>>13

雪に覆われた地面と枝葉に雪をかかえた木立が見えますが、ポールもAの姿も見えません。
少し望遠鏡を動かすとロン毛の頭が見えたので、次にポールを探して目盛りを読むためにピントを合わせました。

(あれ?)

ピントが合うと、俺はおかしなことに気付きました。

俺たちはヘルメットを被って測量をしていたのですが、Aはなぜかメットを脱いでいて、後ろを向いています。
それにAの髪の毛は茶髪だったはずなのに、今見えているのは真っ黒な髪です。

(……おかしいな)

望遠鏡から目を上げると、Aがメットを被り、こっちを向いて立っているのが見えました。
が、そのすぐ後ろの木立の隙間に人の姿が見えます。

もう一度、望遠鏡を覗いて少し動かしてみました。

女がいました。
立木に寄りかかるように後ろ向きで立っています。
白っぽい服を着ていて、黒い髪が肩を覆っていました。

(こんな雪山に……なんで女?) 

俺はゾッとして望遠鏡から目を離しました。

「おーい!」 

Aが俺の方に声を掛けてきました。
するとそれが合図だったかのように、女は斜面を下って木立の中に消えてしまいました。