42 無名さん
部屋に向かう途中、脳裏に、昨夜の必死にヤモリを求める名前の姿が浮かんだ。猫は喋れないだろうと冗談半分で言ったら真に受けたみたいで、ウルウルの瞳で訴えてくるのは本物の猫のようだった。気まぐれで、放っておきすぎるとあっちからすり寄ってきて、構いすぎると離れていく。驚くほどに一致していて、ヤモリは思わず笑いそうになった。
あれだけ部屋を出て行くときに、”僕が出たら鍵をかけなよ”と言ったのに無施錠の扉を開け、部屋に入ると、やはり名前は布団に包まって眠っている。そっと近づいてベッドに腰掛け、名前を覗き込んだ。起きる様子のない名前の肩をそっと叩くと、唸り声をあげながら瞳が開かれた。

うーんこの