俺が大学生になって初めて迎えた夏に起きた出来事。

大学生活に慣れだした俺は、悪友の影響からタバコを吸いだした。

その日俺は部屋で平気でタバコを吸っていたところを嫌煙家の母親に見つかり大目玉をうけた。
タバコを没収されてしまい、しかたなく予備のタバコをこっそり吸おうと思ったが、部屋で吸うと臭いでバレると考えて俺はベランダに出て吸うことにした。

時間はちょうど夜中の2時くらいだったと思う。
当時携帯灰皿など持っていなかった俺は、短くなったタバコを火がついたまんまベランダから家の前の道に向かってポイポイ捨てていた。

何本目かのタバコを捨てるとき、なんとなく向かいの家と斜向かいの家の隙間の路地めがけてタバコを投げてみようと思った。
俺は勢いよく火のついた短いタバコをデコピンの要領で路地めがけて飛ばした。狙いはバッチリ、路地に向かってタバコは一直線に飛んでいき、小さく火花を散らして真っ暗な地面に激突した。

あれ?
俺は思った。

タバコが激突した地面がなんだかもぞもぞ動いている。
真っ暗だったから何なのかはよく見えない。その時は野良猫か野良犬に当たったのだろうと俺は思った。

でも違った。
その物体はうねうね気味の悪い動きをしながら2本足で立ち上がり、ぴたりと動かなくなった。

猫でも犬でもない。人だ。
でもこんな時間に何故そいつは狭い路地に踞っていたのだろう。それを考えると何だか不気味に感じた。

さっさと部屋に戻ろうと思いポケットに余りのタバコを詰め込んでいるとき、そいつはまたしても気味の悪い動きを始めた。

俺は目を疑った。だんだんそいつの首が伸びていくのだ。
首から下は相変わらずくねくねと動いている。全身に鳥肌が立った。