ちょうど5年前の今頃に体験した話。

当時俺はH県の東H市で働いていて、地元で働いていた時に知り合ったK県の男性(仮にKとする)から、

「そっちの専門学校で友達が欲しいっていう女の子(既に名前も忘れたけど、仮にMとする)がいるから、相手してやってくれ」

と、女の子を紹介された。そして、連絡を取り合う内にKが東H市に来て、3人で飲むことになった。

Kと駅で会い、車で隣のH市へMを迎えに行き合流。初めて会ったMは、優しい顔立ちの可愛い女の子だった。

最初はKと同じK県出身のMは酒が強く、酒の強さには自信がある俺と飲み比べをするはずだった。しかし、Mはその日にH市に帰らないといけないし、Kは数年前に脳溢血で倒れ半身不随になっていた。

俺は送迎があるから酒を飲むワケにはいかず、Kも酒はからきしダメで、しらけそうだったが意外に盛り上がっての帰り道。高速に乗ってH市に向かう車の中で、不幸自慢? が始まった。

・俺はある女とつき合って以降不運続きで、就職まで妨害されて当時の仕事はKに紹介されて他県でやっと就けた仕事だった
・Kは婿養子先から追い出され、格安の曰く付き物件に入居した後に脳溢血で倒れ半身不随になった
・Mは片想いが実らず、自殺まがいのことをした経験がありながらまだ片想いの男が好きだった

Kが面白おかしく語るから、暗い雰囲気にはならなかったが、今思えばとんでもない負を抱えた3人が揃ってた。

そんな中、いきなりその声は聞こえた。ノイズがかかったような、虚ろに響く男の声で、何を言っていたかは分からない。ただ、悪意に満ちた感情であったことは覚えてる。

最初はラジオかと思ったが、会話の邪魔と思いつけていない。併走している車も無かったから、漏れ聞こえてきたワケでもない。

後部座席のKとMは何も聞こえなかったと言う。まあ、その声は俺の耳元というか頭の中に直接聞こえてきたし、雰囲気を壊すのもな…と思って黙っていた。声に込められた悪意に気分は悪かったけど。

その日を境に、3人の関係は破綻した。Mはメールを返さなくなった。Kは東H市での俺の仕事の立場を本社と共謀して奪い、俺はKと絶縁した。その後、東H市の営業所の業績不振による閉鎖でKはクビになった、と元部下から聞いた。