40 無名さん
>ヘヘッと笑って天子は人差し指を轟の胸から離した。なんのことはない、突然天子が轟の胸をつついたのである。しかし轟にとってはなんのことないわけなかった。な、な、な、何やってんだこいつー!?と轟は瞠目した。好きな女子に触られて喜ばない男はいないが、青春を置き去りにした人生を歩んできた轟には少々刺激が強すぎたのだった。自分の胸に触れていった彼女の細い指先の感触がまだ残っているような、それを思うとなんともこの場に似つかわしくない気持ちになってきて轟の思考は見事に停止した。やめろと言ったきりパッキリ固まってしまった轟を不思議に思い、天子はその顔を覗き込んだ。

「轟くん?」
「そうだなプロテインだな」
「しっかりして轟くん」

轟が視線をあらぬ方向に飛ばしながら脈絡のないことを言い出したので天子は「熱中症か!?」と慌てた。ポンコツさが増している轟はそれすらも「ねっチューしようか?」に空耳して頭大丈夫かこいつ!?と思ったのだが大丈夫じゃないのは轟である。「保健室行く!?」にも(保健室ですんのか!?)と思ってしまいそういう意味では全然大丈夫ではなかったのだが、轟が慌てて首を横に振るので天子もとりあえずは頷くのだった。

こんな轟くんが尊いとか…まじか…