12 無名さん
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仲直り()シーン
悔しそうに下唇を噛んでから彼女は小さな声を絞り出す。

「羨ましいんです」
「うらやま?」

急になんの話だ?首をかしげると彼女は少し昔の話をさせてくださいと前置きをした。

「小さい頃から私がすごく好きな本があるんです」
「ほん」
「ええ。有名な本なのでご存知かもしれませんが、ドールという本です」
「うーん知らないです」
「そうですか」

意外そうな顔をした八百万さんに難しい本?と聞けば絵本ですと答えられた。絵本なのか、意外。

「その本はドールという名前のシカが森のいろんな動物の悩みや心の闇に寄り添うお話で」
「へぇ、読んでみたいかも」
「…私はずっとドールみたいになりたかったんです」
「なってるじゃん」
「え」

八百万さんはしっかり者で、いつも正しくて、みんなを助けてあげてるイメージだ。

「皆の話聞いて、助けてあげるんでしょう?八百万さんそのものだよ」
「ち、ちがいます…!」

えぇー。違うのか。そんなハッキリ否定されるとちょっと申し訳なくなっちゃう。

「貴女はドールそのものなんです…相澤さん」
「わたし?」
「はい」

頷く八百万さんに全力で眉を寄せて首を傾げた。

「私全然そんなんじゃないと思うけどなぁ」
「自覚がないのもそっくりです」
「ありゃま」
「私はずっとなろうとしてもなれなかった…人の話を聞いても自分の価値観で見てしまうし、その人の気持ちに寄り添えない。すぐに人と打ち解けるのも苦手で知らないうちに壁を作ってしまってお友達作りも一歩遅れてしまいました」
「んん?そうかな…?」
「異性のクラスメイトと気軽に話したりふざけあうのも苦手で…距離感が分かりません」

原作でヤオモモが「ドール」という本を読んでいる描写は全くありません
13 無名さん
続き

あんなに完ぺきに見える八百万さんにもこんなにたくさん悩みがあるなんて意外だ。

「それなのに貴女は…初日からどんどん友達を増やして、今ではうまく話せないのは私くらいです!」

いや轟くんともしゃべれません。

「私は貴女を見てると劣等感でいっぱいになってしまって…っ、せめて成績では勝とうとしても貴女はなんでもできてしまいます」
「そんなことない!」
「ありますわ!初日の個性把握テストも、戦闘訓練も…っ挙句の果てにはUSJでも轟さんや爆豪さんと肩を並べて敵に立ち向かっていたと蛙吹さんに聞きました…!」
「肩は並んでな」
「私は!そんなあなたがうらやましくて、見てるのが辛くて、嫌なはずなのに」

八百万さんは涙を流しながら私を見た。
14 無名さん
うん…まぁ…ドールって名前が出て来たりそれを上げてる時点で夢主上げに使うんだろうなあって思いながら読み進めてたらその通りで草も生えなかったわ
15 無名さん
これで終わり

「貴女に惹かれて仕方ないんです…っ」
「…」
「貴女が初めに麗日さんと教室に入って来た時からかわいらしい子だと思って話してみたくて、蛙吹さんや芦戸さんと楽しそうにお着換えをしてる時も、いつも貴女と仲良くなりたいと思ってました」

私はでも、っとえづく八百万さんを何も考えずに抱きしめた。

「八百万さんはいつも正しくて、かっこいい女の子」
「っ…そんな慰め…いりませんわ、っ」
「慰めじゃない!私は正しい事をできるわけじゃないからいつもすごいと思ってる!」

びっくりして大きく見開かれた目がきらきら澄んでいて綺麗だ。

「成績だって私よりずっといいじゃん!何言ってるの?!私勝ててることなんてほっとんどない!」

体を離して、手を掴んでおでこをくっつけてその目をまっすぐに覗き込む。

「それと、私は意地っ張りな女の子、かわいくって大好き」

いたずらっぽく笑えば彼女はまたぽろぽろと涙をこぼした。

「八百万さん、私とお友達になってくれる?」
「わたし…ったくさん、いやなこと、言ったのに、っ」
「えぇ?なにか言われたかなぁ〜忘れちゃった」
「貴女のそ…っ、ういうところ、大嫌いですっ」
「あはは」
「でも同時に、…すごく好きで…っ」

わかったわかったと背中をさすってあげたら八百万さんは深呼吸を何回かして、私の目を見る。