36 無名さん
赤ずきんちゃん

「由愛、大変なことになった」


アブドュルが、困った顔でわたしを見つめた。

「ジョースターさんが病気になったらしい」
「おじいちゃんが?」

それは心配。
おみまいに行かなくちゃ。
わたしはかごにぶどう酒とクッキーをつめこんだ。

「由愛、これも忘れずにな」


そう、わたしのお気に入りの赤いずきん。
アブドゥルに手渡されて、しっかりかぶる。
これで準備はかんぺき。


「行ってきまぁす」


家を出てもりを通った先が、ジョセフおじいちゃんの家。
もりに入って、たまたまみかけた花畑で、おみまい用に花をつみます。


「そこで何をしてるんだい?」


せなかから声をかけられました。
びっくりしながら振り返ると、そこにはかっこいいオオカミがいました。


「えっと…花をつんでます」
「何のために?」
「病気のおじいちゃんの、おみまいのためです」
「そう」


オオカミはふっと笑いました。
あまりのかっこよさに
ドキドキします。


「きみ、名前は?」
「由愛です」
「僕は典明。もりはきけんだからエスコートしてあげる」