ある夕方。彼は学校帰り、田んぼに沿っている静かな道を歩いていました。

ずっと向こうに黒いワンピースを着た女性が立っているのが見えます。二人の他には誰もいません。

女性の肩は不自然なところまで上がっており、腰の部分には極端なクビレがあります。極め付けに、なんと女性は裸足でした。

恐がりの彼は不気味に思い足を止めました。すると、今まで立っていただけの女性が動きだします。しかし普通の動きではありません。なんとその女性は、スキップをしているのです。

ゆっくりと、彼の元へと近づいてきます。彼はただならぬ恐怖感に襲われました。だんだんと近づいてきたため、女性の顔がはっきりと見えるようになりました。

なんとその女性には、眼球が存在していませんでした。黒い穴が開いたような目の部分。恐怖が倍増します。

来るな、と彼は女性に言いました。すると女性は止まりました。ほっ、と胸を撫で下ろしたのも束の間。女性は目を大きく開き、いえ、黒い穴を大きく広げ彼にこう言ったのです。

「次の人」 

すごく冷たい言い方だったそうです。機械のように棒読みでした。

彼は後退りします。やばい。そう思いました。そして次の瞬間、女性は

「み、つ、け、た!!!」 

と叫びました。

言うが早いか、彼は荷物をその場に残して、すぐさま元来た道をもうダッシュで逃げました。陸上部の彼、逃げ足には自信があります。

田んぼ道を抜け、ある公園に逃げました。やはりそこにも人はおらず、彼は不安に思いつつも公園の公衆便所の個室に隠れました。20分くらいそこにいたそうです。

もういいだろう。その場を出ようとしたとき、ぺたぺた…。タイルの上を裸足で歩く音がしました。彼は心臓が止まるかと思ったそうです。

足音が止みました。そして、さっき聞いたあの無機質な声が彼の耳に入りました…。

「去年のあの子もここに隠れたのよ」 

去年?あの子?なんのことだ?

彼は考えました。しかし何のことかさっぱりわかりません。