「戦場でも美しいが、閨でもほんに愛らしいな、鶴よ」
「は………っ、ああっ……」
鶴丸とて本意ではなかった。
はじめは戯れのつもりだった。人間のように色恋の真似事をしてみるのも、一興であると。
もとより長い人生…いや刃生だ、一度や二度くらいなら抱かれてみるのも悪くはないと。
ところがその一度二度の交わりが己の理性の箍を外し、仮にも男の身体を与えられているのに、その快楽
けらく
に溺れ、乱れ、果ては三日月に女にして呉れと強請る様になってしまった。酔狂にも程がある。
月は人を惑わせるとは、よく云うたものだ。三日月はまこと月そのものだ。甘美な毒のように自分を狂わせる。
「日が昇れば、元に戻るだろうか」
互いに熱を吐き出し、手足を絡ませたままくたりと横になった床の中で、鶴丸がそう独りごちた。
「なんの話だ」
「こっちの話だ。……それより寒くて仕方ねえな」
「雪の所為だな。ほら、もっと近う寄れ」
ずっと肌を晒していて冷えきった鶴丸の身体に三日月の体温がじわりと染み渡る。
「子供みたいだな。けど、悪くない」
人の姿を得て初めて理解したそのぬくもりに身を任せ、二人は目を閉じた。
「は………っ、ああっ……」
鶴丸とて本意ではなかった。
はじめは戯れのつもりだった。人間のように色恋の真似事をしてみるのも、一興であると。
もとより長い人生…いや刃生だ、一度や二度くらいなら抱かれてみるのも悪くはないと。
ところがその一度二度の交わりが己の理性の箍を外し、仮にも男の身体を与えられているのに、その快楽
けらく
に溺れ、乱れ、果ては三日月に女にして呉れと強請る様になってしまった。酔狂にも程がある。
月は人を惑わせるとは、よく云うたものだ。三日月はまこと月そのものだ。甘美な毒のように自分を狂わせる。
「日が昇れば、元に戻るだろうか」
互いに熱を吐き出し、手足を絡ませたままくたりと横になった床の中で、鶴丸がそう独りごちた。
「なんの話だ」
「こっちの話だ。……それより寒くて仕方ねえな」
「雪の所為だな。ほら、もっと近う寄れ」
ずっと肌を晒していて冷えきった鶴丸の身体に三日月の体温がじわりと染み渡る。
「子供みたいだな。けど、悪くない」
人の姿を得て初めて理解したそのぬくもりに身を任せ、二人は目を閉じた。