「猿夢」という話をご存知だろうか?
とある電車に乗り合わせた人が、独特の方法で順番に殺されていくという物だ。

さてこの「猿夢」だが、この手の話に多い「読んだ人にも災難が降り掛かります」的なコメントもなく始められていて文章も読み易く、僕はページを開くなりサクサク読み進めていった。しかしそれが間違いだったのかも知れない。

この話を読んでから4日目の晩、僕は「続き」とも言える恐ろしい夢を見たのである。
二番煎じは一番を超える事は出来ない。それは重々承知だが、僕の見た夢をここに書き留めておきたい。

夢の中で僕は名古屋市内のとある遊園地のスロー・コースターに乗っていた。
今はもうなくなっているだろうか? それは子供向けのアトラクションで、園内の一部をゆっくりと回って来る。
幼い頃の事なので細かい事は良く覚えていないが、大体3〜5分の内容ではなかっただろうか。
降り場の手前に小さなトンネルがあって、そこを抜けるとビデオカメラを構えた父。その隣には僕らの名前を呼びながら手を振る母の笑顔があった。
これは父からの虐待が始まる前の、最も幸せだった頃の大切な思い出だ。

夢の中で僕は2人掛けの一番前の席に座っていた。
隣には幼かった頃の姉がいる。あの頃僕は姉を見上げてはしゃいでいたのに、この夢の中では僕だけ20歳。この年齢差では年の離れた兄妹どころか下手をすると親子のようだ。しかし僕は懐かしいあの頃の夢を楽しむ事にした。
僕らの乗ったコースターはゆっくりとコースを回り、やがてトンネルに差し掛かった。

(このトンネルを抜ければ、優しかった父にもう1度会える)