これは私自身のトラウマになっている事なのですが、もう20年は昔になるでしょうか。その年の夏休み、お盆に起こった出来事です。

私は母方の祖父の田舎へ行きました。

昼間は夏祭りでくじ引きなどをして、2つ上の兄と大いに楽しんだのですが、夕方になり祖父の家に帰ると、父と母、祖父と祖母はビールなどで盛り上がり、狭い茶の間はとても賑やかでした。

私と兄は、そんな雰囲気の中でテレビを見る気にならず外でパチパチと花火をしました。

子供の頃の花火ってものすごく綺麗に見えるもので、テンションの上がった私は夢中でキャーキャー暴れていたのですが、ふと気付きました。

兄は両手に花火を持っていると思っていたのに、そばに行くと片手にしか持っていません。

あれ?じゃああれは?

そう思った瞬間、花火の明かりに照らし出されたのは、顔が半分しかない、というか吹き飛ばされたような血まみれの女の子。

私と兄は今まで出したことの無いような叫び声を上げ祖父の家に転がり込み、二階に駆け上がりました。

小さなその家は二階建てになっているのですが、母が一人娘だったので一部屋だけという間取り。部屋の三面は全て窓で、そこにはブラインドが掛けてありました。

閉め方のよくわからない私は無我夢中で紐を引っ張り、兄も気が動転し泣きながらガシャガシャと閉め、真ん中に敷いてある布団に潜り込みました。

身体はぐしょぐしょの冷や汗で冷たく、とても寒い二階はシーンとしていました。兄の鳴咽と私の歯の音、階下の茶の間にいる祖父達の笑う声が、まるで水の中にいるようにくぐもって聞こえていました。

突如、窓に爪の先で コツ コツ と叩くような音が聞こえたかと思うと、指先を立てるようなキュゥゥウという音がしました。兄も聞こえているようで、泣きながら「もうヤダ 何アレ」と言っているのが聞こえます。

私はブラインドを全部閉めたかどうか、どうしても気掛かりになり、そっと布団の隙間から窓を見ました。

その瞬間音が止み、突然

「カシャン!」

と窓の内側にあるはずのブラインドが真ん中から折れ、真っ赤な目が一つ見えたのを覚えています。

私はそのまま恐怖のあまり叫ぶ事もできずに気を失ってしまったようでした。