二階堂さんというアンティークショップを経営なさっている方から聞いた話。

ある日の昼下がり。この店ではあまり客足のない時間帯。会計でぼけっとしていると(かららん)と鈴の音が聞こえた。

なんのことはなくドアについている鈴が鳴っただけだ。お客さんが入ってきた。

立派な髭をたくわえた杖をついた初老の男性が、若い眼鏡を掛けた男性に付き添われゆっくり会計に近づいてくる。

見ると一抱えもある大きな袋を若い男性が持っている。会計に来るや否や初老の男性が買取をして欲しいと申し出た。

では、少々鑑定のため数分時間をいただきますと断りをいれ二階堂さんはその袋からものを出した。

それはたくさんの人形が飾り付けられたアンティークのオルゴールだった。

スーツやドレスに身を包んだ外国人らしき男性や女性を模した陶器の人形がダンスをしている華やかな装飾で、見た目にも豪華なつくりになっていた。

しばらくしたのち鑑定が終わり22万円という買取査定をした。

少し痛みがあり欠けている部分や塗料がはげている部分が見受けられたための少し低い値段となったが、老人はそれでも満足したようで引き取ってくださいと頭を下げた。

22万円を渡し帰りしな老人は一言。

(ああそうそう、このオルゴールは鍵がついてますが、その鍵は絶対にまわさんようにお願いします。次に買いなさるお客人にもそう伝えてくださいまし)

そう言い残し、老人は若い男性が運転する外車に乗り帰って行った。

なんだろうなあとは思うがまあ気にせずに幾日か過ぎたある日。年若い夫婦が例のオルゴールを気に入ったらしく即決で買っていった。

次の日、その夫婦が目の色を変えてものすごい形相でそのオルゴールを引き取ってくれと抗議してきた。