボリ掻きむしっていました。
一向に良くならず、皮膚科に行って塗り薬をもらい、風呂上りに薬を塗ろうとすると、弟が「塗らせて」と懇願するので背中を突き出してやると、何を思ったかバチーンと背中に張り手をくらわしたので、痛さのあまり「ふざけんな!!」ってな感じで怒ります。

必ず俺の怒鳴り声で泣く弟なので、見る見るうちに目に涙をためて、「あぁ…泣くぞ泣くぞ」と思ってると声も立てずに涙をポロポロ流します。
変なことにどんどん顔は色味を失ったような感じになって、ついには無表情で涙だけを流すだけといった感じでした…。
めっちゃ気持ち悪くて、両親のほうを見たら、これまた両親も無表情で涙を流してます。
もう完全に放心状態…。よく見ると口元が微妙に動いてて何を言っているのか分かりません。
「ぁ……ぃ」聞き取れてこの程度でした。

その瞬間、自分の周りの景色が真っ赤になり、徐々に色あせてセピア色になって意識が…なくなる…と思ったら、いきなり周りの景色が一変してました。
どっかで見覚えあるような…と思ったら従兄弟の家でした。
深刻そうに叔父が俺の顔を見ています。

「え…何でここにいんの??」全然事態が飲み込めません。
そのうちぞろぞろと周りの人たちが集まってきました。

最初は「今までのは全部夢だったのか??」と自分で推測してましたが、叔父の家にいる経緯が全く分からないし、なぜか祖父母もいるし、あちこち包帯だらけで、完全にパニック…。

「記憶がないならないほうがいいんじゃないか??」とか祖父が言ってたのですが、叔父は「こいつには何があったか話しておかんとならん。まだ犯人も捕まってないし、1週間後にまた警察の人が来るだろう」ってな具合で叔父から全貌を聞いた。
僕の家族は1月1日に何者かの放火にあって全焼したようです。

僕はたまたまコンビニに行っていたので、助かったみたいなんですが、犯人と思われる人を見たために、後頭部を殴られ、全身をバットかなんかでめったうちにされて、記憶を失ってしまったそうです。
搬送先の病院でずっと生死をさまよった後、回復してから叔父の家に引き取られたそうです。
そして今は3月…2ヶ月も記憶を失ったまま、リハビリを続け、たった今、記憶が戻ったとのことでした。
僕は号泣しました…。いっぺんに大切なものを失ったのを、2ヶ月も過ぎてから分かり、ただただ泣きじゃくる顔を、祖父母と叔父に見られていました。
叔父は黙って目を反らしていましたが、祖父母たちももらい泣きして、わんわん泣き続けていました。

体中には青あざが無数にあり、包帯がミイラのごとく巻いてあり、節々が曲げるためにチリリとした痛みが走りました。
なぜか真冬の真夜中に全部の窓が開いてあったこと、無表情で固まりあう家族、見知らぬ男に殴られる悪夢、突然真っ赤になった景色…まるでジグソーパズルのように謎がピシピシとはまっていきました…。

結局、犯人はいまだに捕まっていません。そして、背中の包帯を取ったときに僕の青あざが残る背中には、弟の手のひら状に無傷だった跡がありました。
事件から5年経ち、あざが消えるのと共に、その手のひらの跡も消えてしまいした…。
犯人が未だに捕まっていないことを考えると恐ろしいです。
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先日、アンティーク好きな彼女とドライブがてら、骨董店やリサイクルショップを回る事になった。

俺もレゲーとか古着など好きで、掘り出し物のファミコンソフトや古着などを集めていた。
買うものは違えども、そのような物が売ってる店は同じなので、楽しく店を巡っていた。
お互い掘り出し物も数点買う事ができ、テンション上がったまま車を走らせていると、一軒のボロッちい店が目に付いた。

「うほっ!意外とこんな寂れた店に、オバケのQ太郎ゴールドバージョンが眠ってたりすんだよな」
浮かれる俺を冷めた目で見る彼女と共に、俺は店に入った。

コンビニ程度の広さの、チンケな店だった。
主に古本が多く、家具や古着の類はあまり置いていない様だった。
ファミコンソフトなど、「究極ハリキリスタジアム」が嫌がらせのように1本だけ埃を被って棚に置いてあるだけだった。

もう出ようか、と言いかけた時、「あっ」と彼女が驚嘆の声を上げた。
俺が駆け寄ると、ぬいぐるみや置物などが詰め込まれた、バスケットケースの前で彼女が立っていた。

「何か掘り出し物あった?」
「これ、凄い」

そう言うと彼女は、バスケットケースの1番底に押し込まれる様にあった、正20面体の置物を、ぬいぐるみや他の置物を掻き分けて手に取った。
今思えば、なぜバスケットケースの1番底にあって外からは見えないはずの物が彼女に見えたのか、不思議な出来事はここから既に始まっていたのかもしれない。
「何これ?プレミアもん?」
「いや、見たことないけど…この置物買おうかな」

まぁ、確かに何とも言えない落ち着いた色合いのこの置物、オブジェクトとしては悪くないかもしれない。
俺は、安かったら買っちゃえば、と言った。
レジにその正20面体を持って行く。しょぼくれたジイさんが古本を読みながら座っていた。

「すいません、これいくらですか?」

その時、俺は見逃さなかった。ジイさんが古本から目線を上げ、正20面体を見た時の表情を。
驚愕、としか表現出来ないような表情を一瞬顔に浮かべ、すぐさま普通のジイさんの表情になった。

「あっ、あぁ…これね…えーっと、いくらだったかな。ちょ、ちょっと待っててくれる?」

そう言うとジイさんは、奥の部屋(おそらく自宅兼)に入っていった。
奥さんらしき老女と何か言い争っているのが断片的に聞こえた。
やがて、ジイさんが1枚の黄ばんだ紙切れを持ってきた。

「それはね、いわゆる玩具の1つでね、リンフォンって名前で。この説明書に詳しい事が書いてあるんだけど」

ジイさんがそう言って、黄ばんだ汚らしい紙を広げた。随分と古いものらしい。
紙には例の正20面体の絵に「RINFONE(リンフォン)」と書かれており、それが「熊」→「鷹」→「魚」に変形する経緯が絵で描かれていた。
わけの分からない言語も添えてあった。ジイさんが言うにはラテン語と英語で書かれているらしい。

「この様に、この置物が色んな動物に変形出来るんだよ。まず、リンフォンを両手で包み込み、おにぎりを握るように撫で回してごらん」
彼女は言われるがままに、リンフォンを両手で包み、握る様に撫で回した。
すると、「カチッ」と言う音がして、正20面体の面の1部が隆起したのだ。

「わっ、すご〜い」
「その出っ張った物を回して見たり、もっと上に引き上げたりしてごらん」

ジイさんに言われるとおりに彼女がすると、今度は別の1面が陥没した。

「すご〜い!パズルみたいなもんですね!ユウ(←俺の敬称)もやってみたら」

この仕組みを言葉で説明するのは凄く難しいのだが、「トランスフォーマー」と言う玩具をご存知だろうか?
カセットテープがロボットに変形したり、拳銃やトラックがロボットに…と言う昔流行った玩具だ。
このリンフォンも、正20面体のどこかを押したり回したりすると、熊や鷹、魚などの色々な動物に変形する、と想像してもらいたい。
もはや、彼女はリンフォンに興味深々だった。俺でさえ凄い玩具だと思った。

「あの…それでおいくらなんでしょうか?」彼女がおそるおそる聞くと、「それねぇ、結構古いものなんだよね…でも、私らも置いてある事すら忘れてた物だし…よし、特別に1万でどうだろう?ネットなんかに出したら好きな人は数十万でも買うと思うんだけど」

そこは値切り上手の彼女の事だ。結局は6500円にまでまけてもらい、ホクホク顔で店を出た。
次の日は月曜日だったので、一緒にレストランで晩飯を食べ終わったら、お互いすぐ帰宅した。
月曜日。仕事が終わって家に帰り着いたら、彼女から電話があった。
「ユウくん、あれ凄いよ、リンフォン。ほんとパズルって感じで、動物の形になってくの。仕事中もそればっかり頭にあって、手につかない感じで。マジで下手なTVゲームより面白い」

と一方的に興奮しながら彼女は喋っていた。電話を切った後、写メールが来た。
リンフォンを握っている彼女の両手が移り、リンフォンから突き出ている、熊の頭部のような物と足が2本見えた。
俺は、良く出来てるなぁと感心し、その様な感想をメールで送り、やがてその日は寝た。

次の日、仕事の帰り道を車で移動していると、彼女からメールが。
「マジで面白い。昨日徹夜でリンフォンいじってたら、とうとう熊が出来た。見にきてよ」
と言う風な内容だった。俺は苦笑しながらも、車の進路を彼女の家へと向けた。
「なぁ、徹夜したって言ってたけど、仕事には行ったの?」
着くなり俺がそう聞くと、「行った行った。でも、おかげでコーヒー飲み過ぎて気持ち悪くなったけど」と彼女が答えた。
テーブルの上には、4つ足で少し首を上げた、熊の形になったリンフォンがあった。
「おぉっ、マジ凄くないこれ?仕組みはどうやって出来てんだろ」
「凄いでしょう?ほんとハマるこれ。次はこの熊から鷹になるはずなんだよね。早速やろうかなと思って」
「おいおい、流石に今日は徹夜とかするなよ。明日でいいじゃん」
「それもそうだね」
と彼女は良い、簡単な手料理を2人で食べて、1回SEXして(←書く必要あるのか?寒かったらスマソ)その日は帰った。
ちなみに、言い忘れたが、リンフォンは大体ソフトボールくらいの大きさだ。

水曜日。通勤帰りに、今度は俺からメールした。
「ちゃんと寝たか?その他もろもろ、あ〜だこ〜だ…」すると「昨日はちゃんと寝たよ!今から帰って続きが楽しみ」と返事が返ってきた。
そして夜の11時くらいだったか。俺がPS2に夢中になっていると、写メールが来た。

「鷹が出来たよ〜!ほんとリアル。これ造った人マジ天才じゃない?」
写メールを開くと、翼を広げた鷹の形をしたリンフォンが移してあった。
素人の俺から見ても精巧な造りだ。今にも羽ばたきそうな鷹がそこにいた。
もちろん、玩具だしある程度は凸凹しているのだが。それでも良く出来ていた。
「スゲー、後は魚のみじゃん。でも夢中になりすぎずにゆっくり造れよな〜」と返信し、やがて眠った。

木曜の夜。俺が風呂を上がると、携帯が鳴った。彼女だ。
「ユウくん、さっき電話した?」
「いいや。どうした?」
「5分ほど前から、30秒感覚くらいで着信くるの。通話押しても、何か街の雑踏のザワザワみたいな、大勢の話し声みたいなのが聞こえて、すぐ切れるの。着信見たら、普通(番号表示される)か(非通知)か(公衆)とか出るよね?でもその着信見たら(彼方(かなた))って出るの。こんなの登録もしてないのに。気持ち悪くて」

「そうか…そっち行ったほうがいいか?」
「いや、今日は電源切って寝る」
「そっか、ま、何かの混線じゃない?あぁ、所でリンフォンどうなった?魚は」
「あぁ、あれもうすぐ出来るよ、終わったらユウくんにも貸してあげようか」
「うん、楽しみにしてるよ」

金曜日。奇妙な電話の事も気になった俺は、彼女に電話して、家に行く事になった。
リンフォンはほぼ魚の形をしており、あとは背びれや尾びれを付け足すと、完成という風に見えた。

「昼にまた変な電話があったって?」
「うん。昼休みにパン食べてたら携帯がなって、今度は普通に(非通知)だったんで出たの。それで通話押してみると、(出して)って大勢の男女の声が聞こえて、それで切れた」
「やっぱ混線かイタズラかなぁ?明日ド○モ一緒に行ってみる??」
「そうだね、そうしようか」
その後、リンフォンってほんと凄い玩具だよな、って話をしながら魚を完成させるために色々いじくってたが、なかなか尾びれと背びれの出し方が分からない。
やっぱり最後の最後だから難しくしてんのかなぁ、とか言い合いながら、四苦八苦していた。
やがて眠くなってきたので、次の日が土曜だし、着替えも持ってきた俺は彼女の家に泊まる事にした。

嫌な夢を見た。暗い谷底から、大勢の裸の男女が這い登ってくる。
俺は必死に崖を登って逃げる。後少し、後少しで頂上だ。助かる。
頂上に手をかけたその時、女に足を捕まれた。

「連れてってよぉ!!」

汗だくで目覚めた。まだ午前5時過ぎだった。再び眠れそうになかった俺は、ボーっとしながら、彼女が置きだすまで布団に寝転がっていた。

土曜日。携帯ショップに行ったが大した原因は分からずじまいだった。
そして、話の流れで気分転換に「占いでもしてもらおうか」って事になった。
市内でも「当たる」と有名な「猫おばさん」と呼ばれる占いのおばさんがいる。
自宅に何匹も猫を飼っており、占いも自宅でするのだ。
所が予約がいるらしく、電話すると、運よく翌日の日曜にアポが取れた。
その日は適当に買い物などして、外泊した。
日曜日。昼過ぎに猫おばさんの家についた。チャイムを押す。
「はい」
「予約したた○○ですが」
「開いてます、どうぞ」

玄関を開けると、廊下に猫がいた。
俺たちを見ると、ギャッと威嚇をし、奥へ逃げていった。
廊下を進むと、洋間に猫おばさんがいた。文字通り猫に囲まれている。

俺たちが入った瞬間、一斉に「ギャーォ!」と親の敵でも見たような声で威嚇し、散り散りに逃げていった。
流石に感じが悪い。彼女と困ったように顔を見合わせていると、「すみませんが、帰って下さい」と猫おばさんがいった。

ちょっとムッとした俺は、どういう事か聞くと、「私が猫をたくさん飼ってるのはね、そういうモノに敏感に反応してるからです。猫たちがね、占って良い人と悪い人を選り分けてくれてるんですよ。こんな反応をしたのは始めてです」

俺は何故か閃くものがあって、彼女への妙な電話、俺の見た悪夢をおばさんに話した。
すると、「彼女さんの後ろに、、動物のオブジェの様な物が見えます。今すぐ捨てなさい」と渋々おばさんは答えた。

それがどうかしたのか、と聞くと「お願いですから帰って下さい、それ以上は言いたくもないし見たくもありません」とそっぽを向いた。
彼女も顔が蒼白になってきている。俺が執拗に食い下がり、「あれは何なんですか?呪われてるとか、良くアンティークにありがちなヤツですか?」
おばさんが答えるまで、何度も何度も聞き続けた。
するとおばさんは立ち上がり、「あれは凝縮された極小サイズの地獄です!!地獄の門です、捨てなさい!!帰りなさい!!」

「あのお金は…」
「入りません!!」
この時の絶叫したおばさんの顔が、何より怖かった。

その日彼女の家に帰った俺たちは、すぐさまリンフォンと黄ばんだ説明書を新聞紙に包み、ガムテープでぐるぐる巻きにして、ゴミ置き場に投げ捨てた。やがてゴミは回収され、それ以来これといった怪異は起きていない。
数週間後、彼女の家に行った時、アナグラム好きでもある彼女が、紙とペンを持ち、こういい始めた。

「あの、リンフォンってRINFONEの綴りだよね。偶然と言うか、こじ付けかもしれないけど、これを並べ替えるとINFERNO(地獄)とも読めるんだけど…」

「…ハハハ、まさか偶然偶然」
「魚、完成してたら一体どうなってたんだろうね」
「ハハハ…」

俺は乾いた笑いしか出来なかった。
あれがゴミ処理場で処分されていること、そして2つ目がないことを、俺は無意識に祈っていた。
28 削除済
俺の実家は、墓地を潰して建てられたんだそうだ。

しかも無縁仏。工事中、白骨が出て来ただとかなんとか。
もっとも、それは俺が産まれる前の話だから、たいして気にはしていない。

問題は、俺の部屋だ。元物置の、小さな部屋。
調度そのの真下が、無縁仏だったらしい。

もともと祖母さんの部屋だったが、祖母さんが痴呆で老人ホームに行ってからは物置になっていた。
それを、俺が無理を言って部屋にしてもらった。
自分の部屋が欲しかったし、なにより個室が欲しかったからな。

部屋を貰う約束に、俺は部屋の片付けをさせられた。
客用の布団、使われてない火燵、粗大ごみに出しそびれた扇風機。
押し入れにほうり込まれていたそれを引っ張り出しながら、俺は掃除を勧めていた。

最後の荷物を引っ張り出した時だった。
ふと押し入れの奥に目をやると、紙が一枚張り付けてあった。
古ぼけて、文字すら見えない、ただの紙屑。
そう思って、俺はその紙を剥がしてごみ箱にほうり込んだ。

すっきり片付いた部屋で、俺は友達を呼んで一日引きこもって遊んだ。
もともと、外で遊ぶようなタイプじゃなかったし、友達も呼んだから、飽きる事はなかった。

そして夜、友達は泊まることになった。
狭い部屋だから、友達を床に寝せて、俺は余った布団を押し入れにしいた。
いつもとは違った景色と友達、そして自分の部屋。
そんな環境が揃ったら、眠れる訳がない。
俺達は夜中まで話し続けた。

多分、2時頃だったと思う。
さすがに俺達も眠くなったのだろう。友達との会話も少なくなった。
そろそろ寝るか。
そう思い、俺は友達に寝る旨を告げ、押し入れの扉を閉めた。

真っ暗な空間が、そこにはあった。
秘密基地のような、なにかに飲み込まれそうな、そんな空間。
俺はなぜかドキドキした。

少し怖くて、それなのにおもしろい。
なんだかよくわからなかった。
ただ、それも眠気には勝てないらしく、徐々に意識は薄れていった。

何時頃だろうか。
かさかさ、かさかさ。
そんな音で目が覚めた。

音は、天井あたりから聞こえたような気がした。
ねずみかな?
ゴキブリだったら嫌だな。
俺は一旦外に出ようと、襖に手を延ばした。

……あれ?

だが、手は何にも触れなかった。
床に手をつけてみると床の感触はした。
天井に手を延ばすと、手はついた。
だが、なぜかわしゃわしゃする。
細かい糸をたくさん触ったような、でも糸じゃない。
何だろう?

しばらく考えて、俺はやめた。
眠たかったのだ。
俺は目を閉じ、寝返りをうった。
その瞬間、眠気は吹き飛んだ。

わさ。

そんな感触が、顔面を埋め尽くした。
なんだ!?
瞬時に混乱し、俺はバタバタと暴れた。

だが、天井や隣には当たるが、襖には手が当たらない。
そして、さらに混乱する。

この押し入れ、そんなに広くない。
俺一人でいっぱいなのに。
そう思った途端、体が動かなくなった。

金縛り。
初めての経験だった。
悲鳴を上げたかったが、喉すら満足に動かない。

頭の中で叫ぶ。
叫びながら、頭のどこかは冷静に考えていた。
さっきの感触。
あれは、何だったっけ?
その答えを見つけるのに、そう時間は長くかからなかった。
髪の毛だ。
長い髪の毛。
それも、かなり長い。

さっきからかさかさいってたのは、もしかしてこれ?
恐怖に拍車がかかる。
必死で暴れようとするが、体は依然動かない。
喉からはヒューヒューと息が漏れるだけ。
そうして格闘していると。

かさかさ。

何かが足元で動いた。

かさかさ。

その音と共になにか。

かさかさ。

はい上がってくる。

かさかさ。

ゆっくりはい上がって。

かさかさ、かさかさ、かさ。

胸の辺りで、止まった。

そして、新しい感覚。
首に当たる、手の平。

冷たい、氷みたいな手の平。
ゆっくり締め付けて、急に離して。
そのたびに俺は咳込み、恐怖した。

殺される。
そう思った。

体を必死に動かす。
だが動かない。

その間、首は締められたり離されたり。
まるで、なぶるように。
それを、何度繰り返されただろうか。

本当に、死ぬ。
そう思った途端、いきなり強く締められた。

舌が下がる感覚。
薄れる意識。
なりやまない、頭の中の悲鳴。
その中で俺は最後に、ぼんやりと浮かび上がった顔を見た。
目の落ち窪んだ、青白い顔の何かを。

気がつくと、朝になっていた。
夢だったのか?
そう思い、安心して襖を開けて、俺は絶句した。

薄暗い朝日に照らされた布団には、髪の毛が散らばっている。
俺の手には、髪の毛の束が握られていた。

俺は友達をすぐに帰して、部屋を片付けた。
もう、一秒もいたくない。

全てを片付けて、俺は菓子の屑だらけのごみ箱から、煤けた紙を取り出し、張り付けた。
よく見ればそれは、お札のようだった。
俺は思い付く限りの謝罪をして、部屋をでた。

たまに思うことがある。
祖母さんがおかしくなったのは、このせいではないだろうか、と。

すっかり物置になった部屋に、俺はまだ近寄れてない。
もうしばらくしたら、粗大ごみを出さねばならなくなるらしい。
その時は、俺は家にいないだろう。

もう二度と、あそこには近寄りたくない。
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「天井裏に何かいる」

チャットで知り合ったタカシにそんな相談を受けたのはついこの前だ。

話を聞いてみると、前々から天井裏から物音がしていたのだが、最初はネズミか何かだと思っていたらしい。
でも、その音はネズミが走り回っている音とはとても思えるものではなく、何かが引きずられるような、そんな音だと言うのだ。

タカシの部屋の押入れには、天井板が外れるところがあるらしく、ある日、そこから天井裏を除いた事もあるらしいのだが、その時は何もいなかったというのだ。
しかし、日に日に大きくなる天井裏の音に耐え切れず、俺に相談したらしい。

(身の回りの人に相談すれば良いだろう)

そう思っても見たのだが、どうやらタカシはヒキコモリらしく、周りに相談できる友達もおらず、親も自分の言う事など信じてくれないとのことだった。

「最近じゃ、寝るのも怖いんだ・・・」

日に日に大きくなる音に、タカシの精神も限界らしかった。

こんなこと言うのもなんだが、俺は怖い話はわりと好きな方だ。
正直、タカシのいうことが本当だろうが嘘だろうがこういう話を聞いているだけで楽しかったのは事実だ。

「それじゃぁ・・・」

俺は、タカシにある提案をした。
内容は簡単に言うと、お互いの携帯の番号を交換し、タカシの都合のつく日にテレビ電話でタカシの部屋を俺も確認できるようにして、再びこのチャットで落ち合うと言うものだった。

タカシを安心させるためと言うのを理由にしたが、俺自身、タカシの言う事を半信半疑だった事もあり、確認したかったというのが真の目的だった。

タカシは、思いのほかあっさり携帯の番号を教えてくれて、この計画に乗ってくれた。
よほど、指針的に追い詰められているらしかった。
その日は、タカシに次にその計画を実行する日を決めてもらいチャットを終えた。

計画を実行する日が来た。
すでにチャットにタカシもきており、携帯もつながっている。
ヒキコモリのせいか、タカシは携帯の画面に顔を見せる事はなかったが。

(今考えると、テレビ電話じゃなくても良かったな。携帯料金今月大変だ・・・)

そんなことを考えつつ、しばらくは普通にしょうもない話をした。

1時間くらい立っただろうか、携帯の画面が一瞬ちらついたかと思うと

「ドドッ・・・・ズリッ」

そんな音が携帯から聞こえた。

「・・・・来た」

携帯からタカシの声が聞こえた。
律儀にもチャットのほうでも同じ書き込みをしてきた。

「ドッ、ズリッ・・・ドッ、ズリッ・・・」

そんな、音が携帯から聞こえてくる。
確かに、何かを引きずるような音だ。
いやっ・・・何かが這い回っている音だ・・・

(俺は、興味本位でとんでもないところに立ち会ってしまったのでは?)

そう思いつつ、恐怖が徐々にこみ上げてきた。

タカシは余裕がなくなったのか、チャットに書き込まなくなり、今タカシを確認できるのは携帯の音声のみだった。

「うわっ・・・あぁ、助けて・・・」

そんな声が聞こえてくる。

「ガタッ・・・ガタタタタっ」

そんな音が聞こえた。
さっきまでとは違う音だ。
俺が何の音か模索していると、携帯からすぐ答えが聞こえてきた。

「あっあぁぁぁぁあぁ・・・押入れの・・・天井板をはずしてる・・・」

「えっ?」

不意に俺も声を漏らしていた。
携帯の画面でタカシの腕の後ろの方に押入れは確かに見える。

「ドスッ!」

そんな音がすると同時に、押入れの扉が少し振動した。

「落ちてきた・・・」

タカシの声だ。予想に反してだいぶ落ち着いている。

「ちょっと、見てみる」
予想していなかった言葉が携帯から聞こえてきた。
普段なら煽るところだが、今回はヤバイ。俺は、本気でそう思った。

だが、すでにタカシの後姿が携帯の画面に映り、押入れに手をかけていた。

「ちょっ!?やめっ・・・・!!」

俺が、携帯に向かって叫ぶと同時に、タカシは押入れの戸を勢いよくあけていた。

「あれっ?」

何もいない。少なくとも携帯の画面からは確認できない。
タカシが押入れの戸を閉めた。
その様子だと、タカシも何も確認できなかったらしい。

「何もいなかった」

チャットに書き込んできた。

「天井板もずれてかなった」

だとしたら、さっきまでの音はなんだったと言うのか?
俺は、タカシにそう聞こうと思ったが、ハッとして思いとどまった。

(釣りだったのか?友達か何かと相談して俺をハメたのか?)

そう考えると、納得がいく。むしろ、それ以外ありえない。
俺は、チャットに書き込み続けるタカシを見つつ、もう少し話に付き合ってから、こっちからネタ晴らしをしてやろうと思い、ディスプレイと携帯を覗き込んだ。
「あっ?」

押入れの戸が少し開いている。
おかしい、さっきタカシが閉じたはずだ。

「おいっ、タカ・・・!?」

携帯に向かって話しかけた瞬間、ディスプレイには押入れの戸に”内側から”手が掛けられているところが映し出されていた。

(まさか、ここまで本格的な釣りだとは・・・少し早いが俺からネタバレ振ってみるか)

そう思い、携帯を取り

「タカシ!釣りなんだろ?後ろの押入れの友達何とかしろよ!マジで怖い!!」

結構、大き目の声で言ってみた。しかし、タカシからの返答はない。

仕方がないので、チャットのほうで同じことを言ってみることにした。
文を打ち込み、発言ボタンを押す。書き込まれなかった。

「えっ?」

おかしいな、と思いつつふと携帯に目を移す。
押入れはさっきより開いていた。手も見えない。
その瞬間、映像が途切れた。

「あれっ?」

なんだ?タカシが通話を切ったのか?そう思っていると

『えっ?うっ、うわぁぁぁぁぁぁあっ!!止めッ。ゴブッ・・・・・・』

携帯から、タカシの声が聞こえた。
俺は、焦り携帯を手に取り

「おいっ!タカシ!?どうした!おぃっ!!」

返答はない。チャットの方にも、書き込みがない。

「おいっ・・・まさか・・・・」

俺の頭の中に最悪のパターンが浮かんだ。
正確に言えば、”俺の考えうる”最悪のパターンだ。


「次はお前だ」


俺の頭上・・・天井裏から声が聞こえた。
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俺んちは田舎で、子供の頃から絶対入るなと言われていた部屋があった。

入るなと言われれば入りたくなるのが人情ってもんで、俺は中学生の頃こっそり入ってみた。
何て事は無い普通の部屋だった。変な雰囲気もないし、窓からはさんさんと日光も入ってきて、何も怖くない。

なんだ、ただ単に部屋を散らかされるのが嫌で、あんな事言ってたのかと思い拍子抜け。
退屈ということもあってその場で眠ってしまった。

それでも、金縛りにも全然あわないし、数時間昼寝して起きた。寝てるときも起きてるときも怪奇現象一切無し。
やっぱり全然怖くない。入るなと言われてた部屋だから、怖いのを期待してたのに・・

部屋を出るときに、何気なく部屋にあったタンスの引き出しを開けたら、和風の人形(雛人形を小さくしたような感じ)が一体だけ入ってた。
それだけだけど、タンスにはその引き出しだけで、それ以外には他には何も入ってない。
つまり、タンスの引き出し一つだけが人形1体だけ、他の引き出しには普通に着物とか、服が入ってる。

こえぇええと思った。

後になって(人形の話とかはせずに)ばあちゃんに聞いてみたら、なんでもあの部屋は親父の妹さん、つまり俺から見ると叔母さんに当たる人の部屋だったらしい。
タンスの中の物も全て叔母さんの物。といっても、もう当時からも30何年も前の話。
家を今の状態に建て替えたのは両親が結婚してすぐのことで、将来、子供が(まあ俺のことなんだが)出来たときのために二世帯住宅化したわけだ。
で、その時に少し庭を潰して増築したのがまずかったらしい。

その増築したところに建っているのが「入ってはいけない部屋」つまり叔母さんの部屋だったんだが、どうも家を新しくしてから叔母さんの様子がおかしくなった。
まず最初は、部屋で寝たくないと言うようになったらしい。

叔母さんの話によると、新しい部屋で寝るようになってから、どんなに熟睡していても夜中の3時になると決まって目が覚めるようになったらしい。
そして、目を開けると消したはずの電気が点いてて、枕元におかっぱの女の子が座って居るんだって。
そして、不思議なことに煌々と点いた灯りの下で、女の子の顔だけが真っ黒になっていて見えない、でも、何故か叔母さんには解ったらしい。

笑ってる、って。

そんなことが1週間くらい続いて、叔母さんは頭の良い、しっかりした人で、最初はみんなに気味の悪い思いをさせたくないと黙っていたんだけど、もう限界とじいちゃんに言ったらしいんだ。
だけどじいちゃんは「嫁にも行かんで家に住まわせて貰っているくせにこの大事な時期(親父とお袋のこと)にふざけたこと言うな。出て行きたいなら出て行け」と突っぱねた。

それから半月くらい経って、ばあちゃんはふと叔母さんの話を思い出した。
近頃は叔母さん、何も言わなくなったし、一日中妙に優しい顔でにこにこしていたから「もう新しい家にも慣れて変な夢も見なくなったんだろう」くらいに考えて、叔母さんに聞いてみたんだ。

そしたら叔母さん、にこにこしたまま、

「ううん。でももう慣れたよ。最初は一人だったんだけどね、どんどん増えていってる。みんなでずっとあたしのこと見下ろしてるんだ」
そう言ってあはははは、と普段は物静かな人だったという叔母さんには到底似つかわしくない笑い声を上げたらしい。
たぶん、叔母さんのその話が本当だったにせよ夢や幻覚のたぐいだったにせよ、この頃にはもう手遅れだったんだろう。

叔母さんの部屋の隣はじいちゃんとばあちゃんの部屋だったんだが、その日、ばあちゃん、真夜中に隣から「ざっ、ざっ、ざっ、ざっ」って、穴を掘るみたいな音がして起こされた。
叔母さんの部屋に行ってみると、部屋の畳が引っぺがえされてる。
そして、むき出しになった床下で叔母さんがうずくまって、素手で一心不乱に穴を掘ってるんだよ。

「なにやってるの!?」

ばあちゃん、さすがに娘が尋常じゃないことを察して怒鳴った。
でも、叔母さんはやめない。口許には笑みさえ浮かんでいたという。

しばらくして、「あった……」と言って床下からはい出してきた叔母さんの手に握られていたのは、土の中に埋まっていたとは思えないほど綺麗な「小さな日本人形」だった。
叔母さんはばあちゃんに人形を渡すと、そのまま笑顔で壁際まで歩いていき、

ごんっ、ごんっ、ごんっ、

何度も何度も自分の頭を壁にぶつけだした。
ごんっ、ごんっ、ごんっ。

「何やってるの××(叔母さんの名前)!」

ばあちゃんは慌てて止めようとしたけど、叔母さんはすごい力で払いのける。

「何やってるんだろう?本当だ。あたしなんでこんなことやってるんだろう解らないわからないわからない……」

叔母さんの言葉はやがて意味のない、笑い声の混ざった奇声に変わっていった。
そしてばあちゃんは聞いてしまったという。
叔母さんの笑い声に混じって、確かに子供の、しかも何人もの重なった笑い声を。

叔母さんはそのまま10分以上頭を壁にぶつけ続け、最期は突然直立し、そのまま後ろ向きに倒れ込んだ。
「おもちゃみたいだった」ってばあちゃんは言ってた。

起きてきたじいちゃんが救急車を呼んだが、駄目だったらしい。延髄だの脳幹だの頭蓋骨だのがぐっだぐだだったとか。
話を聞いたお医者さんは信じられない様子だった。
自分一人でここまでするのは不可能、とまで言われたらしい。
殺人の疑いまで持たれたとのこと。

さすがにここまでになったらじいちゃんも無視できず、娘をみすみす死なせてしまった後悔もあってお寺さんに来て貰ったらしい。
住職さん、部屋に入った瞬間吐いたらしい。
何でも、昔ここに水子とか幼くして疫病で死んだ子供をまつるほこらがあって、その上にこの部屋を作ってしまったから、ものすごい数の子供が溜まっているらしい。

「絶対この部屋を使っては駄目だ」

と住職さんにすごい剣幕で念を押されて、ばあちゃんが供養をお願いした例の人形は、

「持って帰りたくない、そんな物に中途半端なお祓いはかえって逆効果だ。棄てるなり焼くなりしてしまいなさい」

と拒否られたらしい。
で、そこからは怪談の定石。

ゴミに出したはずの人形がいつの間にか部屋のタンスに戻ってたり、燃やそうとしても全く火が点かず、飛んだ火の粉で親父が火傷したりと、もう尋常じゃないことになって、困りあぐねて最後はとりあえず、元の場所に埋め戻して部屋は丸ごと使用禁止にした、って訳。
悲惨な話だから、経緯は俺には言わないでおいてくれたらしい。

「とりあえず、元の場所に戻したのが良かったのか、人形はそれっきり。また出てこないと良いけどねえ」

うん。ちゃんと出てきてたよ、おばあちゃん。
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ボロアパートに住んでる貧乏学生がいた。
もちろん壁も薄くて隣の部屋の音も丸聞こえ。

ある日の0時深夜、隣の部屋から「コンコン」とノックするような音がした。
学生はもう床についてたから、シカトしたんだ。
でもその音はいつまで経っても鳴り止まない。
仕方がないから隣に文句を言いに行った。

隣の住人はキャバ嬢みたいな派手な女だった。
学生は「ノックを辞めてくれ」と言った。
だが女は「ノックなんかしていない」と言う。

女の肩ごしに部屋の中が見えた。
見ると、学生の部屋と面している部分は押し入れだった。
わざわざ押し入れに入ってノックなどするわけがない。
学生はネズミだったのだろうと思い、女に謝り、自分の部屋に戻り寝た。

翌日の深夜、また音がする。
しかしそれは隣からのノックのような音ではなく、外からの「ゴリッゴリッ」という何かを削るような音だった。

今にも崩れそうなベランダに出て、外の様子を見てみた。
見ると、少女が道路でうずくまって何かをしている。
こんな夜中に何をしているのだろう。
学生は疑問に思い少女を見ていた。

だんだん目が闇に慣れてきた。
そして少女が何をしているのかが見え驚愕した。
少女は、道路に白いチョークで絵を描いていたのだ。

しかし、その絵はただの子供が描くような絵ではなかった。
その絵はまるで地獄絵図だった。
鬼が人を煮たり、焼いたり、食ったりしていて、餓鬼もいれば、針の山で串刺しにされている人もいる。
少女は地獄絵図を描いていたのだ。

しかも、子供が描いたものとは思えない程上手い。
あまりの上手さに学生は感動して見入ってしまった。
次の日、道路を見てみると地獄絵図は消えていた。
不気味なので誰かが消したのだろう。学生はそう思った。

その晩、また外から音がした。
外を見てみると少女が地獄絵図を描いていた。
学生はまた地獄絵図に見入ってしまった。

そんなことが数日続いたある日、学生はいつものように少女の地獄絵図を見ようと夜中まで起きていた。
今まで学生は少女の描いた地獄絵図を見ていたが、どれも素晴らしい出来だった。
内容は違っていたがやはり地獄の様子を描いていた。

しかし、その日の少女の描く絵はいつもの地獄絵図では無かった。
その日の絵は、子供が大人に暴力を受けている絵だった。
子供は女の子で、大人も女性のようだ。
まるで虐待のような絵だった。

大人の女の顔は鬼のようで、今まで見た鬼の絵よりずっと恐ろしく描かれていた。
学生は絵のあまりの恐ろしさに固まってしまった。
見入ったのではなく、固まったのだ。

すると少女がこちらを向いた。
今まで少女はただひたすら絵を描いていて、振り向くことなど一度も無かった。
なので学生はこの時初めて少女の顔を見たのだ。

少女の顔は半分白骨だった。
まだあどけなさの残る半分の顔とは真逆の、骸骨だった。
そして少女は消えてしまった。
学生は驚愕と恐ろしさでただただ呆然としていた。

次の日学生は昼過ぎに目が覚めた。
昨晩恐怖で眠れなかったが、知らないうちに寝ていたらしい。
起きてみるとどうして自分が目が覚めたか分かった。
何やら外が騒がしい。
部屋を出ると、隣の女の部屋に刑事ドラマで見るような「立ち入り禁止」の黄色いテープが貼られていた。

外に出ると人だかりができていた。
何か事件があったのだろうか?
学生は人だかりの中で、近くにいる人に何かあったのか聞いてみた。
聞いてみると、どうやらキャバ嬢女の部屋から子供の白骨死体が見つかったらしい。

キャバ嬢女は子供がいたらしく虐待をしていて、挙げ句の果てに殺したのだそうだ。
それは学生がアパートに越してくる前の話だ。

キャバ嬢女は殺した子供を押し入れに隠していたらしい。
子供は女の子で、生前道路にチョークで落書きをして遊んでいたらしい。
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大学の友達同士で海へ出掛けた事がある。
夏で人が一番混雑する時期はとうに過ぎていたので、浜に残る海の家も閑古鳥が鳴いていた。

異変が起きたのはその日の夜からだった。
夜中の二時頃、少し遅いシャワーを浴びて部屋に戻ると携帯がブルブル震えていた。
どうやら写メールが届いているらしかった。

(何これ……)

写真はピントがズレてぼやけていた。
まるで白いもやがかかったみたいに見にくく、何が写っているのか見当も付かない。
アドレスを見ると見知らぬものだったので私はすぐに削除した。

それからすぐに写メールの事は忘れ、テレビのお笑い番組を見ながら一人で缶ビールを開けていた。
明日は仕事も休みだし、今日は朝まで一人酒だ。

その時また携帯がブルブルと震えた。見るとまた写メールが届いていた。
さっきのと同じピンボケ写真だったけど、微妙にこちらの方がピントが合っている。

(気味が悪い……いったい誰よこんな悪戯するの)

すぐに思い当たった。海へ行ったメンバーのなかには高校からの親友も居て、彼女はよく私を怖がらせようと悪戯を仕掛けてくる。
今回もそれだと思った。どうせ家族の誰かの携帯でも使っているんだろう。それなら見知らぬアドレスでも頷ける。

私はすぐに彼女の携帯に電話した。
しかし携帯から聞こえてきた声は、今起こされましたという感じの寝ぼけたしゃがれ声だった。
52 無名さん
水面に光る太陽の粒 
キミを思ってた 繰り返すように
風の音 揺れては弾け飛んだ
この恋だけは 終わらせたくないよ

瞼に力込めて 映し出した二人に
光の粒を散りばめたら 想い 届きそうで…


隠しきれなくなった 胸の息
何処に吐き出したらいいの?
冷えた唇 もう もう誤魔化せない
抑えられなくなった 胸の奥 一輪の花に囁く
確かに熱く夢みる未来 眠る前に


愛しくて微笑んだその後に
ふいに痛む鼓動 操れない
通じ合う心手にいれたなら
落ち着いた日々 送ることできるの?

渦巻く水の上を ゆっくり走り出した
底のない不安  沈めながら
溶けた 光浴びて

ふと振り返った 僕の後ろは何もなかった ただ静かに
波打つ道跡 もう もう戻れないね
進んでは立ち止まったとしても 同じ景色出逢うことはない
待ってる明日と 今だけの風 噛みしめて


隠しきれなくなった 胸の息
何処に吐き出したらいいの?
冷えた唇 もう もう誤魔化せない
抑えられなくなった 胸の奥 一輪の花に囁く
確かに熱く夢みる未来 眠る前に
「何よこんな時間に」

瞬時に犯人が彼女ではない事を悟った。と同時に気味が悪くなった。
悪戯じゃないなら一体このピンボケ写真はなんなのよ。

その時、また携帯が震えた。
やはり少しづつだがピントが合ってきている。
写真が辛うじて誰かの顔の一部である事が分かった。でもそれしか分からなかった。

突然、鍋が床に落ちた。私は咄嗟に後ろを振り返り、辺りを見回した。
そして鍋を拾いに立ち上がり、定位置に戻してから再び部屋に戻る。

するとまた写メールが届いていた。今度こそ気持ちが悪かった。
写真は目や口、鼻といった顔の一部分が分かるくらいはっきり写っていた。
でも近すぎてそれが誰かは分からない。しかし女という事は分かった。

私は携帯をタオルに包んでベッドの下に押し込んだ。これなら着信があっても気付かない。
そして私は電気を消してベッドに潜り込んだ。とても酒を飲む気分になれなかったからだ。
しかしすぐに起き上がって電気をつけた。気になるのだ。さっきから第六感が騒いでいる。見なければならない気がした。
ベッドから手を伸ばし、タオルの中から携帯を取り出す。
少ししか経っていないのにメールは十通近く届いていた。
そして写真の内容を見た私は硬直した。

一枚目はピンボケだが少しズームが引いてあり、女が部屋に居る事が分かる。

二枚目では女の背格好が少しづつ分かってきた。

三枚目で女は壁を背にして座り込んでいた。

四枚目で顔のパーツがだんだんと分かってくる。

五枚目で分かった。その女は私だった。

六枚目になるとだんだん気持ちが悪くなってきたが、勇気を出して見ると、自分の部屋で私が壁を背に携帯を覗き込んでいた。

七枚目、だんだんと近づいてきて表情がはっきり分かるくらいになってくる。

八枚目で私のすぐ後ろに影が見えた。

九枚目、その影がはっきりと見えてくる。

十枚目に写っていたのは、携帯を覗く私と、すぐ後ろから背筋が凍るほどの形相で睨みつける顔がぐちゃぐちゃの女だった。
女の表情だけは異様なほどはっきりと分かった。怒りに満ちた顔で私だけをじっと睨みつけている。

その時、強張って動けない私のすぐ後ろから声が聞こえた。後ろは壁のはずだ。
なのにその声は耳元で生きた人間のもののように響いてきた。


「逃げるな」


翌日から私はその部屋に戻っていないし、携帯も解約した。
あの声が聞こえてきたとき、私はあまりの恐怖に気を失っていたらしい。
そして、薄れる意識の中で聞こえてきたのは女の高笑いだった。
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三年近く前、泉の広場のところでヘンな女がうろついていた。
通勤の帰りによく見かけた。

三十歳前後で、赤い色のデザインの古そうなドレスっぽい服を着てて、小柄で顔色が悪く目がうつろ。髪は背中近くまであって伸ばしっぱなしに見えた。
目立つ服の色となんか独特の雰囲気があって目がいってしまう。
でも怖い(キ印っぽい)感じで、何気なく観察はしても目は合わせんようにしていた。

女はいつも広場の中をうろうろしていた。
地下出口を出たところ、何本か外れた飲み屋筋に立ちんぼのねーちゃんの多い場所があって、そこのねーちゃんかな? と思っていた。

ある日の仕事帰り、広場内の薬局の店頭でコスメの安売りを見ていた。
私は買い物をするのに時間をかける方で、その時も多分一時間近く店にいたと思う。
その夜も女は広場をうろついていて、自分はいつものことなんで特に気に留めてはいなかった。

でも店から出た時に視線を感じ、顔を上げると広場の真ん中の噴水を隔てて女がこっちを見ている。
なんかヘンな感じがした。
私は目が悪く、眼鏡をかけていても少し離れた場所だと相手の顔がよく見えないのに、その女は妙にくっきり見えたんよ。3Dみたく。

目が合った途端、気持ち悪くなった。
何か本能的に怖くて、びしぃ! とチキン肌立って。

(うわ、ヤバい)

(でも何が?)

自分でも思考回路が謎のまま、それでも反射的に店内に戻ろうとしたけど、金縛りかかったみたいに身体が動かん。
助けを求めようとしても声すら出ないことに気が付いた。
いつもふらふら歩いてるはずの女が、すっと素早く近寄ってくる。
明らかに普通じゃない様子で、髪を振り乱してドレスの裾ゆらしてこっちに来るのに、誰も気付いてくれない。
もの凄い顔で笑ってて、その表情の怖さにふーっと気が遠くなった。
だって目のあるとこ、全部黒目に変わってるんやで。

怖い、もうあかんって思ったときに、いきなり誰かが後ろからぎゅっと腕を掴んできた。
驚いて顔を上げる(ここで身体の自由が戻った)と、男の人で、話しかけようとしたら「静かにして」って小声で注意された。

呆然として顔見上げてると、男の人はますます手をぎゅーっと握ってきて、怖い顔で前を見てる。
つられて視線を戻したら女がすぐ側に立っていて、男の人を呪い殺しそうな目つきで睨んでいた。
すごい陰惨な顔してて、怖くて横で震えてたけど、女はもううちのことは眼中にない感じで、

「…………殺す……」

ってつぶやいて、男の人の横をぶつかるみたいに通りすぎて店内に入っていった。

男の人はその後、私をぐいぐい引いて駅構内まで来ると、やっと手を離してくれた。
駅が賑やかで、さっきあったことが信じられんで呆然としてると、「大丈夫か?」って声かけてきたんで、頷いたけど、本当はかなりパニクってたと思う。
相手の名前を聞いたりとか、助けてもらった(?)のにお礼言うとか、まともにできなかった。

男の人は改札まで見送ってくれた。
別れ際に「もうあそこ通ったらあかん」と言われて、「でも仕事あるし」と返したら

「命惜しかったらやめとけ」
答えようがなくて黙ってると、

「今日は運よかったんや。あんたの守護さんが俺を呼んであんたを守ってくれたんやで」

「……」

「たまたまやねん。わかるか? あんたが助かったの、たまたま守護さんがわかるもんが、たまたまそばにおった、それだけやで。あいつにとり殺されたくなかったら、もう通らんとき」

(守護さんって何やのん。守護霊のことか?)

霊なんて見たことなかったから、自分の体験したのが何なのかわからなかった(正直今もわからない)。
女はどう見ても生身の人間に見えた。
それで返答に困ってると、その人は私に何度も一人で通るなよと繰り返して行ってしまった。

私は二ヶ月後にそこの仕事場を辞めたけど、その間夜に泉の広場を一度も通らなかった。
未だにアレが何だったのかわからない。男の人も、女も共に謎。
男の人の名前、聞いておけばよかった。助けてくれたんなら(今も半信半疑だけど)お礼を言いたかった。

<後日談>

怖い目にあった次の日、性凝りもなく泉の広場を通ろうとしたのな。霊体験の少ない悲しさ(笑)。
で、なんか日が変われば白昼夢(夜だったけど)を見たような感じで、恐怖感が薄れたんさ。
実際昼間に通った時は何ともなかった。

で、帰り道。
さすがに暗くなってると、あの男の人の「とり殺される」って言葉が浮かんで怖かった。
ただ梅田界隈って賑やかやから警戒心は薄れていた。
自分の中に、女が人間かどうか確かめたい気持ちもあった。
でも、甘かった。

泉の広場に続く階段を途中まで降りると、赤い服の女がしっかり居たのな。
下から三段目ぐらいの階段右の隅っこの方に、背中をこっちに向けて座っていた。
(もしかしてこれは待ち伏せ?)

反射的にそう思った。
私は広場をうろつく姿は見ていたけど、女が階段に座ってるのを見たことはなかった。

妄想かも、と思ったけどぞっとした。
逃げた方がいいと思った時、女がゆらぁと立ち上がった。
まるで操り人形の糸を引いたみたいな不自然な立ち方で、何故かその瞬間、

(あっ、こっち向く!)

って判って、慌てて階段を駆け上がって後も見ずに逃げた。
その時は体動いたんで、神様ありがとうと結構マジに思った。

それからは全然泉の広場付近には行っていない。チキンな私にはもう確かめる根性はなかった。
ただ仕事を辞める少し前、あの道を通る同僚の子三人に、(怖い体験は伏せて)広場に赤い服を着た女の人いるよねって聞いてみたら、二人は「そんなん見たことない」と言って、一人は、「あー、あの不気味な人ね」と返してくれた。
見たことあると言った子は、とにかく怖い感じなんで視界に入らないようにしてると言っていた。彼女も幽霊とは思っていないみたいだった。

今でもたまに、あの女はまだあそこにいるのかなって思う。
……しょぼい後日談でごめんね。でもいまだに確かめる勇気なし。
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最初に言っとくけど、もともとの話は幽霊とか関係無い話。
フルネームは判らないけど「アキちゃん」と呼ばれていた赤いワンピースの街娼婦がいて、その人にまつわる話。

昔、関西では「映画ダイジェスト」っていう最新の映画の上映期間やら上映館を紹介する番組があって、その番組では梅田松竹会館への行き方を「泉の広場を上がったところ」という紹介の仕方をしていて、当時小学生のオイラは何かアニメ映画を見に行きたくて、松竹会館近辺の食堂で働いていた祖母に泉の広場への行き方を尋ねたわけです(そこに行って上がればいいんだ、と考えたので)。
けど祖母は子供の行くところじゃない、ヤーサンがうろうろしていて危ないと教えてくれないので、泣きながら映画の事は諦めました。

時は流れて中学生。
一人で映画館にも行ける年齢になったオイラは、また見に行きたい映画が上映される事になったので今度こそという勢いで祖母に泉の広場の場所を尋ねました。
すると昔とは違ってあっさり場所を教えてくれたので、気になって何で昔は場所を教えてくれなかったのだと問い詰めたわけです。
で、まあ中学生になったなら(正確にはもう大人料金でどこでも行けるんやしなぁと言っていた)良かろうということで、「アキちゃんの話」を聞かせて貰いました。

当時(今から30年位前)、泉の広場は今ほど明るい垢抜けた場所では無く、ちょっと怪しげな人達がたむろしていたのは他の方の書いている通りですが、その中に「アキちゃん」と呼ばれる赤いワンピースも華やかな身を売っている女性がいたそうです。
かなり売れっ子で気の強い彼女は、そんな仕事は辞めたらどうだという店のオバちゃんやうちの祖母の話にも耳を貸さず、自分の稼ぎで内縁の夫(やくざだったらしいですが)を組内で出世させる、などと言ってたそうなんですが、その相手のやくざはどう見ても粗暴なだけで頭の回らない、ゆくゆくは落ちぶれるだろうなぁというような男で、オバちゃん連中の見立てでは「くだらない男に引っ掛かっている自分を認めたくなくて強気な事を言ってるんだろう」と、プライドの高さが哀しいタイプの女性だったそうです。

まあ、そんな女王様みたいな感じのアキちゃんでしたが、とにかく綺麗な人だったので常に客がいるような状態だったんですが、そういう人はまあ周囲の女性とはどうしてもぶつかるようで、他の街娼の人とは何度か諍いがあったそうです。

そんなある時期、とんがっていた彼女の性格がえらく丸く優しくなったので、不思議に思った近くの店のオバちゃんが訪ねてみると、「自分にベタ惚れした若い客が自分と一緒になって田舎に行こうと言ってくれた」と言ったそうで、もちろんオバちゃんはそんな出来すぎた話があるかいな、アホと言ったそうなんですが、その若い兄ちゃんは大阪で一儲けして田舎で商売でも始める、金はあるからヒモのやくざにバシッと金を払って一緒についてこいと、かなりの金額をアキちゃんに見せたそうで、オバちゃん曰く、こんなに気の強い女が何でこんなあっさりと騙されるのかと呆れたそうで。
で、そのオバちゃんもその若い客を見たそうですが、確かに金のかかった身なりでさわやかそうな好青年だったそうですが、大阪のオバちゃんらしく

「一儲けして女の身請けして故郷に錦を飾るようなヤツが、さわやかなままでおるわけが無い」

という身も蓋も無い、しかしなるほどなぁという理屈で兄ちゃんが胡散臭いと見てとったそうです。

結局オバちゃんの見立ては正しく、この「好青年」はなんとアキちゃんのヒモのやくざと同じ組の、こっちは女で商売する専門の組員だったそうです。

何でこんな話になったかというと、元々「好青年」はミナミ界隈で何人もの女性で稼いでいたらしいのが、兄貴分の引退で兄弟関係の梅田の組に世話になる事になり、先に送っていた稼ぎ扶持の街娼がアキちゃんと揉め、何とかしてくれと女に泣きつかれてアキちゃんをだまくらかす事にしたという顛末だったそうで(この件でヒモだったやくざと「好青年」が後々喧嘩沙汰になったのが祖母が働いていた食堂だったので、大まかな理由が判明した)。

で、ある日。
いつものように泉の広場に向かったアキちゃん。
噴水のところに腰掛けている「好青年」を見かけて駆け寄ろうとしたら、隣に以前喧嘩した女が嬉しそうな顔をして座っている。

「人の男に手を出すな」

と言わんばかりに近づいたアキちゃんの目の前でディープキスの2人。
カッとなって詰め寄り、

「どういうこと!? 私を捨てる気!?」
と涙を浮かべながら言うアキちゃんに「好青年」が言ったのが、

「捨てるも何も、ハナから拾ってもおらんがな」

同時に完全に勝者の笑顔を浮かべる隣の女。
騙された事を完全に理解したアキちゃん……のはずがセリフは変わらず、

「私を捨てる気!?」

ばっかりだったそうで、祖母曰く、「プライドが高すぎて騙された事にしたくないんだろう」と。
その時の顔ときたら、涙はすぐに枯れてもうこれが般若というものか、というくらい凄い形相だったそうで。

その後、この話がヒモにばれて捨てられてしまったアキちゃんが取りだした行動が、今のお話の元になっているんでしょう。

「好青年」に騙され、ヒモには捨てられ、まさしく一人になったアキちゃん。
広場のいい場所で客を取る事も出来なくなり、階段を上り下りしたり広場の奥をうろうろしたりで客も付きにくくなりました。

それでも以前から彼女を知っている客の中には彼女を探して相手をしてもらおうとするのですが、そういった「常連」の数がどんどん減っていく。
不思議に思ったオバちゃんが客だった男にこっそり訳を聞くと、これまでの彼女が嘘のようにベッドで「連れて行って、連れて行って!」と物凄い力でしがみついてくるので怖くてしょうがない、と。
常連も寄り付かなくなり、孤独な時間が多くなるアキちゃん。
そんなある日、噴水に座っていた若い兄ちゃんが待ち合わせか、彼女と落ち合った時に事件は起こりました。

「また私の事騙したんか!? 殺してやるっ!?」

アキちゃんが階段を一気に駆け下りてきて、そのカップルに襲い掛かろうとしたんです。

気づいた回りの店の人達が取り押さえたんですが、そのカップルは「好青年」とは年恰好が似てるだけで本人とは全然違う人でした。
曽根崎警察の方から厳重に注意を受け、以後襲い掛かるような事は無くなったそうですが、似たような年代の男女を見かけると刺す様な眼差しで見るようになったそうです。

それでもいつしか彼女はいなくなり、泉の広場も綺麗に改装されましたけど、それでもアキちゃんの名残やないか、と言われてる部分は残ってるんです。

噴水に今、座れないでしょ? 小さい水が出て。
カップルがそこに座って長いこと楽しげに話が出来ないようにしてるんじゃないかと。
アキちゃんがまたやってこないように……。
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九州のある地域の話。
仮だがS区という地域の山を越えた地域の「裏S区」って呼ばれてる地域の話。

現在では裏とは言わずに「新S区」と呼ばれているが、じいちゃんとばあちゃんは今でも裏S区と呼んでいる。
まぁ、裏と言うのは良くない意味を含んでいて、この場合の裏は部落の位置する場所を暗に表している。
高校時代は部落差別の講義も頻繁にあるような地域。そこでの話(あくまで体験談&自分の主観の為部落差別、同和への差別の話ではありません)。

今から何年か前に男の子(仮にA)が1人行方不明になった。
俺はS区出身者、彼は裏S区出身者だけどS区の地域にある高校に通っていた。
まぁ、彼は友人だった。あくまで「だった」だ。

1年の頃は仲が良かった。彼が1人の生徒をいじめるまでは。
……いじめられたのは俺。
周りはだれも止めない、止めてくれないし見てもいない。傍観者ですらなかった。
必死に止めてと懇願しても殴る、蹴る。

俺は急に始まったから最初はただの喧嘩と思い殴りあったが、彼の体格と俺のでは全く強さが違う。
でも次の日も急に殴ってきた、意味も無く。
理由を聞いても答えない。薄っすらと笑ってたからもう兎に角怖かった。

そんなある日、いきなりAが学校に来なくなった。
俺はかなりうれしかった。
でも、もうその状況では誰も俺に話かける奴はいなかった。
初めての孤独を味わった。多数の中に居るのに絶対的な孤独だった。

Aが学校を休み始めてから3週間が過ぎた頃、先生が俺を呼び出した。
ここからは会話。
先生「お前、Aと仲良かっただろ?」

俺「……いえ」

先生「う〜ん。お前Aをいじめてないか?」

俺「はい? え? 俺が? それともAが俺を?」

先生「いや、お前が。大丈夫、誰にも言わんから言ってみろ。問題にもせんから」

俺「いや、俺がですか?」

このときは本当に意味が分からなかった。先生の中では俺がいじめてることになってるし。
で、俺は本当のことを言うことにした。

俺「本当は言いたくなかったけど、俺がいじめられていました……皆の前で殴る蹴るの暴力を受けてましたし」

先生「本当か? お前が? 他の生徒も見てたか?」

俺「見てましたよ。っていうか何で先生は俺がいじめてるって思ったんですか? 誰かが言ったんですか?」

先生「いや。いや、何でも無い」

先生の態度がこの時点で明らかにおかしい、何故か動揺してる感じ。
しばらく2人とも無言。

数分後、いきなり先生が言い出した。

先生「Aがな、休んどるやろが? なしてか分からんけど登校拒否みたいな感じでな、家に電話しても親が出て、おらんって言うてきるんよ」

俺「……」
先生「そんでな、昨日やっとAと連絡とれて、色々聞いたんよ。そしたらAが言ったのが”お前が怖い”って言うんよ」

俺「はい? 俺が?」

先生「う〜ん、そうなんよ。お前が怖いって言って聞かんのよ」

俺「いやいや、俺が? 逆ですけどね、俺はAが怖いし」

先生「ほうか、いや、分かった。もっかい聞くけどお前はいじめてないな?」

俺「はい」

っていうやりとりの後解放され、自宅に帰った。

実際のいじめって多人数が1人をいじめるものだと思ってた。
中学生のときにいじめを見たことがあったからそのときのイメージをいじめだと思ってたし、よく聞くいじめも大体が多人数が1人にお金をたかる、トイレで裸にする、こういうことをすることだと思ってた。
まさか、たった1人の人間がたった1人の人間をいじめるのに先生まで巻き込み、俺1人だけをのけ者にしようとしてるとは思わなかった。

生まれて初めて人に殺意を抱いた。ぶん殴るとかじゃなく、ぶっ殺したいって本気で思った。

その次の日から俺は学校を休んだ。行く気にはなれんし、行っても1人だしと思って。
ただ、この登校拒否中にありえないものを見てしまい、俺はちょっと頭がおかしくなりかけた。

起こったのは「飛び降り自殺」。俺の住んでいたマンションから人が飛び降りた。

たまたまエレベーターホールでエレベーター待ちだった俺の耳に、「ギぃーーーーー」という奇怪な声と、その数秒後に「どーーーーん!」という音。
そのどーん! という音は自転車置き場の屋根に落ちたらしいのだが、それを覗き見たときは本当に吐き気と涙がボロボロ出た。
これはただの恐怖心からなんだが、でもいじめにあっていた俺にはとてつもなく大きな傷となった。
これは本当にトラウマになっていて、今でもエレベーターに乗れなくなるほど。
会社などの建物にあるエレベーターにはまだ何とか乗れるが、マンションにあるような外の風景が見えるものには全く乗れない。
なぜなら、このとき絶対にありえないものを見たから……。

自転車置き場を見下ろしていた俺が前を向きなおした瞬間、螺旋階段が見えた。
そこに、下に落ちてる人間と全く同じ服で髪型(これは微妙で、下にあるモノとは異なってたようにも見える)のニンゲンが立っていた。
これは多分見てはダメだったんだと思う。螺旋階段を下に向かってゆっくりと降りていったんだ。
すごくゆっくり下を向いたまま歩いていた。下にあるものと瓜二つのニンゲンが。

ここで、エレベーターが来たときの合図の「ピン」って音が鳴ったんで、ビク! ってなり後ろを振り向いた。

そこにも居た。
と思う。多分いたんだろう、でも良く覚えてない。
今考えれば居たのか? と思うけど、そのときは居たと思っていた。

「ピン」の音に振り返った瞬間、どーん! って再度聞こえたんだ。
でも、今度の音はエレベーターの中から

どーん

どーーん

どーーーん

どーーーーん


って。
俺はもう発狂状態になってそれから倒れたみたい。

すぐに病院に連れて行かれた。
見たもの、聞いたものを全て忘れるように医者から言われて薬も処方されて、それから1週間は「うぅぅ」ってうめき声を上げているしかなかった。

1週間過ぎた頃にはだいぶ良くなっていたのだけど、本当は親や医者を騙してた。
良くなってなんか無かった。寧ろそのときからその「どーん」って音はずっとついて廻っていた。
その後、学校に行こうと思いだした頃にAの存在を思い出した。

「俺がそもそもこんなことになったのもAのせいだ。あいつがあんないじめをしなければこんな目にもあわなかった。アイツは俺をこんな目にあわせる様な奴だから居なくなればいい。そうだ、この”どーん”って言う音に頼もう」

って本気で思ってた。
俺は本当におかしくなってたんだと思う。本気でこの「音の主」にお願いしてた。

次の日、学校に行った俺は昼休みのときに早退したいと先生に言った。
先生も俺がどういう状況かを知っていたからすぐにOKを出してくれた。
Aはその日も休みだった。

その帰りがけ、先日「部落差別を無くそう」という話を学校の講義でしていたおじさんに出会った。
そのおじさんはAのおじさんにあたり、何度か会って話をしたこともあった。

だけど、そのおじさんが俺を見た後からの様子や態度が明らかにおかしい。
最初見かけたときは普通に挨拶をしたのに、その後俺を二度見のような感じで見て、いきなり「あ〜……」とか言い出した。

俺は「こいつもAに何か言われてんのか?」って感じで被害妄想を爆発させて、怪訝な態度のこのおじさんを無視して横切ろうとしてた。

そのとき、急にそのおじさんがブツブツブツブツお経のようなものを唱え始めた。
俺はぎょっとして、そのおじさんを見返した。

いきなり会って「あ〜」などとわけのわからない態度を取り出し、それだけならまだしも俺にお経を唱えたのだ。
生まれて初めて自分から人をぶん殴った。
言い訳がましいけど精神的におかしかったから殴ることの善悪は全くなかった。ただ苛々だけに身を任せた感じ。

いきなりでびっくりしたのか、そのおじさんもうずくまって「うぅ……」と言っていたが無視して蹴りを入れてた。
Aの親戚ってだけでも苛々してたのもあり、

「こら、お前らの家族は異常者の集まりか? 人を貶めるように生きてるのか? お前差別をどうのこうの言ってたが自分がする分にはかまわんのか? あ〜? 何とか言えや、こら! お前らは差別されるべき場所の生まれやけ、頭がおかしいんか?」

って感じでずっと蹴り続けてた。
でも、ここで再度予想外のことが起きた。

以下会話。

おじさん「ははははははははは」

俺「なんか気持ち悪い。いきなり笑い始めやがって!」

おじさん「あははははは。お前か、お前やったんか。はははは」

俺「まじ意味分からん、なんがおかしいんか?」

まだ蹴り続けてたけど、このときには蹴りは大分弱くなっている。

おじさん「ははは、やっと会えたわ。はははそりゃAも****やなー。ははは」
何を言っているのか意味不明。

俺「は? お前ら家族で俺をいじめようとしよったんか?」

この辺りで怖くなって蹴らなくなっていた。

おじさん「おい、お前がどうしようが勝手やけど、○(俺の名前)が痛がるぞ。アニキは許しても俺は見逃さんぞ」

俺「は? マジでお前んとこはキチ○イの集団なんか? おい?」

おじさん「○君、ちょっと黙っとき。おじさんが良いって言うまで黙っとき」

俺「いや、意味わから」

どーーーーーん


いきなり耳元で音が鳴った。

俺はビクってして振り返ったら目の前にのっぺりとした細面の顔が、血だらけのままピクピクしながら笑ってた。

俺はまた発狂した。
この顔の見え方がかなり異常で、通常ニンゲンの顔を見る場合に半分だけ見えるっていうのはありえない。
でもこの目の前の顔は、例えて言うとテレビ画面の中にある顔がカメラのせいで半分だけ途切れていて半分は見えている状態。

その瞬間、Aのおじさんに力いっぱい殴られて意識を失った。
――起きたときには俺は家の自分の部屋ではなくて、リビング隣の両親の寝室で寝かされていた。
時間を見たら20時。リビングからの明かりが漏れて両親が誰かと話をしている。

俺は起き上がり寝室のドアを開けてその人物を見た瞬間、すぐさま飛び掛った。
AのおじさんとAの叔母にあたる人がそこに座って両親と話してたから、それを見たらもう飛び掛ってた。

結局親父に抑えられてたけど俺は吼えてたと思う。
Aのおじさんは「ごめん、本当に悪かったね」を繰り返してたけど、どうしても許せなくて親父の腕の中でもがいてた。

母親がいきなり俺の頬をひっぱたいて「あんたも話を聞きなさい!」とか言い出してたけど、俺はもう親にまで裏切られた感じがして家を飛び出そうとして親父の腕から抜け出し自分の部屋に向かい、上着とサイフを取った。
が、上着を羽織ろうとしたとき、上着の腕の中に自分以外の手があった感触がして再度叫んだ。

両親とAのおじさん、Aの叔母さんがすぐに来て、叔母さんはブツブツ言いながらお経みたいなものを唱え始めて、おじさんは俺の服を掴んで踏み始めた。
親父は青ざめてそれを見てて、母親は一緒に手を合掌して俺を見てた。
このときはマジで自分が狂人になったのかと思った。

数分後、俺も落ち着いてきて、両親とAのおじさん、叔母さんと共にリビングへ向かった。
それまでの短い時間、Aのおじさんはずっと俺に謝っていた。
それからのリビングでの話は今でも忘れられないし、そこで再度起こったことも忘れない。
以下会話(Aのおじさん=Bさん、Aの叔母さん=Cさんとする)。

Bさん「本当に、殴ってしまってごめんな」

俺「いや、いいです。こちらも苛々してましたのですみません」

親父「ん? お前なんかしたんか?」

俺「いや、俺がBさんを殴ってしまった」

Bさん「あ、いやそれは俺が○君を見ていきなりお経とか唱えたから嫌な気がしたんやろ? ○君のせいじゃないわ。俺がいきなりすぎたんがいけんかったやから」

親父「申し訳ございません、それは聞いてなかったので」

俺「え? なんの話をしよん? 俺がBさんを殴ってBさんがいきなり」

ここまで言って俺は気絶前のことを思い出した。

俺「あれ? 俺気絶する前にナニカ見たわ……」

Bさん「うん、そやろな。俺は○君みてすぐに気づいてなぁ、何かおるって。それでお経を唱えたんよ」

母「大丈夫なんですか? 何かって何ですか?」

Cさん「えっとね、私らが住んどる地域がなんで裏S区って言われるか知っとる?」

親父「えっと、失礼かもしれませんが、差別的な意味ですよね?」
Bさん「それはそっちだけの認識やな。じいさん、ばあさんによう言われたやろ? 裏Sには近寄るなて」

親父「言われましたね。でもそれは部落差別的なもんやと思ってましたけど、違うんですか?」

Bさん「いや、そうや。そうなんやけど、差別があるけ言うても今も言い続けよるんは裏Sの歴史がちと異常なんや」

親父「いや、私も妻も生まれはS区やからその辺は分かってますけど、部落とか集落系での差別ってどっこも同じようなものでしょ? だから異常っていうのはわかります」

Bさん「はは。そうやろ? そういう風にとらわれてしまってるんやな。裏S区は部落やからってことでも他国のモンの集まりでもなく、昔からこの地域に住んでたモンの集まりなんや」

親父「はい。ただ、違いが私にはちょっと……」

母「あれですか? あの鬼門がどうのとかっていう話ですか?」

Bさん「ん? 鬼門の話か。まぁ、そんな感じなんやろうけど、裏Sにうちと同じ苗字が多いやろ?」

母「はい、多いですね。A君とことBさんの家は親戚やから当たり前やけど、それにしても多いですね。S区には全然いないのに裏S出身者では結構見かけますしね」
Bさん「あの辺は昔から霊の通り道って言われとんな。ナメ○○○(なんて言ったかは不明)とかそんなの聞いたことないですか?」 

親父「いや、名前はしらないですけど、聞いたことはあります」

Bさん「まぁ、その地域はそういう地域でして、うちらの家系はほとんどが霊感があるっていわれてたんですね。それが原因で発狂する奴もおれば、いきなり何するかわからんって感じでいつの間にかそういう集落、部落になっていき差別されるようになったんですわ」

母「でもそれやと裏S区はかなり広いからおかしくないですか? Bさんとこの家系だけで裏S区自体がそういう風にわかれますかね?」

Bさん「うん、わかれるんやろうな。最初は3、4の家のもんが発狂し始めて、でもそれが村中で始まって最終的に4、50件も起きれば、その周辺全体がおかしいって思われるやろうし、昭和の時代にそんなアホみたいな話を信心深く聞く人間が少なくなってきてるしな」

親父「それでも、それで部落になるんかなぁ」

Cさん「まぁ、うちらの家系ではそう教わっとるんです。だから生まれてきた子らには霊が見えるってことを前提に接しとる。見えん子もおるやろうけど、霊は居るって教えとるんですよ」

俺「いや、それと俺が体験しとるのとBさんの話と何が関係するんですか?」
Bさん「○君。最近Aの様子がおかしくなかった? いきなり学校休んでるのは置いといて、それ以外になんかおかしいことなかった?」

俺「最近っていうか、わからん。急に殴りかかってきたりしてたけど」

Bさん「急にか、なんも言わんかったか?」

俺「いや、急に。意味わからんし……あ! そういうことか。Aが急に異常になったってこと? 霊が見え初めて発狂し始めたんっすか?」

Bさん「いや、Aはまともや。でも何をすればいいかわからんかったよ」

俺「は? まともじゃないっすよ、あいついきなり殴り始めたし、しかも笑いながら。皆怖がって俺を助けようともせんかったし」

Cさん「○君、殴られたときに怪我するようなこと受けてないやろ? いや、殴ること自体は悪いことやから庇ってるんじゃなくてな。うちの家系での霊を見つけたときの対応は笑うことなんよ。やけん、異常者に見られることもあるけど、普通は無視してるんやけどな」

母「ってことは、○に霊が憑いてたってことですか?」

Cさん「うん、今も憑いてる。それと○君ベランダに誰か見える?」

俺「はい? なんですか? ベランダですか?」

ここで、俺は今日気絶する前に見たモノとは別のモノを見て発狂しそうになった。
Cさん「大丈夫。絶対ココには入れんから」

親父「え? なにがですか?」

親父には見えてないし、もちろん母にも見えていない。

Bさん「あ、いえ。それでね○君にはちょっと憑いてるんや」

俺「あ、あれか……飛び降りの奴見てしまったからか」

Bさん「いや、ちがうよ。あれは多分たまたま、本当に偶然。その偶然がベランダの奴で、でもそれ以外に憑いちゃだめな奴が憑いとる」

俺「え?」

Bさん「うん、それが憑いちゃだめなんよ。厳密に言うと霊とかじゃなく、うちの家系では××××って言うんよ。それを言葉には出しちゃだめですよ、すぐ移るから」

母「××××」

なんて言ったか忘れた……バラ? なんとかだったけど不明。

俺「!?」

母「これで私に憑いたけん、○は大丈夫でしょうか?」

Bさん「いや、そういうもんでもないけど、本当にそれは言わないでください」

母「息子が困るのは一番いやですから」

Bさん「多分、それをするともっと困ります」

俺「もう、やめていいよ。っていうかなんなん? 俺が霊に呪われててAはそれ見て俺をなぐってたん? でもそれはおかしいやろ。そんなんします? 普通。っていうか笑いながら殴ったらいいん? 霊が追い払えるん?」
俺はちょっと困惑してまくしたてた。

Cさん「ごめんね、そういう風にしか教えてなかったからやったんやろうね」

Bさん「お払いするときにはな、絶対に笑いながら相手を追い出すんよ。こっちは余裕だ、お前ごときって感じで。んで、憑かれてる者を叩くと憑いてるものが逃げ出すって感じなんよ。もちろんお経やったりお呪いやったりが必要なんやけど、あいつは見様見真似でやってしまったんやろうな」

俺「でも、あいつ蹴ったりもしたし」

Bさん「うん、それは行き過ぎやな。でもAが学校を休んでる理由は○君が怖いって。まぁ、○君に憑いてるものが怖いってことなんやけどな」

それから数分そういう話をした後、Cさんが御祓いをするための道具を駐車場に取りに行って、Bさんが俺を守る形で周りを見張っていた。

その後、準備が整い御祓いが始まったけど、今まで見たどの御祓いよりも異常だった。

神社のような御祓いでもなく、お寺のようにお経を唱えながら木魚を叩いてるわけでもない。
ただただ笑いながらお経を読んでる感じ……。
そのお経もお経という感じではなく、ブツブツブツブツを繰り返して小声でただ話しているような感じだった。
それから何度か手を叩かれたり頭を払われたりした。

それが終了し、Bさんが「もう大丈夫」と俺に言い、Cさんが「もう見えないでしょ?」と言うのでベランダを恐る恐る見てみたが何もなかった。

次の日から俺は普通通りに学校に行くようになった(ただエレベーターは1人で乗ることが出来ないためいつも親と一緒に乗っていた)。
ただ、この日Aに異常が起きたらしく、その日の夜に「Aが居ないんだけど○君の家に行ってないか?」という連絡がAの父親からあり、次の日からBさんやAの両親が捜索願いを出して探していたらしいが、家に「家出をする」といった感じの手紙が置いてあったので、家出人の捜索ということで警察が捜索をするということはなかったらしい。

Aの親が電話をしてきた理由は、その手紙に俺の名前が何個も書かれていたことが起因らしい。
俺は、霊が乗り移っていたという理由があったからといってAのことを許していた訳ではなかったので、どうでもいいと思っていた。

Aが行方不明になって3日目の朝、どーーーん! という音が聞こえて起きた。

俺はもうそんなことがないと思ってたから本当に汗がびしょびしょで、すぐ親の部屋に逃げこんで少し経ってから夢での出来事だったことに気付いた(というかそういう風にした)。
ただ、その日にAが飛び降り自殺をしており時間帯も朝方であったと聞いて、その夜から怖くて1人で寝ることが出来なくなった。

遺書が見つかっていることから自殺で間違いないようで、遺書の中に俺宛の部分があり

「ごめん、本当にわるかったね。多分俺らの家系は部落でちょっと頭がおかしい家系が多いんやと思う。自分の家系のせいにしたくないけどお前を殴ったのは本当に悪かった。ごめん」

って書かれていた。
それから翌日、夜にお通夜があるというので俺も両親とともに行ったのだが、俺はすごく嫌だった。
ただ親が「一応供養だけはしとかな変なことあったら嫌やろ?」と言うので仕方なく行くことにした。

お通夜もかなり変わっていて通常のお通夜みたいに遺影などがある訳でもなく、その代わり紙にAの名前が書いてあり、それを御棺の側面にびっしり貼り付けてあって近づくのも嫌になるような不気味さを漂わせていた。

Bさん曰く

「写真を置くと写真の顔が変形するんだよ。それを見るのに耐えれないほどの奇怪なモノだから、この地域ではこういうやり方でやるんだ。名前の書いた紙をびっしり貼ってるのはコイツはAだ、××××ではないんだ、っていう証なんだ」

とのこと(本当に意味不明、奇怪すぎる内容にひいた)。

そのときAの父親が俺に話かけて来て、「迷惑かけてごめんね」とAが家出したときに書いた手紙と遺書を見せてきた。
遺書の部分は上記の通りだが、このときは本当は見たくなかった。
Aが家出をした際に書かれた手紙には
「○(俺の名前)にあいつが憑いてたんだけど、ずっと俺を殺そうと見張ってる。おじさん(Bさんのこと)が○のあいつを御祓いしたからもう大丈夫って言ってたけど、あいつは俺に来たみたい。でもおとうさんはあいつを御祓いできないだろうし、おかあさんの家に行ってきます。行く道であいつがついてきたら他に行ってみるね」

とあった。

Aの両親は別居中だったためAは母親方の実家に向かったらしかったが、そのまま行方不明になったらしい。
ただ何故か警察は家出だと言って、行方不明というよりは家出人としてしか扱わなかったそうだ。

それは本当に見ない方が良かったって思った。
あいつとか書かれてるし意味も不明なので、その日までの現実離れした出来事がフラッシュバックして怖さで震えてきた。
Aの自殺した時間が朝方だったことも怖さを増して、ココには居たくないって本気で思った。
俺がおかしかったんじゃなく、こいつらが異常なんだって思った。

お経も無く変な平屋のような場所に棺桶が置かれているし、びっしりとAの名前が書かれた札を貼っているし、その挙句親戚の何人かは笑ってる。
韓国だかどこかで泣き子といって泣くだけの為に葬式に参加してるって奴がいるって気味の悪い話も聞いたことがあるけど、この集落に伝わる葬式も気味が悪いを通り越して異常でしかなかった。

うちの両親もさすがにこの状況は怖かったらしく、「もう、かえるか」と挨拶も早々に切り上げた。

それから数日後にBさんが両親に言ったのが、俺に憑いていたのはAのおばあさん(つまりBさんの母親)が××××になって(霊だろうけど、そうは言わなかったので)憑いてたとのこと。

もうそんな話はどうでも良いから聞きたくも無かったけど、聞いといてとのことなので聞かされた。
飛び降り自殺をしたニンゲンも裏S区出身者で、××××に追いかけられていたこと。
俺に取り憑いた理由はわからないが、以前Aの家に行ったときに憑いたのかもしれないということ。

そこで、俺も怖いと思っていたことを2つ聞いた。
1つ目はBさんに殴られる前に見た顔。
2つ目は飛び降りたはずの人間が階段に居て、下の遺体のもとに駆け寄ろうとしてたがアレは何なのか。
そうするとBさんは、2つ目については「死んだ人間は死んだことを分からないことが多い。だから下に自分が居たので取りに行こうとしたんじゃないかな」と。ただそこで邪魔をされると呪いをかけようとするとのこと。
ここで俺は邪魔をしてないと口を挟んだところ、

「お前、エレベーターを呼んだだろ? ”ピン”って音が邪魔なんだよ」

ってBさんの口調がかなり強い言い方に変わった。

本当に飛び跳ねそうになった。俺の両親もかなりびびってきてた。
Bさんはその口調のまま言った。

「お前なぁ、見ちゃだめだろ? 俺はいいがお前はだめだろ? 見んなよ、俺をみんなよ。なぁ? おい。聞いてるか? おい?」

って感じで。
さすがに親父が怒って

「何言ってんだ? 怖がらせてどうする!」

と言うとBさんがビクンってなって、

「あ、ごめんなさい。もうしわけない、ちょっと来てたので聞いてみようと思ったんです、もうしわけない」

って言い出して口調を戻した。
「見てはダメだったと言っても見たくて見たんじゃないから、もういいだろ? な」

と自問自答を繰り返し、その後俺に向かって

「もう絶対に大丈夫。本当に申し訳なかった。この亡くなった奴も××××に追いかけられていて、○君にのりうつってたあいつに怒ってしまって○君のとこに来たみたい」

とのこと。

1つ目の質問については、「それが××××」ということ(この名前はもしかしたら日本語とかでは無いか、もしくは方言なのかなぁとこのときに思った)。
そしてAのおばあさんが××××になってしまったということ。
でもAの父親が自分の母を消すのは心許ないとのことで御祓いを避けていたということ。
ただしAが亡くなってしまったため流石にもう腹を決めたらしく御祓いを昨日済ませたということ。等を聞いた。

そしてBさんが帰るということで、玄関で見送りをすることになった。
Bさんが玄関を出た直後に、いきなりBさんの笑い声が聞こえた。

「あはははははは。ははははは」

って。
俺はびくっ! ってなり膝から崩れた。
親父は「やっぱりあそこの連中はおかしいわ」と、怖さからかそれとも本当に怒ってるのか怒鳴る感じでそう言ってた。
母は「もう、あの人らに関わるのはやめようね」と言い出して涙目になってた。
あんな話をしてて笑いながら御祓いすると聞いてても、流石に家を出た瞬間にあんな笑い声を張り上げている奴を同じ人種とは思えない。

「あはははははははは」

と笑ってて、その声が聞こえなくなって初めて3人とも動けるようになりリビングに戻った。

俺が「あいつらはおかしいよ、絶対異常やって。っていうかあいつエレベーターで帰ったんやろうか?」と言ったら、親父が「あいつとか言うな、一応年上やろうが。はぁ、もう関わらんようにしとけ」と言って鍵を閉めに行った。

その直後、「はやくかえれ!!」っていう怒鳴り声が聞こえて心臓が止まりかけた。母親も「ひぃ」ってなってた。
親父が鍵を閉める前に夕刊が郵便受けに入っており、それを中から取ろうとしたら上の部分に引っ掛ってしまって外から取ろうとしたらしい。

そしたらBさんがまだエレベーターホールでニヤニヤしている。

親父はぶち切れてて「警察よぶぞ!」 とか言い出して(怖かったんだと思う)横の家の人とかも出てきて、Bさんは「え、い、いや、今帰ろうとしてたとこです。え? なんですか?」と言ってたらしい。
言った瞬間、またケタケタと笑い始めてエレベーターに乗って帰ったらしい。
親父が「塩まけ、塩!」と狂ったように塩をまいていたので隣人からしたら親父も異常に見えたかも。
たので隣人からしたら親父も異常に見えたかも。

その後、両親と一緒に有名な神社に行って御祓いを受けて家を引っ越した。
S区からは移動してないので同じ学校の地域だったが、俺は他の地区の学校に転入をしてもらいそれ以降は一切裏S区には近づいていない。

今は新S区と名前を変えているが地域性自体は変わってないようであり、従兄弟の通うS区の学校では未だに同和教育があり地域は言わないものの差別的なことが現実にあると教えているという。
しかしあくまで部落、集落への差別としか言わず、裏S区の事情や情報は皆無で、裏S区と呼ぶと教師が過敏に反応し新S区だ、と言い直したりとかもするそうである(これは九州特有の人権主義、日教組等によるものだと思うけど)。
Bさんに関しては一切関わりを絶っているため今はどうなってるかは不明。

うちの両親はこの事件までは裏S区に関しての差別意識は皆無だったが、その後はかなり毛嫌いしており、その地域の人達との関係をかなり制限している。
俺はそれ以降霊的な出来事は皆無だけどエレベーターだけは1人で乗れず、恥ずかしながら1人で寝ることも出来ないので妻にすごく馬鹿にされている状態。

終った直後の頃はトイレに行くときも親を起こして(高校生なのに)いちいち行ってたくらい心身が恐怖で埋まってた。
俺に関しては、裏S区の出身と聞くと差別というよりも恐怖だけが全身を駆け巡り話も出来なくなる。
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当時、というか今もなんだが、俺は廃墟とか好きだったんだよ。
その頃のスタンスとしては「隠れ家」とか「秘密基地」のノリで好きでさ(最近は廃墟美とかに興味を持ったのでちょっと今では違うスタンス)。

で、車で30分程走った所に地元では有名なホテルがあったんだよ。
なんつーかこう、プールとかウォータースライダーで有名なホテル。
そこでもまあ友達数名と探索したり、時にはホテル全体使ってかくれんぼとかしたりしてさ。

で、そのホテルの一室に俺らのたまり場? みたいな場所があるんだよ。
ただの部屋なんだけどね、宿泊用の。ちょっとそこだけ広かったから、いいね、いいねえ! とかなんとか言いながらそこで休んだりしてた。
断っておくけど決して荒らしたり壊したりはしなかったな、せいぜい部屋の灰皿を数回使ったくらいで。まあ休憩所にしてたんだよ。

そんなある日の晩。
たまたま友達がみんな予定あったりして、なんとなく1人っきりで暇をもてあましてたんだよ。
でもまだ8時ちょい。寝るにも早いし、じゃあちょっとドライブでも行こうって思ってさ。
そこで俺が暇つぶしの目的地にしたのがそこのホテルだったんだよ。

風呂入って支度したりしてから出発……で、ホテルに到着したのが9時。

夜に来たことも無かったし1人で来たことも無かったから、いつもよりちょっと妙な雰囲気が漂ってたんだ。
こう、空気が重いっつーかねっとりしているっていうか、とにかく普段とは違う感じ。
それでも平気だった。俺自身怪談とか聞くのは好きだけど幽霊とか信じてなかったからね、なんとも無かったんだ。

階段を上がって「いつもの」部屋。
ちょっと俺等が掃除してたから、そこの部屋だけは廊下や他の部屋よりもマシだったし落ち着けた。
タバコなんか取り出して窓から外を見てたら、山の中だもんで星とか凄く見えるんだよ。
ほうほう、これは綺麗なもんだ、とか感心したりして。

知ってる星座とかを探しつつボーっとしてたら、その静かな中を急に物音と声がしたんだ。
遠くから聞こえてるっぽい音……。

よくよく聞いたら廊下を数名で走ってる音なんだよ。
ばたばたって音に混じって「キャー」とか「わあー」とか言う声。
結構有名な場所だったから、誰かが肝試しに来たんだろうなあって思った。
あんまりにも普通の生々しい音だったしね、怖くなかったんだ。

俺はちょっと驚かしてやろうと思って、シーツ片手にその音がした上の階の廊下に向かったんだ。
どきどきしながら「驚いてくれなかったらどうしよう」とか思いつつ階段を上がりきり、廊下を覗き込んだ。

(……誰もいない、まさか)

超はっきり音したのに! うわああこええええ! とか思ったその矢先。
「キャー」


ばたばたばた……


音は自分の足元、下の階の廊下からしたんだ。

(何だよ、下の階に行っただけかよ)

確かに客室の廊下には両端に階段があるから、すれ違わなくても当然だな、と冷静になって下の階に戻ったんだ。
そうそう、そのいつもの部屋にタバコとジッポも置いたまんまだったし、それをパクられても嫌だなってのが大きかった。

部屋に入ってタバコとジッポを取り、奴らを探してみたけどやっぱりいない。

(もう出ちゃったのかな、つまんねえ)

俺はそのまま、また部屋に戻ってタバコをふかしながら耳をすませてたんだ。
もしかしたらまだいるかもしれないって思ったから。
その研ぎ澄まされた耳に入ってきたのは爆音の携帯の着メロ。

俺「ひい」とか声出しちゃって、予想外すぎて凄くびっくりしたから。
出てみたら友達の1人だった。なんでも、そいつの予定が思ったより早く終わったから遊ぼうぜとかなんとかって。

電話しながら「俺いまあのホテルにいるんだー、1人で(笑)」とか調子こいて言ったら友達はびっくりしてた。
はあ? 嘘だろ? って。
あんまり疑うからいやいや、暇だったからドライブがてら来たとか言ったら

「どうせ誰かと遊んでるんだろ? だって声とか他の足音とかするし」

はあ? 俺には意味が分からなかった。
1人で廊下歩いてるだけだし、靴音とか反響してないし、誰も話してないつーか誰もいないし。

これはあんまりにも程度の低い嘘だなって思った。
普段怖がったりしない俺を怖がらせようと必死すぎるわとか思って食い下がったけど、違う。
友達の様子が明らかに違う。むしろ怖い(リアルに)のはその友達だった。
そんなに怒らなくてもいいじゃん、くらいに怒ってまくし立てる。

「いいか、そういう時ってよくわかんねえけど後ろ振り向いたらダメとか言うから後ろ見るな。で、なるべく早くそこから出ろ。むしろ走れ!」

あんまり強い口調で言うからなんとなくそうしなくちゃいけない気になって、俺は携帯の電源を切って走りだしたんだ。
久々に走った、超ダッシュ。
そしたらその走り出した俺の後ろから本当に足音がするんだよ!
それが靴の音なんかじゃなく、床を裸足で走ってる音みたいな音。

ぺったりぺったりぺったり……

もう無理、音とかリアルすぎて無理。
後ろ5メートルくらいに絶対いるっていう音がしてるんだ。

叫びだしそうなのを抑えて、やっと外の駐車場の車に乗り込んだ。
エンジンかけて車出して、軽自動車とは思えないくらいの速さでその駐車場を出たんだ。

(ふう、もう大丈夫だろ。うわああ怖かったああああああ!)

こういう時ってあんまりにもありえなさ過ぎてちょっと笑うのな。ふはは、超こえええええ! とか叫んで。
でも気持ちはまだ落ち着かない。

とりあえずポケットからタバコ出して火をつけて窓を開けた。
ああ、良かった。もうちょっとしたら友達に電話しよう。大丈夫脱出できました大佐! とかふざけてやろう。何でもなかったように。
窓を全開にして風を浴びる。さっきまで走ってたから汗とか凄いし。

と、何かおかしい。変な音がする。
車イカれたかな? とか思ったんだ。すんごいダッシュで車出したから。
もう一度耳をすませたら、それは窓の外から聞こえてきたんだよ。

ぺたぺたぺたぺたぺたぺた……
もうダメ、もう無理。さっきより超速い、ぺったりなんて悠長じゃない。
あのローラーに足がついててころころ回すと走ってるみたいに見えるペンギンのおもちゃとかあるじゃん? ああいうのを思い浮かべるくらい超速い。

ぺたぺたぺたぺたぺたぺた……

しかもぜんぜん音が遠ざからない。
すぐそこで距離を維持してるっつーかむしろ徐々に近づいているくらい。

やばいやばいやばい! どうしよう! って思った頃にはもうその音が窓のすぐそこ。
顔を右にちょっと曲げたら見えるくらいの距離っぽい感じ。
ぺたぺたいう音に混じって「はあ、はあ……」って声まで聞こえてきた。

うわあああああ! いる! 絶対いる! 何かいる!
あわてて窓を閉めようと、あまり体を動かさないように(バレないように?)窓のスイッチに手を伸ばしたら

ぎ ゅ む ぅ っ 

って肩をつかまれた。掴まれた。

ぎぃやあああああ! 掴んでる掴んでる! なんで離してくんないの? 勘弁してよ! まだ掴んでる掴んでる!
あんまりにもパニックになって俺は急ブレーキを踏んだんだ。

――目を開けたら、なんでもない道路がそこに広がっている。
もちろんその肩を掴んだらしきものはどこにもいない。
(助かった、助かったあ……!)

恥ずかしいけどこの時俺ちょっと泣いたもんね。
鼻思いっきりかんでから、物凄い速さで友達の家に向かった。
窓はぴったり閉めたまんまで、早く誰かに話したいって思った。

友達の家に行ったら、とりあえず塩とかかけてくれたりしたんだ。
んで、今まで起きた事とか話してさ。
普段幽霊とか信じてない俺があんまり真剣に話すからちゃんと聞いてくれたよ。

「な、幽霊とか馬鹿にできねえだろ。まあ早く忘れろって」

って友達が手を肩に置いたとき、チクッとしたんだよ。肩が。
……そう、右肩。さっき掴まれた右肩。

あれ? 何だ? って思って上着脱いだら、下に来てたシャツの右肩に血が滲んでんの。
もう気を失うかと思った。本当にふらっときた。

「おまえ、それどうしたんだよ……どこかにぶつけたわけじゃないよな?」

友達が微妙な距離を保ちつつ、オロオロしながらこっち見てる。

「いや、別に……」

血の滲んだシャツを脱いで肩を見てみることにした。

肩を見るとちょうど左手で掴んだ跡みたいに右肩の皮が擦り切れてて、っていうかちょっと火傷みたいに真っ赤になってて薄皮が擦れてんの。
目の錯覚かと思ってティッシュで拭いたりしたけどやっぱり手の形。
これがまた霊の仕業だからって次の日消えてたってわけじゃなくて、普通に怪我したみたいに数日消えなかったんだ。
その後日、別な友達にも見せたりできるくらいの期間残ってた。

とりあえず「幽霊あんまり信じない派」の俺が体験したのは以上。

今でも信じてない。
いや、もしかしたらぺたぺたいう音だって他に原因があったあもしれないし、手の跡っていう決定的な証拠だって、急ブレーキを踏んだからシートベルトに擦れてそうなったのかもしれないし。

でもそういう要因全部が一度に起きる確立ってどうなんだろうな、と。
幽霊とかなんとかそういうのはいるかいないかってのは俺にはわかんないけど、とにかく、ごく希に「不思議」で「怖い事」が起こるのは事実みたい。

くれぐれも遊びとか暇つぶしにそんなところに行かないように。
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糞スレ