あれは十年前秋田に旅行に行った時の話。

泊まりに行った旅館の部屋にすっとぼけた鬼太郎があった。旅館の従業員に聞くと昨日泊まった客の忘れ物だそうでそのままにしてあるそうだ。

なかなか愛嬌がある表情をしてるので欲しくなり、取りに来なかったら譲ってほしいと頼んだらあっさりと了承してくれた。

そしてその旅館を基点にあちこち見て回る事に。

二日目、山の景色を見て廻ろうと山道を歩いていると誰もいないはずなのに誰かに見られている気配がする。

周りを見渡しても誰もいない、問い掛けるが返事も無い。気味が悪くなり旅館に帰ろうとした時、不意に目の前に猿の様な物が飛び出して来た。

びっくりしたがよく見ると猿の様で猿ではない。口には子猫をくわえ込み食べている様な感じだ。

皮膚には血がべったりついて気持ち悪い、バリバリと音を立て子猫を食べている。

自分はうわっと声を上げた時、猿がこっちに気づいた。猿の目は普通の眼をしておらず真っ黒、普通の猿ではない事が一目でわかる。

自分は一目散に山道を駆け降りた。振り向き様に後ろを見ると猿がすぐ後ろに迫って来ていた。そして腕を爪で引っ掻かれけっこう深い傷を負ってしまった。

やっとの思いで旅館に着いた時、旅館の人に事情を話し傷の手当てをして貰いそのまま休む事にした。しかしその晩ありえない事が起こった。

食事を済ませ部屋に帰って来た時、敷いていた布団の上に山で出会った猿が寝転がっていた。びっくりした自分を見た猿がボソボソ何か喋り出した。

「姿を見られたからには生かしちゃおかん」「人の肝は美味い」とか言って威嚇しながら近づいくる。

腰を抜かした自分は恐怖と驚きのあまり動けずにいた。

猿が飛び掛かって来た時、部屋に忘れ物として置いてあった鬼太郎の人形が猿目掛けぶつかった。猿は一瞬怯み

「邪魔をするな」と言った直後、鬼太郎の人形に噛み付いた。