一人で花火するよ
寂しくないよ
だって綺麗だもん
. ∧_∧
(´;ω;)
. (∪ )っ
 し-J |
   .*´i`*.
    ..*..
| |
|_| このTLはヌコ警察に
|電|___  監視されています
|柱|=@=/  不適切な言動は慎みましょう
| ̄|・ω・)
| |と)
| |u
 ̄ ̄ ̄ ̄
スヤァ……

       ∧_∧ 三=
    ☆  ( ˘ω˘ )三=
 ∧__ 〃 _ノ つ ノつ 三=
<`Д´((⊂ _ _⊂) 三=
⊂ ⊂ \ ガッ
 ヽ   つ
  (ノ⌒
まって♥
   ∧∧
  (・ω・`)
    // )
/ ̄ ̄《 ̄ ̄\
| ・ U   |
| |ι      |つ
U|| ̄ ̄||
   ̄    ̄
ここにセメダインがあるじゃろ?
( ^ω^)
⊃セメダイン⊂

これをこうして…
( ^ω^)
≡⊃⊂≡

( ^ω^)
 ⊃⊂

( ・ω・ )
 ⊃⊂

(´・ω・`)
  ⊃⊂
7 無名さん
この人、物に当たったりして破壊するだけある。気性荒すぎ。
可愛い写真載せるのに人格違いすぎ怖っ(´・ω・`)
10 無名さん
愚痴風呂ならせめて鍵かけて公衆の面前に出さない
何度もアカウント変えて出てくる。新記事で好みの写真だから見るとこんなのばっかりでがっかり
いつも見てるよ
頑張ってるの 知ってるよ
  ⋀,,,⋀
 (´・ω・)づ,,,⋀
 (つ  /(・ω・。)
  しーJ  (nnノ)
一緒にチューチュートレインしよーぜ

    ←
    ∧_∧
   ∧_∧・ω・`) ↑
↓ ( ・ω・`)・ω・`)
  く| ⊂)ω・`)
   (⌒ ヽ・`)
   ∪ ̄\⊃

これ基本な!
15 無名さん
ポケGOのことボロカス言ってたね
GO=逝けってブログに書いてたから1.のコメントが逝けなのね

どっちのブログも同一人物とか
確かにこの人の変わりようは異常こわい
こうゆう人が一番頭おかしいんだよね
16 無名さん
<font size="2">あ</font>
張郃
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1年前くらいのことです。
何時だったか…たしか深夜1時ごろだったと思います。

いつものようにネットゲームをしていると、少し高い所からゼリーか何かが落ちたような音がしました。
「パキャッ」というような音でした。

あれ? 何か落ちた…ゼリーなんて置いてあったっけ? と台所を少し探してみましたが、ゼリーなんて落ちていませんでした。
あまり気にも留めず、またネットゲームを再開しました。

翌朝、新聞を取ろうとマンションのエントランスに行くと、自転車置き場に青いシートがかかっていました。

飛び降り自殺があったようでした。
昨夜のゼリーが落ちたと思った音はこれだったのか、と少し背筋がゾッとしました。

ちょうど自転車置き場のそばに非常階段があるのですが、その日からずっと茶色い背広を着た男の人が非常階段の1階と2階の間に立っている。

初めは普通の人だと思っていました。
でも背広ははっきり見えるのですが、顔がぼやけているのです。

顔色も灰色に近いです。灰色の顔に、目鼻口の部分は黒くぼやけています。
生きている人ではないと思いました。
そこを通る度にいるので、きっとあの日からいつもいるんだと思うのですが、他の人には見えていないようです。
ずっと非常階段の少し上から、自分が落ちたであろう場所を見ている感じでした。

特に害もなさそうなので、3ヶ月も経つと気にならなくなっていました。


ある日、また飛び降り自殺がありました。
でも今度は違う棟だったので、落ちた音は聞こえませんでした。

マンションの友達と、こう何度も飛び降り自殺があると怖いね、という話をしました。
例の茶色い背広の男は、まだずっと非常階段に立っていました。


少し気にはなっていたんですが、半年ほど経った日に、飛び降り現場から一番近い部屋のご主人さんが亡くなりました。
奥さんが朝起こしに行ったらすでに死んでいたとのことでした。年は30代前半で若かったのに。

そしてお葬式に出席して帰ってきました。22時ごろだったかな。
非常階段の茶色い背広の男が、今までずっと自分が落ちた場所を見ていたのにこっちを向いています。

あれほどゾッとしたことはありませんでした。
全身が総毛立つっていうのはこういうことなんだなと思いました。
急いでエレベーターに乗って自分の部屋に帰りました。
自分の部屋に帰るとホッとして、いつものようにネットゲームをしていました。

そろそろ寝ようかなと、パソコンの電源を落とした時、ゼリーが落ちたような音がしました。
「パキャッ」という、あの忘れたくても忘れられない音がしました。

また飛び降り自殺? と思って急いで玄関から廊下に出て下を覗き込んでみました。
自分の部屋は12階にあります。下は暗いですが街灯もあるし、自転車置き場には蛍光灯もついてるので下はよく見えました。

自殺者らしき物は見えませんでした。
ふと視線を左にそらすと、ぼんやり白い影が見えました。あの茶色い背広の男だなと思いました。

でも何か様子が変です。
よく見ると、灰色のぼんやりした顔だけがゆっくり上がって来ているように見えました。

「やばい、逃げないと」

と思いましたが、手が柵にはりついたように離れませんでした。目も灰色の顔からそらせられませんでした。

しかも、その灰色の顔が風船が膨らむように膨らんでくるんです。
5階部分を通過し、6階部分を通過してもはや人の顔の大きさじゃなくなっていました。

怖くて動けないし声も出せないし、目も閉じれませんでした。

大きくなった顔は何かをボトボト落としながらゆっくり上がって来ます。

怖くて怖くて緊張からか吐いてしまいました。そのとたん手が柵から離れました。

急いで部屋に入って鍵を閉めました。
そして玄関に放りだしてあった数珠を握り締めて、南無阿弥陀仏とお祈りをしました。

その日はそれっきり何もありませんでした。


次の日、非常階段を見てみると茶色い背広の男はそこにいました。そしてこっちを向いていました。

ふと、自殺現場なのに花が置いてあるのを1回も見たことがない、と気づきました。

花を買ってお供えしました。
そして、マンションを引っ越すことに決めました。

引越しをするまでの間も、夜に「パキャッ」という音が何度も聞こえましたが、もう部屋から出て下を覗き込む勇気はありませんでした。

今は2階建てアパートの1室を借りています。もうマンションはこりごりです。

あの男は今もあのマンションに居ると思います。
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長くなってしまい駄文だが勘弁してほしい。
これは高校時代に同級生Bの工務店で俺が少しだけだがバイトしてた時の話。

Bの親父に「いつもの1.5倍のバイト代を出すから今日は区画整理で家の取り壊しの現場に行ってくれないか?」と言われた。
危険な取り壊しの現場に高校生のバイトを行かせるBの親父も凄いが、バイト代上乗せに俺はためらいながらも行くことにした。当然Bも一緒だ。

その取り壊しをする家というのが、俺が住んでいた町から車で30分くらいの隣の隣の町にあるN町にある古い木造の大きな二階建ての家で、昭和初期の頃の家だった。

Bが「なんか幽霊が出そうな家じゃんよ」と言うと工務店に勤める確か30歳前後だったかな、Aさんが

「ここは地元でも有名な心霊スポだったからな、案外出るんじゃねえか?」

Bがそれを聞いて

「幽霊と俺んちの重機との勝負だな、こりゃあ」

と冗談を言う。

俺がAさんに、

「この家知ってるんですか?」

俺の質問にAさんは少し笑いながら

「俺はN町出身だが、俺がガキん頃にはもうこんな感じの建物だったな、親父が厨房だった頃に婆さんが一人暮らしをしてたって聞いた」

Bが、

「もしかしてその婆さんが自殺してその幽霊が出るとか?」

Bのその言葉にAさんは

「いや聞いた話ではふつうに病気だったらしい。ただ一人暮らしだろ? 発見されたのは死後1ヶ月くらいだったんだよ。地元では有名だったみたいでよ、手癖が悪かったんだよ…畑から野菜を盗んだり、ウチは米を盗まれたって親父がいっていた」
Bが、

「その婆さんの幽霊が…」

とBが話しかけたときにAが

「おっと、仕事だ。また休憩時間にでも話してやるよ、たぶん午前中は取り壊しをするための下調べをするから」

Bの親父に、

「おう! とりあえずはおまえ等は時間つぶしてろ! 午後から始める!」

俺とBは午前中時間ができた。

家の周りは意外に広く雑草が生えまくり、敷地は木の塀で囲まれていた。

「せっかくだから家の周りを探索してみようぜ」

と俺はBを誘い探索することになった。
いざ家の裏に回ると空気が重く感じられた。
勝手口があったが、内側から鍵がかかっていたようでノブを回しても開かなかった。

そのまま進むと祠があった。ちょうど敷地の角かな、かなり寂れた祠。
たぶん土地神様を奉っていた祠かもしれない。

まあ後はグルッと回ってきた。
んで後はBと談笑しながらお昼になった。

俺とBはAさんのところに行ってさっきの話の続きを聞かせてもらった。

Aさんは、

「親父の話では何でも婆さんが死ぬ一年くらい前までは息子夫婦と孫娘がいたようなんだよ。その孫娘ってのは親父の一つ下だったんだ。ある日、息子夫婦が家を出たんだ。その孫娘も当然、親と一緒に出たわけ、転校って形」

「幽霊ってのはもしかして…」

俺がAさんに聞くとタバコを取り出して

「気づいたか? 婆さんが死んでから出るようになったのはその転校したと思った孫娘らしいのよ、俺がガキの頃にもこの家は女の子の幽霊が出るって有名だったからな」

Bが少し青ざめていた。
Aさんは続けた。

「まあそんなんでこの家は幽霊屋敷さながらってわけよ、噂では孫娘は殺されてんじゃねえかって話よ」

Aさんはたばこに火をつけてそう言った。

「すばる、さっき祠の近くで子供の笑う声が聞こえたんだ、気のせいとは思うんだが…」

Bが青ざめながら言った。

「あ〜…それは間違いないかもしれないぜ? 俺もおまえ等の頃に遊び半分でココに来たときに聞いてるからな」

Aさんはタバコを吸いながら神妙な顔で言った。

「おーい! そろそろ始めるぞ! 中にある家具を出すからおまえ等も手伝え!」

Bの親父の言葉になぜかびっくりした。
Bが、

「さっきの声がそうなら何だか中入りたくねえなぁ」

と青ざめながら言う。

俺は別の意味で入りたくない。親父にまた変なのを連れてきたなって言われそうで作業前から気が滅入っていた。
まあバイトとはいえ仕事である以上は仕方ない。
家の中にBの親父が入っていき、続いてAさん、別の作業員二人と俺とBが中に入った。
外では四、五人の作業員が重機の調整やらをしている。

中は長年住んでいなかったためかカビ臭く空気がよどんでいた。
今ではなかなか見かけない土間がありかまどがあった。

例の勝手口があり隣には見たこともないような洗濯機、何かローラーがついていて隣にはモノゲンユニって書いた洗剤があった(後でググッたら今は製造されていない昔の洗剤らしい、洗濯機のローラーは今の脱水みたいなものでローラーで洗濯物を挟んで水を絞り出すらしい)。

そして上がると畳の部屋があって古いタンスがある。
んで電球がブラッと下がっている。かなり古い。
足下に紙が落ちていた。

「昭和36年と記載された電気使用量」

Bの親父や他の作業員たちは何食わぬ顔で中の荷物を区分けして外に運んでいた。
Aさんだけは少し青ざめた様子で襖を見ていた。

Bが、

「…Aさん、どうしましたか?」

とひきつった顔で言った。

「いや…この襖の奥から聞こえるんだよ、まだ誰も作業員が入っていないのに」
ドタドタ…

ザッザッザッ…

ザッザッザッ…

「…? 何の音だ?」

俺が言った途端、

バタン!

「うおわっ!」

俺とAさんとBは驚いて妙な声を上げた。

俺も凄くいやな感じがした。

「この襖を開けてはならない」

そんな気がした。

するとAさんが

「とにかく開けなくちゃな」

と手を出した瞬間、クラクションの音がした。

俺達三人はドキッとして一歩下がった。

「外のバカ奴ら、なにしてんだ!?」

今のクラクションでBの親父が作業しながら怒っていた。

「おい、なに三人して呆けているんだよ、さっさと終わらすぞ」

他の作業員が襖を開けた。

襖の奥の部屋は「仏間」だった。
六畳くらいの広さで仏壇には軍服姿の男の人の写真や位牌があった。

しかし何より俺が目がいったのは真ん中にあった変色した布団。
もう恐怖の臨界点。

「これも…外にだすの?」

Bがポツリと一言、さすがに俺も逃げ出したいくらいだった。
この部屋は既にこの世のものではないような感じ。

すると襖を開けた作業員が

「ひっ…ひっ……ひゃああああ!」

ダッシュして逃げてしまった。

「な、何だ?」

とAさんがビックリした時、

「で…てぇ……いけぇぇぇぇぇぇぁぁぁぁぁぁ!」

布団には女の子の生首を持った老婆が立っていた。
透けているわけじゃない、リアルだ。
三人して金縛りにかかったのか腰が抜けたのか動けない、腹に力をためて深呼吸したが体が動かない。
横目ではBなんか泣きが入っている。

何とも気味悪い笑顔を老婆がしたと思うと、手に持っていた生首を俺たちに投げつけた。

ドン!

ゴトッ!

俺の左腕に当たった。
あの感触は忘れられない、冷たく重く少し柔らかい何か…。

すると外からクラクションの音が聞こえた。

急に体が楽になった、俺もさすがに錯乱して三人して逃げ出した。
もうオリンピック選手も真っ青なくらいのダッシュ!

土間にいたBの親父が

「な、何だあ!?」

俺たち三人は土間の勝手口から飛び出した。

「何だよ、今のは!」

Bは息を切らせながら言った。

俺達は呼吸を整えるので精一杯、すると中にいたBの親父が青ざめた顔で出てきた。一言。

「お前ら中でなにを見た? …とりあえず今日は中止にする」

と言うことで家の取り壊しは中止になった。


後でいろいろ聞いたんだがクラクションについては誰も鳴らしていないとの事。

というよりも外にいた作業員たちはクラクションの音すら聞こえなかったと言う。
家の中にいた俺達作業員だけが聞こえた事。

またあの勝手口は入るとき開かなかったのに逃げ出して出るときにはすんなり開いた。
他の作業員たちは存在すら分からなかったと言う。

そしてBの親父も俺たちと同じものを見たのだろうか?
あの異世界とも感じた仏間…あの仏壇にあった軍服の人は老婆の夫? 首は例の少女?

疑問点が多すぎですが調べる気もさすがに起きません。

今もBの家では工務店を営んでいますがこの話はタブーみたいです。
その家は今も存在しています。
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中学の頃の話。
自称見える人の霊感少女Tがウチに遊びに来たのは、今思えばほんの数回のことだったと思う。

その数回のうちほとんどが、天気の悪い日だった。曇りとか雨とか、ひどい時は雷が鳴っていたり。
どんなに朝晴れていても、Tが遊びに来る=天気が悪くなる、というのがお馴染のパターンだった。

当時はそんなことにも何か霊的な事が関係しているのではないかとやたらドキドキしていたが、4月に彼女と同じクラスになって、その後仲良くなりお互いの家に出入りするようになったのが夏の始めだったのだから、梅雨やら台風やらが絶好調の頃だ。
当然と言えば当然である。秋晴れが続く頃には、自分達はわりと疎遠になっていたし。

その日も曇っていた。今にも雨が降りそうな、重く暗い曇り空。
放課後、自分の家へTを連れて帰って怖い話を聞かせてもらっていた。

自分の部屋で雨戸を閉めて電気も消して、ベッドの上に並んで座りタオルケットをかぶって、真っ暗闇の中Tの怖い話を聞くのが、当時の自分は楽しみでしょうがなかった。
今思えばなんとも暗い女子中学生だが。

『二階の自室で勉強していると、机の正面にある窓の上枠に、外から女の物とおぼしき白い手がかかる。続いて重力に逆らって頭の形をなぞる黒い真っ直ぐな髪が覗き始め、だんだんと額が見えるようになり、前髪の隙間にある眉が見え、いよいよその目が見えるというところで怖いのでカーテンを閉めた』とか。

『一つの部屋をカーテンで仕切って姉と一緒に使っている。夜中、カーテン越しに寝ている姉のうめき声が聞こえた。悪い夢でも見ているのかと起こしてやるべく身を起こしかけるが、姉の声はそのうち知らない男の声になり、唸るような低音でぶつぶつと早口に何かを言い始めた。起こすのも怖いのでほっといて寝た』とか。
『下校中、よく誰も乗っていない軽トラが自分に向かって走ってくる』とか。

『自宅のすぐ側にある焼き場の煙突から出る煙はよく人の形をしている。大きな顔の形の時もあり、それは恐ろしい形相をしていることもある。色もそれぞれ違う』とか。

今はもうそのほとんどを忘れてしまったが、こんな調子で色んな話を聞いた。

Tのおばあさんは青森の出身でイタコだったとか、その関係かTの家系の女性はみんな霊感が強いのだとかいう話も聞いたが、Tの体験談と共にその真偽の程は今も定かではない。
疑おうにも確かめる術は無く、自分はいつも興味津々に彼女の話に聞き入っていた。

自分の部屋は、一軒家の自宅の階段を二階へ登ったすぐ突き当りにある。
二人で話し込んでいると、一階から階段越しに二階を見上げて、母が大声で声をかけてきた。

「買い物に行ってくるからね」

電話が鳴ったらちゃんと出てよ、と。いつものやりとりだ。

はーい、とこちらもその場から大声で返事をする。
Tの話で恐ろしさに呑まれていた心が少し晴れる。

しかしそれとは逆に、母が出ていった頃から天気が悪くなってきた。夕立だろう。

雨戸を叩く微かな雨音が聞こえてきたと思ったら、ほどなくしてごうごうと唸るような暴風雨になった。
家の前を走る車のタイヤが水を跳ね上げる音がする。時折遠くからゴロゴロと聞こえるのは雷だ。

母が出かけた家は自分とT以外誰もいない。
真っ暗な部屋に聞こえるのは雨音と、クーラーが必死に冷風を送り出す音だけだ。
怪談にはもってこいの雰囲気になった。

いくつめかの話が終わり、もっと話して欲しいと自分がせがむと、

「あんまり怖い話ばっかりしてると寄ってくるよ」

と言ってTはにやりと笑った。
そうでなくても内心既にかなりびくびくしていた自分は、そうと悟られるのも悔しいので

「そんなの大歓迎だ」

と痩せ我慢をして見せ、次の話を催促した。

それを見透かしていたのかは分からないが、苦笑いを浮かべてそれじゃあとTは次の話を始める。

その時、電話が鳴った。

ピリリリリ…ピリリリリ…

雨音とは質の異なる高めの電子音が、ドア越しでくぐもっているものの耳障りな程によく聞こえた。

電話は一階にあるが、こうも音がしっかり届くと言うことは、母が自分のために子機を階段に置いていったのだろう。
二階の部屋でドアを閉めているとよく電話の音を聞き逃す事があるので、母は自分に留守番させる時はよくそうした。

情けなくもその音にすら十分縮み上がった自分だったが、すぐに気を取り直すとベッドを降りてドアへと向かった。
一瞬怯んだおかげで、誰かは分からないが少し相手を待たせてしまっている。

8畳程の自室のベッドとドアは、ほぼ対角線上にある。
真っ暗でもそこは慣れ親しんだ自分の部屋だ。

5、6歩真っ直ぐ歩いてすぐ、手がドアノブに触れた。
これをちょっと引けば、数時間ぶりに外の明るさに触れられる。雨だけど。
「待って」

初めて聞く声だった。

否、それはTの声だったのだが。いつになく真面目で冷ややかな、有無を言わさぬ迫力のある、それまで聞いた事の無い声色だった。

言葉に従うと言うよりその声自体に驚いて、思わずドアノブを握ったまま振り返る。

「…びっくりした、な」

なに? と言い切る事はできなかった。

カラカラと乾いた音が聞こえたと思う間も無く、首をすくめてしまうような轟音。
家も鼓膜もビリビリと揺らし、下っ腹に響く落雷独特のあの音。

部屋に稲光が刺し込んだ。

自分はまだドアを開けていないのだが。振り向いていた自分には調度、それに照らされたTが自分を見ているのが見える。

違う、ドアを挟んで自分のすぐ隣。今の轟音と同時に向こうからドアを叩き開けた何かを、Tは睨んでいた。

勢い良く、しかしその勢いの割には十数センチだけ開いてぴたりと止まったドアに弾かれた右手が痛みで痺れている。

一瞬のうちに起こった出来事に、もちろん自分の頭は全く追い付けていなかったが、何かを睨むTの顔にビビってとりあえず後退りをしたらドアは普通に閉まって、部屋はまた真っ暗になった。

「出なくてよかったね」

先刻とは打って変わって楽しそうな、Tの声。
稲光と暗闇の突然の明滅に目がチカチカして、その顔は見えない。

出なくてよかった。
部屋から? それとも電話に? 両方だろうか。
鳴り続けていた電話の音は止んでいた。

ドアのすぐ脇にあるスイッチを押し電気をつける。
停電はしていない。クーラーも動いている。

眩しさに慣れやっと捉えたTの顔は、もういつものTだ。

黙って勢いよくドアを開くと、家中の窓やドアが閉まっている時に感じる、密閉された空間で空気を動かす重みがあった。
誰もいない。すぐそこの階段を見下ろす。

電話の子機などそこにはなかった。

大量の疑問符を浮かべて自室を振り返ると、Tが雨戸を開けている所だった。
さらに彼女は慣れた調子で人のコンポを弄って音楽をかけ、こちらを振り返ると

「話題を変えよう。…もうすぐ期末テストだね」

と、それはそれで怖い話を始めた。
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あまりに不幸なことが続いた。

それをここで紹介する気はないが、俺は自殺することに決めた。
それで、少々安易だが、あの有名な樹海に行って、首でも吊る事にした。

頑丈なロープを持って森に入り、手頃な木を探す。
誰にも見つかりたくなかったので、森の中を、俺は奥へ奥へと歩いていった。

歩き続けて、もう方向も分からなくなって来た時、突然、俺の目の前に人が現れた。年の頃40くらいのおっさんだ。
お互いに驚いたね。こんなところで人に会うなんて思ってもいなかった。

なんとなく気まずい空気が流れた後、おっさんが俺に話しかけて来た。

「あんたも…かい?」

おっさんは自分の首を切るような仕草をする。
それで分かった。はい、そうです。と頷く。

するとおっさんはこんなことを言った。

「いやいや、おれもそうなんだがね…ちょっと忘れ物してねぇ」

「日頃からぼけーっとしてるんだけどさ。死のうと思ってこの森に入って、散々歩き通して奥の方で手頃な木を見つけたとき、気が付いたんだよね。あ、ロープ持ってない、って」

おっさんは照れるように頭をかく。確かに手ぶらだ。なんとも間抜けな話だ。
まぁ、言っちゃ悪いがどこか抜けてそうな顔をしている。

「だからさ、ロープ余っていたら、分けてくれないかなぁ…」

仕方ない。ロープは十分に持ってきていたので、おっさんに分けてあげることにした。
「いやいや、助かった。ってのも変な話か。よし、この奥にいい木があったんだよ。おまえさんもそこでやるかね?」

抜け作なおっさんと並んで死ぬのもなんだか嫌だったが、手頃な木ってのが見てみたくなったので、取り合えずついて行くことにした。

「えっと…確かあっちだよな、あぁ、そうそうこっちこっち…あれ?」

予想はしていたが、さっそく迷っている。ため息が出る。

「ハハハ…さすがに迷うね。まいったまいった」

目印でも付けておけばいいのに、と思うが、どうしようもない。

「はぁ…おれは本当にダメだな。まったく」

フォローする気にもならない。俺は黙ってついていく。

「あぁ、もう、新しく探すか。いやいや、ほんとすまんね」

別にいいですよ、と返事をする。
そう、時間なんていくらでもある。急ぐ必要もない。どうせここで死ぬだけだ。

そしてまたしばらく2人で歩く。すると妙なものが視界に入った。
あれ、何ですかね、と俺は前方の右奥を指差しておっさんに言う。

「ん…? 何だろうな。人…か?」

妙なもの、とは言ったが、俺にはそれが何か、もう分かっていた。

まだ少し距離はあるが、前方に大きな木が立っている。その右側の太い枝に、何かがぶら下がっている。
明らかに…首吊り死体だ。

「うわ、あれ…」

おっさんも分かったようだ。首吊り死体ぽいですね、と俺が言う。
「あぁ、そうだな…気味悪いね…」

俺とおっさんは、恐る恐るそこに近づく。

首吊り死体だ。はじめて見る。これから俺がこうなるのか、と考える。
特に恐怖も感じない。我ながら無関心だ。

俺は先立って死体の足元まで近づく。悪臭。臭い。酷い臭いがする。

何となく死体の顔を見たくて、俺は上を見上げた。
少し歪んだ顔。しかし誰だか分かった。

それはおっさんだった。


俺は慌てて後ろを振り返る。

おっさんは驚いた顔をしている。死体の顔に気付いたらしい。

「お…おれが? あぁ、あぁぁぁ…あはは…ハハハハハハハハ…」

大声で笑い出した。
無理もない、気が狂ったか、と思ったが、次におっさんはこう言った。

「いやいや、ハッハッハ。まいったまいった。おれさ、おれ、もう、死んでたんだよ。いやーまいったまいった」

目の前のおっさんが、ぐにゃりと歪んだ。かと思うと、霧のようになって霞んでいく。

「いやーよかったよかった…。死んだこと忘れて彷徨ってたんだな…いやー…よかった…よかった…」

そして、消えた。

俺は呆気に取られた。しばらく呆けた。
不思議なこともあるもんだと思って…考えた。考え始めてしまった。

おっさんは死んでいた。じゃあ…俺は?
ひょっとして、俺も既に死んでいるのではないか?
それに気付かないで、俺はただ彷徨っているのかもしれない。
嫌な予感…なんだか落ち着かない、嫌な感覚に襲われた。

持っているロープを見る。この状態で首を吊るとどうなるのだろう。
死んでいる人間がさらに死ぬ。どうなる? 死ねるのか?

腕をつねってみる。痛い。痛みは感じる。
でも、人間は切断した足の痒みを感じることもあるらしい。
つまりそこに肉体が無くても、感覚は残っている訳だ。

じゃあ、この状態で死のうとすると…?
俺は死ねないまま、ずっと苦しみ続けるんじゃないか?

そんなのは嫌だ。首の骨が折れる痛み、窒息の苦しみが永遠に続くなんて嫌だ。
どうすればいいか…。道は1つだ。

俺の死体を捜すこと。

そうすれば成仏できるに違いない。
自分が既に死んでいる、とはっきり自覚するにはそれしかない…。


もう何日経つか分からない。
腹は減らない。疲れも感じない。死んでいるのは確実だ。

でも、まだ、死ねない。消えることができない。
森のどの辺にいるのかも分からない。ここから出られる気もしない。

なぁ、ちょっとさ、手伝ってくれないか?
一緒に捜そうぜ?

俺の死体、見つけてくれよ…。頼むよ…。

なぁ…。
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二年前、わたしは個別指導塾の学生講師を勤めていました。
大学四年生だったわたしは、就職活動と論文の下書きが終了していた為、職場のかき入れ時となる夏から冬の間に、小学生四年生から中学三年生までの、計八人のお子さんの担当をしていました。

わたしは大学一年からそこでアルバイトを続けていたのですが、少し妙なことが起こり始めたのも、丁度最後の年のことです。

塾は、駅から数分歩いたところのビルの二階に入っていて、大通りに面したところのモダンな階段を登ると、自動ドアがある正面入り口に辿り着きます。
普段は講師も生徒もそこから出入りをし、玄関で挨拶をすることが決まりとなっていました。

学習塾の中を突っ切って反対側に進むとドアがあり、トイレのある廊下に出ます。
お手洗いの隣には、非常階段が設置されていて、裏通りから配達業者さんが登ってくるそこは、当時は生徒たちのたまり場になっていました。

お喋り好きな子やサボリ癖のある子たちがたむろする、非常口下を巡回するのは本来なら社員の先生の仕事です。
わたしはバイトが長かったことと、体格の大きな方であった為、頻繁に注意をしに行かされていました。

九月の終わり頃でした。トイレの為に廊下に出ますと、下から話し声が聞こえます。
小学六年生の女の子達が携帯電話で遊ぶのが流行っていた時期でしたので、サボっていないで勉強するように階段を降りていくと、そこには誰もいませんでした。

その時は特に気にせず、わたしは首を捻りながら塾の中に戻っていきました。
ところが巡回を行っていると、三回に一度は、そのようなことが起こりました。
最初、何かビルの設計上の問題で、上の階の声が反響しているのだろうか。他の塾の子どもがそこでお喋りでもしているのだろうかと考えたのですが、十一月も半ばになってくると、わたしはさすがにおかしいことに気づいてきたのです。

塾には個人スペースにハンガーが用意されていて、子どもたちはコートや上着が邪魔にならないようそこにかけるのです。
すこし厳しい個別塾でしたので、マフラーや防寒着をつけて授業を受けることは許されず、塾の中は少し熱いくらいの室度に設定されていました。
その頃、女の子たちのグループはトイレで話の輪を作るようになり、女性の先生がよく注意に行かされていました。

気温が十度を下回るような気候が続く寒い時期に、煙草の火もつけられないような吹きさらしのところで上着もなしに長々とお喋りをする子どもはいません。
そう思ったら、ぞぞぞ、と何か背中に冷たいものを感じてしまい、恐がりのわたしは声が聞こえてきても下に降りて行かなくなりました。

十二月に入り、子どもたちが本格的にピリピリし出すと、残業が増えました。
事務給につられたせいもありますが、受験生にやらせる小テスト作りに取り組んでいたからです。

週に二度実施される社会と理科のテストを作っていますと、時計の針は夜の十時を越えます。
生徒はもちろん講師は皆お帰りになり、社員の先生と二人、十一時を回るか回らないかという時間になって、一緒に塾に鍵をかけて帰ることもしばしばでした。

わたしは、本当は早く帰りたい気持ちでいっぱいでした。
面倒だという理由の他に、非常階段がある廊下を目の前にしたブースで教材研究をしなければならなかったからです。
受付側にある講師室で、社員の先生とふたりで仕事が出来ればどれほど良かったことでしょう。
でも、生徒にテストの内容がバレるという理由から、端っこに追いつめられて夕方から仕事をしていたわたしは、何だか怖いから夜は隣でやらせてくれとは、気恥ずかしくて言うことが出来なかったのです。

最初、それは夕の五時を過ぎた頃に始まります。
階段を上ってくる音がまずして、降りて行くのが聞こえます。
子どもたちは、私の部屋の前を横切り、廊下のトイレに行くためにドアを出入りします。

「黒猫のおじさん、今裏から上がってきた?」

子どもたちは、必ず首を横に振りました。
わたしは、どうしてもトイレに行きたい時は、情けない話ですが男の子がやってきた時についていくだけになりました。

それでも、夜の九時頃までは良いのです。
外にいる「ひと」は、相変わらず元気に上り降りしていますが、生徒や先生が大勢いるから、まだ塾の中は騒然としていて、怖がる余地がないほど活気があります。

しかし、十時近くになって人がいなくなってくると堪りませんでした。
もしも教え子に受験生が六人もいなければ、集団授業のクラスなど持っていなければ、さっさと辞めてしまっていたかもしれません。

その足音は、いつも一定の歩調を保っていました。
遅すぎもせず、早すぎもせず、機械的な調子で上がってきては、くるりとターンをして降りていきます。しばらくすると再び上がってきて、運動部のメニューのようです。
そのように、上がり降りの行為にはまるで意味がないようでした。
それがわたしには逆に怖かったのですが。

わたしは、それが一体何であるかを、よく分かりませんでした。
もしかしたら人間かもしれないし、人間ではないかもしれません。

とにかく、どちらにしても子どもに良くないものであったら困ります。
わたしは一度、社員の先生に「変な人が上がってきているかもしれない」と相談をしました。

すると「裏は出入りが自由になってきているから、もしも何かあったら、毅然と追い返して下さい」と平気で凄い言葉を返され、わたしは今にも泣きそうな顔で頷きました。

階段の「ひと」は相変わらず足腰を鍛え続けていましたが、特に悪さもしない上に、特に対処も出来ないので、わたしも次第に足音に慣れてどうでもよくなってきました。

しかし十二月の終わり、冬期講習のまっただ中の夜、とうとうどうでもよくないことが起こりました。

その日も、最後にわたしと社員の先生が一人塾の中に残って黙々と仕事をしていました。
テキストのコピーを切り貼りしていると、例の足音が上がってきました。

わたしは、それが階段の上で止まったままであることに気づいて、視線を上げました。
銀のノブがついた鉄の扉の向こうで立ち止まっている誰かに、わたしは動けなくなりました。
わたしは、後ろの端にいる社員の先生の方へと振り返りました。
すると、ドアをノックする音が目の前から聞こえ出しました。

とんとんとん

一定のリズムで、三度ドアはノックされました。
わたしは、ブースの椅子から立ち上がって、後ずさりしました。

とんとんとんとん

ドアを叩く音がひとつ増えました。
わたしは「先生」と叫びました。

受付の方から、答えるように、三台の卓上電話のベルが一斉に鳴り出しました。

ドアが、五つ叩かれました。
それから、続けざまにトントントントントントントントン、と止まらなくなりました。

「せんせい!」

わたしは迷路のような、ついたてに仕切られたブースの間を駆け抜けて、講師室に駆け込みました。

それは、その中年の男の先生がちょうど電話を高く取り上げて、まるで投げつけるような渾身の力で受話器を叩き置いたところでした。

ガチャン!

と激しい音で切ったと同時、電話は一斉に黙り込みました。

それから、先生は腰を抜かしたわたしを無理矢理立たせ、腕を掴んで、引きずるように奧の廊下へと向かいました。

ノックをする音はドドドドドドドドドドドと大きなものになっていました。
「先生、こういうのは、毅然と追い返すと教えたでしょう」

その人は、生徒を怒鳴りつけるような大きな声で、「こんにちは!」とドアに向かって挨拶をしました。

「こんにちは! S個別指導塾U駅前校です、生徒さんのご父兄でなく、お子さんの相談以外で御用のない方はお帰り下さい!」

思い切り良くドアノブを捻り、大きく扉を外に開きました。

廊下は闇の中に、非常口の緑がぼんやりと光っていました。廊下には誰もいませんでした。

「これで来年も、安泰でしょう」

先生は、座り込んで耳を塞いでいるわたしに晴れやかに言いました。


わたしは、それから二月まで塾に通いましたが、夜の残業はやめさせて貰いました。

その塾は、まだわたしの通勤途中の駅前にあります。おわりです。
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この間、ツレと軽く飲みながら話してたんだがそのうち『怖い夢の話』ってので盛り上がった事があった。

怖いとは言え所詮は夢なわけで、その殆どがベターなものか、どうしようもなく突拍子もないものばかりだった。
『夜の病院で幽霊に遭遇』とか『パンストを頭から被った男に追い回されてマシンガンで蜂の巣にされる』とかまあ、全体的にそんな二極テイストだ。

そんな中、俺はふと思い出した夢の話があって、これがなかなかに不気味で気色悪いものだったので「ああ。次はこれにするか」とか思いながらビールをちびちびやっていたんだが――

「そう言えば、最近――つっても1年くらい前か? こんな夢見てよ……」

と、ツレが先んじて話し始めたもんだから、しょうがなく聞きに回ることにした。

ツレの話の内容はこうだ。


舞台は婆さんの田舎。
中学時代くらいのツレは友人数人を引き連れて山道を歩いている。日差しは刺し貫くように暑い。

ツレと友人連中は犬のように舌を垂らし、ひいこら言いながら歩き続けていたが、そのうち誰ともなく言い始めた。

「なあ。どっかで休まないか?」

願っても無い話だったのだが休むに適した場所もなく、仕方ないので暫く歩き続けていたが、暫くすると不意に道が開けて、大きな原っぱみたいな所に出たそうだ。

(この山にこんな所あったのか……)

とか思いつつ辺りを見渡してると、ふと妙なスペースがある事に気付いた。
それは多分『家の跡地』なのだろうと、ツレはそう思った。
コンクリートの基礎がむき出しになっているような、恐らくその場所に家があったであろう名残みたいなものだったそうだ。
恐らく火事か何かで焼け落ちた家から残骸を取り除いたらこんな感じになるんじゃないかなとかそんな代物で、基礎はあるんだが家屋を為していたであろう木材とかはどこにも見当たらなかったそうだ。

そして、そこにひとりの老婆がぽつんと座っていたんだという。
恐らく部屋の跡であろう場所に畳が一枚。着物姿の老婆はそこにひとりぽつんと正座していたという。

背中を丸めて、枯れ枝みたいな手を腹の前で重ねて――まるで眠っているかのように目を閉じたままじっとしているその姿は見た目にも酷く不気味なもので、友人共々思わず生唾を飲み込んで二、三歩後ずさったそうだ。

だがその時、いきなり老婆の首がぐるんと勢い良く回ったかと思うと、枯れ枝を叩き折るような音と共にツレ達の方に向けられた。
そして閉じられていた瞼がゆっくりと持ち上げられ――

「……ッ!?」

ツレは思わず言葉を失ったそうだ。

それもその筈で、しわくちゃ瞼の向こうから現れたのは白目の部分が真っ黒で、瞳が血のように真っ赤なまさしく異形の眼だったからだ。
それがまるで昆虫か爬虫類のようにぎょろぎょろと蠢き、やがてツレ達の方をにらみつける様に凝視した。

ツレもその周りの友人もすっかりビビリ入って逃げようとしたが、恐怖ですくんで体が動かない。

そうこうするうちに老婆がゆっくりと立ち上がる。
腰は相変わらずひん曲がったままで、重ねていた手をゆっくりと解く……そこでまた息を飲んだ。
その腕は異常に長かったからだ。

まるでゴムひものようにだらりと伸びて足首の辺りまで垂れ下がり、ひくひくと脈打つように動いていたそうだ。
それはまるで昆虫か何かの腕みたいだった。

そして赤眼の老婆は、その細くて干からびたからだをびくんと波打たせると、まるで糸の絡まった操り人形みたいに滅茶苦茶な動きをしながら凄いスピードで近づいてきたそうだ。

流石にそこまでショッキングな光景を見せられると、怖気づいているわけにも行かず、相方と友人たちは弾ける様にその場から走って逃げたそうだ。

だけど、どれだけ走っても老婆の息遣いのようなものとあの枯れ枝を折るような音が直ぐ背後から響いてきて――

「ひっ!?」

肩を何かに掴まれた所でいきなり眼が覚めたそうだ。


「いやあ、あれはすげぇ怖かったなぁ……まさかこんな歳にもなって、あんな夢見るとは思わんかった」

苦笑混じりに話を終えたツレに、だけど俺は気が気でなかった。

「なあ。それ、オマエが見た夢なんだよな?」

尋ねるとツレは「そうだけど?」と訝しげに頷く。

「誰かに似たような話を聞いたからとか、そう言うことは?」

俺の質問にツレは暫しの間考えるような仕草を見せたが、やがてあっさりと「いや、それはない」と断言した。
「俺の夢がどうかしたのかよ?」

今度は逆に問うてきたツレに俺はどう答えれば良いのか分からなかった。

何故ならツレの夢に出てきた赤眼の老婆ってのは――

「俺もそのババァの夢、見たことあるんだわ……高校くらいの時に」

俺の言葉にツレは「は?」と困惑顔。

そんなツレを尻目に、俺はさっき話そうとした夢の事を話し始めた。


その時俺は、やはり中学くらいの時の姿で婆ちゃんの家の裏手の山の、神社へと続く坂道を友人と一緒に歩いていた。

日差しは焼け付きそうなくらい暑く、二人とも汗だくになりながら歩いていたのを覚えている。
いくら田舎子供の体力とは言え、この暑さには適わない。

そうこうしているうちに友人がぽつりと言った。

「なあ、休憩せんか?」

その言葉に俺は大賛成だったんだが、生憎とこの辺りには日を遮るような木陰が無い。
どこかに良い塩梅のスペースは無いものかと辺りを見回していたわけだが――

「……あれ?」

ふと、神社の鳥居の辺りにぽつりと人影が見えた。

それは見たことの無いおばあさんで、腰は曲がり手足は枯れた枝みたいに細く、その顔はしわくちゃで瞼は眠っているみたいに横一文字に閉じられている。
その容姿はツレが先ほど話してくれた赤眼の老婆そっくりだ。
そして、夢の中の俺が

(うわー。あの婆ちゃん元気やなぁ)

とかそんな事を思っていたら、不意に何の脈絡もなくいきなり婆さんの瞼がかっと見開いた。

そして俺はそこに確かに見た。
白目の部分が真っ黒で、瞳だけが血のように赤い。それはツレが見た赤眼の老婆そのものだった。

そして同じように身体の前で組んでいた手を解くと、それはだらりと足首の辺りまで垂れ下がり、パキパキと枯れ枝の折れるような音が――随分と距離があったにも関わらず確かに響き渡る。

「おい! あれヤバイよな!?」

隣の友人が間抜けな問いかけをしてくる。
俺はがくがくと頷きながらその場から逃げようときびすを返したんだが――

「うわ、追っかけてきた!?」

それよりも早く、老婆が坂道を凄い勢いで駆け下りてきた。壊れた操り人形みたいな独特な動きで、だ。

俺と友人は必死になって逃げたが、直ぐに真後ろまで追いつかれたらしい。
肩越しに枯れ枝の折れるような音と、変な息遣いのようなものが聞こえてきた。

(やばい! 捕まる!?)

そう思った瞬間、誰かに肩をがっしりと掴まれて――


「俺もそこで目が覚めたんだよな……」

話し終えた俺とツレの間に、妙な沈黙が流れた。
だけどやがて、ツレの方が苦笑しながら、

「またまたそう言うこと言って、変な怖がらせ方しようとする……話合わせただけだろ?」
と、どこか必死さを込めながら問うてきた。

だけど俺はそんな気は毛頭もなかったし、何よりもだからこそ最初に「誰かに似たような話聞いたことあったか?」って聞いたんだ。

そしてこれは断言出来る事だが、俺はツレに赤眼の老婆の話をしたことなんて一度も無い。
そして似たような話が出回った事も多分、無いと思う。

俺は北陸の出身で大学になるまで県外で過ごしたことはない。ツレは九州あたりの出身で、やっぱり九州より北で過ごした事は全然無い。
俺とツレが出会ったのは大学以降。もしそんな話が共通の話題として出回っていたら、大層大規模な噂話として全国的に有名になってたと俺は思う。

もしかして、夢の中を感染するように渡り歩いているモノなんだろうか……とか、ちょっと出来すぎた事を思ったりもしている。

果たして、俺とツレが見た赤眼の老婆ってのは一体、何だったんだろうか。
そして俺とツレの他にも、アレを夢に見たことのあるヤツとかって、居るんだろうかね。
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これは俺が大学生の時の話。
いろんな経験をしてきたが最も印象に残った話。

一つ下の高校の時の後輩(仮にSとする)が俺と同じ大学へ入学してきた。それも俺のいたアパートのすぐ近く。
Sは俺の二つ下で俺が三年の頃の部活動の後輩だ。

そのSと偶然、夜コンビニで「アレ?」って感じで久々の再会を果たしファミレスでお互いの近況報告をしたわけ。
すると、

「先輩、実は相談があるんですよ、俺、まだ来たばかりで知り合いもいないから相談できなかったんですが」

その相談とは、なんでもSのアパートって古くて昭和の世代には懐かしくなるようなアパート、立地条件が良くて安いから入居したんだが、引っ越しした時の夜、ガサッと音がしたらしい。

何だろうと思い玄関外に郵便ポストがあるんだが中を見ると白い封筒がある。
何かの訪問販売かとくらい思って中を開いてみた。

中には、

「30(488)」

とだけ書かれていた紙が一枚だけだという。

それが一週間前の話、毎日夜になるとポストに入ってあって昼間には絶対ないという。
来たばかりのSを知る奴は居ないわけだし確かに気になるがS自身心当たりがない。

んで中身はというと毎日変わるんだという。

「29(489)」 

「28(490)」

「27(491)」

「26(492)」

って。意味が分からん。

で今日で一週間。
という事はSと会った今日は

「23(495)」

だなとSに話すと、

「見るのが嫌でコンビニにいたんですよ」

という事だった。
その時には俺の好奇心がくすぐられていた。

俺が、

「よし、今日は俺が一緒にお前のアパートに泊まってやるよ、正体暴くぜ」

「マジっすか! 助かりますよ!」

Sがうれしそうな顔で言った。
Sは俺の家が神道系であるのを知っていたから尚更だったんかな。

兎にも角にも俺は自分のアパートに戻り着替えを持ち、冷蔵庫にあったビールを数本、念のために和紙、筆、粗塩、御神酒(半分飲む気持ち)を持ってSのアパートに向かった。

着くやいなやアパートを見た俺は唖然としてしまった。
まだこんなアパートがあるのか? ってくらいの古いアパート、これだけ古い建物は住んでいた色んな人の残留思念があって様々な形で現れるわけだ。

とはいっても古いだけで別段いやな感じはしなかったが。
……ただ一カ所を除いてだけど。

「なあ、もしかしてSの部屋はあそこか?」

俺が指を指したのは二階の一番左の部屋だ。
あそこだけなんだ、浮いてる部屋はさ。

「何でわかったんですか?」

Sが不思議そうに答えた。

そりゃ少しは(感じる人)だったら誰でも気付く。
Sは天然というか霊感0だ、仕方ないか。

Sの部屋に入り取りあえず中を全部見るがトイレ、台所、風呂(外見は古いのに中は結構現代的)などの水回りはなにも感じない。
しかし部屋全体は妙に違和感がある。

「せ、先輩…」

Sは何だか分からずにうろたえている。

俺「なあS、お前、俺んちが神道系なの知ってるだろ」

S「あ…はい」

俺「あ、ここだな…」

机の引き出し。

S「あ、そこに例の手紙が入ってます…」

引き出しをあけると手紙が数枚ある、中は確かに意味不明な数字。
俺は「なあ、この手紙は処分しろ」とSに言った。
かなりいやな感じのする手紙だ。

「いや、そう思ったんですが、そういうのって不用意に燃やしたりするのはマズいと思って…」

Sの言うことは最もだ。

とにかく霊的な感じがしたから持ってきた粗塩を玄関の外側・ベランダのサッシ・台所の窓・トイレの窓に盛り塩をして親父から教わった護符(初歩的なものだが)を盛り塩をした所に貼った。

俺「よし、これで簡単には近づけない、それより酒飲もう、缶詰とかないのか?」

S「先輩、酒飲む気分じゃないですよ、未成年だし」

俺「いいから、大丈夫」

Sに俺が持ってきたビールを飲ませた。
まあなんだかんだいってSも酒が入ってから気持ちが大きくなってきたようだった。

それから二時間くらい経った頃、夜の零時近く。
耳鳴りがし始め体が重くなってきた。

そう、来たのだ。
それも強い力を持ったもの。

俺「来た…!」

S「え!?」

さっきまで酒で気が大きくなっていたSが急に泣きそうな顔になっていた。

凄く肌がピリピリした感じで耳鳴りが止まらない。
こんな時って大抵はロクなもんじゃないのは分かっていた。
とにかく体が重い、気持ち悪くなってグッタリ。

「せ、先輩! 大丈夫ですか!?」

Sはなにも感じないようなのだ。

「おい、S…何ともないのか?」

Sは青ざめながらも、

「俺は平気です、先輩こそ大丈夫ですか!?」

すると玄関外のポストがカタッと音がした。

俺はSに背中を平手で強く叩くように言った。
バシッという音と共に痛みを感じて体が軽くなった。

「よし!」

俺はダッシュで玄関に向かいガチャッとドアを開けた。
居たのは、


白のブラウスに灰色のスカート、ブラウスには赤いリボンを付けた肩くらいまで髪がある若い女。


この服装、見たことある…。
俺とSの卒業した高校の女子の夏の制服!

その女も見覚えがある、Sと確かに関わったことのある女。

俺が瞬きした瞬間女の姿は消えていた、まるで幻のようだった。

Sに見た女の特長を話した。

「M沢先輩…」

Sがポツリと言った。
俺も思い出した、女子テニス部にいたM沢の事を。

M沢は俺の一つ下の女でSにストーカーまがいの行為をしていた。んで自主退学。
思いこみが激しいのは知っていたがココまでとは思わなかった。

俺は地元の後輩に電話してM沢のその後を教えてもらった。
M沢は自主退学後に通信制で高校卒業の資格を取り今は地元の運送屋の事務員らしい。

そして親父に相談した。

「場所が悪い、引っ越せ」と言った。
そして親父が御札を送ってきて「100日間肌身はなさず持っていろ」と。

親父にいろいろ聞いてみた。

「手紙の数字は知らん、だが生霊ってのは強い思いが具現化するから物理的に何かを持ってくる可能性は稀だがある」

地元の友達にM沢の事を聞くとかなりイッテしまい精神病院に入院したって話。
んで入り口にあった盛り塩は水をかけられたようにドロドロになっており、俺の書いた御札はきれいにすべて真っ二つになっていた。

それからSには不思議な手紙が来なくなった。
あの手紙の数字は今も不明だがSは元気にやっている。
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うちの爺さんは若い頃、当時では珍しいバイク乗りで、金持ちだった両親からの何不自由ない援助のおかげで燃費の悪い輸入物のバイクを暇さえあれば乗り回していたそうな。

ある時、爺さんはいつものように愛車を駆って山へキャンプへ出かけたのだそうな。
ようやく電気の灯りが普及し始めた当時、夜の山ともなればそれこそ漆黒の闇に包まれる。

そんな中で爺さんはテントを張り、火をおこしキャンプを始めた。
持ってきた酒を飲み、ほどよく酔いが回ってきた頃に何者かが近づいてくる気配を感じた爺さん。

「ツーリングキャンプ」なんて言葉もなかった時代。
夜遅くの山で出くわす者と言えば、獣か猟師か物の怪か。
爺さんは腰に差した鉈を抜いて、やってくる者に備えたそうだ。

やがて藪を掻き分ける音と共に、「なにか」が目の前に現れたのだそうな。
この「なにか」というのが、他のなににも例えることが出来ないものだったので「なにか」と言うしかない、とは爺さんの談である。

それはとても奇妙な外見をしていたそうだ。
縦は周囲の木よりも高く、逆に横幅はさほどでもなく、爺さんの体の半分ほどしかない。
なんだか解らないが「ユラユラと揺れる太く長い棒」みたいのが現れたそうだ。

爺さんはその異様に圧倒され、声もなくそいつを凝視しつづけた。
そいつはしばらく目の前でユラユラ揺れていたと思うと、唐突に口をきいたのだそうな。
「すりゃあぬしんんまけ?」

一瞬なにを言われたのかわからなかったそうな。
酷い訛りと発音のお陰で、辛うじて語尾から疑問系だと知れた程度だったという。

爺さんが何も答えないでいると、そいつは長い体をぐ〜っと曲げて、頭と思われる部分を爺さんのバイクに近づけると、再び尋ねてきた。

「くりゃあぬしんんまけ?」

そこでようやく爺さんは「これはオマエの馬か?」と聞かれてると理解できた。

黙っているとなにをされるか、そう思った爺さんは勇気を出して「そうだ」とおびえを押し殺して答えたそうだ。

そいつはしばらくバイクを眺めて(顔が無いのでよくわからないが)いたが、しばらくするとまた口を聞いた。

「ぺかぺかしちゅうのぉ。ほすぅのう(ピカピカしてる。欲しいなぁ)」

その時、爺さんはようやくソイツが口をきく度に猛烈な血の臭いがすることに気が付いた。
人か獣か知らんが、とにかくコイツは肉を喰う。

下手に答えると命が無いと直感した爺さんは、バイクと引き替えに助かるならと「欲しければ持って行け」と答えた。
それを聞いてソイツは、しばし考え込んでる風だったという(顔がないのでよくわからないが)。

ソイツがまた口をきいた。

「こいはなんくうが?(これはなにを喰うんだ?)」

「ガソリンをたらふく喰らう」

爺さんは正直に答えた。
「かいばでゃあいかんが?(飼い葉ではだめか?)」

「飼い葉は食わん。その馬には口がない」

バイクを指し示す爺さん。

「あ〜くちんねぇ、くちんねぇ、たしかにたしかに」

納得するソイツ。

そこまで会話を続けた時点で、爺さんはいつの間にか、ソイツに対する恐怖が無くなっていることに気が付いたという。

ソイツはしばらくバイクの上でユラユラと体を揺らしていたが、その内に溜息のような呻き声を漏らすと

「ほすぅがのう、ものかねんでゃなぁ(欲しいけど、ものを食べないのでは…)」

そう呟くように語ると、不機嫌そうに体を揺らしたという。

怒らせては不味いと思った爺さんは「代わりにコレを持って行け」と持ってきた菓子類を袋に詰めて投げてやったという。

袋はソイツの体に吸い込まれるように見えなくなった。
するとソイツは一言「ありがでぇ」と呟いて山の闇へ消えていったという。

その姿が完全に見えなくなるまで残念そうな「む〜 む〜」という呻きが響いていたという。
爺さんは、気が付くといつの間にか失禁していたという。
その夜はテントの中で震えながら過ごし、朝日が昇ると一目散に山を下りたそうだ。

家に帰ってこの話をしても、当然誰も信じてはくれなかったが、ただ一人爺さんの爺さん(曾々爺さん)が

「山の物の怪っちゅうのは珍しいもんが好きでな、おまえのバイクは山に入った時から目を付けられていたんだろう。諦めさせたのは良かったな。意固地になって断っておったらおまえは喰われていただろう」

と語ってくれたのだそうな。

以来、爺さんは二度とバイクで山に行くことはなかったそうだ。

ちなみに、件のバイクは今なお実家の倉に眠っている。
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子供の頃の怖い体験がふと思い出されたのでカキコ。
長くなると思うんで、思い出したのをまとめながらボチボチ書きます。

9月にうちのばあちゃんの姉(おおばあ、って呼んでた)が亡くなって、一家揃って泊まりで通夜と葬式に行ってきた。
実質、今生きてる親族の中では、おおばあが最年長ってのと、うちの一族は何故か女性権限が強いってのもあって、葬式には結構遠縁の親戚も集まった。

親戚に自分と一個違いのシュウちゃん(男)って子がいたんだけど、親戚の中で自分が一緒に遊べるような仲だったのは、このシュウちゃんだけだった。

会えるとしたら実に15年振りぐらい。
でも通夜にはシュウちゃんの親と姉だけが来てて、期待してたシュウちゃんの姿はなかった。

この時ふと、小学生の頃に同じように親戚の葬式(確かおおばあの旦那さん)があって、葬式が終わってからシュウちゃんと一緒に遊んでて、怖い目にあったのを思い出した。


うちの父方の家系はちょっと変わってて、家督を長男じゃなくて長女が継いでるらしい。

父方の親族はおおばあもみんな日本海側の地域にいるんだけど、うちは親父は三男ってのもあって、地元では暮らさず、大阪の方まで出てきてて、そういった一族の風習とは無縁。
シュウちゃんの家もうちと同じように地元を離れた家みたいで、神奈川在住。

夏休みは毎年、お盆の少し前ぐらいからおおばあの家に集まって、法事だの地元の祭に行ったりだの、親族で揃って過ごす。
うちとかシュウちゃんの家なんかは、他の親族と違ってかなり遠方から来ることになるので、おおばあの家で何泊かすることになる。

おおばあの本宅が海に近い(道路挟んで少し向こうに海が見えてる)から、朝から夕方までシュウちゃんと海に遊びに行ってた。
俺が小学校2、3年の冬に、おおばあの家で葬式があって(死んだのは旦那さんのはず)、その時もうちは泊まりがけで通夜と葬式に出席。
シュウちゃんところも同じように泊まりで来てた。

元々俺は脳天気な人間なんだけど(さっきのカキコ見ての通り)、その頃は輪をかけて何も考えてなくて、葬式云々よりもシュウちゃんと遊べるってことしか頭になかったw

朝出発して、おおばあの家に着いて、ご飯食べてしばらくしてから通夜。
この辺は何かひたすら退屈だったことしか覚えてない。全然遊べないし。

泊まる時は「離れ」が裏にあって、そこに寝泊まりするんだけど、その時は他に来てた親族がほとんど泊まるから離れが満室。自分たちは本宅に泊まった。

晩飯終わってから、「何でこんな日に亡くなるかねえ」とか親戚がボソっと口にしたのを覚えてる。

翌朝起きたら(大分早かった。6時とか)、おおばあとかばあちゃん、他の親戚の人がバタバタしてて、家の前に小さい籠? 何か木で編んだそれっぽいものをぶら下げて、それに変な紙の短冊? みたいなものを取り付けたりしてた。

ドアや窓のあるところ全部に吊してて、紐一本でぶら下がってるから、ついつい気になって手で叩いて遊んでたら、親父に思いっきり頭殴られた。
そのうち雨戸(木戸って言うのかな)とか全部閉めはじめて、雨戸の無い台所とかは大きな和紙みたいなのを窓枠に画鋲でとめてた。

人が死んだ時の風習かなあ、ってのが最初の感想だった。


朝も早いうちから告別式がはじまって、途中はよく覚えてないけど、昼少し過ぎた辺りにはほとんど終わってた。
薄情な子供かもしれないけど、これ終わったら遊べるってことしか頭になかったなあ。

途中、昼飯食べたんだけど、みんなあんまりしゃべらなかったのを覚えてる。

何時頃か忘れたけど、結構早いうちに他の親戚は車で帰っていって、本宅にはうちの家族とシュウちゃんの家族だけ残った。
夏みたいに親戚みんなで夜までにぎやかな食事ってのを想像してたんだけど、シュウちゃんとちょっと喋ってるだけで怒られたのが記憶に残ってる。

家の中でシュウちゃんと遊んでたら「静かにせえ」って怒られた。
夕方にいつも見てるテレビ番組が見たくて「テレビ見たい」って言っても怒られた。

「とにかく静かにしとけえ」って言われた。
今思ったら、親もおおばあもばあちゃんも喋ってなかった。
あんまりにも暇だからシュウちゃんと話して「海見にいこう」ってことになった。

玄関で靴をはいてたら、ばあちゃんが血相変えて走ってきて、頭叩かれて、服掴んで食堂の方まで引っ張っていかれた。

食堂にシュウちゃんのお父さんがいて、ばあちゃんと二人で

「今日は絶対に出ちゃいかん」

「二階にいとき」

って真剣な顔して言われた。

そのままほとんど喋ることなく、シュウちゃんとオセロか何かして遊んでて、気が付いたら2階で寝かされた。


どれぐらい寝たのか分からないけど、寒くて起きたのを覚えてる。

2階から1階に行く時に、魚臭さのある匂いがした(釣場とかよりももうちょっと変な潮臭さ)。

時計を見に居間を覗いたら、おおばあとかうちの親が新聞読んだりしてて、誰も喋ってなかった。

何か妙に気持ち悪くて、トイレで用を足した後、2階に戻ろうとしたら廊下でシュウちゃんと出くわした。

「あんね、夜に外に誰か来るんだって」

とシュウちゃん。

おおばあ達が今朝、何かそれらしいことを口にしていたらしい。それをシュウちゃんが聞いたようだ。

ちょっと確かめてみたいけど、2階も雨戸が閉まってて外が見えない。
「便所の窓開くんちゃうかな」

さっきトイレの小窓がすりガラスで、雨戸がなかったのを思い出した。
便所は家の端で海側(道路側)に窓があるから、二人で見に行こうということになった。

冬のトイレは半端じゃなく寒いんだけど、窓の一つ向こうに何かがいるという思いこみから、秘密基地に籠もるような、奇妙な興奮と、同時に背筋に来るような寒気を覚えた。

「ほんまにおるん?(本当にいるの?)」

小声でシュウちゃんに話しかけ、シュウちゃんもヒソヒソ声で

「いるって、おばあが言ってたもん」

トイレの小窓は位置が高く、小学生の自分の背丈では覗けない。
便器の給水パイプが走ってるから、そこに足を乗せて窓を覗く形になる。

最初は自分が外を見ることになった。
音を立てないように静かに窓をずらして、外を見た。

軒の下で籠が揺れてる。
視界の端、道路から家まで、何か長いものが伸びていた。

よく分からないけど、その長いもののこちら側の先端が、少しずつこっちに向かってきている。

10秒ほど見てから、何か無性に恐ろしくなって身震いして窓を閉じた。

「誰かいた?」

「よく分からんけど、何かおった」

「僕も見る」

「何かこっちに来てるみたいやし、逃げようや」

多分、自分は半泣きだったと思う。
寒さと、得体の知れない怖さで今すぐ大声で叫んで逃げたかった。
「な、もどろ?」

トイレのドアを開けて、シュウちゃんの手を引っ張った。

「僕も見る。ちょっとだけ。ほんのちょっとだけだから!」

シュウちゃんが自分の手を振り切って戻り、給水パイプに足を乗せた。

窓をずらして覗き込んだシュウちゃんは、しばらくしても外を覗き込んだまま動かなかった。

「なあ、もうええやろ? もどろうや」

「**くん、これ、」

言いかけて途中で止まったシュウちゃんが、外を覗き込んだまま「ヒッ ヒッ、」と引きつったような声を出した。

何がなんだか分からなくなってオロオロしてると、自分の後ろで物音がした。

「お前ら何してる…!」

シュウちゃんのお父さんがものすごい形相で後ろに立ってた。

言い訳どころか、一言も喋る前に、自分はシュウちゃんのお父さんに襟を掴まれ、便所の外、廊下に放り出された。

一呼吸おいてシュウちゃんも廊下に放り出された。
その後、トイレのドアが叩きつけるように閉められた。

音を聞きつけたうちの親と、おおばあが来た。

「どあほう!」
親父に張り手で殴られ、おおばあが掴みかかってきた。

「**(自分の名前)、お前見たんかい? 見たんかい!?」

怒ってると思ったけど、おおばあは泣きそうな顔をしてた気がする。
何一つ分からないまま、周りの大人達の剣幕に、どんどん怖くなっていった。

「外見たけど、何か暗くてよく分からんかったから、すぐ見るのやめてん」

答えた自分に、おおばあは「本当にか? 顔見てないんか!?」と怒鳴り、泣きながら自分は頷いた。
そのやり取りの後ろで、親父と後から来たばあちゃんがトイレの前に大きな荷物を置いて塞いでた。

シュウちゃんのお父さんが「シュウジ! お前は!?」と肩を揺すった。
自分も心配でシュウちゃんの方を見た。


シュウちゃんは笑ってた。


「ヒッ ヒッ、」

としゃっくりのような声だけど、顔は笑ってるような泣いてるような、突っ張った表情。

「シュウジー! シュウジー!」

とお父さんが揺さぶったり呼びかけたりしても反応は変わらなかった。
一瞬、みんな言葉に詰まって、薄暗い廊下で見たその光景は歯の根が合わないほど怖かった。

シュウちゃんが服を脱がされて、奥の仏間の方に連れていかれた。
おおばあはどこかに電話している。居間でシュウちゃんのお母さんと姉が青い顔をしていた。
電話から戻ってきたおおばあが、

「シュウジは夜が明けたらすぐに『とう**さん(**は聞き取れなかった)』とこに連れてくで!」

と、まくし立てて、シュウちゃんの親はひたすら頷いてるだけだった。

自分はばあちゃんと親に腕を掴まれ、2階に連れていかれた。
やっぱり服を脱がされて、すぐに着替えさせられ、敷いてあった布団の中に放り込まれた。

「今日はこの部屋から出たらいかんで」

そう言い残して出て行ったばあちゃん。
閉められた襖の向こうから、何か短いお経のようなものが聞こえた。

その日は、親が付き添って一晩過ごした。

明かりを消すのが怖くて、布団をかぶったまま親の足にしがみついて震えてた。
手足だけが異様に寒かった。


翌朝、ばあちゃんが迎えに来て、1階に降りた時にはシュウちゃんはいなかった。
「シュウジは熱が出たから病院にいった」とだけ聞かされた。

部屋を出る時に見たんだけど、昨日玄関や窓にぶら下げてあった籠みたいなものが、自分の寝てた部屋の前にもぶら下げてあった。

朝ご飯食べてる時に、おおばあから「お前ら本当に馬鹿なことをしたよ」みたいなことを言われた。
親は帰り支度を済ませてたみたいで、ご飯を食べてすぐに帰ることになった。
おおばあ、ばあちゃんに謝るのが、挨拶みたいな形で家を出た。

家に帰った日の夜、熱が出て次の日に学校を休んだ。

ここまでが子供の頃の話。


翌年の以降、自分はおおばあの家には連れていって貰えなかった。

中学2年の夏に一度だけおおばあの家に行ったが、その時も親戚が集まってたけど、シュウちゃんの姿はなく

「シュウジ、塾の夏期講習が休めなくてねえ」

と、シュウちゃんのお母さんが言ってた。

でも今年9月のおおばあの葬式の時に、他の親戚が

「シュウジくん、やっぱり変になってしまったみたいよ」

と言ってたのを聞いた。

あのときシュウちゃんが何を見たのかは分からないし、自分が何を見たのかははっきり分かってない。

親父にあのときの話を聞いたら「海を見たらあかん日があるんや」としか言ってくれなかった。
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私はよく予知夢みたいのを見ます。しかも良くない事が起こるのに限って。
これはそんな夢の話で、(個人的に)ぞっとした話です。

私は白いハイエースみたいなワゴン車の真ん中の席に乗っているのですが、一番後ろに見知らぬ女の人が三人座っていて、その一人が

「悪魔は存在するんですよ、本当にいるんですよ」

と気味悪くニヤニヤしながらずっと繰り返しているのです。

最初は相手にしていないのですが、あんまりしつこいので「そう思う心が悪魔を呼ぶんですよ!」と言うと、一層ニタニタしだしたのです。
その瞬間、「しまった。こいつには敵わない。相手にしてはいけなかった」と思うところで目が覚めます。

起きても、その女の真っ赤に塗った口がニヤニヤと笑うところや、異様な目つきがなんとも気味悪くて、すぐに母に電話をしました。
母は普段から私が予知夢的な夢を見ることは知っていますし、そういう夢の場合起きた時独特の感覚がするのです。

すると母は話を聞くと「…わかった。またあとで電話するから」と言って切ってしまいました。
いつもなら、どういう意味なんだろう、あの件に関することではないだろうかなどと話し合いになるのに、おかしいなと思いつつも母からの電話を待つことにしました。

数時間後に母から電話がきました。
「あんたが今朝みたあの夢だけどね、なんの事かすぐわかった」と言って、その内容を話してくれました。
うちの両親は離婚をしているのですが、私達子供はみんな母に引き取られ、家を出て暮らしています。
父もまた、かつて家族で暮らしていた家を出、アパートで暮らし始めました。

なので元家族が住んでいた家(一軒家)は今は誰も住んでいないのです。
少し急にバタバタと家を出たので、その家にはわずかに荷物が残っている状態でした。

母は、その日残った荷物を取りにその家に行きました。
すると隣に住むおばさんにたまたま出会い声をかけられたそうです。

このおばさんは両親が新婚でそこに住み始めた時、私が生まれる前からの知り合いで、結構交流があるのですが、最近になってなんかおかしな宗教を始め、その本部のある地が父がよく仕事で行く場所にあるからと、仕事のついでに父に車を出してもらっていたのです。

そして、今度は母にそれをお願いできないかと言ってきたそうで、母も二つ返事で了解したそうです。
その際に、おばさんが以前父に車を出してもらった時のことを話し出したそうです。

その時は、おばさんの友達3人(同じ宗教を信仰してる)も連れてきたそうなんですが、おばさんは助手席に、そして当時使っていた車が7人乗りのイプサムなのですが、3人の友達は何故か真ん中を空けて一番後ろ、3列目にみんなで座ったそうです。

おばさんは「あの時あんたの旦那おかしくなっちゃって大変だったんだよ!」と話を続けました。か
父は、突然目の周りが真っ黒になって、目も釣り上がってしまい、様子がおかしくなったそうです。
おばさんは事故でも起きるんじゃないかと気が気でなかったと。

「あれは明らかに何かに執り憑かれてたよ! なにか降りてきてたんだよ!」

と締め括ったそうです。

その話を聞いて母は少し躊躇したのだそうですが、もう約束してしまったしと思っていた数日後、わたしがあの夢を見たのです。
「用事ができたから、車は出せないって断っておいた」との事で。


そういえば、離婚になる前、父は明らかに人が変わってしまった様になりました。
それがその時の件と関わりがあるのかわかりませんが。

父の運転するイプサムは白でした。
白のワゴン車、後部座席に座る3人の女、色んなことが一致するので、すぐに母はわかったそうです。

私は夢を見る前、この話を全く聞かされていなかったので、とてもぞっとしました。

母は、「お父さんも含めて、あの家を出たのは良かったんだよ」と最後に言いました。

なんとなくわかる気がします。
父も何故かあの家を出た途端まともになりました。もともとよく怪奇な現象が多く、ラップ音もすごい家なので。
祖母が「あの隣の女があんたら家族に妬みの念を送ってる」と言っていたのですが、それがあの家で起こるおかしな現象と関係しているのかはわかりません。
ただ、そのおばさんに関わると嫌なことに巻き込まれると、今回の私の夢で母は判断したようです。
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先日、双子の話を投稿した者です。
そう言えば…みたいな感じで今年の夏に不思議な体験をしたので御話させて頂きます。

8月中頃の暑い夜。
男友達の二人と女友達二人、自分を入れて合計5人で肝試しに出掛けました。

自分はあまり乗り気じゃなかったんですが、少しでも霊感のある奴が居た方が面白いとの理由で半強制的に車に拉致られ連れて行かれました。

舞台は、とある山中にある一軒の日本家屋の廃墟。
周辺には竹藪が覆い茂り「明らかにヤバい」感じの雰囲気でした。

周りの皆も「ヤバいだろこりゃ」みたいな感じ。
だけど言い出しっぺの仮にAだけはノリノリでした。

「Aが先行くなら付いて行くわ」

みたいな感じで後の4人もずらずら後ろを歩き廃墟の中へ入って行きました。

何か嫌な空気の重さ。夏の生暖かい風。

「…何やろ?」

自分は変な違和感? を感じながら先へ進みました。

中は案の定、ボロボロ。
5人の持つ懐中電灯が広間を照らす。

部屋は一階に一つの畳部屋、広間、台所、便所、御風呂場。
自分は怖くて一番後ろを歩いて付いて行くだけで全ての場所を直視する事は出来ませんでした。

「お前、何ビビッとんや?」

Aが俯いている自分に大声で話掛ける。

「何かおったら嫌やろ…」
「何かおるんか?」

う〜…と唸りながら周りを見渡しました。

広間からグルッと一周見渡してみる。
ぼんやり照らされる廃墟の中は雰囲気が怖いだけで特に何も無かった。

「何も無いわ」

「何や、面白ろないのぉ」

Aは後ろにズラズラと友達を連れて二階へと進みました。
ギシギシ鳴る階段も雰囲気が怖いだけ。

いざ、二階へ上がると三つの部屋。どの部屋も散らばった新聞紙と埃だらけ。
箪笥や机と言った家具が投げ出された様に横たわっていた。

「何も怖ないのぉ。取り敢えず写真だけ撮るわ。お前ら並べや」

そうAが言うと、キャッキャと言いながらA以外の全員が並びデジカメで写真を撮ろうとした。

「…あ?? バッテリー無いやんけ」

皆で、「おかしいなぁ」と言いながら写真は諦めました。

その後、皆は、すっかり恐怖心は薄れ、各々で各部屋を見て回りました。
勿論、自分も一人で色々と見て回りました。

「案外、肝試しってこんなモンなんやなぁ」
初めての肝試しに、少しだけ安心感が芽生えました。

その時です。

フッと見下げた箪笥の中身が気になり、引き出しを引きました。
木がしなっていて、なかなか開かなかったので無理矢理引き抜くと勢いよく抜けて、尻餅を付く形で倒れました。

「何やねん…クソ」

床に舞う埃を吸い込んでしまい噎せる中で、異臭が鼻を突く。

「…臭ッ。何やこれ」

懐中電灯を抜けた箪笥の引き出しの中を照らす。
形こそは分からなかったが、それは臭いと色で何となく分かった。

大便でした。しかも蛆虫が半端なく沸いたウ○コ。
吐き気を堪えながら皆の元へ走って行った。

「アカン! 早よ出よ! 此所やっぱおかしい!」

焦る僕の顔が皆の薄れていた恐怖心を煽り一目散に走って廃墟を出た。

「…あれ? Aは?」

女友達の一人が呟いた。確かに4人しか居ない。

『これはアカン!』

と思った瞬間、僕の両足は勝手に廃墟の中へと走って行きました。

中へ飛び込むと案外、簡単にAは見つかりました。
一階の広間の真ん中で懐中電灯は下を照らし上を見上げているA。
「お前、何しよん!? 早よ出ろッ!」

Aは何かブツブツ言いながら僕の声に耳を貸そうとしませんでした。

「…そんでな。ここの所から…そうよ。…ちゃうわ。そっちとちゃう。ハハッ…ちゃうって。お前アホちゃうん?」

棒立ちのAの首根っこを掴み引摺る形で無理矢理、外に出しました。

Aの車だけど、男友達に運転させ逃げる様に山を下りました。

その中で気絶していたAが目を覚まし案の定、

「あれ? 何しよん? 帰りよん? あれ?」

「ヤバい…出たわぁ」

肝試しは遊び半分な気持ちでするモノやないなぁと皆でわざとワイワイ喋りながら車で帰る。

しかしAはまだ頭がボンヤリしているらしく僕がAの様子を見ていた。

「なぁA、お前何があったんや? 覚えとん?」

俯いて煙草を吹しながらAはボソボソ喋り出した。
「写真撮れへんかったけん言うて、その後にバラバラになって部屋見よったやん? んで俺は一階に行って台所ら辺り見よったんや。…んでな、流しの隅の所に生ゴミとか野菜の切れ端とか入れるヤツあるやん? 俺な、それをフッと見たんよ。んだら、キャベツの芯が入っとんよ。…あれ? と思って他も色々見よったらおかしいんや。台所の棚開けたら包丁入っててんけどさ…綺麗やねん。錆びてないんよ。あと…蛇口ん所には綺麗な真っ白な石鹸やろ。…これ…人住んどるなぁ思って。そしたら…後は覚えてないわ」

首を横に振るとAは窓の外を一点に見つめ、また煙草を吸い出した。


二階で見つかった汚物。
Aが台所で見たモノ。

人が住んでいる。

僕もそう思った。
だけど何かが、その時に引っ掛かった。

人が居る。
それはまぁいい。
ホームレスか何かかも知れない。

だけど、Aは何と話をしていたのか?
結局、何も消化出来ぬまま各々の家路に車を走らせた。

僕の家の前に車が着いた時、車を降りる時に僕はAにある言葉をぶつけた。

「なぁA。何でお前、今日肝試しを急にしたい言い出したん?」

あー…と思い出す様にAは上を見上げて言った。

「何でって…Bが行こうでって言うたんやんけ。久し振りに遊ぼうやって」

Bは居ない。
Bは去年の今頃、バイクで事故って死んだ。

勿論、Aもその葬式には参列していた。

周りはドン引き。

「A…。B死んだやん。バイクで」

ポカーっと開いたAの口は一気に塞がり我に返った様に冷や汗を流しだし震え出した。

「ウチら5人、明日の朝に神社行くけん起きとけよ」

そう僕は言い放つと家から塩を持って来ると車内、皆に振り掛けた。


翌日、皆揃って御祓いに行き何とか事を終えた。

そして、その日に何となくボーっと部屋で、あの日の肝試しの事を思い出していた。

「やっぱBやったんかなぁ…」

そう考えていた時、点と線が繋がった。
Aへ電話を掛けた。

「…何?」

「…あー、あんなチョット聞きたいねんけどかまん?」

「ん〜? 何?」

「肝試しに行こうって言い出したんはホンマにBか?」

「ん〜…俺も記憶あやふややから分からん…。やけど…あっ。俺かも。いや…でも分からん」

「えー…んだら、最近急に体調がおかしいとか、変わった事とか何かおかしいなぁって感じた事とかない?」

「ん〜…無い…かなぁ。仕事も普通やし、別に体調とかも…。変わった事なぁ…あっ…車買い換えた」

「…新車?」

「いや、中古」

「…お前それ今すぐ持って来い」

「…分かった」

数十分してAの車が家の前に停められた。

玄関を開けると、Aは車の前で神妙な顔でこっちを見る。

「お前の事やけん何かあるんやろ?」

「…うん」

僕は早速、車内隅々を見て回った。

見た目はごく普通のワゴン車。
6人乗り? 車は詳しくないのですが、奥に広い普通車。

アタッシュケースの中やシートの裏、車体の下など調べて回る。
Aはただ棒立ちに僕を見ていた。
「…あったわ」

車の後ろ。上に開く所? のシートを捲ったらタイヤのスペアとかを置いてある所にソレはあった。

「…何があったん?」

「…この車もう乗るな」

そのタイヤのスペアがあるべき所に薄い古臭い毛布に包まれたソレ。

血が付いた鎌があった。

血は黒く錆びてはいたけれど持ち手の木の部分は血本来の色を残したままだった。

そしてそのまま警察へ連絡。

Aが買った中古車販売の店も警察が立ち寄り色々と問題沙汰になった。


これは僕の憶測ですが…。

Bはその車に付いていた『何か』からAを守ろうとしていたのかも知れない。
でもAはBを振りほどき肝試しへと行ってしまった。

そしてもしかしたら…Aが向かった廃墟。
廃墟とは言い難い生活感のあった台所、そして二階にあった汚物。
その鎌の犠牲者は、新たな犠牲者を求めて連れて来たのかも知れない。

その廃墟へ。
犯人が居るかも知れないその廃墟へ。


しかし…その廃墟も当然、警察が入ったが犯人と思わせる遺留品は有りませんでした。

ホームレスか何かの住んだ跡だろう。それで片付けられました。

そして車の件は未だに未明のまま。


最初に廃墟に入る時に感じた違和感。

「Aが先行くなら付いて行くわ」

と付いて行った4人。

おかしい。
僕はまだ歩き出してない。

早く気付くべきだった。
僕が照らした懐中電灯、それには確かに、Aに続く男一人女二人。

そして『何か』

それはBの幽霊だったのか。

もしくは…


未だに、それも解らないままです。


失礼ですが、これは全て実話です。
作り物じゃない事をここに約束したいと思います。
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糞スレ