今回、書こうと思う話の前に、一つだけ書いておきたい事があります。

俺の家で、霊というものは、認知されない。代わりに、念として認知されている。

生きていた時の気持ちが、場所に残り、ラジオのように周波数が合う人間にとりつく。
ただ、獣は、人を騙し、体に居座る。

俺の家の呪い。以前に書いた通り、狐との相性が悪く、何かと異変が起こる。

代わりに、犬には懐かれやすく、一族の者は、俺を含め、犬歯と、瞳の色が普通ではない。
犬つきなのかもしれない。


小学生の頃、厄介な念=霊に出会った。

低学年の頃だった。友達と寄り道しながら、帰っていた。雨の日で、やたらと長い道をふざけあいながら、帰っていた。
俺の家とは、まったく反対で、友達の家に遊びに行くのが目的だった。

川沿いのカーブの所に、地蔵尊が奉ってあって、歩道に街灯が一つ。歩道は山沿いだ。
史跡があったり、そこにちなんだ怖い話をしながら、みんな楽しく遊んでた。

俺達は、四人。以前に書いた、「二人共…」のメンバーに、一人を足した仲間。

俺は初めて行く場所だったから、その街灯と地蔵尊に目がいった。

雨の日。みんな傘をさしてる。

街灯の下に、うつむいた女の子。たぶん上級生だと思った。

雨なのに、傘をさしていない。それどころか、動かない。

その時、周りにいた奴に話そうかと思ったけど、脳裏に祖父がいった言葉がよぎった。

「もし、大人(家族のという意味で)がそばにいない時に、幽霊みたら、目をそらして、そいつの話をするな。笑うな。黙って、違う事だけ考えろ。特に左松の声は、よく響くから、聞こえてしまう」

そう、いつもは優しい祖父が少し怖い感じで、教えてくれた言葉だった。

俺は黙って、みんなの話に注意を向けた。俺が急に黙っても、みんな自分の話に夢中で気付いていない。

その子の前を通った。

ぞくりと、背筋が嫌な感じを、初めて知った。
しばらく歩いて、後ろを振り向くと、その子は、まだそこにいた。

Tに聞くと、毎回、嫌な気分になるから、慣れたらしい。