53 無名さん
女の子たちが、すっかりしらけてしまったので、ははっと、頭をかきながら、謝ってみる。
「あ、ああ…、ごめんなさい。数字の話なんて、合コンにふさわしくないですよね」
でも、女性陣の目線は冷たいまま。
うわあ…このままでは、凍え死んでしまうよ、わたし。
もう帰ろう。本当に帰ろう。
そう思って、鞄に手を伸ばそうとしたんだけれど。
「何言ってる。今、数字の話を振ったのはおれだ」
へ。
思わぬ助け舟を出してくれたのは、トラファルガーさんだった。
「いや…、でも、ご祝儀の話を、最初にしたのはわたしだし…」
「は? その話をはじめたのは、こいつだろう」
そう言って、女の子Aを差す。
まあ、確かにそうですけれども。
ですが、おかしな方向に話を広げてしまったのは、まちがいなくわたしなので。
「―――ああ、そうだ。お前に面白いものを見せてやるよ」
そう言って、携帯を取り出すトラファルガーさん。
「ほら」
「?」
画面を見せてくるので、ちょっとのぞいて見ると。
「! あああああああああ!!!」
な…、な…、なんですか…!
この、美しい数字の並び…!!
5711−1317−1923って…!!!
す、すべてが、自分以外の正数で割り切ることのできない孤独な数字、素数で出来ているじゃないですかっ…!!
「こ、これって…、これって…」
「おれの携帯の番号だ」
「!!!」
な、な、なんてこと…!!
ちょっと…! うらやましすぎるんですけれども、この並び…!!
いいな…! わたしも、こんな番号がよかった…!!!
「登録させてやろうか?」
「?! い、いいんですか…?!」
「ああ」
!! な、なんてラッキー…!!
わたしの番号じゃないけれど、登録しておけば、いつでもながめることができる…!!
「じ、じゃあ…、お言葉に甘えて…!」
「ああ。赤外線でいけるか?」
「あ、はい。大丈夫です!」
あああ…、携帯を操作する手が震えます…!!
ぴっ、ぴっと。
あああああ…!!
ちゃんと入りましたよ、素数でできた、芸術的な電話番号…!!
「かけてみろよ」
「! えっ…! いいんですか…?!」
ながめるだけでなく、この番号に、かけることまで許されるとは…!!
ト、トラファルガーさん、あなた、なんていい人なの…!!
さっきまで、目つきが悪くて無愛想な人だな、なんて思っててごめんなさいっ!