12 無名さん
>「……うん、うん、たぶんこの程度なら余裕でいける」
「え、あの、白衣さん?」
「じっとしてて!」

そう言うと有無を言わせず左手で緑谷の怪我の箇所をそっと包み、そこに右手を添えた。スゥと息を吸った天子の言うことには。

「花はきらめく〜魔法の花〜」
「ハ?」

突然歌い出した。さながらミュージカルである。緑谷は目を丸くさせる。

「知らない?ラプンツェル、デジニーの。結構前の映画だけど。あれ見ていいな〜と思ったんだよね」
「いや……見たことある……ラプンツェルが歌うと、傷が……でも、まさか」
「私の個性、『分身』じゃないんだ。『生命分配』って言われてるんだけど。分身は命を切り分けたひとつの形なの。人にも分けられるんだよ、ほら」
「……すごい……!」

ここか