25 無名さん
虚ろな目をした空音さんの胸部には、深々と包丁が突き刺さっていた。これを無闇に触ってはいけないことくらい、医学の知識が乏しい僕にだってわかる。
厨房へ駆け込み、使えそうなものを探したが、これと言った道具は見つからない。
そこから先の僕は、ただ焦るだけだった。
僕の研究室へ行けば痛み止めくらいはあるかもしれない、でもそんな時間は空音さんには残されていない、僕は、僕はどうすれば。

胸に深々と包丁刺さってんのに痛み止め?