1 無名さん

怪談コピペスレ

便乗
2 無名さん
糞スレ立ててるDTのサイト
http://arasi32.bbs.fc2.com/
3 無名さん
>>2お前あらしたんやったの?
╔╗╔╦══╦╗╔╦══╦╗╔╦══╗ 
║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║ 
║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║ 
╚╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╝ 
╔╗╔╦══╦╗╔╦══╦╗╔╦══╗ 
║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║ 
║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║ 
╚╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╝ 
╔╗╔╦══╦╗╔╦══╦╗╔╦══╗ 
║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║ 
║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║ 
╚╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╝ 
これは実際に友人が遭遇した話で、その場所はついに教えてくれませんでした。
実際に彼の友人が2人死に、彼も警察にしつこく尋問されたそうです。

彼がバイト先の友人6人と、中国地方の某県某所の吊り橋にドライブに行った時の事です。

その日、彼らは車2台に分乗し出かけたそうです。彼は後ろの車のドライバーでした。
前の車にはバイト先の店長と、彼らのグループ内で公認の(親さえ公認の)カップルが、後ろの車には残りの彼を含む4人が乗り込み、彼はドライバーだったそうです。

朝から出発したにも関わらず、途中でいろいろ寄り道をしたおかげで、目的地の吊り橋に到着したのはもうすっかり日も陰った夕闇時だったそうです。

山の中の深い谷に架かる吊り橋。
吊り橋が近づくと小雨が振り出し、うっすらと霧もでてきたそうです。
吊り橋の手前は広場になっており、晴れていればそこに車を止めて歩いて吊り橋を渡り、帰ってくるはずでした(吊り橋の向こうは当時から行き止まりになっており、この吊り橋は観光用に残されたものらしいです) 。

ところが、広場まで来ると前の車が急停止したそうです。

「……?」

10メートルほど後ろで2台目の車に乗っていた4人は、何故店長が車を止めたのか分からずに暫く固まっていたそうです。
しかし一向に動かす気配も無いので、彼が様子を見に行こうとドアを空けかけた瞬間。
前の車の後席に座っていた友人のカップルが車から飛び出してきたそうです。

彼も驚いて車から降り、「なんかあったんか?」と叫んで近づこうとしたその時、2人は手を繋いで凄い勢いで走り出し、そのまま広場の端のガードレールを飛び越えて谷に身を投げてしまったのです……。
彼らは驚いてガードレールまで駆け寄り谷底を見ましたが、霧で何も見えなかったそうです。

呆然自失していた彼ら4人は我に返り、前の車に乗っていたはずの店長の様子を見に車まで戻りました。

店長は運転席でハンドルを手が白くなるまでしっかり握り、小声でぶつぶつと

「行っちゃだめだ行っちゃだめだ行っちゃだめだ行っちゃだめだ行っちゃだめだ」

と呟いていたそうです。

とりあえず、彼らは警察に通報しました。
警察はすぐに到着し、すっかり正気をなくした店長は救急車で運ばれたそうです。

その後、2人は当然ですが死体となって発見されました。
彼らは警察にしつこく尋問されましたが、結局、自殺(心中?)という形になったそうです。

その後、店長の見舞いに行った彼は、店長にあの時なにがあったのか聞いたそうです。

店長が言うには、あの時、突然車の前に古風な着物を着た女の子が霧の中から現れたそうです。

(危ない!)

と思って急ブレーキを踏んで車を停止させると、まるで時代劇か明治のドラマに出てくるような格好をしたおかっぱ頭の女の子で、なぜか笑っていたそうです。
こんな所に……? と思うより先に不気味に思い、逃げるか? と思った時、車の周りを同じ様な格好をした子供達に囲まれていることに気づいたそうです。
子供達に囲まれていることに気づいたそうです。

(うわっヤバイ)

と思った店長は、とっさにお経を口の中で唱え始めたそうです。
車を囲んだ子供達はそのまま手を繋ぎ歌いだしました。

「か〜ごぉめぇか〜ごぉめぇ、かぁごのなかのとぉりぃはぁ……」

その時、店長の頭の中に子供の声が

“おいでよぉ、おいでよぉ、おいでよぉ”

と響いてきたそうです。
そこで店長は

「行っちゃだめだ行っちゃだめだ行っちゃだめだ行っちゃだめだ」

とハンドルを握りひたすらお経を唱えたそうです。

その時、後ろの2人が突然車から降りると、子供達と手を繋ぎ、子供達と一緒に走りだしたそうです。
ガードレールの向こうへ、崖に向かって……。

「こんな話、警察は信じてくれねーしよお。俺だって、もうあれが本当かどうかなんて自信ねーよ」

と、店長は最後に彼に言ったそうです。

その話を一緒に聞いていた別の友人が、「またー、よくできた作り話だなあ」と茶化すと、彼は一言

「本当だよ、○○と××はそれで死んだんだ」

と言いました。
僕も、本当だと思います。
╔╗╔╦══╦╗╔╦══╦╗╔╦══╗ 
║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║ 
║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║ 
╚╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╝ 
小学校の頃の話です。
俺が行ってた小学校の側に竹林があって、そこには怪しい人が出るから行っちゃ駄目ですって言われてたのね。

俺は結局行かずじまいやったんやけど、結構周りは行ってる人が多くて、みんな「変な小屋があって浮浪者が住んでる」とか「小屋があって扉がどうしても開かない」とか、まあ要は木造の古い小屋が一つぽつんとあるってみんな共通して言ってました。
何時の間にかその小屋に行った、という事実は「勇気のある奴」のステータスみたいな感じになって、悪ガキ連中はみんな行こうとしてた記憶があるっす。

んである日、Oって奴とUって奴が二人で「行こう」って話になったらしいのね。両方一応友達だったんだけど。
まあ行く奴はもうみんな行ってて、今更行くのは言わば遅れ馳せながらって感じやったんやけど。

放課後やったかなぁ? 記憶あいまいでスマン。
とにかく放課後二人して行ったらしいです。つーか行きました。
この辺は後で人づてに聞いた話と俺の想像。

とにかく小屋に向かった二人は、深い竹林の中を例の小屋を捜して歩きます。
遠目には小さい竹林やったのに、ちょっと入ったらすごい暗かった記憶があります。あれは不思議やった。

そんで二人、小屋は例のごとく発見したらしいです。
んですぐ入ってみようって話になったんやと。

木造の扉を開けて中に入ったんですが、先に入ったUが「うわ、やべ!」って思ったらしいです。
中で人が首吊って死んでたんやと……。

そんでどうしよとか思ってたら、突然後から入ってきたOがすごい声で叫び出したらしいです。

「お母さん!!」

って。
叫び続けるOを置いて、Uはダッシュで逃げたらしいです。

そん時俺は学校のグラウンドでみんなとドッチボールか何かやってて、そこへUがダッシュでやって来たんすよ。
グラウンド越しに見える竹林の方角から、めっちゃでかい声で

「Oのおかんが死んでる!」

って言いながら。あん時は凍りました。

その日はすごい騒ぎになったと思いますがよく覚えてないっす。
とにかくOはその日から学校来なくなって、そんで結局一度も顔出さないまま転校して行きました。

ここまでは記憶の限りマジ話。多少の間違いはあると思うけど。
問題はここから。

ありがちな話っす。「あの小屋に幽霊が出る」って話になるんすよ。
その自殺以来本当に行く奴はめっきり減って、みんな行きもしないのにキャーキャー言ってました。
まあ俺もそうか。
当時物知りの方だった俺は、首吊り死体がすさまじい状態になるって何かで知ってたので、それを詳しくみんなに話してました。おもしろ半分に。
みんなまたそれを聞いて騒ぐわけですよ、「首吊り女の霊が出る」って。

そんである日、また別の友人Sに誘われたんすよ。
「お前、そんなに霊に詳しいんやったら見に行かん?」て。
俺はビビリだったんで速攻断ったんですが、後で話を聞かせてもらう約束はしました。
Sは結構仲間内でも悪い方で、奴なら本当に行くと思ったので。
そんで、何人かで本当に放課後例の小屋を見に行ったらしいです。

ありゃ? 書き込めん。

次の日。
学校に行った頃には俺はもうそんな話すっかり忘れてたんですが、Sがその日すんげー暗かったのね。いつも騒いでばかりの問題児が。
それで俺も昨日の事思い出して、「本当に行ったの?」って聞いたんすよ。
そしたら「うん」ってそれだけ。

いつもなら自分から、がーって喋るはずのSがすごい大人しかったんで、「これはマジで出たか!?」って思ってその日一日Sにべったりくっついて根掘り葉掘り聞いてたんですよ。「昨日小屋で何があったか」を(今考えると嫌なガキだな)。

ところが、何聞いても教えてくれない。
「何か見たの?」には「うん」って言うけど、「何を見たの?」は答えてくれない。
例えハッタリでも、「すごい顔した女の幽霊見た」とか言うじゃないですか?
俺はもう「Sは本当に幽霊を見たんだ」って思って興奮して、「どんな幽霊か、どんな感じしたのか」って結局放課後までずっと聞いてました。
そしたら遂にSが、「誰にも言うなよ、そんであそこには絶対行くな」って言い出しまして。
そん時俺がどんなに嬉しかったかはわかると思います。

Sが言ったのは一言だけです。
「扉開けたら中にすげー声で叫んでるOがいた」って。
オチらしいオチはありません。

Sはその後二度とその話はしてくれないし、俺もおもしろ半分で人に怖い話をする事は減りました。
小屋のあった竹林は潰されて、今は筆ペンを作る工場が建ってます。
転校していったOがその後どうしてるかは誰も知らないし、俺は一回だけ見せてもらったOの妹の顔を時々思い出すだけです。

これが俺が小学校の時あった洒落にならない怖い話です。
多少脚色は入ってますが、大体事実です。
何か怖い話を求めてたみなさん少しは満足されましたか?
<後日談>

あの話、大筋は実体験込みの実話であると述べましたが、今回ちょっとマジで洒落にならない経験をしたので合わせて投稿します(誰か嘘だと突っ込んでくれ)。

先々週末、お酒を随分飲んで帰る機会がありまして、その日普段と違う帰り道を夜中べろんべろんに酔って一人で歩いて帰ったんですよ。
その道は僕が通っていた小学校の裏道に当たり、もうかなり長い間使った事が無かったんですよ。

すると、川を挟んだ向こうには工場が建っていました。
あの竹林の跡地に……。

工場が目に入った瞬間、ちょっとぶるっと来ました。
何しろあの忌まわしい事件の顛末を、事もあろうに2ちゃんねるに書き込んだという前科が自分にはあったので。
考えないようにしていたのですが、何の気まぐれか、もう絶対通らないと決めていた道を通ってしまったんですよね。

もうすっかり暗くなって工場の外灯の薄暗い光しか見えない。
そこで僕は見てしまったんですよ。あの竹林が潰されずに残っているのを。
十数年前のあの事件以来、友人の忠告通り竹林には行かず、傍を通る事すら無かったんですよ。
それでどうやら記憶が勝手にねじまげられていたようです。竹林は無くなってなどいなかった……。

普通の状態なら速攻ダッシュで逃げてたんでしょうけど、何しろ酔ってましたから。変な使命感もあったんでしょうなぁ、馬鹿だ。
向こう岸に渡れる古いコンクリートの橋があって、何を考えたか渡ってしまったんですよ。竹林に行くために。
小学校の時みんなが肝試しに使っていた竹林。僕自身は初めて来ます。
あの事件の前にちょっと遠目に見た事があるくらいでした。
大人になった今、外から見ると随分小さく見えました。
竹林を囲むようにびっしりと緑色の壁が覆っているように見えていて、近くまで寄ってそれが周囲に配置されたフェンスに群生するシダのような物だとわかりました。

足はふらふらでしたが、僕はフェンスをさっくり乗り越え竹林の中に入りました。何かに魅入られていたとしか思えないっす。
やたら草が茂っていて中は真っ暗でした。
それでとりあえず工場の外灯に向かって進みました。

すると、すぐ傍に小屋がありました。外からはまったく見えないのに……。
さすがに足は止まりました。本当にあるとは、そしてまだ残っているとは。

(ここでOの母親が……)

無意識のうちに手を合わせました。
そして止せばいいのに小屋に入ろうと思ってしまったのですよ。
あの話を不特定手数の人に話した(書いた?)、最早まったくの部外者とは言えない、すっきりするためにも自分は中を確認する必要がある。そう思って……多分、いや酔っ払いはそこまで考えないですか。

扉は横引きの木戸で、鍵はかかってない(そもそも本当に小屋がボロい)のに妙に重かったです。
一気に引いて中を覗き込みました。

小屋の中は真っ暗で、最初は何も見えない。
僕は小屋の中に入り、すぐに何かにつまずきました。
倒れこそしなかったものの、よろよろとそのまま小屋の中奥深くにまで進んでしまいました。あちこちで何か硬い物が足に当たります。

しばらく何も見えなかったんですが、目が慣れるに従って、僕は小屋の中そこかしこにびっしりと林立する異常に大量の地蔵がある事に気がつきました。

地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵地蔵

心臓が止まりそうになりました。

一瞬地蔵が全部こちらを見ている! と思って腰を抜かしそうになったのですが、彼らの視線は小屋の中の違う一点で結ばれていました。

何がある!? と思いそちらを見ましたが、その空間には何もありません。

ただ、その空間の上方。少し目を向けるとそこに小屋を貫くようにまっすぐの長い梁が存在し、それは人一人くらい簡単にぶら下げられそうなくらい太く、僕はそこに「何があったのか」を容易に想像する事が出来て……!
酔いと悪寒で吐き気が込み上げ口元を抑える僕の耳に、はっきりと「おかあさん?」という小さな声が聞こえました。
思わず振り向くと、小屋の入り口、入ってすぐの所に立っているのは紛れも無く当時と変わらぬ姿のO、その人!

Oはまん丸の目をキュッと音が聞こえそうなくらいはっきりと歪め、そして……理解できたのです。彼が、すげー声で叫んでるOが、次の瞬間に叫び出そうとしているのが。

竹林からどのように抜け出たかはよく覚えていません。
気がついたら吐きながらいつもの帰り道を全力で駆けていました。
それが二週間前? の事です。腕とか傷だらけっす。

だいぶ悩みましたが多分勘違いか夢だろうと思ったのでここに投稿して全部無しって事にする事にしました。
南無……もう忘れます。誰か理性的な突っ込みを下さい。本当泣きそうでした。

ここ最近……、じゃ。ごめんなさい、本当ごめんなさい。
╔╗╔╦══╦╗╔╦══╦╗╔╦══╗ 
║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║ 
║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║ 
╚╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╝ 
これは私がまだ中学の頃の話なんだけどね。

私の通っていた英語の塾っていうのが、家から自転車で10分足らずの所にあったのね。
その塾は普通の学習塾とかと違って、昔教師をしていたおばさんが自宅でやっている様な小さなもので、でも教え方が上手で、私は英語が好きになり、おかげで英語の成績はいつもクラスでトップだったんだ。

で、その日もいつもの様に仲良しのYちゃんと一緒に塾を出たのが午後9時過ぎだった。
いつもより少しだけ遅かったっていうのは覚えてる。
塾を出て少し右に行った所に自販機があって、二人でジュース買って飲んでたの。

しばらく話していると、Yちゃんが急に黙りこんだの。

『どうしたの?』

私が訊くと、Yちゃんは、

『しーっ……後ろ見て……?』

って、声を押し殺してそう言ったのね。
私は恐る恐る後ろを見てみた。

すると、向こうの方からボロボロの服を着て、古い自転車をありえないほどゆっくりなスピードで漕いでいる男の人が向かって来てた。

普通に漕いでたらあんなにゆっくり進まないよなーと不思議に思ってたんだけど、とにかく、不気味極まりないその男が通り過ぎるのを二人してじっと待ってたのね?
そして、目を合わすまいと後ろを向いていた私達の背中を、ギィコ……ギィコ……と自転車が通り過ぎて行った。

しばらくして、自転車の音が遠くに行った事を確かめて、ふぅ、と二人して顔を見合わせて溜め息をついて、ふと振り返ったの。
振り返った瞬間、心臓が飛び出るかと思ったよ。
だって、通り過ぎて行ったはずの男が真後ろに立っていたんだもの。

私達は声にならない叫び声をあげて、咄嗟に手を繋ぎ、とにかく走り出した。

逃げなきゃって、もぅ何が何だか、怖いのと不思議なのとで訳が分からなくて、とにかく走って逃げたのね。
自分達も自転車があったのだけど、乗るよりも逃げなきゃっていう気持ちの方が先にあったから、自転車ほっぽってとにかく走って逃げたのね。

で、丁度自販機があった所の真裏くらいに小さなスーパーがあるんだけど、気がついたらそのスーパーの前まで来てたのね。
そのスーパーってちょっと変わった地形? に建ってて(急な坂の途中に無理やり建てた様な感じ)横に鉄製の階段があったの。
昇れば上の道に出られるのは分かってたから、私達は迷わずその階段をかけ上がった。

が、途中で足を滑らせてしまって(と言うより誰かに足を掴まれた様な感じがした)、二人手を繋いだままズルッて階段を滑り落ちてしまったの。

その時、初めて後ろを振り返った。

……あの人はいなかった。

私はYちゃんに『あの人ついて来てないみたい……』と言うと、ホッとして再び階段を昇っていった。
『ぎゃあっ!!』

階段の上にいた! 私達を覗き込む様に、ニュッと首を下げて。
男は無表情だった。笑いを浮かべている訳でもなく、なんだか蝋人形みたいに。

その驚きで再び階段を滑り落ちてしまった……。
逃げなきゃと思ったけど、コケた拍子に膝を打ったみたいで力が入らない。

もう駄目か……と思った。

と、階段の上を見上げると、その男はいなくなってた。

あれは一体何だったのか、パッと見、ホームレスの様だったけど、私の家近辺でそういう人がいる事はなかったし(田舎なので)。
だけど、人間ではなかったんじゃないかな……って思う。

だって追い越された記憶がないのに、その男は先に階段の上にいたんだからね。

で、その日は塾の先生に言えば心配するだろうから(今みたいに変な事件が多発していなかった昔だったし)父に電話して迎えに来てもらって帰ったの。

帰って見れば、膝は擦り傷でボロボロ。
そして何故か、足首には掴まれた様な跡が赤くなってついてた……。

あれは一体何だったのか、謎です。
╔╗╔╦══╦╗╔╦══╦╗╔╦══╗ 
║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║ 
║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║ 
╚╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╝ 
最初にそれが起こったのは今から3年前。私が高校2年の時でした。

学期末のテストを控え、その日は深夜までテスト勉強に追われていた私。
多分、何かの問題集をやっていた時だったと思う。ちょうど1ページが終わって、自己採点しようと机の隅に置いてあった赤ペンに手を伸ばした。

カツン、カラカラ……

軽い眠気に襲われていた私は、うっかり赤ペンを床に落としてしまった。
静まり返った室内に、いやに乾いた音が響いた。

私は軽く舌打ちしつつ、赤ペンが転がったであろう方向に身をかがめた。

「?」

でも、赤ペンはなかった。
こういうの皆さん経験ないですか? 落ちたものが消えるって。

私は今度は強く舌打ちして、部屋の床を這うように赤ペンを探しました。
けれども赤ペンはどこにもありませんでした。

「なんだよ」

ついに声に出して、私は赤ペンを諦めて寝ようと思い、布団の敷いてあるロフトへと、梯子型の階段を上りました。

「……!」

ロフトの上には、さっき床に落としたはずの赤ペンが、ポン、と置いてありました。
めちゃくちゃに変形して。

でも、それを見た私は全く怖いとは感じず、むしろ「ここかよ!」と突っ込みを入れたくらいでした。
翌朝。一睡して冷静に昨晩のことを思い出すと、なんとも言えない恐怖感が襲ってきました。
なんで床に落ちたものがロフトに? なんで折れ曲がってるの? “折れ曲がってる”?

昨日の赤ペンをもう一度手に取った私は、気付いたのです。
このペンはプラスチック製。それを折り曲げようとすると、普通なら折れてしまうはず。
にもかかわらず、このペンは……ぐにゃり、としか言いようのない、まるで飴細工のような変形をしていたのです。

気持ち悪くてそのペンは捨てましたが、その日のテストは散々でした。

それからしばらくは特になにがあるわけでもなく、私はその「赤ペン事件」を、そんなこともあるさ、と気にしないようにしていました。

そんなことも忘れていたある日、2回目の事件が起きました。
その日は学校でいやな事があり、私は家に着くなりただいまも言わずに部屋に飛び込みました。
そしてポケットに入っていたタバコをつかむと、思いっきり部屋の壁に投げつけました。

10秒くらい後かな。私は違和感に気付いた。そして嫌な汗がどっと溢れてきました。

(……音がしない)

あんなに力いっぱい投げつけたのに? タバコは?
私は数ヶ月前の赤ペンを思い出し、反射的にロフトの階段を駆け上がりました。

やっぱり、というか案の定タバコはロフトの上にありました。
まったいら。言葉のあやじゃなく、本当に紙のようにひらひらに変形したタバコが無造作に投げ出されていました。

急いでそれを丸めて捨てると、私はタバコが当たったであろう壁に手を当てました。
ただの壁でした。
その日から、ソレは頻繁に起こるようになった。
消しゴム、画鋲、眼鏡。
消える物に規則性はないし、消える「位置」もそれぞれ違う場所だった。
でも、それらのものが必ずロフトに出てくること、そして何らかの形で変形している点は共通していた。

もちろん親には言った。
でも、当たり前だがあまり取り合ってもらえなかった。

そのころから、私は1つの恐怖を感じていた。

(もし、次に消えるのが自分だったらどうしよう……)

その場合も、やはり私は変形して出てくるのかな。そんな恐怖だった。

そんな時、最後の事件が起こった。

その日は親戚のおばさんが遊びに来ていた。多分、日曜だったと思う。
おばさんはやっとハイハイが出来るようになったくらいの、2人目の息子さんを「披露」しにきてたんだ。
私は、私の母と、そのおばさんと3人で居間で話してて、赤ちゃんは、そのお兄ちゃんと廊下で遊んでた。

そのうち私たち3人は、というかおばさんと母は、すっかり話に夢中になってしまった。
私は話に入れてなかったけど、中座するのも気まずいと思って、なんとなく座ってた。

その時だった。

「ぎゃああああああぁぁっぁぁあっぁ!!」

突然物凄い赤ちゃんの泣き声が、ほとんど絶叫に近い泣き声が響いた。
その日から、ソレは頻繁に起こるようになった。
消しゴム、画鋲、眼鏡。
消える物に規則性はないし、消える「位置」もそれぞれ違う場所だった。
でも、それらのものが必ずロフトに出てくること、そして何らかの形で変形している点は共通していた。

もちろん親には言った。
でも、当たり前だがあまり取り合ってもらえなかった。

そのころから、私は1つの恐怖を感じていた。

(もし、次に消えるのが自分だったらどうしよう……)

その場合も、やはり私は変形して出てくるのかな。そんな恐怖だった。

そんな時、最後の事件が起こった。

その日は親戚のおばさんが遊びに来ていた。多分、日曜だったと思う。
おばさんはやっとハイハイが出来るようになったくらいの、2人目の息子さんを「披露」しにきてたんだ。
私は、私の母と、そのおばさんと3人で居間で話してて、赤ちゃんは、そのお兄ちゃんと廊下で遊んでた。

そのうち私たち3人は、というかおばさんと母は、すっかり話に夢中になってしまった。
私は話に入れてなかったけど、中座するのも気まずいと思って、なんとなく座ってた。

その時だった。

「ぎゃああああああぁぁっぁぁあっぁ!!」

突然物凄い赤ちゃんの泣き声が、ほとんど絶叫に近い泣き声が響いた。
悲鳴は私の部屋からだった。
私たち3人がかけつけた時、上のお兄ちゃんがきょとんとして1人でたちすくんでいた。
おばさんはお兄ちゃんの肩をつかむと「しんちゃんは!? しんちゃんは!?」と、半狂乱で繰り返していた。

「しんちゃんね、消えちゃったの! 急に!」

私はその言葉を聞き終わらないうちにロフトに駆け上がっていた。
物凄く長い階段に感じたのを覚えてる。

(人の形をしてますように……)

今思えば、物凄く怖いことを祈っていた。

そして赤ちゃんは、やっぱりそこにいた。
私の心配をよそに、気絶しているものの、赤ちゃんはどこも変形していなかった。

その時は心から安堵したのを覚えてる。
やっぱり生き物は例外なんだ! と思った。

「しんちゃん!」

私は赤ちゃんの手をつかんだ。その瞬間。


ぐにゃり

赤ちゃんの手が、ありえない方向に曲がっていた。

その後のことはあまり覚えてない。多分呆然としてたんだと思う。

実は新ちゃんがその後どうなったのかもわからない。
その事件以来、おばさんが訪ねてくることはなかったし、何よりうち直ぐに引越したので。
ただ、事件から何日かして、私が掴んだ新ちゃんの右手は「粉砕骨折」とだけ聞いた。

ここでもう一度聞きたい。あれはなんだったのか。

私は怖いです。あれ以来、もうそれは起こってないけど、いつかまた同じことが起きるんじゃないか。
それまで当たり前の床だったところが、突然口を開けて私を飲み込むんじゃないか。

そうしたら、私はどこから出てくるのだろうか。
次もまた人の形をして出てこれるだろうか。私は怖いのです。
╔╗╔╦══╦╗╔╦══╦╗╔╦══╗ 
║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║ 
║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║ 
╚╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╝ 
かれこれ4年前の今頃であろうか。
私の友人Hが1人暮らしを始めたという電話を受け、MとIを誘って遊びに出かけた。

Hが借りたアパートは、川沿いのよくある「リバーサイド○○」などという名前だけ立派なアパートだった。
鉄筋の3階建てで、Hは3階の角部屋を借りていた。

窓を開けると、目の前に入〇川(伏せさせて下さい)が見えて、夏だというのに涼しく感じたのを覚えている。
H自身も相当気に入っていたようで、部屋の自慢話が続いていた。

私はMに「涼しくていいな〜」と話し掛けた。
するとMは、

「いや、涼しいというより寒気がするな……」

と険しい表情をしていた。

Mはいわゆる“霊感”というものが多少あるようで、本当か嘘かはさだかではないが、よく目撃話を聞かされていた。
ちなみに私には霊感はなく、見たことなどなかったし信じてもいなかった。

Hの自慢話も終わり、みんなでベランダへ出てタバコを吸いながらまったりとしていた。
ちょうど夕暮れで、オレンジ色に染まった川がとても印象的だった。
川の向こう岸には犬連れのおじいさんや、帰路を急ぐような子供達や、私達と同じように川を見つめている女性の姿があった。

ふいにIが、「そうだ、麻雀やろうよ」と言い出した。
特にこの後の予定も何もなかったので、麻雀をやろうということになった。

さしあたって、麻雀の前に何か飲み物や食べ物を買いに行こうということになり、私とMは近所のコンビニへ買出し係となって出かけた。
コンビニでいろいろと選んでいると、Mが

「なぁ、あの部屋どう思う?」

と聞いてきた。
私には何も感じなかったので聞かれても困るのだが、とりあえず「いや、別に……フツーじゃない?」と答えておいた。
Mは、

「う〜ん……」

と、さっきのような険しい表情をしていたので、「まぁせっかくの1人暮らし記念なんだし、変な事言うなよ」と答えた。
Hもそんな事言われたらあまりいい気はしないだろうし。

買出しも終わり、部屋へ戻りテキトーにパクつきながら、麻雀をはじめた。
半荘が終わる頃、時間は21時。一息つこうとTVをつけて談笑を始めた。

麻雀をしているとよくある事だが、部屋の中がタバコの煙で真っ白になっていた。
Hが「うおっ霧かかってるよ、黄ばむと嫌だから窓あけるぞ」と言って、出窓と窓を全開にした。

途端、クーラーの冷気が外へ逃げ出し、かわりに生ぬるい嫌な風が部屋へ入ってきた。
誰に覗かれるという場所でもないので、カーテンも半開けにしていたHが、

「あれ?」

と一言。
「どうした?」と一応聞いてみる。

「いや……あれ、ちょっときてみ、ほら」

と窓の外を見ながら私達を手招きするので、行ってみた。
今思えば、Mはこの時、窓の外を見ていなかったように思える。

「あ、なんだあれ?」

Iが言う。
窓の外は塀を隔ててすぐ川で、向こう岸に川原があり、その後ろに少し盛り上がったような道になっている、ごく普通の川辺である。
その道には約30メートルごとに街灯が立っていて、Hの部屋から真向かいがちょうどその街灯にあたる。
見ると、その街灯の下に人影があるのだ。
うすぼんやりとしか確認できなかったのだが、女の影だった。

「……なんか気味悪ぃな」

「いや、フツーの人間だろ……」

すると突然Iが、

「オオォォーーイ! そんなとこでなにやってんのォォーー?」

と叫んだ。
川の流れる音で掻き消えて向こう側には聞こえないと思うのだが……。

しばらく様子を見ていたが、なんの反応もないので放置することにした。
なんだか場もしらけてしまったので、その日はそこで解散し、帰ることにした。

次の日の夕方、私が自宅へ帰るとほぼ同時ぐらいにHから電話がきた。

「よぉ……あんさ、今からウチ来れっか?」

ひどく元気がない様子だったので、聞いてみたのだが、わけを言おうとしない。

「出来ればさ、MとIにも声かけてみてくれや……なるべく早めにな」

Hの電話の事をMとIに言うと、2人とも了解してくれたので、また昨夜と同じメンバーでHのアパートを訪れた。
部屋に入るとHが出迎えてくれたので、何かあったのか聞いてみることにした。

「いや、昨日オマエラが帰った後にさ、なんか気になっちゃって、もう一度見てみたんだよ」

昨夜の人影の件だ。
「そしたらさ、土手の上にいた人影が河原にいたんだよ……」

それを聞いたIは、

「ただ降りただけだろ? 何の不思議もねー」

と笑い飛ばしていた。
Mはあいかわらず険しい表情をしていた。

Hがそれでも気味が悪いと言うので、その日はHの家に泊まる事にし、もしもまた昨夜の人影が現れたら正体を掴もうということになった。

性懲りもなくまた麻雀などをして、時間は夜中の0時30分ぐらいになった頃、気づいたようにHが、

「よし、開けるぞ……」

と言い出し、カーテンを開ける。

すると、Hの言った通り、人影は土手から河原へ移動していた。
2日も同じような事があるとやはり気味が悪いもので、みんな言葉を失った。

しばらくしてIが、

「だったら行って確かめればいんだよ! 行くぞ!」

と、私の服を引っ張る。
そこで私とIで橋を渡って、問題のその人影の正体を見に行くことになった。
問題の河原に着いたのだが、人どころか何もない。
聞こえるかどうかわからなかったが、Hのアパートに向かって

「いねぇよ? どこにもなーんにもない」

と私が言うと、Hは

「川だ! 川にはいってる!!」

とつんざくような声で叫ぶ。なんだ、じゅーぶん聞こえる。

「俺らもそっち行かぁ!」

と、5分後、MとHもやってきた。
Hは鉄パイプ持参だった。一体何をするつもりだったのだろうか……。

「チクショーーー!!!」

とHは半狂乱になったように、鉄パイプをぶんぶんふりまわし、あたりの石を水面に投げつける。
すると、Mが

「オイ、部屋の窓見ろ……」

と言った。

見ると、Hの部屋の4分の3ほど閉まったカーテンから誰かがこちらを覗き見ていたのだ。
顔文字でよく見かける「サッ」とかそんな感じのモノだった。

Hは誰よりも早く駆け出して行った。
もしも空き巣か何かだとして、あの状態のHが行ったら本当に殺しかねないので、私達も急いで後を追った。

部屋へ入ると、唖然とした顔のHが突っ立っていた。
「なんか盗られてねぇか!?」

と聞いたのだが、Hは

「いや、大丈夫だ……ナンもいねぇー」

皆、言葉を失った。

正直気味が悪くて帰りたかったのだが、そんなワケにも行くまい。
その日は予定通りHの部屋に泊まった。あまり寝れなかったのを覚えている。

朝、各々帰宅した。
帰宅途中でMが、

「アイツ、引越したほうがいい……なんか変だ」

とボソっと言っていた。

その日から私もいろいろと忙しくて、Hと連絡が取れない日が続いた。
MとIもバイトの研修に行っていたので、皆忙しかった。

3日後にようやく早帰りできた。早帰りといっても23時だ。

またもやタイミングよくHから電話がかかってきた。
あ、そういえばあの人影……と全てを思い出してしまった。

電話の向こうのHは尋常ではなかった。

「オイ! すぐ来てくれ! 早く! もう、すぐそ……に!! ……だ」

なぜかノイズが聞こえる。ノイズに混じって、カリッカリッと変な音も聞こえた。

私はただならぬ恐怖を感じ、家を飛び出てHのアパートへ向かった。

鍵はかかっていない、すんなりと開いた。
部屋の真中で魂のぬけたようなツラをしているHがいた。
「どうした? 何があった?」 

肩を揺さぶるが、なにも返答が返ってこない。
部屋を見回すと、窓が全開に開いていて、カーテンが風に揺れてバタバタしていた。

頬をはたいても何も反応がない。
やっぱりあの人影が……となぜかそう思い、ふと異様な好奇心に駆られて、窓の外を見た。

窓の外には何もいなかったのだが、そいつはいたんだ。
影だった。顔とかはわからない。影だった。ヒトの形をした影。“部屋の中”に。

窓にうつる部屋の中の景色。そこにそいつがいた。
私は目をそらすことができず、凝視していた。

どういう風に逃げたのかは記憶があやふやでよく覚えてはいない。
ただ今にして思えば、あの電話のノイズは川の音のようにも聞こえた。

次の日、MとIにHの部屋であったことを話した。
Iは腹をかかえて笑っていた。
Mは、心配だからHの家へ行ってみようと言い出し、行くことになった。私は行きたくなかった。

部屋にはやはり鍵はかかっていなかった。もぬけの空になっていた。

私達は、きっとHも怖くて実家に帰ったんだろうと思い、Hの自宅へ電話した。
帰ってはいなかった。

後日、Hの母親から電話があった。
Hにまったく連絡がつかないといった内容だ。
こんな話をしたところで信じてくれるはずがないし、私自身、Hの身に何が起こったのかは知らないのだから……。
それから3人で一緒にはあまり会わなくなった。

あれから4年。
Iが昨年、海外へ転勤したとの話を聞いた。
Mとは何ヶ月かに一度電話で話すぐらいだ。

問題のアパートは、今でもそこにあるらしい。
Hはいまだに行方不明のままです。
毎年、この季節になると思い出してしまいます。
╔╗╔╦══╦╗╔╦══╦╗╔╦══╗ 
║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║ 
║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║ 
╚╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╝ 
犬の散歩は、大変だと思う。

早朝や夜遅くに散歩している人をよく見かける。
その度に、ついそんなことを考える。
日中は仕事や学校だから、そういう時間帯になってしまうのだとは思うが……。

おれも小さいころ、実家で犬を飼っていたが、追いかけられた記憶しかない。
本人はじゃれていたつもりだったのだろうが、おれにはそれが恐怖だった。

そして中学に上がり、犬にも慣れ始めたころ、飼っていた犬は病死してしまった。

おれの通っている大学は、下宿先から自転車で15分くらいのところにある。
いつも近道である川沿いの道を通る。
その日も、実習が長引いて遅くなってしまった。

いつものように川沿いを自転車でこぐ。

川沿いの道は、車両が1台やっと通れるくらいの広さ。
両岸とも自転車を除いて一方通行となっている。
川といっても上水路といった感じで、幅はせいぜい10メートルくらいしかない。
おれは冬の寒さにこごえながら、家路を急いだ。

橋にさしかかったとき、人影が見えた。こちらに背を向けてじっと立っている。

犬の散歩中らしく、手づなを引いて、犬が用を足し終えるのを待っている。
「こんな寒い中、大変だな」と思った。

ふと見ると、その人はズボンの丈が合っていない。スネが丸見えで寒そうだ。
紺のダウンジャケットを着て、ファー付きのフードを頭まで被っている。

その人の横を通り過ぎたときだった。
「わん」

犬の声とも、人の声ともとれないような声。むしろ音だったのかもしれない。
少し驚いて、おれは振り向いた。

穴だった。黒い穴が3つ。そいつの顔であろう場所にぽっかりあいている。穴のような目と、穴のような口……。
背筋に悪寒が走った。

猛スピードで自転車をこいだ。川沿いをひたすら走り、1つの橋を超え、2つ目の橋を超え……何か嫌な予感がした。
振り返ると、追いかけてきている。距離は遠のいたが、そのまま夢中でペダルをこいだ。

アパートに着くころには、そいつはいなくなっていた。

次の日、大学の友人に昨晩の出来事を話した。

「そりゃあお前、つんつるてんだよ」

「つんつるてん?」

妖怪のたぐいかと思ったが、どうも違うらしい。
友人が言うには、ズボンの丈が合わずにスネが丸見えのことを「つんつるてん」というらしい。
単なる見間違いだ、と軽くあしらわれた。

その次の夜だった。そいつはまた現れた。

実習で遅くなり、川沿いを帰っていたとき……そいつは同じ場所、同じ格好で立っていた。
ズボンの丈が合っていない……。
「わん」

そいつから逃げるために、思い切りペダルをこいだ。幸いヤツはおれの自転車についてこれない。

「わん。わん。わん」

犬のような、人のような。低い男の声。
逃げ切るまで止むことはなかった。

そんなことがあってからというもの、おれは川沿いの道を通らなくなった。

ある日、前に話した友人と一緒に帰ることになった。

彼も同じアパートで、帰る方向は同じである。
彼が「近道を通ろう」と言い出して、おれはイヤイヤ川沿いの道を行く羽目になった。

「ここの道、あいつが出るから嫌なんだよ」

「ああ、例のつんつるてんか。何かされたのか?」

「いや……追いかけられただけだけど」

友人が居たせいなのか、1人でないと現れないのか、あいつは姿を現すことはなかった。

数日後の夜のことだった。またあいつが現れた。

飲み会の帰り、少し酔っていて川沿いの道を使ってしまったのだ。
いつもの場所、いつもの服装……顔はフードで見えない。

ただいつもと違うのは、あいつが自転車に乗っていたこと。
犬を連れて、あいつは橋の向こうからこいできた。
「わん」

夢中でこいだ。こいだ。でも今度は違う。あいつは自転車に乗っている。

振り向くと目の前にあいつの顔があった。
白い肌、作り物のような肌にぽっかりとあいた穴3つ。

こいでもこいでも距離は遠のかない。

「わん。わん。わん」

あいつの連れている犬はスピードについていけずに引きずられている。

「わん。わん。わん。わん。わん。わん。わん」

もう酔いなんてとっくに醒めてしまった。

(このまま家に着くと、あいつに居場所がバレる!)

そう思ってとっさに道を曲がり、公園の便所へ逃げ込んだ。
洋式便所にカギをかけ、閉じこもると、すぐにあいつがやってきた。

ドアの向こうに立っている。
下の隙間から覗くと、丈の合っていないズボン……。

「つんつるてんだ」

あいつは、しばらくその場で動かないでいた。
すると。

……ドンッ

ドアのたたく音。
……ドンッ、……ドンッ、……ドンッ

いや、叩くというよりかは、何かをドアにぶつけている。

……ドンッ、……ドンッ、……ドンッ

寒さと恐怖で限界だった。

何時間そうしていただろうか。
気づくとあいつはいなくなっていた。

便所を出ると、ドアの外側が凹んでいた。
そして血と、犬の毛がこびりついている。
あいつがドアにぶつけていたのは、自分の連れていた犬だったのだろう。

でもドアにぶつけている間、犬の鳴き声は聞こえなかった。
あいつの「わん」という声以外は……。
しばらく2週間くらい大学を休んだ。その間、友人の部屋で寝泊りした。
おれと友人は同じ医学部生だ。講義と実習で、毎日大学へ通っている。

ある日、友人が言った。

「なあ、そのつんつるてん、なんでお前を追っかけたんだ?」

「知るかよ、そんなこと」

「追いかけられたからには、理由があるだろ? 理由が」

おれには見当もつかなかった。あいつが追いかける理由……なぜ追いかけられたのか?

「逆に考えてみてさ、そいつに追われたときお前何してたよ? たとえばどんな格好してたかとか」

思い出しても心当たりがない。ただ……。

「そういえば、黒いダウンジャケットを着てたな」

あいつに襲われた日は、思い返すと毎回黒いダウンを着ていた。

「うーん、お前の黒いダウンに何かあるんじゃないか?」

そう考えると、理不尽な話である。
黒いダウンを着ていただけで目を付けられ、追いかけられ、閉じこもったドアに,連れていた犬を投げつけられる……。

しかし、思いつく原因はそれくらいしかなかった。
捕まったら、一体どうなっていたのだろう。

それ以来、おれは白いダウンを着るようになった。
友人に説得され、大学にも通いだした。
しばらく川沿いの道は止め、遠回りして大通りの街道沿いを行くことにした。

それから数日がたち、大学は冬季休業に入った。冬休みである。
でもおれは、これから4日間毎日、大学へ通わなければならなかった。
医学部の実習では、週に2回解剖の実習がある。しばらく大学を休んでいた時期があったから、休んだ分の実習を終わらせなければならなかったからだ。

解剖の実習は、決して面白いものではない。
3、4時間解剖室にこもってひたすら検体。つまりご遺体のスケッチを描くのだ。
ずっと立ちっぱなしで作業をし、先生のダメ出しをくらい、やりなおす……その日の分を終わらせた頃には、日が暮れていた。

実習をしに大学へ通って3日目の夜だった。
いつものように遠回りして帰る。

明日が実習最後だ。
最終日に実習テストをやることになっている。解剖学的な名称を答えさせる問題だ。
おれは明日のテストに備え、途中で喫茶店へよって勉強することにした。

駅前の喫茶店に入り、窓際の席へ腰をおろす。
イヤホンを取り出し、勉強に集中する……。

そうして、一時間たった頃だろうか。

……ドンッ

驚いて窓を見た。
あいつだ。つんつるてん。あいつが外にいる。
窓越しに穴のあいた目でおれをじっと見つめている。

すると、

ドンッ……ズルズルズル

窓に向かって、あいつは犬を投げつけてきた。
犬はミニチュアダックスフンドだろうか、とにかく小型犬だ。

あいつは投げつけた犬の手づなをたぐり寄せ、犬を手元に運んだ。
するとまた、

ドンッ……ズルズルズル

ドンッ……ズルズルズル

ドンッ……ズルズルズル


また投げつける。
手づなをたぐり寄せ、また投げつける。その繰り返し。

こいつは一体何がしたいんだ!? なぜおれだけ狙ってくる?

ドンッ……ズルズルズル

ドンッ……ズルズルズル

ドンッ……ズルズルズル

窓はだんだんと犬の返り血で赤くなっていった。

あいつは人間だろうか? なにがしたいんだ?

しばらくして警備員が駆けつけてきた。
あいつはもういなくなっていた……。
家に帰り、今までのことを思い起こしてみた。
なぜあいつはおれを狙うのだろう?

今日着ていた服は、白のダウンだった。
黒のダウンじゃないのに、あいつは現れた。

色は関係ないのだろうか?
だとすると、他に何があるというのか。

あいつが現れたとき、おれがしていた共通のこと……共通の……。

「あ、もしかして……解剖」

思い当たった。
あいつが現れた日、おれはいつも解剖の実習があった。

解剖室は、いつも検体のホルマリンの臭いが漂っている。
3、4時間もそこにいると、体にホルマリンの臭いが染み付くのだ。

もしかして、あいつはその臭いに反応したんじゃないだろうか?
色ではなく、臭いに。そう、まるで犬のように……。

黒を着ていたのは、解剖で汚れが目立たないから着ていただけのことだった。

次の日、おれは実習テストを終え、川沿いの道を通ってみることにした。
その日はテストだけだったので解剖室には入っていない。
ホルマリンの臭いはしないはずだ。

注意しながらいつもの場所へ向かう。

いた。
あいつはそこに立っていた。
いつものように犬を連れ、身動きひとつしない。
横を通り過ぎた。

振り返ってみる。
あいつは同じ格好で立っていた。気付いた感じもない。

「そうか……やっぱり臭いだったんだ」

あいつは何者なのかよくわからないが、これではっきりした。
ホルマリンの臭いに反応していたんだ。

おれはなんだか可笑しくなった。
もう実習は無い。ホルマリンの臭いもない。
よって、あいつに追われることはないんだ。

明日からは晴れて冬休みだ。休みを満喫できる。
気分がよかった。

途中、友人の部屋に行こうとしたが、留守のようなので帰って寝ることにした。
明日は友人を誘って服でも買いに行こう……。

朝、チャイムの音で目が覚めた。
ドアを開けると、2人の男が立っていた。

「警察ですが」

「……何ですか?」

「あなた、この方の友人だそうですね?」

警察は友人の写真を取り出した。

聞くと、おれの友人は下の階の部屋で冷たくなっていたそうだ。
死後数日たっている。

なぜか、数日しかたっていないのに腐乱していた。
部屋はカギがかかっていて、自殺の疑いが強いという。
「一応、確認をお願いしたいのですが」

警察に言われ、おれは死体の確認をさせられた。
友人の顔は膨れ上がって、生前の面影は無い。

「彼、だと思います……たぶん」

つんと鼻をつく臭い……これが死臭というものなのかと思った。

「臭いが出てもね。気付かないことの方が多いんですよ。まあ一般の方は死臭なんて嗅いだことありませんものね」

警察が言ったとおり、おれにもわからなかった。
おかしいとは思っていたが、まさか友人がこのような姿になっていたなんて。

「何か変わったことはありませんでしたか?」

おれはふと、彼の部屋のドアを見た。
よく見ないとわからないくらいの凹みと、血のような跡、そして郵便受けには犬の毛のような……。

ドンッ……ズルズルズル

ドンッ……ズルズルズル


あいつが友人の部屋のドアに犬を投げつけている映像が浮かんだ。
投げつけ、たぐりよせ、投げつけ、たぐりよせ……。

ズルズルズルズルズ……


警察の事情聴取が終わって、おれは部屋に引きこもっていた。
もう出かける気も失せていた。

ここ数日、友人を見ていなかった。あいつは友人を殺したのだろうか。
そんなこと出来るはずない。そう信じたい。

でもあのドアの凹み……あいつは友人の部屋にやってきていた。
あいつは、同じ大学の友人を自殺にまで追い込んだんだ。

次は、おれだ。
……バリンッ

いきなり窓が割れた。
何か投げ込まれた。部屋の外からだ。

見ると、小型犬がぐったりしている。

「わん」

うあああああああああいつだ。あいつがおれの部屋の外にいる。裏庭から犬を投げつけたんだ。

おれは思わず部屋を飛び出した。どこでもいい、とにかくここから逃げたかった。夢中で走った。

ブロロロロロロロロ

後ろからエンジンの音がする。あいつはスクーターに乗って追いかけてきた。

あいかわらず犬を連れている。泣き声をあげず、引きづられている。犬のかわりに聞こえるのはあいつの鳴き声。

「わんっわんっわんっわんっわんっわんっわんっ」

だめだ! このままだと追いつかれる! 足とスクーターじゃ時間の問題だ。

「わんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわん」

あいつの声がしだいに近づいてくる。

「わんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわん」

路地を抜けて大通りが見えた。おれはとっさに右に曲がった。

キキキキキーッ

ブレーキの音。そして衝突音……。
あいつは曲がりきれずに対向車と衝突した。
あいつは宙を飛んだ後、後ろからきたトラックの下敷きになった。

……おれは唖然としていた。時が止まったかのようだ。

「死臭だ……」

色でもない、ホルマリンでもない、あいつは死臭を追ってきていたんだ。
人間が感じることのできないくらいの、死の臭い……。

トラックのタイヤの間から、あいつの足が覗いていた。
短いズボンから見える、あいつのスネ……つんつるてんは動かなかった。

しばらくして、野次馬が集まってきた。

「うわあ……ひどい」

「救急車は?」

「なになに、どうしたの?」

人々の話し声が聞こえる。

「顔がぐしゃぐしゃだ。みんな見ないほうがいいぞ」

誰かが言った。
とたんに、寒気が襲った。

おれは偶然右に曲がったからいいものを、もしも真っ直ぐ走り抜けていたら……おれがあいつのようになっていた。
あいつは、死の臭いを嗅ぎ分ける……。

友人を自殺に追い込んだのは、あいつなのだろうか?
それとも、友人の自殺を嗅ぎ分けてやってきたのか。おれにはわからなかった。

つんつるてんは死んだ。血が流れている。動かない。

「事故だ、事故。犬も死んでるよ」

さらに野次馬が集まってくる。
みんな興味津々だが、かわいそうのひとつも言わない。
所詮他人が死んだというのは、そういうものなのだろうか。

みんな、死んだつんつるてんを覗き込んでいた。

買い物中の主婦や、子連れの親子、おじいさん、おばあさん、犬の散歩中だった人も。

犬を連れた人も、散歩中の人も、犬を連れた人も、犬の散歩を……あれ?

あれ。
犬を連れてる人、なんだか多くないか?


いっせいに、ゆっくりと、こっちを向いた。


「わん」
╔╗╔╦══╦╗╔╦══╦╗╔╦══╗ 
║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║ 
║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║ 
╚╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╝ 
へへへ、おはようございます。
流石に皆さん怖い話をしなさる。今日は生憎天気が悪いようで。

あの時も丁度今日みたいな雨空だったな。
あ、いえね、こっちの話でして。

え? 聞きたい? そんな事誰も言ってない?
はぁはぁ、すみませんね、私も毎日苦しくて。
正直この話を誰かに打ち明けないと気が狂いそうでして。

それでは、早速暇つぶしにでもお読み下さい……へへへ。

もう10年ほど前になりますかね。
当時、私はとある地方の寂れたスナックで働いてましてね。
そこで、店の女の子の1人と良い仲になっちまったんですよ。
ま、良くある話です。へへへ。

アパートに同棲してまして。スナックのママも他の従業員もみな承知の上でしてね。
まぁそこそこ気楽に楽しく暮らしてましたわ。

しかし、この、仮に晴美としましょうか。
晴美はかなりのギャンブル狂でして。
パチンコ・競馬・競艇・競輪・ポーカー・マージャン、なんでもござれでして。

これが勝ちゃ良いんですが、弱いんですよ。賭け事にも才能ってありますよね。
案の定、借金まみれになっちまった。
それでも何とか、働きながら返してたんですよ。

え? 私はどうかって?
私はあなた、ギャンブルなんてやりませんよ。
そんな勝つか負けるか分からないのに大金賭けられますかいな。以外に堅実派なんですよ。へへへ。
……話を戻しましょうか。
同棲しだして、2年ほど経った頃でしたかね。
とうとう、にっちもさっちも行かなくなっちまった。

切羽詰まった晴美は、借りちゃいけない所から金借りちゃったんですよ。まぁヤクザもんですよね。

ある夜、アパートに2人でいる時に男が2人やって来ましてね。見るからにそれモンですよ。
後は大概、お分かりですよね? TVや映画で良くある展開と同じですよ。笑っちまうくらい同じです。

金が返せないのなら、風俗に沈める、の脅し文句ですよ。
それでも晴美は1週間、1ヶ月待って下さい、と先延ばししながら働いてましたよ。

え? 私? 私は何も出きゃしませんよ。
ヤクザもんですよ? とばっちりは御免です。
え? 同棲しておいてそれはないだろうって?
はぁはぁ、ごもっとも。でもね、皆さんもいざ私のような環境に置かれると分かりますって。

ある夜、いつもの様にアパートに取立てがやって来ましてね。
ところがちょっと様子が違うんですよ。幹部って言うんですか? お偉いさん来ちゃいまして。

一通り晴美と話した後、つかつか〜と私の方にやって来まして。
お前があいつの男か? と聞くんですよ。

ここで違う、とは言えませんわね。
認めると、お前にあいつの借金の肩代わりが出来るのか? と聞くんですよ。

出来るわけないですよ。その頃には借金が1千万近くに膨れ上がってましたからね。
当然無理だと言いましたよ。

そしたらその男が、あぁ、今思えば北村一輝に似た中々の良い男でしたね。
あ、へへへ、すみません。話を戻しましょうか。
その男が、「ならあの女は俺らがもらう」ってんですよ。

仕方が無いな、ともう諦めの境地でしたよ。
私に害が及ばないのであれば、どうぞご自由に、と。

え? 鬼? 悪魔? 鬼畜? はぁはぁ、ごもっとも。
でもね、水商売なんて心を殺さないとやってけないんですよ。
晴美に惚れてたならまだしも、正直体にしか興味ありませんでしたからね。
え? やっぱり鬼畜? はぁはぁ、結構です。

それでもって、男が妙な事を言い出したんですよ。
あの女の事を今後一切忘れ、他言しない事を誓うならば、これを受け取れ。

そう言うと、私に膨れた茶封筒を差し出したんですよ。
丁度100万入ってましたよ。

でもね、嫌じゃないですか。ヤクザから金もらうなんて。
下手したら後で、あの時の100万利子つけて返してもらおうか、何て言われちゃたまりませんからね。
断りましたよ。

そしたらその幹部の連れのチンピラが、ポラロイドカメラでもって私を撮ったんですよ。
そしてその幹部が、この金を受け取らなかったら殺す、って言うんですよ。

何で私がこんな目に、と思いましたよね。渋々受け取りましたよ。
そして、もし今後今日の事を他言する様な事があれば、お前が世界のどこにいても探し出して殺す、と。

その時、私は漠然とですが、晴美は風俗に沈められるのでは無く、他の事に使われるんだな、と思ったんですよ。
もっと惨い事に。
晴美はある程度の衣服やその他諸々を旅行鞄に詰め込み、そのまま連れて行かれました。
別れ際も、私の方なんて見ずにつつ〜と出て行きましたね。結構気丈な女なんですよ。

1人残されたアパートで、私はしばらくボーッとしてました。
明日にでもスナック辞めてどこかへ引っ越そうと思いましたね。
嫌ですよ。ヤクザに知られてるアパートなんて。

ふと、晴美が使っていた鏡台に目がいったんですよ。
リボンのついた箱が置いてあるんです。
空けて見ると、以前から私の欲しがってた時計でした。

あぁ、そういえば明日は私の誕生日だ。
こんな私でも涙がつーっと出てきましてね。
その時初めて、晴美に惚れてたんだな、と気がつきました。

え? それでヤクザの事務所に晴美を取り返しに行ったかって?
はぁはぁはぁ、映画じゃないんですから。これは現実の、しょぼくれた男のお話ですよ。
翌日、早速スナックを辞めた私は、100万を資金に引っ越す事にしたんです。

出来るだけ遠くに行きたかったんで、当時私の住んでいた明太子で有名な都市から、雪祭りで有名な都市まで移動しました。
そこを新たな生活の場にしようと思った訳です。

住む場所も見つかり一段落したので、次は仕事探しですよ。

もう水商売はこりごりだったので、何かないかなと探していると、夜型の私にピッタリの夜間警備の仕事がありました。
面接に行くと後日採用され、そこで働くことになったんですよ。

それから約10年。
飽きっぽい私にしては珍しく、同じ職場で働きました。

え? 晴美の事?
時々は思い出してましたよ。あの時計はずっとつけてました。

北国へ来てから新しい女が出来たり出来なかったりで、それはそれで、楽しくは無いですが平凡に暮らしてましたよ。

私、こう見えてもたま〜にですが、川崎麻世に似てるって言われるんですよ。
え? 誰も聞いてない? キャバ嬢のお世辞?
はぁはぁ、失礼しました。

それで、つい1ヶ月前ほどの話です。
同僚のMが、凄いビデオがあるって言うんですよ。
どうせ裏モンのAVか何かだろうと私は思いました。
こいつから何回か借りた事があったので。

そしたらMが、スナッフビデオって知ってる? って言うんですよ。

私もどちらかと言うとインターネットとか好きな方なんで、暇な時は結構見たりするんですよ。
だから知識はありました。海外のサイトとか凄いですよねぇ。実際の事故映像、死体画像などなど。

で、ある筋から手に入れて、今日持って来てるんだが見ないか? ってMが言うんですよ。

深夜3時頃の休憩時間でしたからね、まぁ暇つぶしくらいにはなるだろうってんで、見ることにしたんですよ。
私は、どうせフェイクだろうと疑ってかかってたんですけどね。

ビデオをデッキに入れ、Mが再生ボタンを押しました。
若い全裸の女が、広い檻の中に横たわっていました。

髪の毛も下の毛も、ツルツルに剃りあげられていました。
薬か何かで動けなのか、しきりに眼球だけが激しく動いていました。


晴美でした。

私は席を立ちたかった。でも何故か動けないんですよ。

やがて、檻の中に巨大なアナコンダが入れられました。何か太いチューブの様な物を通って。
大げさじゃなしに、10メートル以上はあったんじゃないでしょうかね。
それはゆっくりと晴美の方に近づいて来るんですよ。
Mが凄いだろ、と言わんばかりに、得意げに私の方をチラチラと横目で見てきます。

それはゆっくりと巨体をしならせ、晴美の体に巻きつきました。
声帯か舌もやられてるんでしょうか、晴美は恐怖の表情を浮かべながらも、声ひとつあげませんでした。

パキパキ

という野菜スティックを2つに折った様な音がします。
晴美の体が、グニャグニャと、まるで軟体動物の様になっていったんです。

10分ほど経ったでしょうか。
それが大口を開けました。晴美のツルツルになった頭を飲み込んだんですよ。

ここからが長いんだ、とMは言い、早送りを始めました。

それは晴美の頭部を飲み込み終えると、さらに大口を開け、今度は肩を飲み込み始めました。
胴体に達したとたん、テープが終わりました。

続きが後2本あるんだ、とMが言ったんです。
もういい、と私は言うと、逃げるようにビルの巡回に戻りました。

それからなんですけどね、いつも同じ夢を見るんです。

晴美の顔をした大蛇が私に巻きつき、締め付けてくるんですよ。
そして体中の骨を砕かれ、頭から晴美に飲み込まれるんです。
凄まじい激痛なんですが、逆にこれが何とも言えない快感でしてね。
晴美の腹の中でゆっくり溶かされ始める私は、まるで母親の胎内に戻った様な安心感さえ感じるんですよ。

え? そのビデオはどうしたかって?
Mから私が買い取りましたよ。それこそ、給料何ヶ月分かの大枚はたいてね。
3本全部見て少し泣いた後、私は全てビデオを叩き壊しました。

それで深夜仕事をしてると、晴美を感じるんですよ。

ビルなどの屋内を1人で見回るでしょう?
すると、後ろからピチャピチャと足音が聞こえてくるんですよ。

振り返ると、誰もいない。
でまた歩き出すと、濡れた雑巾が床に叩きつけられる様な音で、ピチャピチャと。

晴美かな、と思うんだけれども、一向に姿を現さないんですよ。
感じるのは気配と足音だけ。

そんな事が数日続き、流石に精神的にまいってしまいましてね。
今現在、休暇と言う事で仕事を休んでるんですよ。
3日前です。
とうとう晴美が現れたんですよ。

深夜、自宅のベッドでボーッと煙草をふかしていたら、白い煙の様な物が目の前に揺れ始めたんですよ。

煙草の紫煙かな、と思ったんですが、動きがおかしい。
まるで生きてるように煙がゆ〜らゆ〜らと形をとり始めたんですよ。

晴美でした。

既に溶けかかり、骨が砕けた全身をマリオネットの様に揺らし“まだある”方の眼球で、私を見つめてきました。

何かを言いたげに口を動かしていますが、舌が無いのか声帯が潰されているのか、声にならない声で呻いていました。

どの位の時間が経ったでしょうかね。
いつの間にか晴美は消えていたんですよ。

恥ずかしい話、私は失禁と脱糞をしていました。
はぁはぁはぁ、汚くてすみませんねぇ。

次の日の夜も晴美はやってきました。

もう私はね、晴美に呪い殺されてもしょうがないんじゃないかと思い始めてましてね。
晴美が再び現れるのを心待ちにしてた部分もあったんです。

やはり、晴美は何か言いたげに口を動かしています。
「何が言いたい? 私はどうすれば良いんだ? 時計、時計、時計ありがとう、あの時何もしてやれなくてすまない、時計は大事に持ってる、時計は、時計は」

半狂乱のまま、私は叫び続けたんです。

すると、晴美が折れた首を健気に私の方に近づけて、言ったんです。
途切れ途切れながらも、ハッキリと聞き取れました。


「わたし、あんたのこどもほしかったな」
╔╗╔╦══╦╗╔╦══╦╗╔╦══╗ 
║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║ 
║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║ 
╚╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╝ 
静かな当直だった。
文献を読みながら煙草をくゆらせていた。

「先生、一体運ばれてくるそうです」

事務員から連絡が入った。

遺体は労働者風の男性だった。
顔見知りの警官が少し情報をくれた。

「酔って橋の欄干から転落。目撃者もいて事件性は無いみたいです」

若い警官は調書を取りながら、所持品の検査をしているようだ。

男は頭部に外傷をおい、一見してそれが致命傷とわかった。
上着を脱がすと、一枚の写真が内ポケットに入っていた。

警官がそれを見ながら話しかけてきた。

「きれいな人ですね、奥さんかな。この仏さん身元がわからなかったんですよ。あれ、裏に電話番号がありますね」

「ちょっと署に連絡してきます」

警官はパトカーまで行ったようだ。
もう一人は先ほどから別室の電話口にいる。

「やれやれ、始まったばかりで小休止か」

と、剖検台の横にに腰をおろした。

何気なく遺体を見ると、腹のところが妙に膨らんでいる事に気がついた。
立ち上がり触ってみると、腹巻の中に何かあるようだった。

一万円の束だった。
腹部を一周するように並んで巻きつけてあった。
「おーい○○君」

と、顔見知りの警官を呼んだが返事は無く、電話口にもいなかった。
ドアをあけると、ずいぶん離れたパトカーの中で二人で無線に向かっているようだ。

心に風が吹いた……あの金があったら?

全部で12束あった。
考える間もなくデスクに入れてしまった。

解剖室の冷たい空間にいながら、汗が流れた事に気がついた。

「すみません、先生。わかりました……やはり該者の奥さんでした。夜遅かったんですが、すぐ向こうを立つそうです。遠いので明日午後になるそうです」

解剖は一時間足らずで終わった。
死因は見立て通りの頭蓋結合離解骨折、および頚椎骨折により即死と断定できた。

冷たい汗は最後まで乾くことは無かった。

担当警官もよくある事故と位置付け、調書のペンも早かった。

「先生ありがとうございました。それでは後処置をお願いしまして、引き上げさせていただきます」

一礼するとパトカーに向けて去っていった。

私は処置を済ませ、霊安室に遺体を運び冷蔵庫のステンレスの重いドアを閉めた。
所轄から連絡が入ったのは翌日夕刻だった。

「先生、昨日はお疲れ様でした。仏さんの家族の方がみえたのでそちらに向かいますが、お時間取れますでしょうか?」

警官に案内された。
奥さんと思われる方に「このたびは残念なことで……」。

遺体を確認してもらうと、その女性はその場に泣き崩れてしまった。

しばらくして、「間違いありません、主人です」。

そして静かに語り始めた。
事業に失敗したこと……そして必死で働き、“必ずお前と子供を迎えに行く”こと。

さらに2日前に連絡があったそうだ。
「めどがついた。5年必死に働いた。今週末帰る」と。
「祝いの酒を飲ましてほしい」と。

最後は涙で聞き取れなかった。

その時、突然若い警官が声をあげて一歩後ろに引いた。
眼は遺体を見ていた。

胸の上で合わせていた筈の手が、だらりとストレッチャーから出て揺れていた。
そして、床に近いところで握られていた手がゆっくりと開かれつつあった。

お互い声も無くそれを見つめるしかなかった。
キラりと光りながらそれは床に落ち、無音の世界に「チャリン」と音を立てた。
白い紙もつづいて落ちてきた。

警官がそれを拾い、メモを見て一瞬にして顔色が変わった。

「先生……」

それは私のロッカーの鍵だった。

メモには、

「私のお……」

私は動けなかった。
そして視界の隅にある遺体の顔が笑ったように見えた。
╔╗╔╦══╦╗╔╦══╦╗╔╦══╗ 
║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║ 
║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║ 
╚╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╝ 
最初に気付いたのは、散らかった部屋を僕の彼女が片付けてくれた時だった。

僕は物を片付けるのが苦手で、一人暮らしをしている狭いアパートはごみ袋やら色々な小物で埋め尽くされていて結構な状態だったから。
といっても、テレビで出てくるほどのゴミ屋敷ってわけでもなく、ちゃんと足の踏み場はあるし、掃除だってほどほどにはしているつもりだ。

けどやっぱり男の一人暮らしは散らかってしまうもので、結果的に時々アパートに来てくれる彼女が片付けてくれている。

その日も同じように彼女が来てくれて、部屋の掃除を始めてくれた。

僕も彼女と反対側の掃除を始めて、本やら小物を本棚や机にしまったり、彼女が聞いてくる小物が要る物かどうかを判断したりして、だんだん部屋が片付いてきた時、彼女がまずそれに気付いたんだ。

「ねぇ……」

彼女が指差した雑誌やらビデオテープに隠れていたコンセントの中から、かなり長い髪の毛が一本、垂れ下がっていた。

「これ誰の髪の毛よ」

僕の友達は男友達ばかりだって事を知ってる彼女は、僕を疑いの目で見た。

僕の髪は短いし、でも彼女の髪もこれほど長くない。
けど僕にだって彼女以外の女性、これだけ長い髪の女性を部屋に入れた記憶はなかった。

あまりにも彼女が僕を疑いの目で見るので、僕はコンセントから出ている髪の毛を摘むとスルスルとそれを引き出した。
プツン

いやな感触に、僕は思わずその手を離した。
まるで本当に人の頭皮から髪の毛を抜いたような、リアルな感触。

長い髪の毛は掃除された床に異端者のように舞い落ちて、隙間風に揺らめいた。

思わず僕はコンセントの穴を覗きこんだけれど、その先は真っ暗闇で、何一つ見えなかった。


翌日の朝。僕は青ざめていた。

思い出せば昨日はコンセントの事などすっかり忘れて、僕はあの後彼女とカラオケで遊び、そこで飲んだ酒のせいか、僕は帰ってきたとたんに死んだようにどっぷりと眠っていた。

目覚めた時には電車のギリギリの時間、僕は飛びおきると寝ぼけ眼で大学の準備をしようと放り出してあったカバンを取り上げた。

その時、ちょうど目線に入ってきたコンセント。

真っ暗な二つの穴の一つから、長い髪の毛がまた、だらりと力なさげに垂れていたんだ。

昨日引き抜いたはずの髪の毛。
長さから見ても同じ人物のようだった。

まるで何かの触手のようにコンセントから伸びいているそれがとても気持ち悪くなり、僕はそれを急いで引き抜いた。

プツリ

またあのリアルな感触。
「気色悪い……」

僕はそう呟くと、その穴に使っていなかったラジカセのコンセントを押し入れ、引き抜いた髪の毛を窓から捨てると、荷物を持って部屋を後にした。

髪の毛は風に乗って、何処かへ飛んでいった気がした。

それからラジカセが大きかった事もあってか、僕はまたコンセントの事など存在すら忘れて普通の日々を過ごしていた。

部屋はまた散らかりだし、布団の横には漫画がヤマ積みになっていて、また彼女が来ないかな、などと思いながら空いたスペースをホウキで掃くぐらい。
ごみ箱はもういっぱいで、僕は集めたゴミをゴミ袋の中に直接捨てた。


あれから一ヶ月は経った時だったろうか。
ついにそれは僕に降りかかった。

ガ……ガガ……ガガ……ガガガ……

夜中に突然鳴りだした音に、僕の安眠はぶっつりと閉じられた。

「あ……う……?」

苦しそうな声を上げて電気をつけると、放置していたラジカセからビリビリと何か奇妙な音が流れていた。

山積みになった漫画の更に裏にあったはずのラジカセが見える。
変に思ってよく見ると、積んであったはずの本は崩れて、周りにころがっている。

まさか、ラジカセの音で崩れるはずは、とも思ったが……それしか浮かばない。
ガガ……ガガガ……

ラジカセはまだ壊れたように妙な音を発していて、僕はその電源ボタンに手をかけ──そして気付いた。

電源は、すでに切れていた。

オフになっているのに、やはり壊れてしまったのだろうか。
僕はラジカセを持ち上げようと両手で両端を掴み、力を込めた。

ぬちゃ……

いやな感触がして、僕はそのまま目を見開いた。

ラジカセの裏から伸びたコンセント、そこに人間一人分ほどの髪の毛が絡みついていたんだ。
コンセントのコードにつるのように絡まって、ギチギチに。

目で追うと、それはコンセントの穴の片方から伸びているようだった。
前に触手のようだと思ったことがあったけど、まさしくそうだった。

しかも、僕はおどろいてラジカセを力いっぱい引いてしまったんだ。

ぶちぶちぷちぶち

ラジカセに絡まっていた何十万本もの髪の毛が頭皮から引きぬかれる感触がした。

同時に、コンセントの向こうから絶えられないとほど絶叫が響いたよ。

コンセントの穴から髪の毛が一斉に抜け落ちて、ドロリとした真っ赤な血が穴から噴出した時……僕は悲鳴を上げ、気を失った。

血塗れの部屋。
髪が散乱する部屋。

僕は部屋を綺麗に掃除すると荷物をまとめて部屋を出た。

あのコンセントからはまた髪の毛が一本、触手のように垂れていた。
╔╗╔╦══╦╗╔╦══╦╗╔╦══╗ 
║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║ 
║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║ 
╚╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╝ 
多分、これは私が経験した中で一番ぞーっとしたと思われる話です。

20歳くらいの頃だったと思う。
当時付き合ってた彼氏は私よりも2コ上のちょっと変わったコで、某大学の医学部の学生だったんだけどね。
真冬に半袖を着て寒いと嘆いてみたり…(笑)とにかく、変わった子だったのね。

でも、2人でいると楽しくて、ただ車でブラブラと走っているだけでも楽しくて、その日もいつもの様にあちこちあてもなくドライブしてたの。

で、西〇阪道を過ぎて、名〇国道まで差し掛かった頃、それまで何の兆しもなかったのに、いきなり雪が降って来たの。

しばらく走って見ると、雪は止むどころか酷くなる一方で、路肩には身動き取れなくなって放置した車が沢山停めてあるような状況に…。

彼の車は当時流行っていた日産のシル〇アで、車高は低いしチェーンなどもちろん装備していない。

『しゃあない…一旦降りて(下道に)引き返すか…』

さすがの彼も困り果てた顔で、取り敢えず次の出口を一旦降りてみることにした。

しかし、出口を降りるのも一苦労。
高速の降り口は必ず坂道ですからね、ちょっと油断したらツーって滑って行く訳で…。

とにかく慎重に慎重に少しずつ下っていって、何とか下道に出る事ができました。

で、問題はこの後です。
高速を逆に戻るか、下道を行くか…どちらにしても危険です。
もう辺りは見事な雪景色な訳で…。
彼は、

『うひゃぁ…俺らはこのまま死んでしまうんか…新聞載るかな…?』

などと本気で困っていました。
でも、朝まで立ち往生している訳には行かないし、取り敢えず走れるとこまで行くしかないよって事で、再び車を走らせました。

しかし、ご存じの方なら分かると思いますが、名〇国道は天〇からしばらくは超、山の中。
降り口付近も民家などほとんどない田舎なんですよね…。
田舎なので街灯もほとんどなく、真っ暗でしかも雪塗れ、本当に死ぬかと思うほどでした。

しかし、降りて来たのはいいけど、高速に戻るとなると次は坂を登らなくてはいけないし…意を決してそのまま下道を行く事にしました。

今みたいにナビが当たり前の時代ではなかったから道もよく分からない、携帯などももちろん今みたいに普及していない。
何かあってもすぐに助けを呼べる手段がない訳で。
とにかく運だけを信じて車を走らせていました。

30分くらい走ったでしょうか。
て言っても普通に走れる状況ではないので、距離にしてみればほんのちみっと移動しただけだったと思いますが。

ぽつんと1件、ラーメン屋が見えたんです。

周りには家1軒無いのに、店の灯りがボゥ〜っと明るくて不気味でしたが、お腹も減っていたし、何より落着きたかったので、そのラーメン屋に入る事にしました。
店に入ると、当たり前ですが私たちの他に客はいませんでした。
50代くらいの女の人が出て来て、注文を取り、暫くすると彼はよっぽど疲れていたのか居眠りをしていました。

1時間程その店にいたと思いました。

お腹もいっぱいになり、帰りがけに店の人に訳を話し、帰り道を尋ねると親切に教えてくれました。
朝までいてもいいよと言ってくれたのですが、私は次の日仕事があったので甘える訳にいかず、店を後にしました。

店を出てから5分程でしょうか…車を走らせると、奇妙な事に急に視界が開け出して、今までの雪景色が嘘の様に無くなっていったのです。

雨とかでもありますよね? ある点を境に嘘の様に止んで、道も濡れていないていうことが。
きっとこれもそういう事なんだろうと思って気にも止めませんでした。
何より、早く帰りたかったし、雪の恐怖から逃れたのですから。

2人でまたいつもの様に笑いながら車を走らせました。

ところが、行けども行けども山道は続く一方で、いつまでも経っても市街地になど辿り着かないのです。
道を間違えたのかとも思いましたが、ラーメン屋で聞いた道通りに走ってきたはずです。

余りにもおかしいので、私達は元来た道を引き返す事にしました。
ところが、彼も私も、急に物凄い眠気に襲われて来たのです。
まるで睡眠薬でも飲まされたかの様に、視界がぼやけて来て…。

堪らず彼は車を停めて、2人で仮眠をとる事にしました。


ふと目が覚めたら、外はもう明るくなっていました。
時計を見ると、朝7時前くらいだったでしょうか。

すっかり眠り込んでしまった事よりも、私は外を見てびっくりしました。

確か眠気に襲われて車を停めた場所は、雪は積もっていませんでした。
なのに、車の外は雪塗れ。

眠っている間に降って来て積もった…なんて量ではありません。

私は急いで彼を起こしました。
彼も外の光景を見てびっくりしていました。

とにかく、早く帰らねば…と思うのですが、車は私達の他に走っていないので、轍もなく、進める事が出来ません。
私は午後から仕事だったし、焦っていましたが、連絡する術もないし…正に立ち往生の四面楚歌でした。

1時間程経ったでしょうか。前から車(4駆)が走って来ました。
私達は急いで車から降りて、その車を停めて事情を話しました。

運転して居たのは、40歳くらいの男の人でした。
彼は私達が困っているのを知ると、とにかく自分の車に乗る様に言いました。
そして、会社に電話すると言い、自宅まで連れてってくれたのです。

彼はとても親切にしてくれ、その親切さに甘えて色々と話込んでいました。
暫くして彼が、昨夜入ったラーメン屋の事を聞き出しました。

するとその人は、何やら腑に落ちない様な訝しげな顔をして、暫く考えた末、口を開き始めたのです。

『うーん…確かにラーメン屋はあったけど、もう5、6年前に潰れてるはずやで? 店の建物はそのままやと思うけど…』

『え? でも俺らはラーメン屋に入って、注文して食ったよ? なぁ?』

『うん…』

彼も男の人もただ不思議そうに話していましたが、私は何となく嫌な感じに囚われていました。

そして、午後になり、道路の雪も少しは解けて車の往来もあるので大丈夫だろうと、放置してある彼の車まで送って貰うことにしました。

途中、助けてくれた男の人は、ラーメン屋を見せたるわって、そのラーメン屋があったという場所に寄ってみる事にしました。

私は行きたくありませんでしたが、2人が話が噛み合わないと気持ち悪いからと、渋々向かう事にしたのです。

『ここやぞ?』

男の人が車を店の駐車場に停めて、そう言いました。

私達は唖然としました。

店は、看板が外れ、扉もあちこちヒビが入っていて、10台くらい停められるであろう駐車場には、雑誌やゴミが散乱していたのです。
誰の目に見ても営業している様には見えませんでした。
『…じゃあ、俺らは昨夜、何を食べたんや? あの女の人は誰やったんや?!』

彼は半狂乱になって騒ぎだしました。

『寝てる時にリアルな夢でも見たん違うか?』

男の人は、ははっと笑って彼を宥めていましたが、やはり昨夜の出来事は夢ではなかったのでしょう。
だって、店の場所とか、建物とか、確かに同じだったのです。

もしあの時、店の女の人の好意に甘えて、朝まであの店にいたなら私達は一体どうなっていたのでしょうか?

考えると、本当に身が凍る様な体験でした。
╔╗╔╦══╦╗╔╦══╦╗╔╦══╗ 
║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║ 
║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║ 
╚╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╝ 
怖いと言うか気持ち悪い話。
細かい会話とかは覚えてないので適当だが……。

俺の中学時代からの女友達の話。仮に佳織としておく。

もともと小学校も同じで、五年、六年と同じクラスだったが、話すことなんてなかった。
もともと一人でいることのほうが多い子だったと思う。

中学に進んで、同じ小学校から来た奴で同じクラスになったのが佳織ともう一人しかいなくて、席も近かったことから話し掛けたことが、佳織と友人になるきっかけだった。

そのうちもう一人の同じ小学校から来た奴(仮に順一とする)ともよく話すようになり、俺と佳織と順一は三人グループっぽくなった。

佳織と仲良くなってしばらくして、自分の家のこととかを話題にしたら、佳織も自分の家のことを話した。

佳織は母方が中部のどこぞの田舎にある神社の宮司の家系で、父方は北日本のある地方の豪農(今はわりと落ちぶれているらしい)の出身。
この一族も、行者とかになる人が多かったらしい。

「なんかすげえな。じゃあお前、見えたりするの? 霊とかw」

「見えるよ」

「(……まじかよ)……どんなの見えるの?」

「ふざけて言うことじゃないし……」

佳織はそれ以上話してくれなかった。

いつまでたってもその手のことは話さなかったので冗談かなとも思ったけど、ある日、冗談ではないことがわかった。

佳織と友人同士になってから何ヶ月かたった二月、バレンタインで俺は別のクラスの女子からチョコレートをもらい、めちゃ嬉しくて佳織や順一に自慢していた。
「やったー。もらっちゃったよ。俺、実は初めてだったりするんだけど」

「いいなー。俺も欲しいよ、ホント」

「あのさ……広志くん(俺の仮名)……それ、食べない方がいいと思う」

「え?」

「ちょっと、やばいと言うか……気持ち悪いよ、それ」

いきなり佳織が変なこと言い出したんで、俺も順一もわけわからんという感じだった。

「え? なにそれ? どゆこと?」

「なんかね、強すぎる。……本人に悪気はないと思うけど、けっこう色々いれて、なんて言うのかな……呪いみたいになっちゃってるよ。体壊すかもしれない」

「はぁ? お前、何言ってるの?」

せっかくもらったチョコレートと、それをくれた人をけなされてるみたいで、俺はちょっと腹を立てて佳織と喧嘩しかけたけど、順一が「まあまあ」と止めてくれて、結局俺の家でチョコレートのうち何粒かを溶かしてみることになった。

十粒くらいあったやつのうち三粒とって溶かしてみたんだけど、ぎょえっという感じだった。
二つからは、ほんの少しだけど、細かく切った髪の毛みたいなものが出てきたのだ。

あとの一つからは特に何も出なかったんだけど、ずっと湯煎して溶かしていると、そのうち変な臭いがしてきた。

「? 何これ? これもなんか入ってるの?」
「……わからないけど、血かな? ひょっとしたら生理のかも。でもそれ以外かも」

俺も順一も気持ち悪くてたまらなかった。

結局チョコレートは、くれた人には悪いけど全部捨てることにした。
佳織は呪いとか言ってたけど、それ以前に体に悪そうなので。

佳織は見ただけで中に何か入っているということがわかったわけで、俺も順一も佳織の「見えるよ」を、信用するようになった。
さらにそれから一年ほど経った中学二年の十二月、冬休みの少し前のことだった。

俺と佳織は同じクラスのままで相変わらず結構話してたけど、順一は別のクラスになっていた。

ある日放課後久しぶりに順一と会って話していたら、佳織も昇降口にちょうど降りてきて、三人で帰るかということになった。

俺と順一は適当に話していたけど佳織はあまり話さず、何か様子がおかしいなと思っていたら、順一と途中で別れたとたんに「うえぇっ」と小さく声をだしてうずくまってしまった。

「おい! 佳織! どうしたんだよ!?」

佳織は口をおさえて、涙を流していた。

「どうしよう……広志君……どうしよ。順一君、死んじゃうかも……ぅえっ……」

「は? な、何言ってるんだよ。ちょっと落ち着け。気持ち悪いんか?」

「どうしよう……」

「どうしようって……何なの、一体?」

「……順一君はやってないだろうから、多分親戚とかだと思うけど……人殺してるよ。ここ最近で。すごい恨まれてる。多分順一君にもまわってきちゃうよ……死んじゃうかも」

「……」

げーげー吐きながら言う佳織の背中をなでながら、以前のこともあり、俺はかなりびびっていた。
でもまさかそんな……という気持ちも強かった。
たまに通りかかる人が変な目で見てたので、この日は佳織を落ち着かせて帰った。

夜に佳織から電話があった。

「明日、順一君の身につけているものを持ってきて欲しいんだけど……できればシャツとか」

「え? 何に使うの、それ?」

「明日私学校休むけど、広志君、学校終わったら順一君のシャツ持って○○公園(近くの森林公園。さびれてる)に来てくれないかな。絶対に持ってきてね。絶対」

「ああ……?」

何かわからないうちに頼まれてしまったけど、帰りのこともあったし、言う通りにしてみた。

シャツとかなんてどうやって手に入れようかと思ったが、体育着を忘れたことにして借りて、洗って返すということで手に入れた。

森林公園では佳織が待っていて、俺が体育着を持ってきたことを確認すると「こっち」と、林の中につれていった。

ちょっと歩くと、葉の落ちた木がたくさん生えていて不気味だった。
さらに不気味なことに、つれてかれた林の中の広場みたいなところに、ちょっと大きめのハンマーとダンボール箱が置かれてて、箱の中から猫(それも複数)の泣き声が聞こえてきていた。

「佳織、何あれ? 猫?」
「うん……」

ダンボールを開けると、猫が四匹(野良猫っぽかったけど、わからん)入っていた。

「ねえ、何するの? 一体」

「……これから、順一君の身代わりを作ろうとおもってるの。……お願い! 手伝って!」

「な、何? 身代わりって? わかんねー」

「大丈夫、すぐ終わるし。広志君に頼むのは簡単なことだから」

とりあえず言う通りにしてみた。

言われたことは本当に簡単で、順一の体育着に猫を一匹、着せるようにして包み、地面に抑えるようにしていてくれということだった。

「それで、順一君はここにいるって、強く思って。声に出しながらがいいかな……多分」

「ああ。わかったけど……」

体育着にくるまれてくぐもった声をあげる猫を抑えつけ、言われた通りにした。

「ちゃんと抑えててね」

「え? 佳織、それ……」

俺が猫を抑えると、佳織が置いてあったハンマーを持って、いきなり振り上げた。

一瞬だった。

ボキャッと嫌な音がして、猫は鳴かなくなっていた。
体育着にくるんでいたおかげでどうなっているか見えなかったが、頭のあった辺りがどんどん血に染まっていて、しゃれにならなかった。

「お、おま、何、おえっ! えっ!」
「待って! まだ我慢して!」

俺が吐きそうになっていると、佳織は猫を体育着の中からずるりと取り出して、次の猫をくるんでいた。

地面に置かれた死んだ猫は頭が見事に砕けていて、たまに痙攣していて、それが見えてとうとう俺は吐いてしまった。

「お願いだから、おさえてて。順一君のためなんだから」

「む、無理……無理……」

「……じゃあ、さっき言った通り、頭の中で思うことだけやって。あと、目は閉じないでこの体育着をちゃんと見てて」

「わ、わかった……」

俺の見てる前で、佳織は足で猫の前足を踏みつけるようにして抑えつけ、今度は三度、ハンマーを振るった。

腹がつぶれた猫が地面に置かれた。
体育着から取り出す時に佳織の手には血がついてしまっていた。

さらに次に地面に並んだのは四本の脚を砕かれた猫、またその次も同じで、この二匹は凄い鳴き声を上げても生きていた。

最後の方、俺はもう見ていることが出来なくて、本気で怖くて、佳織に何度か注意されたけど目をそらしていた。

佳織はその後、掘ってあった穴に全部の猫を放り込んで埋めてしまった。(まだ生きてた二匹も)。
これは俺も手伝った。
「最後の方、ちゃんと見てなかったでしょ?」

「見れないよ。あんなの意味あんのかよ? やばいって! どう考えても……」

「意味あるよ。……あると思う。手足は上手くいったかわからないけど、頭と体は多分大丈夫になったから」

俺と佳織は森林公園から出ると、ほとんど話さないまま家に帰った。
血がしみた体育着は佳織が持ち帰った。

それから冬休みになるまで、俺は佳織と口をきかなかった。

別に順一に何の変化もなかったし、あの猫は殺し損というか、佳織は単にやばい奴だったと思ったりした。
猟奇趣味に付き合わされただけなんじゃないかと思った。


でもやっぱり佳織は単に危ない奴じゃなかった。

冬休み中に、順一は父方の実家に家族で里帰りして、火事にあった。

両親と親戚が何人か亡くなったらしい。
妹さんも重体でやばかったけど、命は取り留めた。

順一はというと、腕に少し重い火傷を負っただけで済んだ。

俺がこのことを知ったのは冬休みが終わってからだった。
順一は難を逃れた伯父夫婦の家に引き取られることになったけど、さらに二週間位してその伯父さんが遺書を残して自殺。
遺書には人を殺したうんぬんが書かれていて、後日死亡のまま逮捕だか送検だかされた。

順一の家の近くに住んでた人で、俺も見知っていただけに、これにはホントに驚いた。
順一はすごいショックを受けたようで、見てるのも気の毒だった。

順一はその数日後、ずっと遠くの親戚に引き取られ、三学期はじまって間もないうちに引っ越していった。

佳織の言っていたことは的中していたわけで、俺は佳織とまた話すようになり、ごめんと謝った。

佳織は別に怒ってないと言ってくれたが、俺の質問には嫌がって答えてくれなくて、一年くらいしてようやくこのとき何をしたのか話してくれた。
なんか、いろいろ祟りとか、呪いの原理(彼女なりの理解だと言っていた)を話してくれた。

要は、思い込みの力らしい。

今回は猫を順一の体に見たてて、俺たちがそう思い込むことで、祟ろうとしてる奴をだまして、あの森林公園で怨みを受けたことにして、順一本人は助かったと言う。

他にも何か言ってたけど良くわからなかった。

というわけで、俺は呪いとか祟りとか、術とかそう言うのは確実にあると思う。
実際こういうのを見てしまったわけだし。

俺は「もし俺が死にそうだったら、隠さずに教えてくれ」と言って、佳織と友達でいた。
それからもいろいろ変な目にあったけど、今も実はかなり仲の良い方の友人かもしれない。

多分、佳織がやばい奴であることに変わりはないんだろうなとは思うが。
あと、猫は直視できなくなった。
╔╗╔╦══╦╗╔╦══╦╗╔╦══╗ 
║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║╚╝║╔╗║ 
║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║╔╗║ 
╚╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╩╝╚╝ 
俺は霊感とかは無いんですけど、この話は最近おきたとても怖い出来事です…。

自分は工場で働く三十代の男です。
彼女もいなく金も無く、趣味はギャンブル、勝っても負けてもキャバクラで豪遊…。
そんな生活を送っているので、月の半分は金が尽き家に引きこもっています。

ある日の休日、いつものように朝からスロットをしてるとこれがバカ吹き!
調子に乗ってお気にのキャバ嬢と同伴出勤(>_<)

バカみたいに盛り上がり、話も尽きたころに女の子が自分の携帯をとり

「〇〇ちゃんこれ見て!」

(…ん?!)

携帯には彼女が飼っている熱帯魚の水槽が、淡々とムービー録画されてあるだけたった…。

俺はとりあえず

「おっ熱帯魚なんか飼ってるん? 以外と可愛いとこあるんやね」

などと適当に受け答えすると

「違う、違う、後ろよ〜く見て! 水槽の後ろ!」

かなり酒も回ってあんまり感心もなかったが、もう一度再生ボタンを押してみた。

水槽には色とりどりの魚が泳いでおり、水から透るその後ろは…!?

(んぐっ…)

一瞬心臓の鼓動が止まった。
後ろの壁は灰色なのだが、黒いモヤが人型になってはりついている!
91 削除済
モヤだけだとなんとか何かの写り込みだと笑ってすませるのだが…目が…目だけが…まさに人間のそれなのだ…。
水槽の後ろからずーっと携帯のレンズを直視している…。

「これマジ! マジでやばいんじゃないん? さっさと削除したほうがいいよ!」

一気に酔いの覚めた俺に

「うん…友達にも見せたけど、これはヤバいって! んでこの間〇〇ちゃんと一緒にきた霊感の強い人! ほら腕に入れ墨のある! あの人に見てもらおうと思って!」

あ〜S。
Sは十代の頃一緒にバンドを組んでいたメンバーで、やたら霊感のある人物だ。
とはいっても昔霊に取り付かれ、よくお祓いに行っていたので霊に強いかどうかはわからない…。

とりあえず話の流れからSに連絡をとり、来てもらう事になった。
Sはこの飲み屋街でスロットバーという訳の分からない商売をしている(-_-#)


十五分もしないうちにSが店に入って来た。

「いやぁ〜〇〇のオゴリつぅ〜んで速攻来たよ! なん? 勝ちゃった? ボロ勝ちしちゃた?」

やたらテンションの高いSに、しばらくはバカ話に付き合い、ほどなくしてあのムービーを見せた。

「……」
93 無名さん
埋めたん頑張れ!
さっきまでのテンションが嘘のように、Sはしかめっ面でずーっと携帯を見ていた。

「お〜怖〜これは怖いよ! 鳥肌たった!」

彼女が泣きそうな顔で

「えっ〜なんですか? ヤバい霊ですか? 私取り付かれてます? 家についてるんですか? どうすればいいですか?」

彼女が一気に喋りまくる。俺も

「なんとかできんの〜ヤバいんやったらどっかいい霊媒師でも紹介してやってよ」

Sが重い口を開くように

「ん〜…これ生き霊だゎ…念が強すぎて出てきとるね…こぉゆうのはタチ悪いんでお祓いしてもね〜…」

周りはカラオケで盛り上がっている店内で、俺らの席だけ静まり返った。

「どうすればいいですか?」

S「いやぁ〜やっぱり生き霊やけ本人と話しあったら」

彼女「でも〜誰の霊かぁ〜…」

S「案外近くにおる人かもよ」
うめうめ
俺「やっぱりそれだけ念があるんやけ肉体関係のある人やろ〜(笑)」

一瞬場の雰囲気がなごんだが、彼女の目線が店のボーイのほうにある事を俺とSは気づいていた。

店を出て

俺「あ〜ぁ彼女の目線見た? あのボーイと絶対出来とるよ〜…なんか俺虚しい…ちゅ〜かバカみたい…」

S「アハハハッ〜そりゃ三十過ぎの金持ってね〜オッサンよりあのイケメンのボーイの方とるよ! 男の俺でもボーイとるし(笑)」

俺「うるせ〜よ! でも生き霊になってまで嫉妬するもんかね〜? さっさとキャバ嬢辞めさせろっつ〜の!」

Sが薄ら笑いで俺に言った…


「あれお前だよ!」
支援うめうめ
埋めるよ!
糞スレ
100 無名さん
おしまい