38 無名さん
最後に軽いキスを一つ
「甘い、な」
『あ…当たり前でしょ!
バニラ味なんだから』
「そうじゃなくてさ」
『じゃあなにがよ!』
と顔を赤くして
俺に詰め寄る名前
「名前がさ」
意味がわからない!と
そっぽをむく名前
『わ、私は苦かったよ!』
「にがい?」
『櫂の葛藤とか、苦悩とか
私に流れてきた気がしたから』
「だとしたら、俺の中に
流れてきたのは名前の
気持ちや暖かさだな!」
『はっ!?
な、何恥ずかしいこと言ってるのよ!』


大草原