>>14

「私も行ったことあんねん、たぶん同じとこ。彼氏と友達4人で車で行ってんけどな。遠くから様子を見ると境内っていうんかなぁ鳥居が見えたわ。意外と広くてなぁ。軽自動車ならなんとか敷地内まで車で入っていけそうやったし、車の中やったら怖くないやろっていう話になって入っていったんよ」

「うそぉ、まじで?」

「それでな、ちょっとずつ車で入っていってんけど、”軽”やったから入れるんは入れたけどなんかあってもUターンも出来ひんやんとか思ってたら、いよいよ目の前に鳥居が迫ってた。鳥居をくぐった辺りでふと前を見たら……ちがう、ずっと見てたけど気づかんかったんかな……いやおらんかった絶対!」

何やらB子の様子がおかしい。

「なにが? おらんのん?」

「境内っていうん? 賽銭箱がある辺りに四つん這いになった女が白い着物を着てた。みんなが気づいた瞬間、そいつは飛び上がったと思ったら車まで5メートル、ううん10メートルぐらいあったのに一瞬でボンネットに飛び乗ってきた」

「……顔見たん?」

「顔は人間やったと思う。でもダラダラすごい涎垂らしてた……」

「それでどないしたん?」

「逃げようとしても車のエンジンがいつの間にか止まってて、ライトもなにもつかへん。そのまま数分間みんなかたまってた。あいつもじぃってみんなの顔を見とった。そのうち近くに“他の車”が来たような音が聞こえてきて、助かったって思った。その時、私らの車のエンジンがいつの間にかかってんのに気づいて、訳わからんかったけど運転してた彼氏の頭叩いてん。そしたら彼氏がすごい勢いでバックしだしてんけど、それでもあいつはボンネットにしがみついてた……でも鳥居を超えた瞬間に、またすごい勢いで境内の方にこっちを見たまま後ろ向きにジャンプして戻ったのが見えた。すごい勢いで飛び出したから“別の車”にぶつかりそうやったけど、そんなん気にせんと飛んで逃げたわ。その後、みんなでファミレスで朝まで一緒にいたけど誰も何もしゃべらんままやった」