22 無名さん
>>17のヤツね


頭が、真っ白になっていた。

茅原さんの泣き声が、耳につく。止めなきゃ、止めなきゃ、止めなきゃ。そう思っても、恐怖に身体が固まって、鉛のように重たくて動けない。けれど、ゴホッゴホッと咳き込んだ光の口から吐き出された真っ赤なものを見た瞬間、わたしの身体はようやく動き出していた。


「くら、やめて、っ」


そう言って彼の背中にしがみついても、彼の光を掴む手が緩むことはなくて。自分の非力さと、男女の圧倒的な力の差に愕然とした。それよりも、自分の声が彼に届いていないことに悲しさと虚しさを覚えた。そうしているうちに再び振り上げられた右手を見た瞬間、気がつけばわたしは二人の間に飛び込んでいた。


「っ、う、…!」


気がつけば、顔半分が熱かった。痛いというよりも、じんじんと熱を持っているような感覚。そして、鉄の味。唾液だけじゃないものが口の中に溜まっていき、その中で舌に当たった何かがころりと口の中で転がった。咳き込みながらそれを吐き出せば、血に混じって真っ白な歯が地面に転がった。

意外と頭は冷静で、ああ歯抜けちゃったなあだとか、女の子なのにってお母さんは泣いちゃうだろうなあとか、そんなことをぼんやり思う。不思議と痛みはあまり感じなくてふと顔をあげれば、この世の終わりみたいな顔をした蔵と目が合った。


「っおまえ、なにやってんねん!」