小学生のころ。

前までは私の前でもいちゃいちゃして、常にラブラブだった両親がいつのころからかお互いを無視、無言で通すようになってた。

そして真夜中になると両親の部屋から喧嘩の声がするようになった。今まで仲がよかった父母がそんな状態になり、すごく悲しかったことを覚えている。

そんなある日、学校が終わって帰宅途中。一緒に帰ってきた友達と別れてもう少しで自分の家につくというところで、後ろから誰かに

「(私)ちゃん」と呼び止められた。

振り向くとそこには、テレビで見る女優やタレントのようにきれいなお姉さんが立っていて、ニコニコしている。

そのお姉さんはもう一度「(私)ちゃん」と名前を呼んでしゃがみ、私に向かっておいでおいでをした。

私は、お母さんのお友達かな? と思って何のうたがいも持たずそのお姉さんの前に行った。するとそのお姉さんの笑顔がとたんに鬼のようになり

「死ね」と言われた。

お姉さんの突然の豹変に、怖いより先に驚いてしまってただ え? え?と立ち尽くしていると、後ろのほうで足音がして隣の家のおばさんが

「(私)ちゃん!(私)ちゃん!」と叫びつつこちらへ走ってきた。

そしておばさんは私を抱えて、急いでお姉さんの元を逃げ出した。

その時も何がなんだか分からなかった私は、まだ鬼のような顔でこちらをにらんでるお姉さんをぼんやり見ていた。

隣のおばさんは私を家に入れると、玄関に鍵をかけて

「おじいちゃん、窓の鍵をかけて、カーテン閉めて!」と家の奥に向かって叫んだ。

それからヘナヘナッと腰が抜けたようになり、私を抱き寄せて「よかった、(私)ちゃん、無事で」と繰り返し言いつつ、震えていた。 

その後はもう、ぼんやりしてる私の前で大人が入れ替わり立ち代りの状態で、警察の人まで来てた。

おばさんや他の人の話から、どうやらあのきれいなお姉さんは、手に包丁のようなものを持っていたらしい(私は包丁を見た記憶はなかったけど、ともかくうすらぼんやりした子供だったから見落としてたのかも)。

それっきり何もなかったし、お姉さんに再び会う事もなかったけれど、大人になって思い出してみると両親の不仲とあのお姉さんには、何らかの関係があったような気がしてならない。

ちなみに両親は今も健在。昔のようにラブラブではないけど、普通に仲がいい夫婦です。