これは私の先輩が話してくれたことです。
「私も先輩から聞いた話なんだけどね…」
夏休みが近づていたある昼休み、先輩は唐突に話始めました。
「“鳴らずのピアノ”って知ってる? ほら、あの七不思議の」
私の学校の七不思議には“鳴らずのピアノ”と呼ばれる話がありました。
学校内の何処かのピアノを弾いていると、急に音が消えて、指が離れなくなり、死ぬまで弾きつづけるという何処にでもあるような話です。
「あの話ね…実は本当だったらしいよ。昔この学校でね………」
昔この学校には合唱団があったそうで、そのうちのピアノ担当の娘が一人学校に残って遅くまで練習していました。
決して下手なわけでもなく、ただ自信が無いとのことで練習をしていたそうです。
先生方も熱心なのは良いことだということで、夜遅くまで学校の鍵を開けていました。
ある夜、ピアノの音が止んだので先生も
『練習終わったみたいだな。よし、帰るか』
と鍵をかけて帰ったそうです。
ところがその日の夜遅く、学校側に電話がかかってきて
「あの…うちの娘、まだ学校にいますか? 家にまだ帰って来ないのですが…」
「え? 娘さんならもう学校を出たと思いますが」
とても真面目な娘だったので、何処かで遊んでいるとも考えにくい。けれども学校は既に出たはず。
学校側も全力で捜索したそうですが結局見つからず、警察沙汰にまでなったそうです。
けれども次の日の朝、彼女は学校の体育館で見つかりました。
白目を剥き、泣きながら泡を吹いて、鳴らないピアノを弾き続けながら。
その後すぐに病院に運ばれましたが、指は内出血で紫に染まり、腕は筋肉が切れてパンパンに腫れ上がり、見るも無惨だったそうです。
「………でね、このことがあってから皆ピアノを弾くのを恐がっちゃってね、今は誰も弾かないんだよね。それに、卒業式とかどうしても必要な時は、メトロノームを置いてびくつきながら弾いてるしね…」
私は納得していました。それに少し悲しくもなっていました。
「…あれ? 怖くなかった?」
「だって…私、前に見たことありますから。泣きながら、鳴らないピアノを弾いてる娘」
その“鳴らずのピアノ”はまだ学校の何処かに存在するそうです。
→
「私も先輩から聞いた話なんだけどね…」
夏休みが近づていたある昼休み、先輩は唐突に話始めました。
「“鳴らずのピアノ”って知ってる? ほら、あの七不思議の」
私の学校の七不思議には“鳴らずのピアノ”と呼ばれる話がありました。
学校内の何処かのピアノを弾いていると、急に音が消えて、指が離れなくなり、死ぬまで弾きつづけるという何処にでもあるような話です。
「あの話ね…実は本当だったらしいよ。昔この学校でね………」
昔この学校には合唱団があったそうで、そのうちのピアノ担当の娘が一人学校に残って遅くまで練習していました。
決して下手なわけでもなく、ただ自信が無いとのことで練習をしていたそうです。
先生方も熱心なのは良いことだということで、夜遅くまで学校の鍵を開けていました。
ある夜、ピアノの音が止んだので先生も
『練習終わったみたいだな。よし、帰るか』
と鍵をかけて帰ったそうです。
ところがその日の夜遅く、学校側に電話がかかってきて
「あの…うちの娘、まだ学校にいますか? 家にまだ帰って来ないのですが…」
「え? 娘さんならもう学校を出たと思いますが」
とても真面目な娘だったので、何処かで遊んでいるとも考えにくい。けれども学校は既に出たはず。
学校側も全力で捜索したそうですが結局見つからず、警察沙汰にまでなったそうです。
けれども次の日の朝、彼女は学校の体育館で見つかりました。
白目を剥き、泣きながら泡を吹いて、鳴らないピアノを弾き続けながら。
その後すぐに病院に運ばれましたが、指は内出血で紫に染まり、腕は筋肉が切れてパンパンに腫れ上がり、見るも無惨だったそうです。
「………でね、このことがあってから皆ピアノを弾くのを恐がっちゃってね、今は誰も弾かないんだよね。それに、卒業式とかどうしても必要な時は、メトロノームを置いてびくつきながら弾いてるしね…」
私は納得していました。それに少し悲しくもなっていました。
「…あれ? 怖くなかった?」
「だって…私、前に見たことありますから。泣きながら、鳴らないピアノを弾いてる娘」
その“鳴らずのピアノ”はまだ学校の何処かに存在するそうです。
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