53 無名さん
なんとか主の部屋へと辿り着き、私は縁側へとくずれるように座り込んだ。
身体の内側が、あちこち痛い。

「はぁ・・・。」

ちくしょう、こんのすけめ。
こんなにダメージくるなんて聞いてないぞ。

まぁこれでも最小限なのだから、本来は12枚全て剥がすなんて無理な話だったのだろう。
そう考えると、これくらい我慢しなくてはなと思ってしまう。

それからどれくらい時間が経っただろう。
過労が少し軽減したかなという時に、ふと入り口の方から強い気配を感じた。
一瞬救出部隊が到着したのかと思ったが、すぐにそうではないことに気付く。

「っ三日月さん!!」

主の部屋の襖を勢い良く開けると、主が驚いたような悲鳴を上げた。
だが今はそれどころじゃない。

「あぁ、来たようだな。」

三日月さんは立ち上がり、素早く部屋を出る。
何かあった時、室内では不利になるからだろう。

「ちょっと、なんなのよ!?」

三日月さんの膝の上に乗っていたらしい主は、畳の上で体勢を立て直しながらも私を睨んできた。

「時間遡行軍だ。」

三日月さんの一言が、異様なまでに響く。
主の顔が、一瞬にして青ざめた。

「どっどういうことなの!?
本丸には結界があるんだから、敵は入ってこないはずでしょ!!」
「今この本丸には、結界は張られていません。
あまりにも酷い状況である今を終わらせる為に、私とこんのすけで札を全て剥がしましたから。」
54 無名さん
あぁ、いち兄達が心配だ。
これだけの気配が漂うということは、敵は1部隊ではないのかもしれない。
他の本丸には1つの部隊しか入れないと言っていたが、それは多分刀剣男士のみの話だ。
敵の数も制限出来るなら、最初から入れないようにすることが可能なはずだし。

緊張が漂う中で必死に状況を把握しようとしていると、グイと腕を引かれた。

「何余計なことをしてんのよ!!」

頬に強い衝撃が走り、私の身体が床へと叩きつけられる。
結論。
主はやっぱり馬鹿力。
って、そんなことを考えている場合ではなかった。

急いで起き上がり、主に手を伸ばす。<br />私がすぐに動くと思っていなかったのか、ビクリと身体を揺らす主。

「私の本体、返して頂きますね。」

主の帯から剣を鞘ごと引き抜くと、触れた部分から安心感が広がっていく。
記憶がなかろうがなんだろうが、やはり私はこの剣なんだ。
改めて剣をギュッと握った後に鞘を腰へ挿せば、より一層身が引き締まる思いがした。

そうこうしているうちに、強い気配がこちらへと近付いてくる。
部屋から出れば、やはり庭のすぐそこに時間遡行軍の姿があった。

狙いは多分、主だ。

「やるか。」

三日月さんの言葉を合図に、私達は敵のもとへと飛び掛った。


ほらよ今日更新した文だよ
「禁止tag排除」