その日、ボクは先輩と二人で映画を観に行きました。
先輩が言うには、他より断然安くチケットが買えるとの事で市内の小さな映画館へ。

でもそこは、あまり良い建物ではなくて、正直古くて汚い。

チケットが安く手に入るのは、○○○デー的な格安サービスが頻繁に行われていて、しかも学生割引も利くから。
その為、チケット代は確かに安い。ただ、そんな映画館だから放映数も少なかったり。

先輩に何を見るのか聞いたら。
バスケ部で重宝されている、がっしりとした長身とギャップがある位に、子供臭い笑顔を向けて。

「ホラーで良いよな?」

映画館って暗いし。しかも、こんな曰くありそうな場所だ。こんな所でホラーはどうかとも思った。

でも、普段から一人のボクなので偶には人に合わせるのも良いかな、と。
確かに、男二人でファミリーやカップル向けムービーは観たくない気もしたし。

適当に同意して、チケットを購入する。
立て付けの悪い扉。黴臭い上、生暖かかった。こんな所に2時間も居たら吐き気を催すんじゃないだろうか。


30分弱で、吐いた。もう、全然ダメだった。

映画自体はB級だし人体構造上悪臭も、既に慣れていた。
じゃあ、何故吐くまで至ったのか。

それは、ボクの首に女の子が噛みついているから。

女の子は体が無かった。別によくある頭だけとかじゃなくて、口周りしか見えなかっただけ。
後は、暗い闇に飲まれていた。

女の子と判ったのは、ボクの体質上仕方無い。
彼女が触れる事で伝わる事が数個あった。彼女の性別を始め、好きだった玩具、お気に入りの靴、苦手な動物。そんな他愛ない事。