12 無名さん
和泉守さんといえば堀川君だが、恐らく話題に出すのは避けた方がいいだろう。
どうやって堀川君が折れたのかは知らないけど、和泉守さんにとっては辛い出来事に違いないのだから。


からの


和泉守さんは、私を通して誰を見ているのだろう。
頭に置かれた手は、本当は誰を撫でているのだろう。
私にお礼を言いながらも、きっと和泉守さんは堀川君のことを思い出している。
もしかすると、堀川君が折れたのは最近のことだったのかもしれない。
私がもう少し早く顕現されていれば、折れずに済んでいたのかもしれない。

「兼さん。」

気付いたら、ポロリと言葉が漏れていた。
目の前の和泉守さんが、目を見開いている。

「そう、呼んでも良いですか・・・?」

私は代わりにはなれないけれど、この寂しそうな刀に寄り添うことは出来る。
相棒にはなれないけれど、せめて"仲間"になることは出来る。

「っ・・・あぁ。
困ったことがあれば、どんとオレに頼れよ。」

だから、泣きそうな笑みを浮かべて頷くこの刀と、私はもっと仲良くなろうと思った。


この矛盾は意義あり!って叫びながら突っ込むべきなの?