それは8年ほど前のことになりますが、仕事で高知県の某市へ3泊の出張に行きました。
現場は駅から程遠く、唯一のビジネスホテルは駅前に1件しかありませんでした。

仕事もひと落ち着きして外でタバコ休憩していると、なんと目の前に小さな旅館がある?
現地の人へ訊くと「……まぁ、ね」とか「古いけど……ねぇ」とか歯切れが悪い。

こっちはあと2日もタクシーで現場に通うことを考えると、少々古くたって効率には代えられないものがあると判断し、駅前のホテルをキャンセルしてその旅館のお世話になることにしました(どうせ寝るだけだ、なんてね。これが大間違いでした)。

旅館の方が「3日間もお泊りですか?」とビックリした表情をしたのですが、こんな田舎に連泊することが珍しいのかな? くらいにしか考えてませんでした(普通そうだろ)。
ちなみに当日の宿泊客は私だけとのことでした(観光地でもなし、そんなもんだろ)。

当日の仕事も終わり、疲れた体で2階の部屋に通された時に、部屋の前で、ん? 中に誰かがいる?
そんな気配がして引き戸を開けましたが、誰もいない……。

仲居さんに促されて部屋に入った途端、不思議にサァっと全身に鳥肌が立ちました。

(ん? 何か、ヤバい?)

と直感が働きましたが、本人は霊感なんて縁が無い人生を送って来たので、仕事の疲れがひどいのかな? と気にしないようにしました。

ただ、仲居さんが去った後も何かに見られているような気がするのと、ひどく部屋が寒いんです。

すぐにエアコンを切りましたが、鳥肌は立ちっ放しで直りません。