100 無名さん
「ふぇえ……道に迷ったですぅ……」

桜が舞い散るなか、一人の少女は地図片手に立ち尽くしていた。
その瞳には涙が浮かんでいた。

「もぉすぐ、入学式始まっちゃうよぉ…」

と鈴を鳴らしたような美しい声で言うのは、竹山ちくわ。
彼女は雪のように真っ白い肌に、舞い散る美しい桜とお揃い色の形の良い唇。そして、ぱっちりとした瞳。華奢で小柄。まるで天使を具現化したような見た目であった。

そんな彼女が道端で困っている。たいていの男は手を差し伸べるのではないだろうか。
しかしー……

「ちょっ、邪魔ですどいてください」

「ほ、ほぇ?」

「道のど真ん中で立ち尽くすのは他人に迷惑ですよ」

「ふぇえ、ちくわ、道に迷ってて…」