16 無名さん
>>11
まだまだ続くお
(中略)
サクラは再び、銀色の匙を手に取った。
「あたしは異世界人です。これ以上この世界に介入する訳にはいきません。それに…」
「…それに?」
「……ポケモンを道具としてしか見れない人は嫌いです。」
「………。」
ポケモンの力は、一歩間違えれば凄まじく強大となる。
その力を戦争に利用すれば、アメストリス軍の勝利は間違いないだろう。
しかし、ポケモンは戦争の道具などではない。
我ら人間と同じ、生き物だ。
軍人達が腰に下げている銃やナイフと同類、なんていう最低な考え方がサクラには許せなかった。
戦争という馬鹿げた行為のために、あたしはポケモンを育ててきたんじゃない!
…次第に自分の声が大きくなっていることに気付いたサクラは平静を取り戻そうと、豪快にすくったチョコレートパフェを一口で頬張った。
「…分かった。大総統には、私から丁重に断っておこう。」
「お手数をお掛けします。」
「いや、いいんだ。君をあのような地獄へ連れて行かなくていいと思うと、安心したよ。」
そう言って、マスタングはコーヒーのカップを静かに啜った。
安心した…?
どうして大佐が、あたしのことで安心するのだろう?
あたしはエルリック兄弟について旅してるだけの、二人のおまけみたいなものなのに…。
腑に落ちない彼女はマスタングに尋ねた。
「…どうしてですか?」
「 ? 」
「どうして…、そこまで世話を焼いてくれるんですか?あたしはあなたからすれば…、突然に現れた厄介者でしょうに…。」
この賭け自体もそうだった。
あたしと関わり合いたくないのなら、最初から賭けなんてしなければいい。
なのに大佐は、賭けに勝ったらデートをしようなんて言っていた。
しかもレストランの予約まで済ませているとも言っていた。
…なんだよそれ。
これじゃまるで、本気であたしと距離を縮めようとしてるみたいじゃないか!
17 無名さん
彼女の目の前に、大きな手が差し出される。

ロスウェルが立ち上がり、荷台に登ろうとする少女に手を貸そうとしたのだ。

茶髪の少女は素直に男の手を取り、彼が引き上げる力に従って地面を蹴り上げる。

無事に登ったのをロスウェルが確認すると、今度は紫色の猫がいとも簡単に飛び乗った。

本来は自由気ままな性格であるはずの猫。

しかしこの猫が少女に対して従順であるのに、ウォルター達は目を丸くして驚いていた。


猫飼ってないから分からんが主人になついてるだけでそんな驚くか?
18 無名さん
落とした視線を元に戻すと、目の前の男は何故か妖しい笑みを浮かべていた。
「…何ですか。」
「私は君を、厄介などと思っていないぞ。」
「え…?」
「どうして世話を焼くのか?君は鈍感だな。」
マスタングの右手が伸びてくる。
緊張でサクラの身が強張った。
何を考えてるんだ…?
動けない体でそう思った時。
なんと彼はサクラの口元についたクリームを指で取り、そのまま迷うことなく自分の口へ運んでしまった。
「Σっ…!?////」
「そんなの、私が君を気に入っているからに決まっているだろう。」
「な…なっ…何すんですか大佐!!////」
「何って、魅力的な男女のデートならこれぐらい当然じゃないか。」
「Σな、何がデートですか!からかわないでください!!」
「世間では異性とこうして会うことを、デートというのだよ。」
「あ、あたしはそんなつもりじゃ…!あたしはただ息抜きがしたかっただけで、これは別にそういう意味なんかじゃなくて…、その…////」
「……フッ。」
焦って頭が回らない…!
パニックになったサクラがしどろもどろに言い訳していると、それを見ていたマスタングは耐えきれずに吹き出した。
「わ、笑わないでください!!」
「すまない、冗談だ。君の初々しい反応が可愛らしくてな、つい。」
「…本当に怒りますよ。」
「まぁ落ち着きたまえ。端からすれば、私達はそう見えてもおかしくない状況だ。…妙な噂になりたくはないだろう?」
「……っ!………////」
他の客から注目されているのに、サクラはようやく気がついた。
林檎のように真っ赤になった顔を伏せ、恥ずかしそうに小さく縮こまってしまった。
あぁ…、そんなところがまた愛おしい…。
いっそこのまま、彼女を私のものにしてしまいたい…。
まともに顔を合わせられなくて目を背けるサクラを、彼は紳士的な笑顔で見つめていた。
男は満足していた。
何故なら最高の形ではないが、本来の目的だったことが今まさに実現しているのだから。
勝負には負けても、彼女と二人きりという幸せな時間を手に入れたマスタングであった。


END...