>>53

僕はそう思った。
しかしトンネルを抜けると、そこはあの遊園地ではなかった。
今まで僕が乗っていたコースターは電車に変わり、僕は「5号車の自由席」に乗っていた。隣にいたはずの幼い姉はもういない。
席は前の方で、喫煙車両である4号車とを繋ぐデッキのドアが開くと煙草の匂いがした。
僕は新幹線で移動する事が良くあるので夢がそこに繋がってしまったのだろう。全く、夢はいつも「いいトコ」を見せてくれない。僕は舌打ちした。

窓の外を見慣れた景色が過ぎていく。
ただ現実と違うのは車内があまりにも静か過ぎる事。そして2人掛けと3人掛け、左右どちらのシートを見てもどの列にも窓際に1人ずつしか掛けていない。そして皆異様に顔色が悪かった。
無気味だなと思いつつ、僕はいつの間にか抱えていた鞄からMDプレーヤーを取り出しお気に入りの曲を聴いた。
と、新幹線が減速し始める。

(おかしいな? 京都に着くにはまだ早過ぎる。もしかして岐阜羽島にも停まるのか?)

僕は駅名を確認しようとヘッドフォンを外したが間に合わず、聴き取る事が出来なかった。
見知らぬ駅で停まる新幹線、突然車内に響く叫び声。どうやら後ろの方の席で何かあったようだった。
しかし物凄い声だったにもかかわらず誰1人反応しない。
何があったのか? しかし僕の視力では後ろまで見えない。
乗り降りする人は誰1人なく、新幹線はまたゆっくりと走り始めた。

5分と経たないうちにまた減速。次の駅名は聴き取る事が出来た。

「吊るし上げ」