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22 無名さん
http://nanos.jp/boxko79/
「はぁ、はぁ…」
一体どのくらい走っただろうか。
今走るのをやめたら進めなくなるくらい、限界が近かった。
しかし迫り来る存在に、走る以外の選択肢は用意されていない。
「いい加減諦めたらどうだ?」
「ひ…っ」
薄暗い路地に響く声。
これだけ走っていても、依然として「彼」との差は変わらない。むしろ近くなっている気さえした。
少し近道をして帰ろうと、人通りの少ない路地を選んだのが間違いだったのか。
兎に角逃げなければ、と本能が訴えている。
「え…うそ」
歩み進めた先に広がる壁。
逃げ場のない空間は絶望に満ちていた。
「鬼ごっこは終わりだ」
「いや…来ないで…」
「なまえ…怖がらなくていい」
「どうして…」
名前を知っているのだろうか。
間違いなく初対面だ。薄暗くても、顔がはっきり見えなくても分かる。というか、こんなストーカー行為をする人が知り合いだなんてごめんだ。
「あぁ…ようやく話すことができたな」
「やだ…嫌…だれか…っんぐ」
助けを求めようとするも、口に布を当てられてしまった。途端に意識が遠のいていく。
「おやすみ、なまえ」
薄れゆく意識の中で深緑の瞳が嬉しそうに笑った。
「はぁ、はぁ…」
一体どのくらい走っただろうか。
今走るのをやめたら進めなくなるくらい、限界が近かった。
しかし迫り来る存在に、走る以外の選択肢は用意されていない。
「いい加減諦めたらどうだ?」
「ひ…っ」
薄暗い路地に響く声。
これだけ走っていても、依然として「彼」との差は変わらない。むしろ近くなっている気さえした。
少し近道をして帰ろうと、人通りの少ない路地を選んだのが間違いだったのか。
兎に角逃げなければ、と本能が訴えている。
「え…うそ」
歩み進めた先に広がる壁。
逃げ場のない空間は絶望に満ちていた。
「鬼ごっこは終わりだ」
「いや…来ないで…」
「なまえ…怖がらなくていい」
「どうして…」
名前を知っているのだろうか。
間違いなく初対面だ。薄暗くても、顔がはっきり見えなくても分かる。というか、こんなストーカー行為をする人が知り合いだなんてごめんだ。
「あぁ…ようやく話すことができたな」
「やだ…嫌…だれか…っんぐ」
助けを求めようとするも、口に布を当てられてしまった。途端に意識が遠のいていく。
「おやすみ、なまえ」
薄れゆく意識の中で深緑の瞳が嬉しそうに笑った。
24 無名さん
「ん…」
知らない部屋の天井が目に入る。
身体を起こそうにも頭が重く、動きが鈍い。
ぼんやりしているからか、同じ空間に彼がいるのに気づかなかった。
「起きたか」
「!貴方は…」
「具合はどうだ?」
「…家にかえして…う、」
「無理をするな。少し強めの薬だから辛いだろう」
信じられない。それは使った本人が吐く台詞なのか。
追いかけ回した挙句、拉致まで行なった人間が。
到底理解のできない思考にガンガンと痛みが増した。
「なまえ…」
ベッドに乗り距離を詰めてくる彼に自然と身体は構える。
「ずっと触れたかった…」
「やめて…」
顎に添えてきた手は冷たく感じた。
なんて穏やかな顔をしているのか。それはまるで恋人に向けるような…。
「今日からここで二人で暮らそう」
「何…言ってるんですか…?」
「恋人なのだから、当たり前だろう?」
「え…」
いつ貴方と私が恋人同士になったんですか?という疑問は飲み込んだ。
これ以上話しても、彼とは正常な会話が出来ないと思う。まだ逃げることを諦めていない私は目の前の存在を無視してベッドから降りようとした。
「なまえ」
「痛…っ」
「できれば乱暴はしたくない…」
逃がさないと言わんばかりの力は、一瞬にして抵抗する気力を奪った。
大人しくなった私を真っ直ぐ見つめる彼。
「なまえ、愛している」
そう言って乾いた唇を合わせる。
私はまだ、彼の名前を知らない。
知らない部屋の天井が目に入る。
身体を起こそうにも頭が重く、動きが鈍い。
ぼんやりしているからか、同じ空間に彼がいるのに気づかなかった。
「起きたか」
「!貴方は…」
「具合はどうだ?」
「…家にかえして…う、」
「無理をするな。少し強めの薬だから辛いだろう」
信じられない。それは使った本人が吐く台詞なのか。
追いかけ回した挙句、拉致まで行なった人間が。
到底理解のできない思考にガンガンと痛みが増した。
「なまえ…」
ベッドに乗り距離を詰めてくる彼に自然と身体は構える。
「ずっと触れたかった…」
「やめて…」
顎に添えてきた手は冷たく感じた。
なんて穏やかな顔をしているのか。それはまるで恋人に向けるような…。
「今日からここで二人で暮らそう」
「何…言ってるんですか…?」
「恋人なのだから、当たり前だろう?」
「え…」
いつ貴方と私が恋人同士になったんですか?という疑問は飲み込んだ。
これ以上話しても、彼とは正常な会話が出来ないと思う。まだ逃げることを諦めていない私は目の前の存在を無視してベッドから降りようとした。
「なまえ」
「痛…っ」
「できれば乱暴はしたくない…」
逃がさないと言わんばかりの力は、一瞬にして抵抗する気力を奪った。
大人しくなった私を真っ直ぐ見つめる彼。
「なまえ、愛している」
そう言って乾いた唇を合わせる。
私はまだ、彼の名前を知らない。
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