4 無名さん
ぴよたんの小説

『あ、赤司うまーい桂剥き。私苦手なんだよね』

で、所代わりマネージャーである 苗字 の家へ。
揃って台所に立って夕食のお手伝いをしている。
ストーカーされて、にっちもさっちも行かなくなって、誰かに相談したくて、それで 苗字 に声をかけた。
苗字 は驚きながら相談に乗ってくれて、それだけで充分だったのに、家に止めてくれるらしい。
ぴんぽん、と軽快なチャイムがなる。

『あ、ごっめん赤司、今手ぇ離せないから出てくれない?』
「わかった」

何気なく玄関の扉を開ける。
が、そこにいたのは。

「征十郎、やっぱりここにいたんだね、あの雌豚に騙されて、かわいそうに、僕の征十郎」
「っ、!?」

こ、いつーー!

「あぁでも大丈夫、雌豚は僕が殺してあげるからね、その後で沢山愛してあげるからね」
「っ...!」

俺が、この家に来たせいで、 苗字 が、危ない...!

『赤司ー?結局誰ー?』
「 苗字 !来ては駄目だ...!」

ひょい、と 苗字 が顔を出す。
目の前の男は、包丁を取り出して。

「死ねェ!」
「 苗字 !危な...!」

包丁が迫っているというのに、 苗字 は笑顔で。

『やっぱ来たな、クズが。』

赤司に手ぇ出してんじゃねぇぞ。

そういう言葉が俺の耳に届いた次の瞬間。
ストーカー男は顎を蹴りあげられた。
え。
どういうことなの。

『はい、終了ぉー』

呆然としていたら立ち回りは終わったらしく、 苗字 の足元で男が伸びている。
ていうか、マンションでこんな暴れていいんだろうか。

『あ、もしもしー?みっちー?イイ感じの人めっけたんだけども、どう?いる?
...あ、いるー?じゃ、玄関先で伸びてっから連れてってー。怖がってる子いるしー。
うん、お決まりのストーカー野郎なのー。お願いねー』
5 無名さん
携帯を耳から離し、数分後。

「 苗字 ちゃーん、お邪魔ー。あ、例の彼?」
『あ、この人はストーカーされてた方。下のやつだよ』
「あらあらあら。うん、申し分ないわ、連れてくわねー」
『あんがとー』

たしか 苗字 の下の階の住人。
筋骨隆々な人だが、使うのは女言葉だ。
ストーカー男はみっちー?さん?に引きずられ姿を消す。
めまぐるしく物事が展開していき、つい体中に漲っていた力を抜く。

『はい、解決!』

みっちーさんは一体何者なんだとか、
あのストーカー男はどうなったんだとか、
聞きたいことは色々あったんだけど。
ね?と首をかしげた 苗字 に、俺はありがとう、と呟くので精一杯だった。

勝負と行こうか、ストーカーさん?

(これが僕達が付き合ったきっかけだよ)
(結婚まで至っちゃったけどね★)
(( 苗字 とみっちーさんこええ...!))