34 無名さん
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降谷さんがド変態にされてる(鍵0413)

降谷さんは、ある日突然、可笑しなことを言い出した。
「…あれ、もしかして昨日、シた?」
久しぶりのデート。かっこいい車で迎えに来てくれた降谷さんが、私の右手を掴み、自身の鼻先へと寄せた。それだけでもぎょっとするというのに、降谷さんは何故か鼻をひくひくとさせ、右手の匂いを嗅いでいた。
行動と言動の意味が分からず、困惑した様子で首を傾げる。何を言いたいのか、よく分からない。困り顔の私に気付いた降谷さんは、いつも通り柔らかに微笑む。あ、かっこいい、とときめいたのも束の間。降谷さんは、とんでもない発言をする。
「昨日、自慰行為をしましたか?」
「………はい?」
じいこうい。とは、なんだったか。瞬時に理解できず、私は目を丸くする。
しかし次第に頭の中で漢字変換が無事に為されて、徐々に赤面していく。
「昨日、マスターベーションを…」
「ふふふ降谷さん?!」
「なんですか?」
なんですか?じゃない!きょとん、なんて幼げな表情をして、不思議そうに私を見つめないでくれ。
自慰行為。マスターベーション。その言葉から嫌でも昨晩のことを思い出してしまう。顔面にじわじわと熱が帯びていき、息が荒くなる。動揺を隠そうとすればするほど、思ったように言葉が出てこない。
私の顔色を見て確信を得たのか、降谷さんはにこにこと笑いながら「ああやっぱり」と頷く。悔しいことに、否定は出来なかった。昨晩、降谷さんと会う日のことを考え、むずむずとしてしまったせいか、事務的な処理として自慰行為をした。
一度果てて、指先を洗ってから、そのまま眠りについてしまった。そう珍しいことではないが、まさか言い当てられるとは思っていなかった。どうして、なんで、と狼狽える私に、降谷さんは言う。
「指先に匂いが残っていて。すみません」
謝るくらいなら言わないでほしかった。
はしたない女、汚い手だと思われたらどうしよう。赤面をして「こ、こちらこそ…すみません」謝罪の言葉が出てくる。降谷さんの顔が思うように見れず、気恥ずかしさばかりが際立った。
「よく、するんですか?」
「えっ?す、する?」
「自慰行為」
「…そ、それ聞きますか」
「ええ」
「……」