1 無名さん

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2 無名さん
あげ
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小学生の頃、田舎に行ったときの話です。

母の実家は山間の村にあります。
都内で生まれ育った俺は、すぐ暇を持て余してしまい、近くの山の散策に出掛けました。

道の無い森を歩いていると、小さなほこらを見付けました。
近寄ると扉が閉まっていて中は見えませんでしたが、ほこらの裏に引き出しがあり、俺は好奇心から中を見ました。

引き出しの中には木を組み合わせて作ってある約10センチ角の木箱が入っています。
箱を振るとカタカタと音をたて、中に何かが入っているのを確認出来ました。

その箱を持ち帰り、親戚のお姉さんに見せると、開けてやると言い俺から奪い取りました。
しかし、色々動かしても箱を開けることが出来ずに、お姉さんも意地になり「絶対に開けるから開くまで貸せ」と箱を持って自分の部屋に戻りました。

その後、夕食を食べてのんびりしていると祖母の叫び声聞こえてきました。
何事かと思い駆け付けると、お姉さんが部屋の中で泡を吹いて倒れていました。

床には開けられた木箱と、人間の指らしきひからびた物がいくつか落ちてた。
爪らしき物がついていたので指と確認できました。

祖父も駆け付けると一目見て「村にはもう残って無いはずなのに・・」と。
話を詳しく聞くと、この箱は呪いなんかに使われていたらしく、過去に村に何個か有ったけどお祓いして全て処分したはずだそうです。

それから二日後に、親戚のお姉さんが亡くなりました。
俺がそんな物を持ってきたばかりに。罪悪感から一生忘れる事の出来ない思い出となりました。

<後日談>

ことりばこってのは初耳です。
祖父は箱を畜生箱と呼んでいました。
場所は長野県内です。
以前、親が転勤族のため、中国地方のある県の山奥に住んでいたことがありました。

まだ僕は小学生で、近所の友達の家にしょっちゅう遊びに行ってました。
以後その友達をMって書きます。

Mの家はかなり庭が広くて、その隅に木にかこまれた結構大きめの祠がありました。

小さい頃からMの家で毎日のように遊んでいましたが、その祠自体に近付いたことは無かったんです。
Mも行ったことが無いらしくて、というより行っちゃいけないって言われてました。

普段からMのじいちゃんがスゴク恐かったんで、2人ともおとなしく聞いてたんです。
そうこうしてるうちにそのじいちゃんが亡くなってしまいました。

Mのとこにしばらく遊びにいけなかったんですが、数日後やっと遊びに行けたんです。
そこで、以前から気になってたあの石んとこ見てみんかーみたいな話になって。

じいちゃんはもういないし、Mの両親は畑に行ってるしまわりに僕らしかいないんで。
Mにはの妹が2人いるんですが、その時俺の妹と家の中でママごとみたいなことをして遊んでました。

田舎なんで周りは古い家ばかりなんですが、Mのとこは群を抜いてデカイ家でしたし、子供の想像ですが、中には刀とかあるかもしれないなとワクワクしてました。

観音開きの石の扉を空けたら、中には茶色っぽい鉄の箱が入ってました。
大きさは8センチ四方ぐらい。

箱のまわりには砂のような砂鉄?のようなものがまかれてて。
持ち上げてみたらめちゃめちゃ重くて「鉄が詰まってる」っていう感じだったんで、箱というより固まりかもしれません。

まわりには竜のような絵が彫られてて、裏側にはなんか字(?)らしきものが書かれていましたが難しくて読めませんでした。
わけがわからんのと気持ち悪いのとで急いで元に戻して、家の中で遊んでました。

その晩、そろそろ寝ようかとしてたら救急車の音が聞こえてきました。
急いで外に出てみたら、救急車はMの家に向かっているようでした。
両親はMの家の方へ向かいましたが、僕と妹は家で寝さされました。

次の日、母が言うにはMの妹が亡くなったとのこと。
昨日の夕方まで一緒に遊んでいたのでビックリしてしまいました。
それから半月ぐらいたった頃、Mの親父が事故で亡くなってしまいました。
ガードレールのない山道に、軽トラックごと谷へ落ちたそうです。

立て続けに3回も葬式を出すことになったので、子供心にも異常なことだと思いました。
なんとなく、あの箱を触ったのが悪かったような気がしていましたが、バレたら怒られるるのが恐くて僕もMも黙っていました。

でも特に僕とMに何かが起こったということはありませんでした。
遊んでて骨折、とかはありましたが命には全然別状ないです。

中学生になってから、うちの家族は市内の方へ引っ越して、Mとも連絡をだんだん取らなくなっていました。

数十年経って今三十過ぎになったんですが、先月、久しぶりにMから連絡がありました。
なんでもMの奥さんが流産したらしいのです。

M「ワシんとこまたおえんかった。○○(妹)もじゃ。鉄の箱、あったろーが。アレじゃなかろうか?」

Mの奥さんが2回流産したらしいのですが、Mの妹(もうひとりの)も流産らしいのです。
それであの鉄の箱のことが気になって、あの時一緒にいた僕にも何か変なことがないかと聞いて来たのです。

箱はもうお寺にあるそうです。
最初の流産の時に、お寺に見てもらったらしいのですが、Mの家は元々その辺の庄屋だったので、何かを鎮めてるものらしいということですが(箱の裏にあった字が「鎮」という文字だったらしいので)結局何かわからんかったとのこと。
とりあえず預かってもらったそうです。

お寺さんで供養してもらってるのに、まだ不幸が続くのでMはめちゃめちゃ怖がってます。
僕も恐いですがどうしたら良いかわかりません。
大学生の頃の話です。
当時、免許取りたてでとにかく車を運転したくてしょうがなかった僕は、友達4人で深夜のドライブをしていました。

すると、車内でこの近くに結構有名な心霊スポットのトンネルがあると言う話になり、肝試しでそのトンネルに行ってみる事になりました。

僕はそういった話は信じてなかったので、軽い気持ちで何か写ったら面白いなと思い、途中にあるコンビニで使い捨てカメラを購入して持って行きました。
トンネルの付近に着くとこれ以上車では進めなくなっており、仕方なく歩いて行く事にしました。

やっぱり噂通りの場所で非常に気味の悪いところでした。
僕はトンネルの壁やみんながトンネルの中を歩く様子をカメラに収めながら歩きました。
恐かった所為か夢中になって撮りまくりました。
薄気味悪かったのですが、みんなが密かに期待していたと思うハプニングは一切起きず、ただ気味が悪いだけなので帰る事にしました。

車に戻り、元来た道を帰り始めた僕は、カメラのフィルムが残り一枚残っていることに気がつきました。
そこで、来る途中に街の夜景がよく見える場所があったのでそこに車を止め、みんなで記念撮影をすることにしました。

いざ撮影しようとしましたが、使い捨てカメラなのでセルフタイマーなどは無くシャッターを誰が押すかでいささか揉め、結局じゃんけんに負けた僕がシャッターを押すことになりました。
そこで僕を除いた3人をカメラに収めて、その日は何事も無く帰りました。

数日後、現像に出していた肝試しの時の写真が出来上がりました。
そこには、怪しい影も不思議な光も何も映っていなく、ただの無機質なコンクリートの壁や何の変哲も無い友達の姿が写っていました。
まあ当然だよなと思って、最後の記念撮影の写真に目をやりました。

正直、最初は何も違和感は感じませんでした。何の変哲も無いただの記念写真です。
ただその写真には、

僕を含めた4人全員が写っていました。
僕が笑いながら写っていました。
私が現場監督だった時に体験した事を話す。

7月の蒸し暑い雨上がり、私は何時もの様に昼食を済ますと喫煙室に行き一服していた。
喫煙室の外から話し声が聞こえてきた。

「昨日、・・・を焼き鳥の串で刺してやったら・・・・」

外での会話の為、良く聞取れないが、どうやら動物虐待をしていた様な話だった。
私は眉間に皺を寄せながら、下らない話が耳に入らないよう喫煙室を出て事務所に戻ることにした。

事務所に戻る途中、話し声の主とすれ違いざま、

「下らない事ばかりしてると罰でも当たるぞ」

と罵り、事務所に戻った。
午後の仕事が始まって暫くの事だった。

「救急車を呼んでくれ!」

大きな声が現場に響きわたった。
私は慌て、その声の方に走り出した。

その恐らくは事故であろう現場で倒れて居たのは、昼間の動物虐待男だった。
男は何かにつまづいたらしく足場を踏み外し、その下から出ていた鉄筋に串刺しになってしまった様だ。

現場は酷い有様で、頭に刺さった鉄筋の回りから血の泡がプクプクと湧き出している。
ピンと張った手足はヒクヒクと痙攣して、まるで人間の動作では無いように見える。
口からは泡とも、汚物とも解らない様な物を吐き出し失禁の臭も立込めていた。
あれは1年ぐらい前の事だと思う。
俺は青梅にある有名な心霊スポットに友達何人かと行ったんだ。

その時もカメラのシャッターが降りなかったり、音声認識のカーナビが無音状態の車内で突然起動したり、変な事は色々あったんだ。
でも本当におかしかったのはそれからだった。

その三日後ぐらいだったと思う。
その夜、寝ていた時に突然内臓のどこか・・・というか下腹部が猛烈に痛み出したんだ。
本当に痛くて血を吐いたり、痛みでベッドの上をのた打ち回った。

救急車を呼んで病院でレントゲンやら色々検査したら、小腸に10センチくらいの錆びた釘が入ってるって言われたんだ。
手術で取り除いたが、医者に「なんでこんな物が入ってるの?」って聞かれたが答えられるわけも無い。

飯に紛れ込んだとしたって明らかに気づくし、飲み込めるはずがない。
突然夜痛み出したのもおかしいし、俺にはあの夜にいきなり釘を腸にぶち込まれた気がしてならない。
なんだか得体の知れない恐怖に襲われた。

結局あのトンネルが関係あったのかどうかは今でも分からないが、たぶん人生で一番洒落にならないくらい怖かった。
<後日談>

釘が俺の腸から出てきて何日かたった後、俺は一緒にトンネルに行った友達に連絡を取ろうと思い携帯やら自宅やらにかけたのだが、なぜかいつもタイミング悪く繋がらない。
電源が切れていたり、自宅にかけても家族が「ごめん、今外に出てて・・・さっきまでいたんだけど」とか・・・。

そんな状態がしばらく続き、俺はなんとか退院する事ができた。
それから友達とも連絡がつき、一緒に行った友達が家にお見舞いに来る事になった。

この時、俺はまだ「入院したが、退院する事ができた」とだけ言って詳しい事はまだ言ってなかった。
ある程度世間話を交わした後、その友達に

「そういえば、なんで入院したの?」

と聞かれ、腸から錆びた釘が出てきた事を伝えると、その友達は見る見るうちに顔が青ざめていった。そして、

「そうか・・・あれは釘だったのか」

ってつぶやいた。
どういうことかと思い気になって聞き返すと、どうやらその友達はトンネルに行って以来、ずっと同じ夢を見続けていたらしい。
それは、自分の腸から細長く真っ黒なエノキ茸のようなものが一本だけするすると生えてきて、腸の中をもぞもぞと蠢き回る・・・というものだったそうだ。
俺の話を聞いて、友人はやっとそれがキノコではなく釘だったことが分かって恐怖に震えたのだという。

結局、なぜそんな夢を見続けたのか、釘を入れたものはなんだったのか、そんなのはやっぱりひとつもわからなかった。
ただ、キノコの夢にしろ釘にしろなんとも得体の知れない恐怖を味わった事は確かだった。
一週間前の話。娘を連れてドライブに行った。

なんてことない山道を進んでいって、途中のドライブインで飯食って。
で、娘を脅かそうと思って舗装されてない脇道に入り込んだ。
娘の制止が逆に面白くって、どんどん進んでいったんだ。
そしたら急にエンジンが停まってしまった。

山奥だからケータイもつながらないし、車の知識もないから娘と途方に暮れてしまった。
飯食ったドライブインへも歩いたら何時間かかるか。
で、しょうがないからその日は車中泊して、次の日の朝から歩いてドライブイン行くことにしたんだ。

車内で寒さをしのいでるうちに夜になった。
夜の山って何も音がしないのな。たまに風が吹いて木がザワザワ言うぐらいで。
で、どんどん時間が過ぎてって、娘は助手席で寝てしまった。
俺も寝るか、と思って目を閉じてたら、何か聞こえてきた。

今思い出しても気味悪い。声だか音だかわからん感じで

「テン(ケン?)……ソウ……メツ……」

って何度も繰り返してるんだ。
最初は聞き間違いだと思い込もうとして目を閉じたままにしてたんだけど、音がどんどん近づいてきてる気がして、堪らなくなって目を開けたんだ。

そしたら、白いのっぺりした何かが、めちゃくちゃな動きをしながら車に近づいてくるのが見えた。
形は「ウルトラマン」のジャミラみたいな、頭がないシルエットで足は一本に見えた。
そいつが、例えるなら「ケンケンしながら両手をめちゃくちゃに振り回して身体全体をぶれさせながら」向かってくる。

めちゃくちゃ怖くて叫びそうになったけど、なぜかそのときは「隣で寝てる娘がおきないように」って変なとこに気が回って、叫ぶことも逃げることもできないでいた。
そいつはどんどん車に近づいてきたんだけど、どうも車の脇を通り過ぎていくようだった。
通り過ぎる間も

「テン……ソウ……メツ……」

って音がずっと聞こえてた。

音が遠ざかっていって、後ろを振り返ってもそいつの姿が見えなかったから、ほっとして娘の方を向き直ったら、そいつが助手席の窓の外にいた。
近くで見たら、頭がないと思ってたのに胸のあたりに顔がついてる。
思い出したくもない恐ろしい顔でニタニタ笑ってる。
俺は怖いを通り越して娘に近づかれたって怒りが沸いてきて、「この野郎!」って叫んだんだ。
叫んだ途端そいつは消えて、娘が跳ね起きた。
俺の怒鳴り声にびっくりして起きたのかと思って娘に謝ろうと思ったら、娘が

「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」

ってぶつぶつ言ってる。

やばいと思って、何とかこの場を離れようとエンジンをダメ元でかけてみた。
そしたらかかった。急いで来た道を戻っていった。娘は隣でまだつぶやいている。
早く人がいるとこに行きたくて車を飛ばした。

ようやく街の明かりが見えてきてちょっと安心したが、娘のつぶやきが「はいれたはいれた」から「テン……ソウ……メツ……」にいつの間にか変わってて、顔も娘の顔じゃないみたいになってた。

家に帰るにも娘がこんな状態じゃって思って、目についた寺に駆け込んだ。
夜中だったが、寺の隣の住職が住んでるとこ? には明かりがついてて、娘を引きずりながらチャイムを押した。

住職らしき人が出てきて娘を見るなり、俺に向かって「何をやった!」って言ってきた。
山に入って変な奴を見たことを言うと、残念そうな顔をして「気休めにしかならないだろうが」と言いながらお経をあげて娘の肩と背中をバンバン叩き出した。

住職が泊まってけというので、娘が心配だったこともあって泊めてもらうことにした。
娘は「ヤマノケ」(住職はそう呼んでた)に憑かれたらしく、49日経ってもこの状態が続くなら一生このまま、正気に戻ることはないらしい。
住職はそうならないように、娘を預かって何とかヤマノケを追い出す努力はしてみると言ってくれた。
妻にも俺と住職から電話してなんとか信じてもらった。

住職が言うには、あのまま家に帰っていたら妻にもヤマノケが憑いてしまっただろうと。
ヤマノケは女に憑くらしく、完全にヤマノケを抜くまでは妻も娘に会えないらしい。

一週間経ったが娘はまだ住職のとこにいる。
毎日様子を見に行ってるが、もう娘じゃないみたいだ。
ニタニタ笑って、なんともいえない目つきで俺を見てくる。
早くもとの娘に戻って欲しい。

遊び半分で山には行くな。
学校の先輩から聞いた話です。

ある日の午後、女の子が彼氏のアパート行きました。
ベッドに座って話をしていると、壁越しに隣室の物音が聞こえてきます。

「ここ、壁薄いんじゃない? スゴイ聞こえるよ」

「昨日まで空き部屋だったんだけどなぁ。今朝引っ越してきたらしいんだよ」

荷物を整理しているのか、何やらドタバタと騒々しい。

「何やってんのかなあ」

彼氏は耳を壁につけて様子をうかがいました。

ウィーン……壁越しにひときわ甲高い音が伝わってきたその瞬間、ボンッとかなり大きな音がしました……ウィンウィン。

彼氏の手が急に激しく震えたかと思うと、ビックリしたような表情のまま私に倒れ込んできました。
体が、硬直したままブルブルと震えています。

驚いて見ると、倒れている彼氏の後頭部に穿たれた穴から血と灰白色の液体が溢れ出していました……。

隣室の住民が棚を付けようと壁にドリルで穴を開けたところ、薄い壁を一瞬で貫通したドリルの刃が彼氏の後頭部に突き刺さったのです。
始めにあらかじめ言うと、本当の話で別に怖くもないし長くなってしまう。
しかし自分にとっては今思い出して書くのも嫌なくらい。怖いというより不気味なんだ。

薄暗い夕方、私が本屋さんに行った帰りに雨が降ってきたんです。
朝の天気予報と家を出る前の空模様を気にして傘を持ってきていたので、私はそれをさして帰る事にしました。
家に帰るまでの道程の途中に公園を通るんですけど、その公園の入り口に小学生低学年くらいの女の子が傘もささずに一人で雨に濡れて立っていたんです。

私は気になって近づくと、女の子はすでに唇を青くして白い顔で寒そうにしていました。
私は持っていたハンドタオルで軽く水を拭いてあげて「おうちは?」と聞くと女の子は「ママが迎えにくる」とだけ答えました。
私はその子の母が迎えにくるまで相合傘をして一緒に待ってあげる事にしました。
ここが待ち合わせ場所なのでほかの場所へ雨宿りするわけにもいかず、ひたすら女の子の母を待ちました。

するとしばらくして女の子がゲームをやり始めたんです。
よくわからないんですけど今CMやってるD○の「文字○ッタン?」だっけ? やった事がないのでよくわからないんですけど、クロスワードみたいに文字をつなげて遊ぶ? ゲームです。
私が興味深くそのプレイ画面見ていたら、自分の目を疑い……なんだかその瞬間に寒気がしました。
女の子がゲームで完成させている言葉が『さつじん』『じさつ』『うなる』『つれさり』『さらう』『なく』など卑劣な言葉ばかりなのです。

私はいくらなんでもこんな言葉をゲームの中で使うのかと疑問に思いました。
なんだか私は妙に怖くなりました。おまけにあたりは一段と暗くなり人の気は完全になくなっていました。
ただ雨の音とゲーム音だけが耳に入ってきます。
私は何かあるんじゃないかと思い早く帰りたくてたまりませんでしたが、女の子を見捨てて帰るわけにもいかず正直困りました。

すると女の子の母が迎えに来たんです。
肌が白く、走ったんでしょうか髪や服が濡れていて私に丁寧にお辞儀をすると、女の子は「今日は来たー!」と喜んで帰っていきました。
私は正直言うとあの女の子は少し危ないんじゃないかと思っていたので、無事に親御さんも迎えにきてくれたので安心して帰りました。

以上。別に進展もなく幽霊的な怖い事もない話です。
ただ気になることが……。D○のソフトにはこのような言葉は収納されているんですか? あのCMを見る度に気になり思い出すんですが。
これはつい先日思い出した話です。
それは私が中学2年生。夏休み前の最後の期末テストをやっていた時のことです。

答案が早く書き終わった私は、なんとなく用紙の裏に『あ』から『ん』までの五十音と1〜0までの数字を円状に書き始めました。
中央には鳥居のマークに『はい』と『いいえ』の文字。
そう、当時流行っていたコックリさんです。

コックリさんはもともと数人で行う交霊術なんですが、私の時はもちろん独りです。
当時一番後ろの席に座っていて先生に見つかる可能性が低いからって、やりすぎです。
実際に動くはずがないと思いながら10円玉を答案用紙の鳥居の上に置き、人差し指をそっと重ねました。

(コックリさん、コックリさん、現れましたら『はい』の所に移動して下さい)

すごく昔の話で記憶も曖昧なんですが、自分で動かした覚えはありません。
しかし10円玉はゆっくり『はい』へ移動したのです。

(本当に!? やだ! すごい!)

軽くパニックになりながらも、さっそく質問をしてみることにしました。

(将来、私を愛してくれる人の名前は?)

そんなことコックリさんに聞いても仕方ないのですが、思春期だったのでしょう。
また10円玉が勝手に動き出しました。

『ふ』

『み』

『や』

(ふみや! 私、ふみやって人と結婚するんだ! もしかして藤井フミヤ!?)
その当時チェッカーズが大好きだった私は、興奮気味に「その人はどんな人ですか?」と続けて質問しました。

『お』

『ま』

『え』

『を』

(お前を……?)

『こ』

『ろ』

『す』

『や』

『つ』

全身を冷たい血が一瞬にして駆け巡りました。気味の悪い汗が吹き出してきます。
不意に誰かが後ろに立っている感覚に襲われました。
一番後ろの席なのに、先生は前の教卓の所にいるのに確実に誰かが後ろにいる。
でも恐くて後ろが見れません。

……そのうちテストの時間も終わりテスト用紙は回収されていきました。

この記憶はつい最近思い出したのです。
何故今まで忘れていたのか? 不思議でなりません。
そしてこの記憶がよみがえった瞬間、私は愕然としました。

私の息子の名前は『郁弥』というのです。
もちろん大好きな藤井フミヤから付けました。
そう、私はあの時「将来、私を愛してくれる人の名前は?」と質問したのです。
「どんな人と結婚しますか?」ではなく。

郁弥の父親は私を愛してはくれず、1年前に離婚しています。
まだ息子は3歳ですが……いったい私はどうなるのでしょう。
入社3年目の6月。私は愛知県の営業所へ転勤となり、引っ越しすることになった。

会社が探してくれた2DKのアパートは独り身には広すぎるようにも思えたが、入社以来狭い寮で生活していた私の目には非常に魅力的に映った。
職場にも近いし家賃も安い。なにより風呂付きなのが最高だった。

引っ越して何日目かの夜、風呂でシャワーを使って髪を洗っている最中のこと。
水流でぼやけた視界の隅に、一瞬妙なモノが映った。

浴槽の縁に置かれた両の手。
慌てて目を見開いて向き直ったが、手などどこにもない。

(目の錯覚だろう……)

その時はそうやって自分を納得させた。

しかしそんな性根をあざ笑うかのように「それ」はしばしば私の前に姿を見せた。
シャワーを浴びている時、石鹸を置いて振り返る時、洗面器に手を延ばした時、視線が浴槽を掠めるその一瞬に私の眼が「それ」を捉える。

浴槽の縁にしがみつく白い手。
半ば反射的に視線を戻しても、次の瞬間には跡形もない。
それでも回を重ねるうちに「それ」が子供の手だということを確信するようになった。

1ヶ月ほどたったある休日、私は部屋の整理をしていた。
荷物を収納しようと、備え付けのキャビネットの一番下にある引き出しを開ける。
底に敷かれていた厚紙を引っ張り出すと、その下にあった何かがヒラリと床に落ちた。
拾い上げて見る。

幼稚園児くらいに見える男の子の写真だった。
とっさに風呂場の手を連想し、気味が悪くなったので他のゴミと一緒に捨てた。
その日の夜、テレビを見ていると浴室から何やら物音が聞こえた。
行ってみると、普段は開けっ放しの浴槽の蓋が閉じられている。
開けると、冷水が縁ギリギリまで一杯にたまっていた。
夏場はシャワーのみで済ますため、浴槽に湯をためることなど無いはずだった。

考え込みながら水面を眺めるうちに、私の背後にスッと影が立つのが見えた。
肩越しに、髪の長い女の姿――

ドンッ

不意に背中を押され、私は頭から冷水に突っ込んだ。慌てて持ち上げようとするが頭を凄い力で押さえつけられる。
もがいて逃れようとするがビクともしない。肺から空気が逃げ出していく。
パニックに陥る寸前、私は床を蹴って浴槽に身を躍らせた。体を回転させると、浴槽の底に手足を突き、全力で体を持ち上げる――

ザバァァ

水面を破って立ち上がると、呼吸を整え、周囲を見渡した。

誰もいない。
風呂場の扉は開いているが、外の様子はうかがい知れない。
風呂場から出る勇気が出ないまま、私は浴槽の中に立ち尽くしていた。

……サワ

ふくらはぎに何かが触れた。小さな手にゆっくりと足首を掴まれる感触……。
私は悲鳴を上げ、ずぶ濡れのまま浴槽から、風呂場から、アパートから飛び出した。

私が引っ越す前、ここに誰が住んでいたのか? ここで何があったのか? 大家はそれを語ろうとしなかったし、私も聞こうとは思わなかった。
それから部屋を引き払うまでの約一週間、浴室の扉の前には荷物を一杯に詰めた段ボールを積み上げておいた。
その友人がまだ子供の頃、近所のアパートにある駐車場で友達と砂遊びをしていた時の事。

その日はとても夢中になってしまい、夕方の6時過ぎまでその駐車場で遊んでいました。

ドンッ!

急に何かが落ちてきたかのような強い衝撃音が辺りに響いたそうです。
しかし周りを見渡しても何も変わった事はなく、友達に聞いてもぽけーっとした顔をするだけで、結局自分の聞き間違いだろうと納得し、その日は遅いので家へと帰りました。

それから数年後、彼女も高校生となり、勉強や遊びに盛んな時期になっていました。

ある日、学校から帰っている最中、そのアパートが目につきました。
しかし何か様子が変なのである。屋上に人影らしきものがウロウロしている。

そう思った途端、

「あっ! 飛び降りた!」

辺りにすごい衝撃音が響きました。
彼女は急いで現場へと向かったのですが、周りには何もなかったそうです。

それからと言うもの、彼女はその人影をよく目にするようになりました。

「あっ! また飛び降りた……」

しかし何度見に行っても何も変化はないのです。
それでもその人影は決まって同じ時間、同じように飛び降りているそうです。

そのアパートには特にいわくつきのような噂などは聞いたことはなく、殺人事件、あるいは自殺などのような事件は今までまったく聞いたことはないのです。

それからさらに2年後、相変わらず彼女はその人影を目撃するそうです。

ただ最近になって少し気がついた事は、その人影に少し変化が出てきたそうです。
初め見た頃は人の形をしていたのが、最近ちらっと見た限りでは、生ゴミのようなグチャグチャのモノが落ちていくのを見たと言っていました。
これは友人から聞いた話。

ある男が一人で登山に出かけたまま行方不明になった。
三年後、湿地帯でその男の遺骨が発見され、遺留品も回収されたが、その中にはテープレコーダーがあった。

テープには大声で助けを求める男の声が録音されていた。
男はどうやら何か怪我をして動けなくなったらしかった。

テープの内容はマスコミにも公表されたが、遺族も警察関係者も公表を控えていた部分があった。
そのテープには助けを求めるメッセージとは違うものも録音されていたのだ。

何かに非常におびえた男の声だった。どうやら夜に何かが起こっているようだ。
男は必死にテープに向かって口述している。

一日目

「夜になると人の声がする……呼ぶ声がする……こんな夜中に誰もいないところに、誰もいないのに」

二日目

「たすけて……声がする……夜になるとあいつがやってくる……暗闇から呼んでいる……昨日より近くなっている……おそろしいよ……おねがい、たすけて……とてもこわい、とても……だれかたすけて」

三日目

「近くまで来ている……たすけて……人が……ヒッ……こわい……近くまで来ている……おねがい、たすけて……おねがい、おねがい……よぶ、だれも……ヒ、あいつ、ちか……こわいよ……たす、すぐそばまで……たすけ、こえが……おねがい、た……て」

こうしてテープはそこで切れている。
それ以後、男はテープに何も録音していない。

警察はこのテープを詳しく分析した。
テープはずっとその男の声だけで、他の怪しい物音は入っていなかった。
しかし、三日目のテープが最後に切れるところで、これまでとは違う音が録音されていた。

そのことに関して、分析家も理解不能だった。
それは、遭難した男の声とは違う、別の人間の声だった。

レコーダーのすぐそばで発せられている。
耳元でささやかれたかのように、はっきりと。


「オ  イ」
なぞなぞ

あるところに若いトラック運転手の男がいました。
男はよく働き、仕事が夜になることも多かったのでした。

会社に戻った日、男は同僚から奇妙な噂話を聞きました。
その話の内容はこういったものでした。

「○○県に向かう峠を夜に通ると、女の子の幽霊がでるそうだ。その女の子の霊は助手席に現れ、運転手に問題をかけてくる。答えられなければ運転手は殺される。問題はついつい間違えてしまうようなものを出してくる。友人の友人に聞いた」

といったものでした。
男は同僚の話を単なる都市伝説の類だと馬鹿にして、この話を信じようとしませんでした。

何日かして、男に○○県に向かう仕事が回って来ました。
しかも、他の仕事もこなさなければならない為、向かう時間はどうしても夜になりそうでした。

案の定、○○県へ向かうのは夜になってしまい、男は例の峠に差し掛かっていました。

しばらく走っていると、男は突然全身に鳥肌が立ってしまいました。
前の道を見ていた視界の中に異常なものが見えてしまったからです。

自分の隣、つまり助手席に女の子が座っている……! しかもこちらをじーっと見つめている!
男は恐怖にかられ助手席を見ることができませんでした。

すると、「ねぇ……」という小さな声が男の耳に聞こえてきました。
男はもう泣きそうになりながら「な……何?」と答えました。

「遊んでくれる?」

と女の子は聞いてきます。怖い……! 怖い!
男は言われるがままについ、「い、い、いいよ」と答えてしまいました。

女の子はクスクスと笑うと「じゃあ、なぞなぞね? 間違えたらだめだよ?」と言いました。
男は、しまった! と思ったのですが時既に遅かったのでした。

「りんごとバナナとスイカを載せたトラックが、ある山道を走っていました。やがてカーブに差し掛かりました。さて、何を落としてしまったでしょうか?」

男は振るえながらも内心助かったと思いました。なぜならこの問題を聞いたことがあったからです。

男は「ス、スピード!」と答えましたが、女の子はこう言いました。

「ふふ、残念ハズレでーす。正解はねえ


“いのち”だよ……」
俺の爺さんには従兄がいたらしいんだが、10代前半で亡くなっている。
それがどうも不自然な死に方だったというので、死んだ当時は親戚や近所の連中にいろいろ騒がれたんだそうだ。

戦後すぐの物がない時代のある日、その従兄は友達と、何か売ったり食べ物と交換したりできるものはないかと実家の蔵の中を漁っていた。
その従兄はうちの本家の人間だったので、蔵にはガラクタとも骨董品ともつかないものがごちゃごちゃとあったらしく、その中から何か見つけてやろうと思ったらしい。

探しているうちに、ひょっとこのお面を見つけたそうだ。

そのお面が気に入ったのか、従兄はそれをかぶって通りに飛び出し、でたらめに踊りだした。
もちろん一緒にいた友達連中にもバカ受けで、ひとしきり大騒ぎしてそのまま夕方までひょっとこの面をかぶって遊んでいたらしいんだが、そのうちに従兄が何かにつまづいたか、突然転んで道に倒れて動かなくなった。

最初はふざけてるのかと思ったが、呼んでもゆすっても返事がないので様子がおかしいと思い、すぐに抱え上げて、本家の座敷に連れて帰った。

倒れたままの状態で身体はほとんど動かないが、かすかな声で

「面を、面を取ってくれ……」

と、うめくのが聞こえる。

慌ててひょっとこの面を取ると、顔色は土色、唇は紫、すっかり生気がなくなっていて、まさに死人の顔だったという。

もうほとんど呼吸もはっきりしない状態の従兄を見て、家族も半ば覚悟して医者を呼んだ。
従兄が倒れてから医者が来るまで、実に30分と経っていないはずだった。

しかし、駆けつけた医者は従兄を少し見てすぐに、厳しい調子で家族に言った。

「どうして放っておいたんですか!? 亡くなってから半日は経ってます」
オレは今は電車の車掌をやっているんだけど、昔は駅員だった。
勤め先の駅はさほど大きな駅ではなかったんだけど、ずっと昔に妊婦さんの飛び込み自殺があったらしい。

なんでもその妊婦さんは結婚して子供に恵まれて幸せの絶頂だったんだが、夫が突然の事故死をして、まぁつまり後追い自殺らしい。
朝の2時ごろこっそり駅に忍び込んで、回送列車に飛び込んで即死したという話。

問題の日、オレは泊まり勤務だった。
最終の列車を無事に見送り、構内を一通り清掃して、やっと勤務終了。

時刻は夜中の1時30分。
その後風呂に入って寝る前に、一応ホームや駅の構内に残ったお客さんが居ないかどうか、各場所に付いている監視カメラの映像をぼけーっと見てた。

そしたら、上り方面のホームのベンチに女の人が座っているのが見えた。

ついさっき構内を清掃して回った時はもちろん誰も居なかったし、今は券売機の電源も落としている。改札口も全部閉めている訳で、ホームに入れるはずがなかった。
なんか妙だなと思ってしばらくその画面をずっと見てたんだけど、一向にその女の人は動かない。

と、TVの端に表示されてる時刻が2時になったと同時に、その女の人はすくっと立ち上がって、カメラに軽く手を降った後、ホームの端に立って体を傾けだした。

(落ちる!)

ってオレが思った瞬間、スーって感じで消えていったのよ。
何がなんだか分からなくて、しばらく呆然とオレはカメラを見てた。

すると、少しずつ画面の下のほうから黒く染まって来た。
オレはそれが髪の毛だと気づくのに数秒かかった。
ゆっくり、本当にゆっくりと下からドアップの女の人の顔が昇ってくる。

その時画面を消すなりすればよかったんだけど、恐怖からかオレは全然動けないでいた。
ただ食い入るように画面を見ることしかできなかった。

その時の女の人の顔が今でも鮮明に残ってる。
髪は長いんだけど、所々禿げていて落武者みたいな感じ。
それで目が無い。ぽっかり黒く空いていて、そこから血がダラダラ垂れている。鼻は左にぺしゃりと潰れてた。
で、口元は凄い笑顔なんだけど、歯が2・3本しか残ってない。しかもその残っている歯も血で真っ赤に染まっていた。
それで、オレに言うんだよ。

「こっちこい、こっちこい」

って。低い男みたいな声で。笑顔で。

オレは驚愕したよ。ここのカメラは画像のみで、音声まで聞こえないはずなんだ。
それでもまだどこからとも無く「こっちこい、こっちこい……」と聞こえる。

朝、気づいたらオレはベッドに寝かされていた。
どうも何時までたっても駅のシャッターが開かないから、隣駅の人が様子を見に来てくれて、それでモニターの前で倒れているオレを見つけて介抱してくれたらしい。

オレがありがとうございましたってお礼言ったら、その人が言ったんだ。

「気にすることは無いよ。ああそういえば、君の両頬に赤い手形が付いていたんだけど、あれは何だったの?」
私はある南の海で仲間たちとスキューバ・ダイビングを楽しんでいました。
空は晴れ渡り海の状態は非常に安定していて、絶好のダイビング日和でした。

私は仲間のダイバーと二人で、あるダイビング・スポットを潜りました。
どんどんと深く潜って行ったのですが、ある地点で海底の異変に気づいたのです。

(何かおかしい)

よくよく見ると、海底には一面に人間が生えていたのです。

連れのダイバーを見ると、呆然として固まっています。
海底から生えている人間の顔はどれも同じで、美しい少女でした。

どうしたらいいのかわからなくてしばらく眺めていると、いつの間にか連れのダイバーがすぐ側に来ていて、私の肩を叩き、ある方角を指差しました。
その方角を見やると、ダイビングの装備をまったくしていない至って普通の格好をした老人が、鎌で少女たちを刈り取っているのです。

無表情だった少女は刈り取られる瞬間、何とも言えない苦痛の表情を浮かべます。
海中でも叫び声が聞えてきそうな表情でした。
しかしその顔も、やがて切り取られた足下から広がる少女の血によって見えなくなってしまいます。

そうして老人は少しずつ私たちの方へ近づいてきました。
やがて私たちのすぐ側までやってきた老人は、完全に固まっている私たちの方へ顔を向け、にやりと笑い、手にした鎌を差し出しました。
まるで「お前たちもやってみるかい?」とでも言わんばかりに……。

次に気づいたとき,私たちは二人とも病院のベッドの上でした。
酸素がなくなる時分になっても上がってこない私たちを心配した仲間のダイバーが助けてくれたのです。

そのダイバーは私たちが見たようなものは見ていないと言います。

「海ではいろんな幻覚を見るものだ。それが海の怖さであり、素晴らしささ」

と、その年長のダイバーは私たちに諭すように言いました。

しかし私ははっきり言えます。あれは決して幻覚などではなかったと。
私の母方の家系の女性は、その殆どが何かしらの霊感を持っています。
私もその内の一人なんですが……。

もうかなり昔の事です。
友人のK(男)から相談を受けました。
そのKの話の内容はこうでした――。

俺は久しぶりの休みで実家に帰ったんや。
そして自分の部屋に入ったら、見た事のない木の箱がテーブルに置いてあった。
それは綺麗な桐の箱で、綺麗な組紐でしっかりと結んであった。

俺は見覚えのないその箱をそっと開けてみた。
中には、まだ新品の様な市松人形が入っていた。

誰もが思うやろうけど、何故か日本人形って怖いやん?
俺は元通り箱になおして、おかんに誰が置いたのか聞いてみたんや。

しかし、おかんも妹もみんな知らんって言うねん。
俺は何やらすごい怖くなって、その箱をふだんは使う事のない部屋の押し入れになおして、その日はそのまま寝たんや。

しかし次の日、ふと目が覚めてテーブルの上を見ると、またあの人形が置いてあるねん! しかも今度は箱から出てるねん!

俺は半狂乱になって人形を掴み、おかんの所へ行ってどなった。

『俺になんか恨みでもあるのんかー!!』

って。

でもおかんは、何言うとんねんあんた……みたいな顔で呆れてるみたいやった。
おかんはほんまに知らんって言うねん。

俺はおかんが嘘言うてる訳やなさそうやし、今度は誰にも出して来れへん様に、新聞でぐるぐるに包んで、庭の倉庫の一番奥になおしておいた。

……のはずやのに、今朝起きたらまた戻って来てんねん! 俺の部屋に!
――普段から霊感が強い私に、一晩一緒に部屋でいてくれ、と言うK。
あまりに必死に頼むので、私は彼の言うとおりにしてあげる事にした。

その晩、ふと目が覚めるとKがいない。
トイレにでも行ったのかと、煙草に火をつけてKを待っていた。

しかし、なかなかKは戻って来ない。
おかしいなと思い立ち上がろうとすると、足音が聞こえて来た。Kが戻って来たのだ。

『あんた、何しとったん?』

と発した私は、Kを見て驚愕した。
Kは例の人形を大事そうに抱えていたのだ。

『K! あんた、一体何してんの!?』

私がそう言うと、Kはハッと気付いた様に人形を見て

『うわ〜!! 何で俺こんなもん持ってんねん!』

と、人形を投げ付けた。

そう、人形が一人でKの元に戻って来ていたのではなく、夜な夜なKが自分で出して来ていたのだ。
Kは全く記憶がないと言う。

後日、Kの母さんも一緒にお寺にその人形を持って行き、一部始終を話した。

住職が言うには、その人形はKの祖母のもので、何かを伝える為にKに訴えかけていたのでは……と言う事だった。
悪い霊などではなかったらしい。

Kと母は、祖母の墓に参り、住職の言うとおり人形を供え、以後、その人形はお寺の方で預かってもらう事になった。

それ以降、Kの身に異変が起きる事はなかったらしい。
新しい先生が我が高校に来ました。
いつものように授業が終わり、その先生(仮にO先生としよう)が教室を出ようとしたとき、何人かの生徒に話しかけられた。

「先生、知ってる? うちの学校の怖い話」

「なんだそれ? 知らないなー」

「なんか幽霊見たって人がいるらしいよ」

「ほんとに? どこに出るの?」

「なんか聞いた話なんだけど、真夜中過ぎに当直に回ってた先生が見たって」

ちょうどその日が宿直当番だったO先生は、からかってるんだなと思いつつも話の続きを聞くことにした。

「この建物の3階から4階に登る階段の踊り場にある鏡の前に0時きっかりに立つと、自分の肩越しに人が指を指して笑ってるのが見えるんだって」

「ほんとかー? よし、それが本当かどうか今日見てみるよ」

もともとあまり怖い話など信じないタイプのO先生だったが、生徒から聞いた話が妙に気になったらしい。

そうこうしているうちに夜になった。
職員室でデスクワークをしていたO先生が壁に掛かった時計を見ると、あと数分で0時になりそうなことに気づき、とりあえずその踊り場へと向かった。

誰もいない校舎を歩いているとなんともいえない気持ちになったらしいが、ここで引き返すわけにはいかず、問題の鏡の前に立っていた。
腕時計を見てみるとちょうど0時。しかし映っているのは自分の姿だけで、何も変わったとこはない。

(……やっぱり騙されたか)

と苦笑しながら、その日は当直室で眠りに付いた。

翌朝、その幽霊話をした生徒を見つけると、O先生は

「昨日、ちゃんとその時間に例の鏡見たけど何もなかったぞー」

と自慢げに言うと、その生徒はちょっとびっくりしたような顔で言った。


「先生、3階と4階の踊り場に鏡はもともとないんだよ……」
 
私は今は高校一年生になりました。
当時は小学生で、借家に住んで居ました。
そこは頻繁に霊魂(?)と言った白い丸いものが押し入れの襖の所に浮かんでいたりしました。

私の母は霊に憑かれやすく、金縛りにも体調が悪い日には見たりもする人です。

夜中、私は金縛りで目が覚めました。
初めてではありませんでしたがやっぱり怖くて、声を出そうと試みてみるもやっぱり声は出ずに息苦しさだけを感じました。

まだ小さかった私は一人では寝て居なく、母と父三人で寝て、私が真ん中という位置でした。

頭の上はカーテンがある大きな窓……何と言えば良いか分かりませんが、人が立ってもまだ足りないくらいのガラスの窓です。
足元は襖で真っ直ぐ行けばトイレでした。
父は右側に居り、その隣はテーブルがある部屋で、母は左側で、母の隣が襖の押し入れでした。

私は怖さでいっぱいでどうしようもなく、母を何回も呼ぼうと試みました……。

そんな中です。母親の声が聞こえたんです。

『○○(私の名前)ちゃん、どうしたの? こっちにおいで?』

私は母の声が聞こえて安心感に包まれ、声も出ずに身体も動かない状態だったので、横に転がる形で転げて母の所に行きました。

……何故か私は途中で止まったんです。
そして頭の中で

(違う……お母さんじゃない)

母親が襖の所に寝て居たので、そこは襖の傍でした。
リアルに回りは暗くて分かりませんでしたが……私がそう思って止まった瞬間、聞こえたんです。

『何だ〜あ分かったの? そのままこっちに来れば良かったのにね……』
女の人の顔が浮かびました……。

それは案の定母親じゃありませんでした。白い女の人の顔で。
驚きの余りどう表現したら良いのか分からない感情に包まれました。

そして次の瞬間、本当の母の声が聞こえたんです。

そして私は目覚めました……。
私は母親の居る襖の方に転がって行ってるはずだったんです。

……でも実際は違いました。
襖のあるトイレのある方向に転がって行っていたんです……母親の居る場所からは遠く離れて居たんです。

その後母親の傍に行ってまた眠りました。
母親は私が急に転がり出して驚いて声をかけたそうです。

今思います……あのまま私が転がってあの声の場所へと行って居たらどうなっていたんでしょう?
あれは夢だったんでしょうか?

夢というにはあまりにリアルで声が今も頭の中から離れません。
自分の記憶と兄から聞いた話、それに友達からの情報、それらを元にした話なので、完全に真実の話ともいえないかもしれませんが、結構怖いと思った話なので書き込ませていただきます。
でも死ぬほどってカンジでもないので、あまり期待しないでくださいね。

始まりは、おれが小学校低学年の頃までさかのぼります。
当時、神戸市垂水区にあった(今も在るかは知りません)公務員宿舎に、おれの家族は住んでいました。

外観は古いタイプの団地って感じで、全部で十棟くらいあったと思います。
一つの棟には三つ階段があって、五階建て。ウチは五号棟の真ん中の階段の五階でした。

話の元となる家族が住んでいたのは、向かって右側の階段の四階、号室までは覚えていません。
そこは両親と一人っ子の長男の三人家族。父親は公務員で母親は専業主婦、長男は浪人生。
この母親と長男の関係が、はじめの悲劇を生みました。

母親はかなりの教育ママで、自分の息子に、自分が望む志望大学に入学してもらいたかったらしく、半ば強制的に息子に勉強をさせていました。

何度目かの受験失敗の後、長男は母親のプレッシャーと受験失敗を苦にして、団地の四階、勉強部屋の窓から飛び降りて自殺しました。
結構大きな騒ぎになったらしいのですが、おれはあまり覚えてないです。

教育バカママは、その一件がかなりショックだったらしく、精神的に追いつめられておかしくなっちゃいました。
夜中、突然散歩にでかけたり、外で会った人に「あなたの後ろに羽の生えた人が見える」なんて言ったりして、団地の住人にかなり恐怖を与えていました。

実際にウチの兄貴は、そのバカママ改めピチガイオカンに訳のわからないことを言われたらしいです。
他にも聞いた話では、死んだ息子の部屋の窓を必ず開けっ放ししていて、「閉めると息子が帰ってこれなくなる」なんて言っていたらしい。
だんだん症状がひどくなり、今度は部屋中に何処からか持ってきたお札を張りまくって、「あいつらが、息子が帰ってくるのを邪魔している」と夜中にわめき散らしたり、寝巻きのまま外に出たり、相変わらずの「あなたの後ろに羽の生えた人が見える」を団地の人に言ったりと、かなりヤバイ状態までいきました。
ここらへんのことは、おれも当時、団地の話題になったのを覚えています。

それで、旦那が困り果てて、色んな人(カウンセラーから宗教関係者、心霊系まで)に相談したものの、良い結果は得られなかったらしいです。
偶然にもその家族の向かいには某宗教団体に属する家族が住んでいて、ある日相談を受けたそこの父親が、そのピチガイオカンを訪問して、彼女の前でお祈りをしたところ、急にピチガイオカンの声色が変わって、その父親を罵ったり、手がつけられないほどに暴れたりと、エクソシスト張りのことがあった、そんな噂も団地に広まりました。

家庭の事情でおれの家族が引っ越すことになってしまい、その後の経過を見ることなくその一件は記憶のかなたに追いやれることになります。

ウチの家族は何度か引越しを繰り返して、二年後、また神戸に帰ってきました。
しかし、例の公務員宿舎ではなく、少し離れた学区も違うところです。
それにその頃はすっかり、その家族のことなんて忘れています。

神戸に戻ってから四、五年経ったころ、おれがもう高校生になるかならないくらいの時、母親の友人がうちを訪れました。
その人は公務員宿舎に住んでいたときからの友人で、神戸に戻ってきてから時折、母に会いにウチに来ていたのです。

その日もくだらない世間話をしていましたが、おれが挨拶をしに顔出すと、「そういえば覚えてる?」とあの家族の話をはじめました。

ピチガイオカンは一向に良くならず、けっきょく旦那はピチガイをつれて、田舎のほうに引っ越すことになりました。何処とは聞きませんでした。
そこで旦那がピチガイの面倒を見ながら、遠くの会社まで通勤していたらしい。

しかし、この旦那もかなりの年齢による年波には勝てないのと、ピチガイの面倒や長い通勤時間等がたたり、体調を崩してしまった。
それで早めに退職し、そのまま田舎でピチガイの面倒だけを見ることに。

旦那が退職してしばらく経ったころ、近所の人がおかしなことに気づきはじめた。
夫婦の姿を最近見かけない。
奥さんのほうがピチガイなのわかっていたし、旦那が最近退職したのも皆知っている。
旦那の方はよく買い物なんかに出かけていたが、このところ全然姿を見かけない。
おかしいとは思いつつも、家庭の事情が事情だけに、誰も家まで出かけてどうなっているのかを確かめたりはしなかった。

それから何週間がたっても、夫婦の姿を見かけなかった。
さすがにこれは本当におかしい、と思い始めた近所の人。
近所といっても田舎で、家と家のあいだはかなり離れているので、具体的に家の状況とかはわからなかったので、警察に事情を連絡し、一緒に様子を見に行くことになった。

カギはかかっておらず、戸を開けると、その瞬間に異臭が漂ってきた。明らかに何かが腐った匂い。
警察官と近所の人が中に入っていくと、寝室と思われる部屋に座る人影が見える。
敷かれた布団を前にピチガイの奥さんが座っている、きちんと正座して。

腐臭の元は明らかにその部屋からきている。
部屋に入っていくとピチガイ奥さんと、その前に敷かれた布団の上には変わり果てた旦那の姿があった。
死後からかなりの時間が経っている様子、ピチガイの奥さんはその前でじっと座っていた。

後から聞いた話では、旦那は他殺ではなく、体調を崩しそのまま病死したらしい。
ただひとつ気になることは、家の中には食料といえるものは一切なくなっており、近所の人も誰一人ピチガイ奥さんが買い物に行ったのを見ていない。

旦那が死んでから何週間ものあいだ、ピチガイはなにを食べていたのだろうか、彼女の目の前に在ったのは……。
私の家は古く、立て付けが少々よくない。
押入れの戸を閉めようとしても必ず隙間が出来てしまう。

子供の頃はそれが無性に怖かった。
その暗い線の向こうに何かがが潜んでこちらを覗いているのでは、と常に恐れていた。

しかし歳をとり、いつのまにか恐怖は消えた。
そう、その隙間の向こうには何もいるはずがない。
子供の頃に感じた恐怖は全て想像が生み出した幻。

その、はずだった。

ガタ、ガタガタ……

深夜1時、隙間から音がした。
すでに床に就き眠気もピークだった私は、ネズミだろうと確認もせず放っておいた。

いよいよ意識が夢の中に落ちようとしていた、次の瞬間。

「オギャァ、オギャ、オギャァア」

赤子の泣き声に夢の淵から一気に呼び戻された。

全身の毛穴が一気にひらく。
赤子の声は……そう、あの暗い隙間から聞こえてきていた。

とっさに頭を布団の中にもぐりこませる。
汗で布団の中はじっとりとしていた。

何分たっただろうか……泣き声はいつのまにか消えていた。
確認しよう頭を布団からだそうとしたが、次の瞬間身体が凍りついた。

「オトウ……サン……」

隙間から今度は小さな子供の声が響いた。

いや、それだけじゃない。
初め高かったその声は、徐々に低く大人びた声になっていく。

押入れの戸がすべる音。声がだんだんと近づいてくる。

「アナタハ、ワタシノ、オトウサンデスカ?」

ちがうっ!!

心の中で必死にそう叫ぶ。
耳元でそいつが話しかけるたびに何度も何度も叫んだ。

何度そう叫んだろう。
そいつは私の耳元をはなれ、玄関を開け出て行った。
私はそのまま恐怖で動けずに朝を迎えた。

その日、静かな町に事件が起きた。
酔った男性が、足を滑らせ池に落ちて死んだらしい。
噂では地面に引きずられたような後と、腕に人の手の形をしたアザがあったという。

私は押入れを調べた。
そして押入れの床の下に小さな骨を見つけた。
本当に、手に収まるほど小さな、人間の骨。
友達から聞いた話で一番怖かった話です。

その友達をA子とします。
A子とA子の彼氏、B子とB子の彼氏の4人でドライブに行きました。
そのドライブの帰り道の事です。

夕焼けも終わって、だんだん辺りが薄くなってきたころ、A子達の走っている車も、その前後の車もライトを付けました。
一日中遊んだ後だったので、運転していたA子を含めみんなは眠くなってきています。
そこで、A子がみんなで怖い話をしようと提案しました。

一人づつ順番に人から聞いた話や自分の体験等を語って、その場は盛り上がっていました。
辺りはすっかり暗くなりました。

その時、すれ違った車にパッシングされました。
ただのパッシングではなく、なぜかしつこく何度もパッシングされました。

A子は何だろうと思いましたが、みんなは話に夢中で気が付いていないようでした。
半ドアかな? とも思いましたが大丈夫そうです。
ライトもちゃんとついています。

そんなことを考えていると、後ろの車がいきなりブーブー! とクラクションを鳴らしてきました。
そしてまたパッシング。

何事かと、今度はA子の友達や彼氏も気が付いたようです。

でも、その時脇に車を寄せるくらいの幅がなかった為、車を止める事ができず、そのまま走っていました。
すれ違いざまに何かを叫んでいく人までいました。

信号が赤になっているところでようやく車を止める事ができたとき、隣の右折斜線に入った車がA子達の車の横につけてきて、窓を開けて何か言ってきます。
A子が窓を開けて、話を聞きました。

信号が青に変わり隣の車は行ってしまいましたが、A子は青ざめた顔をしてなかなか車を走らせようとしません。

B子がどうしたの? なんだって? と聞くと、A子は

「……私達の車の上に子供が乗っていたんだって。でも、それを言おうと思って隣に車を止めて見たらいなくなってたんだって」
愛犬家のAさんは、4年前に飼い犬を亡くした。

飼い犬の死因は老衰。
20年近く事故や病気をせず、眠るような大往生だったという。

「それからね、帰ってくるんだよ」

聞くと、毎年お盆に彼の犬は戻ってくるらしい。

「お盆の夜に寝ていると、グッ、って布団が重くなる。動こうと思っても動けない。金縛りだ」

「耳を澄ますと、ハッハッ、って犬の息遣いが聞こえるんだ。最初は怖かったけど、あいつが帰ってきたかと思うと、なんか嬉しくてねぇ」

Aさんは心底嬉しそうに、僕に語ってくれた。

その話を聞いてから1年が過ぎ、再びAさんと会った。
彼は少しやつれているように見えた。

挨拶もそこそこに、具合でも悪いのか、と彼に聞いてみる。
しばらく逡巡したあと、

「あいつじゃなかったんだ……」

Aさんはポツリと言った。

今年のお盆も、彼の犬は帰ってきたらしい。
いつものようにAさんは金縛りに遭い、いつものような息遣いを聞いた。

毎年のことだからAさんも慣れていたのだろう。
飼い犬がどんな風に自分の上に乗っているか、想像してみたそうだ。

その時、Aさんは気付いてしまった。

自分の上に乗っているモノ。
その重みを支えている足。

それはなぜか3本しかなかったそうである。
雨の音

その晩は雨が強く降っていた。
現場に着き、トンネルの手前で車を脇に寄せて一時停車。

その手の感覚は鈍いほうだが、不気味な雰囲気は感じた。
「恐い場所だ」という先行イメージのせいもあるだろうが。

しばらくの休憩の後、ゆっくりと車を進め、トンネルに進入開始。

こういう体験は始めてなので、ワクワクするような妙な高揚感を感じる。
友人達もいい年して遊園地の乗り物を前にした子供のような表情で目を輝かせていた。

それほど寂れた場所ではないとは思うのだが、後続の車は来なかった。
なので、スピードをかなり落として進んだ。
何かが起こる事を期待しながら……。

しかし特に何もおこらず、トンネルの終端まで着いてしまった。

トンネルの壁などを観察していた友人達も、別に妙なモノを見たわけではなさそうだ。

もう1度行ってみよう、と提案が出て、皆賛成した。
車をトンネルの端でUターンさせた。

今度も何も起こらなかった。
不満なので(と言うか、暇なので)何度が往復してみよう、という事になった。

雨が強くなってきたのか、雨粒が車を叩く音がうるさくなってきた。

3、4往復ほどしただろうか、友人の1人が、「おい、もう帰ろう」と言い出した。

何も変わった事も起こらず、飽きてきたのだろう、と思った。
だが、何か声の調子がおかしかった。

トンネルの出口が見えるあたりで一旦車を止め、後ろを振り向いた。

帰ろうと言い出した友人は肩を縮め、寒さに震えるような格好をしている。
もう1人は、その様子を見てキョトンとしている。

「え、どうした? 何か見えたのか?」と聞いたが、「いいから、とにかくここを出よう」と言う。

“何か”を見たのか?
期待と不安で動悸が激しくなってきた。

雨は一層酷くなり、ボンネットを叩く音が耳ざわりに感じる。

とにかく一旦ここを出て、どこか落ち着ける場所を探す事にした。
国道沿いのファミレスに寄り、ようやく一息ついた。
夏も近い季節だというのに凍えるように震えていた友人も、ようやく落ち着いてきたようだ。

「なぁ、もう大丈夫だろ? 何を見たんだよ」

「聞こえなかったのか? あれが」

友人は怪訝そうな顔で僕達を見た。

妙な怪音の類か? それとも声?
しかし僕には心当たりはなかった。

もう1人の友人も、何が何やら、といった表情をしている。

「別になにも……まぁ、運転してたし、雨もうるさかったしなぁ」

「聞こえてたじゃんか!」

いきなり声を張り上げられて驚いた。

深夜なのでファミレスにはほとんど人はいなかったが、バイトの店員が目を丸くしてこちらを振り向いた。

しかし彼がなにを言っているのか理解できない。

「何が聞こえてたって? はっきり言ってよ」

気恥ずかしさと苛立ちもあって、少し強い口調で言ってしまった。

しばらく重い沈黙が続いたあと、彼が口を開いた。

「雨だよ、雨の音」


「俺達はずっとトンネルの中に居ただろ! なんで雨が車に当たるんだよ!」
これは友達から聞いた話です。

ある心霊スポットでの話。
そこは山の麓にあるトンネル。

仲のいい男友達4人でそこに行こうということになり、ドライブがてら行くことになった。

そこは結構長いトンネルだった。

初めの内は何もなく、4人でバカな話をしながら走っていた。

すると運転手が、「あそこ何か浮いてないか?」と言いだした。

みんなも見てみたが、「何もないじゃないか」と一人の奴が言い、運転手も気のせいかと思っていた。

少し走ると急に車が止まった。

するとまた運転手が「やっぱ何か浮いてるって」と言ったので、みんなで見ると今度は確認できた。

なんだあれはと話していると、その浮いているものが近づいてきた。
そして次の瞬間、それが何か確認できた。

それは髪の長い女の生首だったのだ。

みんなは驚き、急いでバックで逃げようとした。

しかしバックなのでそれほどスピードが出ず、追いつかれ、その生首が車内をスーッと通り抜けた。

みんなはあっけにとられたが、すぐさま車を前進させ、かなりのスピードを出してついに出口まできてトンネルを出ることができた。

しかしトンネルを出てすぐ道は急カーブになっていて、車は急ブレーキをかける。

ガードレールにぶつかってなんとか助かったが、下はすぐ崖で、落ちれば死んでいただろう。

みんなが恐怖で黙り込んでいると、一人がこう切り出した。

「もしかしたらさっきの幽霊は“トンネルを出たらすぐに急カーブがあるから気をつけろ”ということを伝えようとしたんじゃないか」

みんなも物事をいい方向に考えようと思い、絶対そうだと思い、話していた。

そんな話をしていて、ぱっとミラーを見ると、さっきの生首があり、みんなは凍り付いた。


そしてこう言った。


「落ちろ」
今から十年前の冬、当時付き合っていた彼女との二人旅の話。

そのホテルは山に囲まれた湖の湖畔に立っていた。

チェックインの後、部屋で窓の外を眺めながらくつろいでいると、湖に浮かぶ一艘のボートに目が留まった。

ボートには白のTシャツに若草色のパンツ姿の女性がいた。
女性は何やら慌てふためいていた。

やがて手でメガホンの形を作り、手前の岸に向かって何か声を上げた。

距離があるためか、声は全く聞こえてこなかった。

「何か見える?」

背後から彼女が声をかけてきた。

「あのボート、もしかして……」

「やだ、沈んでいるじゃない!」

急いでフロントに、「湖で女性が溺れているから救助してやってくれ」と電話した。
しかし、「はぁ」と気のない返事。

俺は部屋を飛び出して表に出た。

湖の水面は穏やかで波ひとつ立っていない。

ほとりにいた人たちに女性はどうなったのか訊ねてみたが、皆、ボートに乗った女性どころか、ボートが湖に出ているところすら見ていないという。

「本当に見ませんでしたか? ほら、白の……」

俺はそこで硬直してしまった。
気が付くと、周りの全員が俺のことを訝しんでいる。

立つ瀬が無くなり視線を彷徨っていると、白い板張りのボートハウスが目に留まった。
管理人が何か見ているんじゃないかと思い、俺はそこへ向かった。

ホテルの部屋に戻ると彼女がガタガタと震えていた。
俺は彼女の肩を抱いて、何かあったのか訊ねた。

「あの人、しばらくこっちの岸に向かって何か声を上げているんだけど、誰も気付かなくて、そしたら窓から覗いているわたしに気付いたみたいで、わたしに向かって『助けて、助けて』って叫びながら沈んでいった。すごく恨めしそうな顔をして……」

「ねぇ、おかしいよね? 岸に向かって叫んでいた時は何も聞こえなかったのに、どうしてわたしの方を向いた瞬間、あの人の悲鳴が聞こえるの? ベランダに出ていたのならともかく、窓から覗いているわたしに気付けるものなの? だいたいそもそも……」

「冬にTシャツ一枚はおかしいよな?」

「うぅ、うん」
「湖のほとりにいた人に訊ねてみたけど、ボートなんて知らないって。ボートハウスがあったから管理人に聞こうと思ったんだけど、『冬期休業中』って看板があった。ボートは全部陸に上げられていてブルーシートを被せられていたよ。少なくとも勝手に持ち出せるような状態にない。よくよく考えてみれば、こんな寒いなかボート遊びをする人なんているわけがない」

「じゃぁ、じゃぁ、わたしたちがここから見たものは何なのっ?!」

しばらく沈黙した後、俺の方から帰ろうかと誘った。

フロント係に適当な理由を挙げて宿泊のキャンセルを申し出た。
宿泊料の90%を払うというホテル側の条件を飲んで、俺たち二人は家に帰った。


今年の夏、彼女から暑中見舞いをもらった。

彼女とはその後二年ほど付き合ったが、俺の不徳により別れてしまった。
今は結婚して一児の母になっている。

暑中見舞いには次のことが書かれていた。

「○○さんはあのホテルのことを覚えていますか? 実は先日、主人からあのホテルに関する噂話を聞いたのです。主人が言うに、あのホテルには女性の幽霊が出るという噂があるのです。夜な夜な全身ずぶ濡れの女性が枕元に現れ、すごく恨めしそうな顔で『あんなに助けてと叫んだのに……』と言って、泊り客をあの世へ引きずり込もうとするそうです。本当の話かどうかは判りませんが、『助けてと叫んだのに』というところが、わたしたちの見たボートの女性と妙に符合するので気になります」
この話には“呪われる”という表現が含まれています。
以下、自己責任で進んで下さい。
この話は自己責任でお願いします。

大正時代・昭和初期と鉄工所の景気が非常に良かったそうだ。
或る町に、やはりそれなりの景気を誇る鉄工所があった。

何代か続いたけど、結局時流に取り残されて潰れてしまった。

経営者である男は負債を整理していたが、結局売れるものを全て売っても負債は片付かなかった。
責任感の強かった男は、わが子を里子に出してでも返すべき金を返そうと考えた。

結局、男はまだ幼い1人娘をG県某村に里子に出した。

里子に出された女の子はさつきちゃんと言う。
さつきちゃんはまだ11歳で、お嬢様として育てられていた。

里親は彼女を奴隷のように扱いとことんこき使ったが、お嬢様育ちのさつきちゃんがまともに働けるわけはない。
彼女にとって辛い日常が続いた。

少しずつ仕事も覚え、村での生活に少し慣れてきたのが里子に出されてから3年後。さつきちゃんが14歳の頃だった。
慣れかけてきた生活が、ある日を境に地獄に変わった。

或る晩、彼女は夜這いを掛けられた。
もちろん処女だった。

彼女は恐怖と絶望を感じ、自ら命を絶とうと考えた。

が、すこし考えた。

「このまま死んでしまっても、私が生きた証はなにも残らない」

彼女はなにか1つのことをやり遂げてから命を絶とうと考えた。

が、毎日の労働もあり、彼女に許された自由は「考えること」だけだった。
その自由の中でなにかをやり遂げなくてはならない。

彼女は今まで自分が会った人々を「感謝する人」「恨む人」にわけるという作業を、「なにか1つのこと」に選んだ。

1日1人ずつ「感謝する人」「恨む人」を決めていく。
自分が今まで出会った人全てを振り分けたとき、命を絶とうと決めたのだ。

果たしてそれを実行していく。

が、彼女は昔お嬢様として育てられ、社交界にも通じていたので、今までに会った人の数が果てしなく多い。
最初は地道に続けていたが、次第に考えなくなる日が多くなった。

結局彼女は自分が決めたことを完遂することなく生き続けた。
そしてあの日から4年経った18歳の頃、彼女にもようやく幸せが訪れた。
恋に落ちたのだ。

相手は隣の家に住む青年で、年は21歳。マジメで誠実と知れた人物だった。

さつきちゃんの労働態度は極めてマジメだったため、この頃には里親にも非常に気に入ってもらっていた。
2人とも近所での評判もよかったので結婚することが許された。

そしてさつきちゃんが18の頃、2人は結婚した。
ようやくさつきちゃんにも幸せが訪れた。

そして新婚初夜を迎えた。

さつきちゃんはそこで見てはいけないものを見た。
旦那となる男の背中には、4年前にさつきちゃんがつけた傷跡がある。

そう、夜這いを掛けて彼女に死を覚悟させたのは他でもないこの男だったのだ。

さつきちゃんは困惑した。
大好きだけど恨むべき人。恨むべき人だけど大好きな人。
目の前にその男がいる。

彼女はこの男を殺そうという結論に達した。
そして自らもまったく同じ方法で命を絶とうと。

彼女は翌晩、早速実行に移した。

方法は至って単純だった。
彼が寝込んでから手足を縄で縛り、猿轡をした上で、人気のない井戸に捨てるということ。

そして男を井戸に放り投げた後、自らも猿轡をかけ、手足を縛り井戸に身を投げた。
が、彼女が落ちたところには水がない。この井戸は枯れ井戸だったのだ。

男は井戸に落とされた際に頭を打って死んでいたが、彼女は男がクッションになり、死ねなかった。
手足を縛っていて猿轡をしているために、なにもできない。
彼女は飢えて死ぬのを待つのみとなった。

何日か過ぎると体力の消耗を感じ、少しずつ死を感じた。
極限状態になりかけたとき、彼女はあることを思い出した。

自分が「感謝する人」「恨む人」を決めていたこと。

彼女は決心した。

自分はこのまま死ぬ。
が、死んだときには「感謝する人」には大いなる祝福を、「恨む人」には大いなる災いを与えようと。

それから1週間後に彼女は息絶えた。
が、彼女の想いは今も生きている。

この話はさつきちゃんにとって知られてはいけない過去である。
この話を知った人は「恨む人」にあたり,大いなる災いが降りかかる。

災いを避ける方法が1つだけある。
自身も「感謝する人」になればよい。

これから毎朝起きたときに、G県の方を向いて「さつきちゃん、私はあなたの味方です」と心の中で唱えて欲しい。
彼女が死ぬまでの1週間という期間、これを続ければ大いなる祝福が受けられる。

1日でも忘れたときは、貴方に大いなる災いがふりかかるでしょう。
ナンパ目的で相棒と白浜に行った時の話です。

もちろんホテルや海の家の予約などしたことがない俺達は、ナンパした女の部屋にしけこむのが当然だったのだが、その日は忘れもしない人生初めての超惨敗で、真っ暗になっても浜辺でナンパをしていた。

努力の甲斐なく、その日は浜辺にあるベンチで一泊する事となった。

花火をするカップルはいたが、女たちだけでする奴らは全くいなく、この時点で帰れば良かったと今は思う。

花火をする人影もなくなり、波音だけの昼間とは全く違う世界。
相棒のイビキがとなりのベンチで聞こえた頃、0時過ぎだったと思う。

すぐ近くで砂の上を歩きまわる音が聞こえてきた。

もちろん真っ暗だったが、ライター以外に明かりの無い俺でも十分に目が闇に慣れていた。
音のする方を寝ながら見ると、姿は見えないが確かに5人くらいの足音が聞こえる。

その音はドンドンこちらに近づいてきた。

ドンドンドンドン……

急に悪感を覚え、とっさに「ヤバイ」と感じた。
なぜだかはわからない。

立ち上がって相棒が寝ている方を見ようと首を横にした瞬間、さっきまでベンチで横になっていた相棒が座ってこちらを向いていた。
顔の表情は暗くて全くわからなかったが、こちらを向き、俺の顔を見ているのは確かだった。

俺は「大丈夫か?」みたいな事を言おうとした瞬間、自分の周りに何本もの白い足、足、足、足、足……

気を失う瞬間、俺は確かに聞いた。
若い男の声で“ようこそ”って。

それ以来、海が怖い。
あるタクシー運転手がいた。
仕事は人並みにこなす普通の運転手だった。

ある日、そのタクシー運転手はラジオをかけてタクシーを走らせていた。

いつもは何気なく音楽番組やニュースをかけていたが、その日はたまたまトーク中心の番組を聞いていた。

『続いてのハガキはこちら……』

『こんばんは。私は怖い話が大好きです。今日は都市伝説について話したいと思います。ある雨の晩、タクシー運転手が夜中にタクシーを走らせていると……』

ちょうど雨の日だなぁ、と運転手は思った。
なんとも似ているシチュエーションに少し戸惑う。

『……タクシーを走らせていると、突然、雷が鳴り始めます。運転手はそろそろ引き上げようと思い、人気のない、車を走らせやすい土手の近くを走りました。すると、また雷が鳴りました。その時、運転手はあることに気付きます。バックミラーごしに、雷の光で照らされた後部座席に、女の人が座っているのです』

運転手はラジオに釘づけになっていた。
そしてつられてバックミラーを見た。

そう。
女が居るのだ。

体を全身濡らした髪の長い女が、バックミラーからこちらをじっと見つめている。

背筋が凍り付き、そして恐怖に体を締め付けられ、声もでない。出しても仕方がないのだが。

しかし女はすぐにバックミラーから消えた。

しかしすぐに気付いた。
バックミラーから消えただけだった。

今度は横にいる。
すぐ横に座っている。

女は男の方を見て、口元を吊り上げてニヤつくように言った。

「一緒に来て……」


車は勢いよく横転し、運転手は即死。
もちろん女の死体は出てこなかった。

横転した直後、まだラジオ番組は続いていた。

『背筋も凍る話をありがとう。さて最後に、この話を聞いている人にメッセージです……』


『あなたは死にましたか?』
俺の親戚に元刑務官って人がいる。

その人が言うには、刑務官の仕事って受刑者を監視する事じゃなくて、受刑者に人の温かみを教えるのが本当の仕事らしい。

そんな叔父は、時間があれば受刑者の話を聞いていた。

話す内容のほとんどは受刑者の犯した罪についてがダントツで、自首した受刑者なんかは、どうして自首するに至ったかを話すらしい。

その中で、ここの板に合う話があったので投下します。
その受刑者をAとして話を進めます。


Aは元々は普通のサラリーマン。
その彼が刑務所にいる理由は殺人。

殺害されたのはこの人の奥さんで、殺害後、遺体の処理に困ったAは、自宅の冷蔵庫にバラバラにした奥さんを保存していた。

会社から帰ってくると冷蔵庫から身体を一部を出し、肉は細かく切り、骨はミキサーで粉々にして、部屋のトイレから流していった。

そんな日々が何日か続いて、身体のほとんどがトイレから流れていった。

最期に残ったのが頭部で、やはりこれを細かく刻むのには踏ん切りがつかなかったらしい。

頭部だけが冷蔵庫に残された状態が何日か続いたある日、Aは夢を見た。

その夢の中で、殺した奥さんが部屋のテーブルに俯いて座っている。
かなり深く俯いてるらしく、表情は伺えない。

でも、テーブルに置かれた手がカタカタと左右に震えていた。

次第にその震えかたが素早くなっていき、爪が、そして指がテーブルの周りに飛散しはじめた。

みるみる内に肘から先がなくなり、ちぎれた。
腕からは真っ赤な血が迸り、骨がカタカタのテーブルを叩いていた。

そこで目が覚めたAは、全身を汗でべっとりと濡らし、あまりのショックに身動きが取れなかった。

ようやく落ち着き、リビングへと向かう。

すると冷蔵庫が少し開いており、そこから首だけの奥さんが睨みつけていた。

驚いたAは冷蔵庫と閉じ、扉をガムテープで閉じた。

この時にはまだAは自首を考えなかったらしい。
その日、冷蔵庫の中にある頭部の処理に手つかずのAは、仕方が無く新しい冷蔵庫を購入することにした。
一人用の小さい冷蔵庫で、店からの配達は頼まず持ち帰ったので、ガムテープ付きの冷蔵庫の存在が公になることはなかった。


その日の夢も同じ場所で奥さんが座っていた。
違ったのは、昨日の終わった時点から夢が始まっていること。

テーブルについている奥さんの腕からは真っ赤な血が滴っている。
今度は足が床を蹴っていた。

その動きが激しくなり、床をける音も

ドン、ドン、ドン、ドン

ドンドンドンドン

ドドドドドドドド!!

と激しくなっていく。

次第に床に血がにじみはじめ、足の肉が飛散しはじめる。
テーブルの上では腕が振り回され、血をまき散らしている。

Aの頬にも血が飛んでくるが、身動き一つ取れずにその光景を見ている。
頭の中では「はやく目覚めてくれ」と叫んでいたが、夢が終わることはなかった。

部屋中に飛び散った血がいやらしく光っていた。

突然、四肢を動きを止めたと思うと、俯いていた顔が少しずつ上がりはじめた。

垂れていた前髪が頬にへばりついていく。
髪の隙間からは、上目遣いでAを睨む目が見える。

顔が完全に上がった時、

「ああああぁぁぁぁぁぁぁっ、私のからだを、返せぇぇぇぇぇぇぇ」

と絶叫が響いた。

この声にAはようやく目を覚ますことができた。
やはり全身に汗をかいていた。

この時、Aは冷蔵庫にある頭部の処理をしようと腹をくくったらしい。
ベッドから飛び出し冷蔵庫の前に行くと、その気持ちは完全に消えた。

あれほど頑丈に止めていたガムテープが全て千切れ、奥さんの頭部が冷蔵庫から転げ落ちていた。
その目は見開かれ、Aを睨みつけていた。

ここでAは逃げられないと観念したらしく、自首したそうだ。

叔父曰く

「殺された方の無念はいつまでも生きてるもんだ」

らしい。
これは実話です。
数年前、私は妹と二人で東京で二人暮らしをしていました。

元々は二人別々に部屋を借りていたのですが、二人の家賃を合わせると一軒家が借りられるという事に気付き、都心から多少離れてはいるものの、広くて綺麗な家を借りる事にしたのです。

ある日、妹がお風呂に入り、私が二階でテレビを見ている時です。

風呂場から

ギャアアアアア


という物凄い悲鳴が聞こえました。

ゴキブリでも出たかと思って一階に下りると、妹は髪をぐっしょりと濡らして裸のままで廊下に立っていました。

何があったか知らないが、いくらなんでもその格好はないだろうと呆れながら、「どうしたの?」と聞くと、青ざめた顔で

「……風呂場、見て来て、お願い」

と言います。

言われた通り見てきましたが、特に変わった様子はありませんでした。
脱衣所までびしょ濡れで、妹が湯船から慌てて飛び出した様子がうかがえた以外は。


取り敢えず服を着て、髪を乾かして一息付いてから、妹は事情を話し始めました。

いつものようにお風呂に浸かっていると、「ヒュー……ヒュー……」という誰かの呼吸する音を聞いたというのです。

周りを見わたしたのですが、誰もいません。
風の音だと解釈し、妹は深く気にせずに髪を洗い始めました。

湯船に浸かりながら、上半身だけ風呂釜の外に身を乗り出し、前かがみになって髪を洗います。
手のひらでシャンプーを泡立て、地肌に指を滑らせ、髪を揉むようにして洗いました。

そのとき、ある事に気付いたのです。


髪が、長い。


妹が洗っている髪の毛は、彼女自身の髪よりも数十センチ長かったそうです。

そして、もう一つのある事実に気が付いた時、妹は思わず風呂場から飛び出してしまったそうです。


後頭部に、誰かの鼻が当たっている事に。


それ以降、妹は極度の怖がりになってしまい、お風呂に入る時は必ずドアの外で私が待機するようになりました。

私自身は、今日に至るまで、何ら不思議な体験をしてません。
しかし、妹は確かにあの時、自分でない誰かの髪を洗ったと言います。
ある日、女子高生のA子さんが学校帰りに駅で列車を待っていると、反対側のホームに同じ学校の制服を着た子がいるのに気づいた。

それは同じクラスのB子さんだった。
確か、その日のB子さんは体調が悪いとかで学校を休んでいたはずだった。

よく見ると、うつろな表情でぼんやりとしており、こちらに気づいた様子も無い。

A子さんは、B子さんとさほど親しいわけでは無かったが、学校を休んだ子が制服を着てぼんやりと立っているのはさすがに気になり、近寄って声をかけてみようと思った。

しかしその時、B子さんのいるホームに列車が入ってきた。

B子さんはその列車に乗るのだろうから、もう間に合わないとA子さんが思った、その瞬間!

うつろな表情のB子さんは、ホームに入ってきた列車に飛び込もうとした。

あっ! とA子さんが思った時には、すでにB子さんの足はホームから離れていた。

助けられるわけもないが、A子さんは思わず身を乗り出した。

と、その時。
A子さんはドン! と何かもの凄い力によって突き飛ばされた。

ただでさえホームの端で態勢を崩していたA子さんは、線路に向かって飛んでいった。

A子さんの目に飛び込んできたのは、猛スピードで向かってくる列車と、引きつった表情で急ブレーキをかけようとする運転手の姿だった。


……さて、問題となるのはここからである。

A子さんはあまりにも凄い力で飛ばされた為、列車の入ってきた線路を飛び越えて、向こう側の線路に落ちた為、列車にはぶつからなかった。
その為、肉体的な怪我は骨折だけで済み、命に別状は無かった。
駅員や警察の調べでは、「普通の女子高生が助走もつけずにこんなに飛べるわけが無い」との事で、誰かが彼女を押したに違いないのだが、調べた限りではそんな人物は見当たらない。

そして、A子さんが見たというB子さんの投身自殺。

これはそもそも、その時間、反対側のホームに入ってきた列車自体が存在しなかったという。

仮にそんな列車が入ってきていたのなら、反対側の線路に落ちたA子さんは、間違い無くその列車にぶつかっていたはずである。

A子さんはありもしない同級生の自殺の幻覚を見た後、何者かに突き飛ばされたという事になるが、実は、A子さんが線路に落ちたのと全く同じ時刻に、8つも離れた駅でB子さんが投身自殺をしていたというのだ。

つまりA子さんは、遠く離れた駅で起きた同級生の自殺を目の前で見たという事になる。

ちなみに、A子さんはあまりのショックで精神が不安定になり、精神科の病院に通っているという。
そして、その路線では現在も人身事故が絶えないという。

その大半がよくある投身自殺として片付けられているようだが……。
正直、今でも文字打つだけで鳥肌が立つもんなんだけど、これは去年付き合ってた彼女の友人、Tっていう女の子の話。

Tは非常に霊感の強い家系の育ち。
幼少期におばさんからウサギのぬいぐるみを貰ったそうだ。
Tはそのぬいぐるみを大事にしていたんだって。

だけど高校上がってからの話。
もうボロボロで、目もほつれてポロンってなっちゃってるうさぎのぬいぐるみ。
それだけ大事にしてきたんだろうね。

ある日、お母さんが掃除をしてる最中にこんな事を言ったらしい。

「ねえ、このぬいぐるみ覚えてる? 昔おばさんにもらったうさぎのぬいぐるみ」

Tはびっくりしたらしい。

だって、うさぎのぬいぐるみは今自分の部屋のベッドの上にいるのだから。

お母さんが持ってきた真新しいウサギのぬいぐるみは、ちょっと小さくて、まだボロボロじゃないきれいな状態。

お母さんが言うには、おばさんにもらったのはこれで間違いないらしい。

気味の悪くなったTは、今までもってた人形を押入れにしまったらしい。


ある日、お母さんがTの部屋を掃除しにきたとき。

ごとん


押入れから何かが落ちた音がした。

開けてみると、あのぬいぐるみが落ちてきたようだ。

お母さんは元の位置にぬいぐるみを戻すと、再び掃除を再開した。

ところが…

ごとん


再びぬいぐるみが落下していた。

元に戻す。

ごとん


何度もそれが続くため、気味が悪くなり、今度は物置状態のベランダの隅にブルーシートをかけて置いたそうだ。
そのベランダの隅っていうのが、またTの部屋のところにあるんだけれども。

ある日、Tはふとベランダに目をやったんだ。
すると、ブルーシートの上にあのぬいぐるみがこちらを向きながら置いてある。

気味が悪いからシートの下へ戻す。
しかしまたこちらを見てる。

今度はとうとうゴミ捨て場に棄ててしまった。
しかし再び人形はTの部屋にあった。

Tの家族はさすがに恐ろしくなり、人形を供養に出したそうだ。
この話は私が通う学校で起きた話。

私の学校は部活動に特に力を入れていて、部活動が夜遅くまで長引くのはよくあることだった。

入部して初めての週末練習。
平日練習よりも、学校が部活動のために夜遅くまで開いていた。

1年生の私達は部活の後片付けのために、部活終了後、2・3年生よりも遅く帰ることに。

部活終了時点で、もう時計は9時を回っていた。
すでに他の部活の人達は帰宅していて、校舎の中には私達の部活の人達だけだった。

「ちょっと暗過ぎない?」

「本当…気味が悪いよー」

「でも、こんなに遅くまで学校に残ったの初めてー」

なんて暗い廊下を歩きながら話していると、体育館側から。

コツコツコツコツ…

人が歩いて来る音…。

コツコツコツコツ…

段々近付いて来る…。

「誰だろう…?」

「体育館閉めたはずだよね?」

友人の手には鍵。

私達は怖くなって、後ろを確認しようとした。

その時

「何をしているの?」

「「きゃぁ!!」」

突然話かけられて私達はびっくりしてしまった。

びっくりして後ろを振り返ると、そこには赤いスーツを着た女の人…。

「もう遅いんだから早く帰りなさい」

「「はぁい」」

入学してまだ間もない私達は、その先生の言うことにしたがって、すぐに自分達の教室に向かって着替えをすることにした。

着替えを終えて、帰ろうとして玄関を出る。

友人が

「今何時だろう。バスの時間あるかなぁ?」

と言い、玄関の時計を見た。

「えっ…?」

と、友人が何かを見て疑問を浮かべていたので

「どうしたの?」

と私は聞いた。

「あれ…」

と友人が指をさす方を見ると、そこには時計があっただけで何も見えなかった。

「何もないじゃん」

「違う! 時計じゃなくてその横!」

横…?
時計の横…。

そう思い、時計の横に視線を向ける。

「きゃあ!」

時計のすぐ横、3階の窓から髪の長い女の人が睨んでいる…いいや、それどころでは無い形相でこちらを見ている。

私はその時、目が合ってしまったのだ…。


私達は怖くなって一目散で逃げ出した。
そのため途中の記憶が無い。
気がつくと、もう帰りのバスの中だった…。


次の日、私達は昨日起こったことを先輩に話した。

最初は絶対に笑われるだろうとダメもとで話したのだが、先輩からは意外な一言…。

「あなた達も見たの?」

先輩は話はこうだった。

今から5年前。
新任の先生がやってきた。

ある日、その先生は初めてのテスト作りに熱が入ってしまい、1人で夜遅くまで残っていた。

そして帰宅しようと学校を出た時、通り魔に襲われ、彼女は一生懸命に学校の中を逃げ回った。

次の日、朝早く学校に来た生徒が3階の廊下を通ると、その新任の先生が窓ガラスのしたに倒れていた。
その時先生が着てた白いスーツが、通り魔のめった刺しにより真っ赤に染まっていたという。

それからだ。
3階の窓で女の人が見掛けられるようになったのは…。

私はその時ぞっとした。
赤いスーツ…。

昨日私達が帰る頃に校内に残っていたのは、警備員のおじさんだけだったと言う…。

しばらくすると、学校の3階の窓ガラスは曇りガラスに変わった。
さす方角

そういえば以前住んでたところの近所で、ごくまれに顔が隠れるほど深く帽子をかぶったおじさんが立ってて、どこかの方角を指差したままじっとしてるんだよ。

そのおじさんは毎回違う場所に立ってるんだけど、指をさしてる方角を見ても特に何もない。

ある時期にだんだん会う回数が増えてさ、連日で遭遇するようになると、なんか怖くなって部屋に引きこもった。

で、その日チャイムが鳴ったんで、ドアの覗き穴から見たらさ……。

いたんだよ、そのおじさんが。
まっすぐ俺に指をさして……。


そのとき気付いたんだけど、指をさす方角って全部俺の家に向けられてたものだった。
大学生の男は古いアパートで1人暮らしをしていた。

男の部屋の壁には小さな穴が開いており、そこから隣の部屋の様子をのぞき見ることができた。

隣の入居者は若い女性。
女性はのぞき穴の存在に気付いていないらしく、男はこれ幸いとばかりにのぞき行為を続けていた。

そしてある日の事。
夜中の3時をまわった頃、男はドスドスという物音で目を覚ました。

何事かと思えば、隣の部屋から聞こえてくる物音だった。
もしかして男でも連れ込んだか? と思い、喜び勇んでのぞき穴を覗く。
隣の部屋も電気を消しており、詳しい様子をうかがい知る事はできなかったが、人影が2体あることは確認できた。

これは間違いない、と男は興奮したが、すぐに様子がおかしいことに気付いた。
男と思われる大きな人影が動くばかりで、女性のほうは全く身動きしていないのだ。

暗がりに目が慣れてくると、男が女性を殴りつけているということが分かった。
女性は猿ぐつわを噛まされているらしく、微かに「うっ」という声を漏らすだけで悲鳴をあげられなかった。

終には呻き声も聞こえなくなった。
すると、男の人影は隣の部屋から出て行った。

強盗だ!
男は警察に通報しようと思い、電話の受話器に手を掛けたところで、動きを止めた。

もし通報すれば、自分がのぞきをしていたことがばれてしまう。
自分の保身のために、男は通報を思いとどまった。


1週間としないうちに、アパートに警察が押しかけてきた。
やはり隣の女性は殺されていたらしい。

当然、警察はのぞき穴の存在を発見し、何か見なかったかと男に聞いた。
男は、

「壁の穴なんて気付かなかった。その日もなにがあったか気付かなかった」

と言った。
他にもいくつか質問されたが、警察は男のことを疑っている様子は無かった。

殺人の瞬間を目撃したことは忘れられなかったが、通報しなかった事への罪悪感はすぐに薄れていった。

事件から2週間たっても、犯人は依然として捕まらなかった。


そしてある日の事。
夜中の3時をまわった頃、男は再びドスドスという物音で目を覚ました。

しかし、隣の部屋は事件以降、新たな入居者は入っていないはずだった。
それでも、その物音は間違いなく隣の部屋から聞こえてくる。

恐る恐るのぞき穴をのぞいて見たが、動くものの気配は無い。
気のせいか、と思い穴から離れようとした瞬間。


狭い穴の視界を埋め尽くすように、かっと見開かれた血走った目が現れた。

男はがっちりと目を合わせたまま、驚きのあまり身動きが取れなかった。

そして、かすれた女の声で一言……


「見てたでしょ」
すでに半年ちかく学校に行かず、家に引きこもり、登校拒否を続けている少年がいた。
その少年は、いじめを苦に学校へ行くのを恐がっていた。

家に引きこもる日が続くある日、同じ学校の友達が家に訪れてきた。
話を聞くと、いじめをしてきた人たちはみんな反省して学校で謝りたいと言っている。ということだった。

その夜、悩みに悩んだ末、少年は学校へ行くことを決意した。


朝がやってきた。
重い足どりで家をでた。

少年はマンションに住んでいて、エレベーターを使っている。
しかし少年にとってエレベーターまでがやけに遠く感じた。

ふっと、視線を感じたので辺りを見渡すと、マンションの屋上にきれいな女の人がこっちを見ていた。

その時は、『きれいな人だなぁ』としか思わなかったが、学校へ通い始めてから毎日、屋上からこっちを見ているので、少年は自分に気があるのかと思い、その女の人に毎朝会えるから学校へ行くのが楽しみにもなっていた。

今朝も、いつもと同じく女の人はこっちを見ていた。

学校でも少年は気がつけば友達に自慢そうに話していた。
友達に『話しかけてみろよ!』と言われて、明日の朝話しかけることを約束した。

帰り道、自分のマンションに警察官がたくさん集まっていた。
少年が驚いて警察官に事情を聞こうとすると、警察官は察して向こうへ行ってしまった。

少年は何かあったことを一瞬で悟り、急いで家に帰り、母親に何があったのか問いただすと……母親は少し間をあけてから

『このマンションの屋上で女の人が首吊り自殺をしてたんだって』

少年の顔はみるみるうちに青ざめていった。

そう、毎朝こっちを見ていて自分に気があると思っていたその女性は、初めから死んでいた人だった。
それはあたしが小学2年生の頃の話です。

通っていた学校のすぐ隣には、お寺とお墓が立っています。
校舎から3メートル程度かと思います。

掃除時間のときの事です。

私たちの班は男子2人、女子3人それぞれがトイレに分かれます。
掃除時間は約15分、トイレのドアを閉めると開始です。

初めは雑談をしながら楽しく掃除をしていたんですが、トイレの窓の外から

チーン…チーン…


と、墓参りのときに叩く鐘の音がしてきました。

私だけかと思い、気にも止めず掃除をしていたら、あとの2人にも聞こえていたらしく

「ねえ、さっきから鐘の音しない?」

と聞いてきました。

「うん、聞こえてた。なんなんだろうね?」

「…音、大きくなってきてない?」

私たちは怖くなり窓を閉めました。

ですが、音は止みません。
それどころか大きくなるばかり。

トイレから出ようとドアに手をかけましたが、開きません。

そのときです。
閉めたはずの窓が、ゆっくり開きました。

私たちは声も出ません。
怖くて体を寄せ立っているのが精一杯でした。

すると、窓から手が見えました。

しかし見える筈がないのです。
私たちは3階にいるんですから…。

手が中に入ってきました。

髪が長い女の人でしょうか? 頭も見えます。

トイレに入ってきてるんです。
私たちの元へきているのです。

私はここで気を失ってしまいました。
友達も同様、気を失いました。


気づいたときは保健室にいました。

私たち3人、掃除からなかなか帰ってこないのを心配し、先生が見に来たそうです。

ドアを開けると個別に一人ずつ入っており、壁に寄りかかっていたそうです。
糞スレ