夢の始まりは森の中。あたしは両親と妹の4人家族なんだけど、4人でその森の中を歩いてたんだ。

その森は薄暗く、自分たちの周りだけが闇に浮き上がっている感じ。地面はあるが空がない。なにもない。真っ黒なんだ。端的なまでに不気味だった。

前をみると白いワンピースを着た黒髪の女の人が歩いてる。それらを見て、"森の中で迷ったあたしたち家族をその女の人が案内してくれている"というシナリオを理解した。

しばらく歩くが変わらない景色の中、隣を歩くお母さんがあたしに耳打ちをしてきた。

「あの女の人、人間じゃないから……気付かれないように逃げるよ」

あたしにだけ耳打ちをしてくるところを見ると、他の家族はそれを知ってたんだろう(ちなみに言うとウチの家系は霊感ゼロ)。

たしかにこんな森の中で、薄いワンピース1枚という出で立ちは明らかに異様。それこそ靴はパンプスだったような気がする。

女の様子をうかがいながら逃げ出すスキを見る。すると、女が立ち止まった。

" ま ず い "

あたしたち家族は一斉に踵を返して一目散に元来た山道を駆け降りた。

逃げ出す瞬間女の姿を見た。振り向いた瞬間、女の着ていた白い膝丈のワンピースが着崩れた白い着物になり、胸までの髪が地面に付くくらいまで伸びボサボサ。振り乱しながら、がに股で物凄い勢いで追い掛けて来たんだ!

必死に家族で逃げてたら目が覚めた。

"イヤな夢見たなあ……怖かった……"

少しその夢を思い返して鳥肌を立てていたら、気付いたんだ。

" あ の 時 の 女 だ "

前に見た夢に出てきたあの女。あいつだ。

そしてあたしはさらに気付いた。今立っている鳥肌は夢の余韻じゃない。金縛りだ。

まだ覚醒しきってない体を慌ててよじり拒絶。それ以外とくになにもないけど、やっぱりしばらくは一人で寝られなかった。

どうしてまた現れたのか。もちろんあの女に見覚えはない。でももう忘れることはないだろう。追い掛けてくるあの姿。忘れたくても忘れられないよ。