これは、私が古着屋で、あるTシャツを買ったときの話です。

よく聞く話ですが、古着には、以前の持ち主の気持ちが入っていて、その気持ちが強すぎると…

そんな話を聞いていましたが、自分には全く関係ないことだと思っていました。

古着屋で買った、そのTシャツを気に入った私は、買ったその日からハンガーにかけて、アパートの部屋の壁に飾ることにしました。

けど、その日からです。寝付きが悪く、寝苦しくなったのは…

今ではとても不思議に思うのですが、あんなTシャツをなぜ、そんなにまで気に入ってしまったのでしょうか。

Tシャツには、花畑で手をつないでいる三人の少女たちがプリントされていました。真ん中にいる少女の瞳には黒目がありましたが、左右にいる少女たちには黒目がありません。白目を剥いていました。

ある日、そのTシャツを実家に持って帰ったときに、妹から言われました。

自慢気にTシャツを見せた私の気持ちとは裏腹に、妹は『そんな気持ちの悪いもの、見たくない』と。妹は、何か感じたのでしょう。

後日、妹が言った理由がよく分かりました。

職場の飲み会で気持ちよく酔って、アパートに帰ってきた私は、電気を点けたまま布団の中へ。そのまま夢の中へのはずが、やはり寝苦しいのです。

不気味な視線を感じ、その方向に薄目で目をやりました。その視線の先には、壁に飾ったあのTシャツがあります。

見ると、Tシャツの左右にいる少女二人が脇を見るように、黒々しい瞳がこちらを向いています。

しかも、真ん中にいる少女はどちらを向いているか分からないような目線で口を大きく開き、まるで狂っているかのように笑っていました。

甲高い声で…『キャッキャッ』と無邪気に笑う少女の声が聞こえ、私はいつの間にか気を失っていました。ただ酔っていただけだとしたら、それまでの話だと思います。

だけど…豹変した少女たちの顔とその声を、私は今でも忘れることができません。