54 無名さん
「手塚君、午後はいつもと同じ?」
「いや。試合形式にしようかと思っている」
「なぜ、手塚に聞くんだ?」
「答えは簡単。この中で唯一の“部長”だからかな」
 私がそう言うと、真田君は微妙な顔をしていた。
 精市君が入院している今、彼が部長代理をしているけど彼はどこまでも副部長なんだと思う。
「テニスの世界は勝負で決まるけど、格の違いはどうしようもないと思うよ」
「俺が手塚よりも格下と言いたいのか?」
「幸村君の下に付くことを享受している時点で、真田君はどこまでも“副”部長にしかなれないよ。学校としての実力が上でも人間的な問題かな」
「藤原さん。それは言いすぎとちゃうか?」
「私はテニスを知らない。だからこそ、強さじゃなくて人だけを見る。やり方が正しいとかじゃなくて、この合宿に参加している人達に二人の内のどちらかを選ぶかと聞いたら、手塚君が選ばれると思う」
「そこに跡部は入らんのかいな」
 忍足君がそう言うと、手塚君にどうなのかと聞かれた。
「跡部君は人格者とかって言うよりも、人の下に付く跡部君は想像できないかな」
 そう言うと、全員が納得してくれた。
 まあ、流石に私も言いすぎたなと思いましたよ。

これか