昔働いてたホテルでの話し。

都心にある結構でかいホテルだったんだけど、いわゆる“出る”フロアがあった。

霊感なんで全然ないし、信じてもいない俺は普通に働いてたんだけど、あるとき、お客さんをそのフロアの客室に案内すると

「この部屋は、いえ、このフロアはやめて下さい」とのこと。

結局、部屋は変更したんだけど、その客さんは霊感が強いらしく

「ホテルに入ったときは何も感じなかったけど、エレベーターを降りてそのフロアに入ったときから、嫌な感じがした。部屋の前まで来たらもう耐えられなかった。よく普通に働けますね」と言っていた。

満室ともなれば1000人以上泊まれるホテルなので、宿泊中に病気や怪我をする人もいなくはない。

あるときモーニングコールを何度鳴らしても、起きてこない客がいるという。部屋まで行き、チャイムを鳴らしても無反応。マスターキーでドアを開けても、チェーンがかかっていて入れない。

声をかけても反応がないので、警備員を呼び、チェーンを切って部屋に侵入すると、ベッドの上で寝ているお客さん。しかし、肩を揺すっても、反応はなし。お亡くなりになっていたようだ。

後から確認すると、まさに“出る”フロアの上記の客に嫌がられた部屋だった。

警察に届け、事の顛末を話し、仕事が終わると、支配人から「昼飯を食おう」とのお誘い。支配人からは、この話を口外しないことように、とのことだった。

自分が「あの部屋は何かあるんですか? 以前、あの部屋に案内したお客さんから、部屋の変更を強く求められたこともあります」と、訊くと、支配人は

「自分もまだここに来てないころの話だから、詳しくは知らないが、ホテルができた直後のころに、あの部屋に泊まっていた客が、突然発狂して自殺したらしい。

お払いしたり、お札を貼ったりしてるけど、あのフロアは急病とか怪我のトラブルは他より多い。今回みたいなのは初めてだが・・・」