>>51


と言うと、やっぱり誰かが「海女にナンパされたんか? あ〜?」の言葉にまた爆笑です。

で、彼の腕にも細い海草のようなものが付いてました。
それはまるで長い髪の毛みたいに見えたのですが、それを言うと場がシラケるかな? と遠慮したことを、今でも後悔に似た思いをしてます。

次のC君は、元水泳部(本人談)でひょうきんな人でした。
皆は彼が何かやってくれると期待して飛び込むのを待ってましたが、思い返せば、その時の彼の様子は少し変(うつむき気味)だったと思います。

彼は岩場から高く上に飛んで、

「おかぁ〜さぁん!」

と叫びながら、両手を組んで祈るようなポーズで体を横に回転させながら飛び込みました。

皆は「ハナマルキだぁ!」(当時流行った味噌のCM)とウケて笑ってましたが、カメラを構えて撮ることに専念していた私には、悲壮な叫びにも似た声だなぁとも思えましたが。

C君が戻って来るのを待つ間、「あいつはどこをつかまれるんだろな?」と冗談を言いながら待ってましたが、なかなか帰って来ません。
体が浮いているのは見えてるので、呼んでみますが反応なしです。

そのまま浮いて涼んでいるにしても遅いので、様子を見に行った人が何やら大声で叫んでいるのを見て、何か異常が起こったことを知りました。

急いで泳ぎ、数人で近くまで行くと、C君は気を失っているようでグッタリしていました。

仰向けで浮いていたのが幸いで、大事にならずに良かったと話していたのも束の間、気が付き起き上がったC君は、

「手、手だ、手だ、手が……」

と繰り返し言いながら、震え上がって海の方を指差しました。