今日は私の引っ越しの日だ。

場所は都会から離れた郊外、近辺の山等の未開発地帯と都会の丁度真ん中辺りの場所で、人によっては中途半端だと言うかもしれないが、都会への未練と自然への憧れの両方を捨て切れない私にとってはこれぐらいが丁度良い。
引っ越し業者も少ないダンボールをあっという間に運び終えて帰って行った後、私が散々迷って買った中古物件は静寂を取り戻した。

不動産屋の話によると、以前ここには四人家族が住んでいたらしい。
幸せを絵に書いた様な家族で、不動産屋はこの家でずっと暮らして行くのだろうと思っていたという。
しかし、ある時その家の主人が不動産屋に来てこの家を売り払ったのだという。

不動産屋は理由が気になったが、余り家庭の事に干渉するのも気が引けて素直に従ったらしい。
そして不動産屋はその家を綺麗に掃除して、また売家としてラインナップした直後に私が買いに来たのだという。

「前の主人が何処かの業者に頼んで改築工事をしていたみたいですけどね、改悪という事も無いでしょう。多分住みやすい家だと思いますよ」

私は不動産屋の言葉を思い出し、自分が良い買い物をした気分になる。

とにかく、玄関にダンボールが詰まれている光景というのは余り良い物ではない。
私は大きいダンボールを開け、小さいダンボールを持って奥の部屋へ行くために廊下を進んで行った。

サリッ

足の裏に微かな違和感を感じる。しかしここで一度ダンボールを置いて足の裏を確認するのも億劫だ。
私は気にせずに廊下を再び歩き始めた。

奥の部屋に着き、ダンボールを置く。
私は違和感の理由が気になって足の裏を見てみた。