11 無名さん
>>6の続き

(中略)

ついでに帽子を被ってワイシャツの袖を肘まで捲り、襟の第二ボタンを外すと、彼女は栗色の長い髪を後ろに結い上げた。
「おいおい、なんだその格好は。俺はゆっくり休めって言ったんだぞ。」
「あたしは平気ですよ、お構いなく。さて、氷の解凍が終わったら各自の手足や技、または道具を使って穴を埋めるように!以上だ!」
「おーーー!!」
ポケモン達に指示をした直後。
桃真ではない、しかも複数の男の声が聞こえた気がしたサクラは後ろを振り向いた。
するとそこには、試合を観戦していた軍人達がスコップを抱えて立っていた。
それも一人や二人じゃない。
多くの男達が、彼女に笑顔を向けていたのだ。
「あ、あのー…」
「俺達も手伝うぜ、お嬢ちゃん。」
「……え?」
面倒な後片付けを進んで手伝ってくれる人なんて、きっと少ないんだろうな…。
そう思い込んでいたサクラは、彼らの言葉がにわかに信じられなかった。
「実に面白いものを見せてもらったからな。そのお礼というやつだ。」
「つーか俺達、君の顔を間近で見たいってずっと思ってたんだよね!」
「バカかお前!下心が見え見えだ!」
「エルリック兄弟と旅してるんだって?あちこち飛び回っていては、洒落た店を探す暇もないだろう。」
「あぁ、そうだ!俺が知ってる中央のイケてる店、今度紹介してやるよ!サクラちゃん何か欲しい物ある?」
「てめぇ!勝手に抜け駆けするなって注意したばっかりだろうが!」
「………。」
マスタング大佐が氷漬けにされる瞬間を目の当たりにしたはずなのに、彼らは全く戸惑う様子もなく話し掛けてくれた。
それはポケモンが凶暴で恐ろしい生き物なんかではなく、頼れる相棒なのだと理解してくれたからなのだろうか。
少なくとも彼らはサクラを、ポケモン達を、敵とは認識していない。
その証拠に男達の表情は今もなお、笑顔に満ち溢れているではないか。
……この試合を引き受けてよかった。
サクラは心から、安堵した。
「皆さん…、ありがとうございます。」
思わず彼女も微笑んでいた。
釘付けになる軍人達。
一点の曇りもない女神の微笑みに、野郎共の心が寸秒で奪われたのは言うまでもないだろう。



はいはい女神女神