50 無名さん
ふえぇごめんね…でもこれだけは言わせて!団長のことが嫌いで馬鹿にしたんじゃないからね!本当はこんな感じだよ!


「見覚えのない兵士だが……君は、今期の訓練兵か?」
「いででで!!!はっ、はなせ!」

私の会心の一撃は団長の手によってあっさり弾かれ、それどころか腕を捻り上げられてしまう。
最悪だ。
まさかこんな朝っぱらから団長がトイレに現れるなんて、誰が想像しただろう。最悪だ。

「名前を言いたまえ」
「………」
「固そうな口だな」
「ひゃ、っえ!?」

エルヴィンは私の腕を捻りあげながら、さらしの結び目をするりとほどいた。

「ここは男子トイレだが、君はどう見ても女だ。何か深い理由があるなら聞こうじゃないか」
「あ、なっ、なんっ」
「叫んでもいいが、それを聞き付けて入ってくる者もまた男だということをふまえて叫んでくれ」