これは、俺が小さい時にあった事を両親から聴いた話です。

東北に住んでいる母方の実家の血筋は代々霊感が強いらしく、俺も例外ではありませんでした。
「憑き物筋」と言われ、迫害されていた事も昔はあったようです。

しかし憑かれている人は、必ずしも不幸にはならないのだと思います。

さて、此処からが本題です…。

俺が7歳くらいの頃、両親と実家に帰った時の事なのですが…。

「赤い服の女に取り憑かれている」

といきなり祖母が俺を見て言ったそうです。

祖母は霊感が強く、優しい人でした。小さい俺とよく遊んでくれていたのを覚えています。

その時ばかりは祖母も真剣な面持ちで、俺を急いで部屋に隔離したそうです。

「○○、絶対に部屋から出ちゃ駄目だよ。ばあちゃんが守ってあげるからね」

そう言い聞かされていた筈なのに、翌日俺の姿は部屋になかったそうです。

祖母と両親は俺を探し回ったのですが、一向に見つけられなかったと聴きます。

途端に祖母が、 

「狗が吠えている。○○はこっち!」

と林に分け入ったそうです。 

両親には「聴こえなかった」のに、祖母は確固たる足取りで林の奥へ。

俺は雪の中で座って泣いていたそうです。
俺の左腕には浅い切り傷があり、辺りには飛び散った血と大量の足跡が。

祖母は俺を抱き締めてこう言ったそうです。 

「狗に守って貰ったんだね、良かったね○○」

足跡というのは…
大量の大人の靴跡と、それを追い立てるような犬の足跡だったそうです。

祖母にその当時の話を訊くと、

「○○が狗に好かれていなかったら、きっと赤い服の女に殺されていたよ」

と言われました。

憑き物筋で良かったのかは分かりません。ただ、俺は昔から何故か犬に好かれます。
仲の悪い親戚には狗憑きと言われますが、俺はあながち狗が嫌いではありません。