中学二年の冬の話。
年明けてすぐに雪が降った次の日だから、六日だったと記憶している。
その日は寒かったが晴天で、積もった雪も夕方には殆ど溶けた。
既に外は暗かったけど、借りたCDを返すために自転車で二キロ離れたレンタルショップまで行った。
CDを返して、その帰り道だった。
街灯の殆どない道を、自転車のライトだけで走っていると、後ろからハイヒールで走るような音が聞こえてきた。
カンッ カンッ
カンッ カンッ
自転車の後ろからずっとついてくる足音に、すぐに「これは変だ」と感じたが、止まって振り返る度胸なんかない。そのまま自転車を走らせ続ける。
足音は追って来る。
数百メートルもそれが続いた時、妙なことに気付いた。
足音の間隔が開きすぎている。地面を蹴るような音は確かに走っている音なのに、間隔はまるで歩いているように緩やかだ。
走っているなら、もう一つ足音が無ければ説明がつかない。
いや、そんなことを考えている場合ではない。
この旧道から、人通りのある大通りに抜けるには、あとカーブを二回曲がらなければいけない。
そんなことを、頭の中で考えていた。
慣れた道だから考える余裕があったのだろう。知らない道だったら、逃げ道だけに神経を注いでいた筈だ。
カンッ カンッ
カンッ
カンッ
一つ目のカーブを、減速なしで曲がった。濡れた地面とタイヤの擦れる嫌な音が、まるで笑い声のように聞こえた。
二つ目のカーブがすぐに近付く。右カーブの道の左側に街灯とミラーが光っていた。
通過しようとした時、ミラーに自分の自転車が映った。
自転車の後ろから、黄色いハイヒールを履いた血塗れの足が、一本だけ走ってきていた。
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年明けてすぐに雪が降った次の日だから、六日だったと記憶している。
その日は寒かったが晴天で、積もった雪も夕方には殆ど溶けた。
既に外は暗かったけど、借りたCDを返すために自転車で二キロ離れたレンタルショップまで行った。
CDを返して、その帰り道だった。
街灯の殆どない道を、自転車のライトだけで走っていると、後ろからハイヒールで走るような音が聞こえてきた。
カンッ カンッ
カンッ カンッ
自転車の後ろからずっとついてくる足音に、すぐに「これは変だ」と感じたが、止まって振り返る度胸なんかない。そのまま自転車を走らせ続ける。
足音は追って来る。
数百メートルもそれが続いた時、妙なことに気付いた。
足音の間隔が開きすぎている。地面を蹴るような音は確かに走っている音なのに、間隔はまるで歩いているように緩やかだ。
走っているなら、もう一つ足音が無ければ説明がつかない。
いや、そんなことを考えている場合ではない。
この旧道から、人通りのある大通りに抜けるには、あとカーブを二回曲がらなければいけない。
そんなことを、頭の中で考えていた。
慣れた道だから考える余裕があったのだろう。知らない道だったら、逃げ道だけに神経を注いでいた筈だ。
カンッ カンッ
カンッ
カンッ
一つ目のカーブを、減速なしで曲がった。濡れた地面とタイヤの擦れる嫌な音が、まるで笑い声のように聞こえた。
二つ目のカーブがすぐに近付く。右カーブの道の左側に街灯とミラーが光っていた。
通過しようとした時、ミラーに自分の自転車が映った。
自転車の後ろから、黄色いハイヒールを履いた血塗れの足が、一本だけ走ってきていた。
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